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第10回柔道整復療養費検討専門委員会開催される

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平成29年2月15日(水)、全国都市会館大ホール(東京都千代田区)において、『第10回柔道整復療養費検討専門委員会』(以下、検討専門委員会)が開催された。

第10回柔道整復療養費検討専門委員会

【 配布資料 】

本委員会は、厚生労働省から資料および議事に関して説明が行われた後、議論へと移った。

平成29年度に実施を予定しているもの

柔整審査会の権限強化について

まず柔整審査会の権限強化について、施術者側からは〝平成27年の反社会的勢力が絡んだ不正請求問題に端を発し、業界全体がこのままではいけない、何をすればいいかと考えたものが審査会の強化だ。柔整審査会をしっかり機能させることで、業界をあげて適正化に向けて進めていこうとしている〟と前向きな意見が述べられた。

一方で保険者側からは〝施術者の審査員が自分の団体の審査も行っているのであれば利益相反になるのではないか。保険者としてはやり方を考えてほしい。調査権を与えることは賛成だが、例えば柔整審査会を月に1回ではなく週に1回にするなど体制の強化を図らなければならない〟と現行の審査体制のままで権限を付与することを疑問視する声が上がった。

三橋委員は〝施術者をはじめ保険者や審査会担当者らも交えて話し合い、今後必要なものは組み入れてより良いものを作っていければと考えている〟とした。

また、村岡委員は〝医療の世界ではカルテに記載がないものは請求ができないというのが基本であり、同様に施術録もしっかり記載して適切に請求するということを徹底しなければならない〟と意見し、これには伊藤委員も〝施術録を書いていない施術者もいるが、それであれば不正を無くすためにも今後法制化をして記載の義務化を検討すべきではないか〟と述べた。
厚生労働省は〝法律上では施術録の記載義務はないが、受領委任協定・契約の中には施術録の記載あるいは保存に関する事項がある。さらに厚生労働省が出している留意事項通知にも同様に指導しているので、これに則って適切に対応してほしい〟と述べた。

審査要領について

柔道整復療養費審査委員会の審査要領改正案については、三橋委員は〝多部位施術・長期施術・頻回施術には理由が書いてあるので重点審査項目から外し、部位転がしを重点審査項目とすればいいのではないか〟と主張。続けて田中委員も〝多部位施術・長期施術・頻回施術の請求が減っており重点項目とする必要はない〟とした。

これに対し、髙橋委員は〝少ないからと言って多部位施術・長期施術・頻回施術を重点項目から外すというのは危険。チェックしなくなってしまう可能性もあるだろう〟と反論。村岡委員も〝多部位請求が減ったのは制度改正により3部位までの請求が増えたからだと思う。多部位請求の問題は負傷原因の記載もセットで今後も検討していくべき〟と異論を唱えた。

不適切な広告の是正について

広告の是正については、保険者側から広告規制に関する具体的なスケジュール案が示されていないとして厳しい意見が上がった。

相原委員からも〝きちんとした厚生労働省の見解を示し、実態調査を行わなければならない。そして広告主に対して間違っているものは指摘し、修正しないものには罰則規定も適用するというのが本来の行政の在り方ではないのか〟と積極的に調査に取り組むよう要望が出された。

厚生労働省は〝全国調査についてはどのように行うか検討していきたい。ガイドラインについては実態を把握した上で作成すべきと考えているので、関係者を加えて進めていきたいと考えている〟と述べるにとどまった。

様々な意見が交わされたが、『平成29年度に実施を予定しているもの』に対する大きな異論はなく、厚生労働省が示した改正案に沿って進めていくことが承認された。

施術管理者の研修受講・実務経験関係

施術管理者の要件として検討されている実務経験について、改正案では「病院、診療所(指定保険医療機関)において、柔道整復師が勤務し従事していた期間については、一定期間、実務経験の期間として認めることとしてはどうか」とされているが、医師でもある相原委員は〝医療機関は柔道整復師が何を業としているのかを理解していない。柔道整復師が医療機関にいる場合、セラピストとしての役割がほとんどだと思う。それなのに実務経験の期間として認めるのは筋違いだ〟と強く反発した。

三橋委員は〝現状で医療機関に勤める中で様々なことが学べる。そこで2年間はしっかり学び、1年間は柔道整復師のもとで保険請求などについて学ぶということでご理解いただきたい〟、伊藤委員は〝研修3年間で倫理的な勉強も含めて、足らない部分を充たす教育をすることが国民のためにも重要ではないか〟として、医療機関における研修でも得られるものがあり、実務経験とみなすべきだと意見した。

これについては、厚生労働省は〝病院に柔道整復を教えてもらう期間ではないとご理解いただきたい。医療チームの中で勤務することを実務経験として認めるかという論点で、医接連携も含めて引き続きご議論いただきたい〟とした。

「亜急性」の文言の見直し、判断に迷う事例の収集及び公表関係

「亜急性」の文言について、幸野委員は〝平成28年9月23日の「柔道整復療養費に関する議論の整理」において、『「亜急性の外傷」という表現は医学的に用いられることはないとの意見を踏まえ、過去の質問主意書に対する政府の答弁書の内容を踏まえた見直しを行う』とされている。亜急性という文言は削除するという点に留意して、どのような表現にするかを考えてほしい。曖昧な表現は改めていただきたい〟と強調した。

しかしながら萩原委員は〝亜急性の文言の変更は反対。どのように解釈するかという見直しだと考えている〟とし、真っ向から意見が対立する形となった。

また、有識者委員からは以前より亜急性の外傷例を具体的に示すよう要望が挙げられているが、厚生労働省は〝少なくとも現時点では、身体の組織の損傷の状態が急性か亜急性かということで、施術者側からも慢性に至っていないものという意見があったので、そういったものが該当するのではないか。また平成7年の医療保険審議会柔道整復等療養費部会において、『療養費の対象疾患は、急性又は亜急性の外傷性であることが明白な』とされている(資料『「亜急性」の文言の見直し、判断に迷う事例の収集及び公表関係』2ページ参照)ので、負傷原因が明白であるものが対象と考えている。いずれにしても次回までに整理し、具体的に挙げられるようにしたい〟とした。

その他

1部位からの負傷原因の記載について

1部位からの負傷原因の記載について、保険者側は〝柔道整復の不正の原因(水増し請求、付け増し請求)は白紙委任以外の何物でもない。本当にやらなければいけないのは白紙委任をなくすことと、1部位からの原因記載を入れることだ〟と強硬な姿勢を見せた。

これに対し、施術者側は〝1部位から原因を記載することで不正請求がなくなるわけではない。ただし、1部位や2部位であっても原因を記載することが望ましく、保険者が求めれば原因を記載するということで整理ができるのではないか〟と、1部位からの原因記載を義務付けるのではなく要請があれば必要に応じて対応するようにすればいいと提案した。

厚生労働省は、〝1部位目からの負傷原因記載に関しては検討項目としている。白紙委任に関しても事務局として何もしないというわけではなく、次の改定に向けて今後とも議論させていただきたい〟とさらなる議論の必要性を示した。

今後も検討すべきとされた課題については、引き続き検討専門委員会において議論される見込みだ。
なお、次回検討専門委員会の開催日時は未定となっている。

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