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第6回柔道整復療養費検討専門委員会 開催される

2016/07/12

平成28年7月7日(木)、中央合同庁舎第5号館講堂(東京都千代田区)において、第6回柔道整復療養費検討専門委員会が開催された。

まず厚生労働省より人事異動に関する報告と当日の資料や議題についての説明がなされ、続いて相原委員より「亜急性」の定義に関する提出資料が説明された。

 

亜急性の定義について

相原委員は〝外傷を扱う日本救急医学会、日本外科学会、日本整形外科学会に、亜急性に関するご意見を伺った。通知上、柔道整復療養費の「支給対象となる負傷は急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫」という部分について考えをお聞きした。その結果、『「亜急性」は、医学的には傷病の時間的経過を指しており、受傷時から順に急性、亜急性、慢性として使われ、「亜急性」は急性と慢性の間の時期、つまり「亜急性期」と表記されるのが一般的と考えられます。外傷の急性期、亜急性期、慢性期という表現はありますが、「亜急性の外傷」という表現は、医学的に用いられることはありません。なぜなら外傷はすべて急性だからです』との回答を得た。公的な医療保険を使うなら、亜急性の正しい意味を知って、それに基づいて申請すべき。もともと柔道整復師法は議員立法だが、趣旨説明として「新鮮なる外傷」とうたわれている。つまり反復性や蓄積性のものは新鮮外傷とは言えない〟として、いつどこでどうして怪我をしたか判然としないものは新鮮外傷ではなく、支給対象には当たらないと強調した。

これに対し、田中委員は〝亜急性の概念については、平成15年の国会答弁書において決着がついている。答弁書には、「外傷性とは何か」と「外傷性の状態」が整理されている。外傷性とは外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すもの、外傷性の状態とは身体の組織の損傷の状態が、急性又は亜急性を示すこととされている〟として、亜急性の定義の議論は無用だと主張。萩原委員は〝教科書にも、亜急性は蓄積性のある外力という判断だと書かれている。介達外力による筋・腱の断裂も算定して差し支えないとされている〟と説明した。

また、田村委員は〝医歯薬出版株式会社出版の「病理学概論」によれば、発病から回復に至るまでの経過時間の評価によって、疾病を急性・亜急性・慢性に分類することが一般的によく行われている。すべての病気が最初から急性・慢性に分類されているのではなく、臨床経過から見た結果的な分類だと記述されている。時間による分類は結果的にそうなっているだけということではないか〟と、「亜急性」の時間軸での捉え方に疑問を投げかけた。また炎症についても同書で〝滲出は亜急性の時期に相当し、増殖は慢性又は慢性期に相当する〟とされていることから〝正確に分類するのであれば、病理学に基づき、炎症の種類で分けるのが適当だ。例えば変形性膝関節症の患者で膝に水が溜まって痛いという場合、時間で分類するとしたら慢性期であるが、重力という外力によって長年かけて損傷した亜急性の外傷により急性炎症が発生したという状況である。この場合、保険適用は当然できるという結果になるだろう〟と主張した。

しかし、幸野委員は〝相原委員が示された資料のように医学的な考え方が明確になっている以上、亜急性の外傷はないということを重く受け止め、見直す必要がある。亜急性という言葉は削除して、負傷原因の明確な外傷とすべき〟と厳しい見方を示し、施術者・保険者の主張は相容れないものとなった。

 

支給申請書の負傷原因に1部位目から記載することについて

支給申請書への1部位からの負傷原因記載については、伊藤委員は〝柔道整復療養費の審査は紙ベースで行っているため、審査会に膨大な負担が掛かってしまう。現在の負傷原因は稚拙で不十分なものが多いと認めざるを得ないが、負傷原因にはいつ・どこで・なにを・どうしたのかを具体的に記載するようにとされている。再度周知徹底することで対応したい〟と、1部位からの記載は必要ではないとした。三橋委員も〝施術所単位で傾向的にどうなのかが問題。負傷原因がパターン化している等の場合に指摘すればいいのではないか。傾向的に怪しい支給申請が判明したら、1部位からの負傷原因の記載を求めることとすれば良い〟と話し、すべての支給申請において1部位から原因を記載することには難色を示した。

相原委員は〝施術録に書いてあるものを転記すればいいのだから、そうマイナスにはならないだろう〟と、原因の記載は施術者の負担になるものではないとした。

一方で、飯山委員は〝審査する側は全部見るのは大変だとは思うが、審査に慣れている柔道整復師の先生方ならおかしいものは即座に判別できるだろう。1部位からの記載が一概に審査の重荷になるということはないと思われる〟とし、幸野委員は〝今は2部位以下での申請が全体の7割で、つまり7割は負傷原因をかかずに申請されているという状況。これは患者調査にも支障が出るおそれがあり、1部位からの記載とすべき〟と述べた。村岡委員も〝不正を特定する中で受傷機転はポイントとなる。負傷原因はすべて記載するのが前提ではないか〟とし、保険者側としてはあくまで1部位からの原因記載を求める姿勢を崩さなかった。

 

著しい長期・頻回事例の算定の基準に回数制限等を設けることについて

長期・頻回事例の回数制限について、幸野委員は〝長期・頻回の事例については回数制限を設けるべきとしているが、それは接骨院に行くなということではなく、療養費の対象となる回数を制限してはどうかということ。資料によれば約9割の人が3か月程度で治っているわけなので、そこから推定しても3か月目程度から回数制限するのが妥当だろう〟とした。

しかしながら、田村委員は〝厚生労働省の資料によると、通院月数が6か月以上なのは全体の2%ほどで、その中でも20回以上施術をしているのはレアなケースだ〟と述べ、回数制限は適当ではないとした。

また、田中委員と伊藤委員は〝若年者と高齢者を一緒に考えてはいけない。高齢者は変形性膝関節症などもともと素因がある場合が多く、痛みを長期にわたって訴えることも多い〟〝負傷原因もひとによって様々であり、全体をひとまとめにして単に期間や回数だけで制限していいものだろうか〟として、回数のみを見て一括りに制限することのリスクを主張した。

さらに原田委員も〝著しい長期頻回の回数制限について漫然と同じ施設で施術が続けられていることが問題なのであり、患者が真に必要とする施術まで一律に制限するのは患者の視点からしても望ましくない。まずは原因となる疾患のデータを収集して、きちんとした分析をすることが重要。そのうえで回数制限が必要なのかどうかを議論すべきではないか〟と慎重に議論を進める必要があるとした。

 

地方厚生局における個別指導・監査について

飯山委員は指導監査の強化について、〝電子請求に切り替えて、蓄積されたデータから縦覧点検していただくべき。せっかく審査会で疑いのある申請に付箋をつけて保険者に送っても通ってしまうということなので、審査会で査定に近いような強い権限を持てるようにしていただきたい〟と電子請求を導入することで審査の重点化ができるとした。幸野委員は〝現在の柔整審査会と厚生局の体制では、スピーディーに対応できないことは明らか。体制を抜本的に見直さないと実現できない〟と苦言を呈した。

村岡委員は〝審査会から保険者にチェックするよう指示されても、不正であるとはっきり断定することが難しく、支払わないというのは勇気がいるため、グレーな場合には事後調査として支払っているのが現状。グレーなものに対してどの段階で適切な指導をするのかが問題〟と立場上判断が難しいとして、迅速に対応するための仕組みの構築を求めた。

伊藤委員は〝特定の県においては、地方厚生局が柔道整復師会とともに年に1度、指導監査計画を行っている。情報交換を行い、審査会で問題のあった事例について情報提供している。行っている県もあれば行っていない県もあるので、しっかり指導していただき、尚且つ団体に所属している柔道整復師だけではなく個人請求者も指導しなければ適正化にはつながらない〟と述べ、指導を徹底するよう要望した。

 

施術管理者の要件の強化

三橋委員は〝看護師や介護福祉士など医療従事者の中にも実務経験は3年というものが多くある。やはり3~4年は必要だと思う。できるだけ早く倫理観を持たせたいというのが施術者の願いでもあるので、早急に進めていただきたい。保険適用なのかどうかの鑑別などは、施術所で学ぶことが重要。また、きちんと倫理観が身につき、保険の支給対象なのかどうかを見極める力がつくような3年間のカリキュラムを検討しているので、指導させていただければと思う〟と述べた。

3年という年数については保険者側も賛同した。加えて、幸野委員は〝3年の施術経験があるというだけではなくてその間の施術や請求などに問題がなかったなど、働き方についてもチェックさせていただきたい〟とさらなる条件の追加を提案した。飯山委員は〝継続的な研修をするとしたら何を行うのかははっきりさせてもらいたい〟と具体的な実施体制の検討を求めた。

 

次回検討専門委員会の開催日程は未定となっている。

 

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