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JB日本接骨師会最高顧問 本多清二弁護士にインタビュー!

2014/01/01

―保険者のメリットは柔整のデメリット、柔整のメリットは即ち保険者のデメリットで相関関係にあると思いますが、それらを超える業界の浄化作用について弁護士の立場から意見をお聞かせください。

私はメリット・デメリットという議論は考えていません。それよりも療養費の受領委任という現物給付に近い扱いをされている訳ですが、それは国民医療として、どうなんだろうかと考えると、大変良いことだと思っているんです。貧富の差なく誰でもが同じ治療を受けられるということは非常に良いことです。しかし、それは柔整師にも患者にも良いことだけど、保険者にも良いことなんです。もしこれがなかったら、徒手整復をやられる医師が少なく、整形外科にかかると医療費が柔整師のそれよりも高い。保険者にとっても柔整治療に対し現物給付に近い形で支払うことは決して悪い話ではない。関係的には全部良い話で誰にもデメリットはないんですよ。従って、この現物給付扱いにどういう機能を持たせるかということを考えたら良い訳です。

現物給付ということは、負担は軽く何所へ行って誰に受けても同じ質の医療サービスが受けられる、均一な治療を行なわせるのが現物給付の狙い目です。自由診療の場合はそうはいかないけれども、保険医療というのは枠をはめることで、一定の水準を保つ役目を持っているのです。現物給付に近い療養費の受領委任払いを認めるということは、柔整師の先生方の治療をある程度均質化させるという狙いもある訳です。そういうことでこの制度は患者さんにとっても良いし、勿論柔整師もプライドを持って仕事が出来ます。

そこで我々が考えたことは、浄化するのではなく、施術力の水準を均質化する役割をもっと強化すべきではないかと。保険者さんにとっても患者さんにとってもみんなに良いように、何所に行っても同じ水準の治療を受けられる、その水準に達しない人はこの業界から去っていただく、そういう意味での浄化はありますが、浄化が先にくるのではなく、先ず柔整師の先生方の施術力の均質化を、この『柔道整復師施術療養費請求・受領委任払制度運用改善方策』で達成することで、整復師は素晴らしい職業として社会的に誇れるようになると思っています。

ところで、療養費を請求する側の柔整師さんと、支払う側の保険者さんは殆どコミュニケーションが無いと分って、これは驚きでした。コミュニケーションがないというよりも敵対的なんですね。敵対的だということは大変不幸なことで、何故そういうことになっているのか。これも昭和11年の通達が今日の社会に適応しないまま残っていることが原因であると思われます。実は保険者の担当の方、特に女性が窓口だった場合、柔整師からの問合せ態度が悪く、怖い、二度と口をききたくないという拒否反応を起こしているんです。これを修復するのは大変でした。電話は殆ど断られましたし、改革案の理念を話すよりも先ずコミュニケーションができるような人間関係を作り上げることに随分時間をとられましたが、まだまだ十分とは言えません。

しかしながら、たとえ嫌なことでも問題点を表に出さないと今度の改革はできません。表に出さないと何も解決しません。そして問題点を出すには出し方があります。初めから認めろと言うのでは拒絶反応を起こされますので、予め改革案を出して、この改革をするから、これを認めて欲しいと。支払機構を作って保険者さんの審査に使う労力を少しでもお手伝いしましょうという形で玄関に入っていきました。保険者さんも〝それは良いことですね〟と段々理解を示してくださって大体3つの反応を示されました。1つは〝法律があるからダメです〟。もう1つは、〝関係ない、どっちでもいいですよ〟と、あまり関心を持たない人。あと1つは〝適正に行ってくれるのであれば良いんじゃないですか〟と。3通り意見がありまして、少し勇気をもらいました。

5負傷以外の類似負傷についてグレーゾーンといわれているものを、合理化していく方向で保険者さんと議論しながら保険者さんの知恵を借りてルールを作ればやれるかなと。これは私が机で考えてもダメなんで、試案は、当事者と現場で議論しながら、一緒に作らなければダメなんですね。その時に何故5負傷以外はいけないんですかと聞くと、不正請求・過剰請求に結びつくからという言い方で、5負傷以外を施術することがいけないのではなく、5負傷以外を認めると過剰請求や不正請求、或いは濃厚請求が増えると思っているという風に問題点が分かってきました。

ルール化するにあたって徒手整復というのは、慰安マッサージと似ているというか区分がつきにくい。専門家の方達には区分があるんでしょうけど、その区分をどうつければいいのかというのは私達素人には分からない。これは柔整師さんに聞いたほうがいいということで、柔道整復師の先生達と「捻挫とは何か」「挫傷とは何か」について勉強会を開いてディスカッションしました。一方では保険者と話し、片方では柔整師さんの実際の治療について話し合いました。それで今提案していることは、例えば膝に変形があって、その変形がある症状を出現させた場合、変形を治さずに徒手整復で症状を緩和させることが可能で、痛みや機能障害に治療を施すというならば、慰安行為とはっきり区別ができる訳です。

また、柔整師の先生は「亜急性」という言葉をよく使われますが、亜急性期、慢性期というように時間の経過でみた場合は分かりやすいけれども、「期」を外して亜急性というのは、実態が掴めない。言葉からある実態やイメージが沸かないというのはダメなんですね。言葉を使ってある程度実態が分かるから共感したり、反論したりできるのです。彼らが言うところの亜急性をよく聞いてみると繰り返し同じ動作をしているとそこに何らかの器質の変化が出てそれが機能障害を出現させたり痛みを出現させる。そういうところを押さえていくと、カルテの書き方が変わってくるんです。こういう動作を繰り返してきたことによって、何時頃からこういう症状が出現したと。こういうことでこの試案は作られています。

明らかな新鮮な外傷の場合は除いて、それ以外の負傷を我々は類似負傷と仮に呼んで、類似負傷の意味は、関節や骨に変形があって、この変形から出てきた運動機能の障害や痛み、或いは反復継続で起きてくる運動器の障害や痛み等、こういうものについてだけ認めてほしいと。何所に変形があるということを書かなければいけませんからチェックしやすい。そういう人は診断、キチンとした所見ができて、しっかり治療も行っているということで施術力は向上すると思います。

これまでずっと保険者から疑われてきたことをある程度払拭させて、一個一個積み上げていく。こういう議論を交わしている内に大変な問題にぶつかりました。今我々は超高齢化社会といっていますが、その言葉には高齢労働者社会と所謂高齢社会の2つあって、実際は労働力が高齢化している社会で、昔では考えられませんが70歳以上でも働いている人が多い。結局、そういう人達が働くことはやはり慢性的な症状を持つことになります。転んだりする以外にも運動器系に限った慢性的な疾病や負傷に対して、この国は本格的な治療体系を作っていません。

その解決の一つの方策として柔整師を活用するということが大いにあって良いのではないかと。そういう慢性的な疾患をかかえている人というのはほとんど治りませんし、治すことが出来ません。そういう方々が普通の生活を営むのに痛みや機能障害の緩和治療を行うという、その業務に柔整師の活用は有効です。この費用を療養費受領委任払いの中で一部使わしてもらえないかということも提案しているのです。とにかく高齢労働者というのは安く雇用されていますから、その方達が自費で治療を受けるというのは大変なことです。毎日痛みがあって、治療を続けることで生活出来ている訳で、やはりこれは公的な資金である程度面倒をみてあげるのが良いし、放っておいたらもっと悪くなってしまう。つまり悪化防止なんですね。そのような慢性的な外傷について、さしあたって新しい基準が無いものだから、2部位だけを料金化し、生涯治療を認めていこうと。何部位やっても2部位であると。部位変更なんかしない。分かりやすいということはとても大事なことで、何故かというと患者さんが施術を受ける前から、治療はこういう風にやってもらえると事前に分かることが一番いいんです。

しかも審査のほうも非常に分りやすいから、審査に負担がかからない。柔整の先生方には慰安行為ではないことを自覚してもらいたい。3か月以上かかって治療をする場合、治療計画書を作成して提出頂く。それを見ながら、この治療は本当に効果があるのかないのか。効果のない治療を繰り返しても意味がないため効果がなければ、他所にかかる。そういう意味で治療効果を検証していくことも可能です。保険者にそういう話をしましたら、よく分ると言って頂きました。

 

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