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(公社)日本柔道整復師会第46回北海道学術大会開催

2017/07/24

平成29年7月2日(日)、札幌コンベンションセンターにおいて『公益社団法人日本柔道整復師会第46回北海道学術大会』が開催され、道内から多数の柔道整復師および柔道整復師養成校の学生が参加した。

第46回北海道学術大会札幌大会

萩原正和会長大会長である(公社)北海道柔道整復師会・萩原正和会長は〝全道各地より会員、研修員、会附属の北海道柔道整復専門学校の学生をはじめ、他の養成校の学生の参加のもと、学術大会を開催できたことに感謝申し上げる〟と挨拶するとともに〝今回、一般公開講座として札幌医科大学医学部細胞生理学講座の教授である當瀬規嗣氏をお迎えし、「新しい運動生理学―スポーツケアを中心に―」と題してご講演いただく。
我々柔道整復師が扱う運動器の怪我への対応や考え方、組織細胞がどのように活動しているのか、スポーツの現場で活躍する人だけでなく、すべての柔道整復師にとって大変重要な情報である〟と述べた。〝会員発表は論文発表が13題、実技発表が10症例、(公社)日本柔道整復師会保険部による発表、学生スライド発表が4題、また協同組合指定業者による講演が3題と盛りだくさん企画している。本日学会に参加されているすべての方々にとって実り多い一日としていただきたい〟と、当日のプログラムを紹介した。

工藤鉄男会長学術大会長である(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は、業界の課題を解決していくために様々な制度改革に取り組んでいるとして〝制度改革の柱となるのが、管理柔道整復師の要件強化だ〟と述べた。
〝これは地域住民から信頼される、道徳観を持った柔道整復師を養成することを目的としており、厚生労働省や学校協会とともに学生に不利にならない方法を考えている。学校教育改革では萩原正和会長にも尽力いただいた。また電子請求化を目指して、日本柔道整復師会は業界のリーダーとして厚生労働省とともに様々な研究を行なっている。

日本で生まれた柔道整復術はWHOにも認められている伝統技術で、医療環境が整備されていない国や地域に対する事業として、昨年9月よりモンゴル国の国立健康科学大学において柔道整復師を養成するカリキュラムが実施されている。北海道学術大会は今回で46回を数えるが、地域の医療・福祉と国民の健康増進のために同様の学会を全国11ブロックで行っている。研究成果を発表し、共有することでさらに地域に貢献できる。
近い将来、柔道整復師を地域住民に最も必要とされる職業としていきたい。そのためにも今日聴講したものを自身の経験に活かしていただきたい〟と述べ、業界の明るい未来を築いていくために協力を呼びかけた。

 

特別講演
「新しい運動生理学 ―スポーツケアを中心に―」

札幌医科大学医学部細胞生理学講座 教授 當瀬規嗣 氏

當瀬規嗣氏當瀬氏は〝私は北海道柔道整復専門学校の講師を20数年勤めていたので、今日は私の講義を受けたことがある方が多いと思う。しかし皆さんが講義を受けた頃とは状況が変わり、話が変わってしまった。今回はその点についてお話していきたい〟として講演を開始した。

〝まず乳酸について話していきたい。乳酸は筋肉に溜まると疲れたり痛みが生じたりすると教科書にも載っていたが、これが全くの嘘だった。運動を始めるとまず速筋から使われる。FG線維を使うとその中にたまっているグリコーゲンを分解してグルコースを消費し、乳酸がたくさんできる。それが細胞の外にどんどん出てきて血液中を巡っていく。つまりFG線維を使うと、血中に乳酸が増えるという現象が起きる。そのために乳酸が増えると疲れるのだと信じられていたが、それはたまたま起きる現象で、本質とは何も関係がなかった。
それどころか、たくさん増えた乳酸はSO線維の方に運ばれて、ピルビン酸になって酸素を使って大量にATPを取り出してエネルギー源にする。つまり、乳酸が増えないと持久力が出ないということになる。これが20数年前に分かった。
さらに驚くことに、乳酸が筋肉の外側に増えると、筋肉が収縮する性能がアップするという実験結果が出た〟とし、乳酸は溜まっても悪いことは何一つない、むしろ人間の身体には大切なものだとした。

筋肉痛については〝運動中に生じる急性筋肉痛、運動後に生じる遅発性筋肉痛、筋線維断裂(肉離れ)がある。特に遅発性筋肉痛は、運動後数時間は生じず、24時間後位から起こり72時間後がピークとなる。一方で乳酸は、運動後数十分で消え始め、60分後には完全に消失するということが分かっている。
つまり筋肉痛の原因として、乳酸は全く関係がないということになる。
筋肉痛のメカニズムは、運動することにより目には見えない微細な損傷が起こる。
損傷を治すための反応として炎症が起こり、炎症が進行し治り始めると発痛物質がゆっくり増えるので次第に痛みが出る。血流が悪いと炎症で生じている発痛物質が流れ出にくくなり残ってしまうため、痛みが生じると考えられている〟と解説。
さらに、筋肉痛を治すためには〝筋肉をストレッチなどで伸ばし、緊張をほぐして血流を良くすること。有効な方法としては、静的ストレッチで筋肉を伸ばした状態を20~30秒保持する。一度ストレッチをすると筋肉が緩んだ状態が45分程度持続されることがわかっている。
遅発性筋肉痛の場合も冷やしても効果はなく、むしろ温めると抑制されるとわかった。運動後のケアとしては、静的ストレッチに加えて入浴で温めることが最も効果的だ〟とした。

最後に、〝これからのスポーツにおける体調管理として、トレーニング後の疲労をできるだけ速やかに取り除く方法を考えなければならない。スポーツの現場で指導する際には、積極的に静的ストレッチを行い温めて、睡眠を十分にとることが大切だと指導していただきたい〟と結んだ。

 

 
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