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(公社)日本柔道整復師会第45回九州学術大会長崎大会開催!

トピック

工藤鉄男氏

平成28年7月30日、(公社)日本柔道整復師会第45回九州学術大会長崎大会開会式がホテルニュー長崎鳳凰閣で開催され、学術大会会長である(公社)日本柔道整復師会会長・工藤鉄男氏が〝いよいよ2018年度には医療の診療報酬と介護保険の診療報酬が同時改定されます。柔道整復師が在宅医療の中で医療の中の介護として行うのか、介護の中の医療の部分として行うのか、今の制度の中では難しい状況になってくることが予想されます。そのためにも学校教育の中でカリキュラムの変更を行って、必要とされる教育と技術を学んでいることを証明していく。また信頼が失われている保険者に制度改革について理解をして頂き、18年度に向けた対策をしていく。2019年のワールドカップではラグビー協会のご配慮によって医療分野において我々がサポートすることが決定しており、2020年度の東京オリンピックに対しても私が日本柔道整復師会を代表して政府顧問として委員会に出ています。明るい未来に向かって制度改革していくことをお約束申し上げます〟等、挨拶。

太田恵一郎氏

主管県である(公社)長崎県柔道整復師会会長・太田恵一郎氏は〝第45回九州学術大会長崎大会を開催するにあたり一言歓迎とお礼のご挨拶を述べさせて頂きます。地震で被災された熊本県の会員の方には未だ復興途中であるにも関わらず参加頂き有難うございます。一日も早い復興をご祈念申し上げます。九州学術大会は「九州は一つ」という合言葉で毎年各県持ち回りで開催しています。今年の特別講演は、済生会長崎病院・衛藤正雄先生にラグビー協会会長としての立場から2019年ワールドカップのキャンプ地長崎誘致への取り組みと整形外科肩関節の権威という立場から日常よくみかける成人の肩関節疾患の鑑別と診断という2編の演題でご講演賜りますので是非ご期待して頂きたい〟等、歓迎の辞を述べた。

来賓挨拶で長崎県知事・中村法道氏代行、副知事・浜本磨毅穂氏が〝日本柔道整復師会の皆様は先の熊本地震発生直後から現地で救護活動やエコノミー症候群解消ストレッチのご指導など継続的なご支援を頂き深く感謝申し上げます。医療を取り巻く環境は大きな変革の時期を迎え少子高齢化が進行する中、団塊世代が75歳以上になる2025年を見据え効率的且つ質の高いQOLの改善及び地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。地域包括ケアシステムを構築する上で柔道整復師の皆様の役割は今後益々重要になると考えています。健康で長生きすることは人々全ての願いです。本年10月に開催される『第29回ねんりんピック長崎2016』において各競技のサポート役として大会の運営にご支援ご協力を賜りますことに厚く御礼申し上げます〟等、代読。続いて長崎市長・田上富久氏代理、副市長・三藤義文氏、衆議院議員・加藤寛治氏、同・北村誠吾氏、参議院議員・金子原二郎氏、同・古賀友一郎氏らが来賓挨拶を行った。

引き続き、長崎女子高等学校の皆さんによる勇壮な蛇踊りのアトラクションが行われ、前夜祭が開かれた。(一社)長崎県医師会会長・蒔本恭氏が〝明日の学会が素晴らしいものとなることを祈念申し上げます。日本柔道整復師会の益々の発展を祈念します〟と高らかに開演宣言と乾杯の発声を行った。

蛇踊り

7月31日(日)、午前8時30分から学会が開始され(公社)長崎県柔道整復師会学術部長・今道昭哉氏が開会の辞を述べた。

開会の辞
櫻井康司氏

(一社)日本柔道整復接骨医学会・学校法人花田学園理事長・櫻井康司氏が〝長崎県は皆さんご承知にように大変素晴らしい長與專齋さんという代々漢方医の生まれの方が、明治7年文部省医務局長に就任、東京医学校(現在の東京大学医学部)の校長を兼務。同年、東京司薬場(国立医薬品食品衛生研究所の前身)を創設され、また3男の方は東京大学の総長も務められた方で、石黒忠悳、佐野常民らと大日本私立衛生会(のち日本衛生会、現日本公衆衛生協会)を興し会頭に就任するなど、医学界及び衛生行政に貢献されました。やはり長崎という文化が生んだ方だと思います。接骨医学会は柔道整復の学術団体として登録をされた唯一の学会であり、会での様々な活動が更に柔道整復の地位を揺るぎないものにしていくと思います。今日出席の皆さんを含め、接骨医学会に是非参加頂いて、若い人たちがどんな思いで勉強に取り組んでいるか等知り合う交流の場にして頂きたい。多くの方が学会にご参加頂くようお願い申し上げます。頑張って良い学会にしましょう〟等、来賓祝辞を述べた。

特別講演Ⅰ

衛藤正雄氏

済生会長崎病院院長・衛藤正雄氏が『2019年ラグビーワールドカップのキャンプ地長崎誘致への取り組み』と『日常よくみかける成人の肩関節疾患の鑑別と治療』の2題の講演を行った。

『2019年ラグビーワールドカップのキャンプ地長崎誘致への取り組み』

2019年にRWCが日本各地12会場で開催される事が2015年3月に決定し、長崎県も試合会場の誘致に向けて努力をしたが、残念ながら試合会場には選出されなかった。しかし、「ラグビーは倒されても、すぐに立ちあがって走らなければならない!」の精神のもと、ラグビー協会は直ぐにキャンプ地の長崎誘致に向けて始動。2015年7月、長崎ゆかりのスコットランド出身トーマスグラバーの関連施設が世界文化遺産に登録され、また長崎市がスコットランド「アバティーン市」と市民友好都市締結を行っていることもあり、スコットランドにターゲットを絞って2015年イングランド開催のRWCに合わせて県協会3名、市職員1名、エージェント2名を現地に派遣。12月17日に長崎市がスコットランドの事前キャンプ地に正式決定の報告があった。

今後は、公認キャンプ地の誘致に取り組む予定である。RWC開催までの交流を深めるために、本年6月に日本遠征に来たスコットランド代表チームの選手、コーチを長崎に招きラグビー教室を開催。また、8月には長崎県中学選抜のスコットランド遠征を企画している。共賛して頂ける方には是非募金をお願いしたい。柔道整復師会の皆様には2019年のワールドカップにご協力いただけるということで大変感謝しています。

『日常よくみられる成人の肩関節疾患の鑑別と治療』

肩というのは、腕と胴体が連なるところです。いろんな言い方があります。上腕骨、肩甲骨、鎖骨からなる広い意味の肩関節、肩が脱臼したという場合にはこの肩甲上腕関節の上腕骨が肩甲骨に対して外れることになります。肩鎖関節も広い意味での肩関節の解剖学的な関節になります。それ以外にも肩は人の体の中で一番大きく動く関節であり第二肩関節といわれるほどに腱板がステーションのところで炎症が起きたり断裂したりします。

アウターマッスルは三角筋、大胸筋、広背筋、肩甲骨、上腕骨を取り巻く大きな筋肉です。インナーマッスルは腱板で、前方から肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋。特にスポーツ等においてはこのインナーマッスルとアウターマッスルに分けていることが多い。最近は野球などでも肩が悪いといっても股関節や膝といったところまで全体の治療をしていると言われていて当然体幹や股関節といったところも連動していることになります。肩甲骨の受け皿に対して上腕骨頭が非常に大きいので解剖学的に非常に不安定な構造になっており、周りの靭帯、関節、神経、軟骨等で安定性を保つことになる。肩関節の疾患では肩を動かす、手を挙げるなど直接動かすことで痛みが生じることが多い。手が挙がらない、拘縮があるかないかが大きな鑑別になります。中には必ず精神的な要素が入っている方もいます。首の疾患で手が挙げられない場合があり、必ず肘を曲げ屈筋力を調べる。正常で力強ければ、肩そのものの筋力低下、肘を曲げることは出来るが力が弱い場合には、首の5番目の神経、Cの5が悪い。肘がしっかり曲がって力があると肩の疾患を考える。肩をいくら治療しても首が悪ければ良くならないので首と肩の鑑別を行うことが大切になる。(中略)

腱板断裂は、簡単にいうと腱が切れる疾患。完全に切れたものを完全断裂、部分断裂もしくは不全断裂という言い方をする。腱板断裂の原因は、若い方は主に外傷、中年以降高齢になればなる程、元々の変性があって切れる。腱が切れていても手が挙がる方はいる。腱板断裂の一番良い検査はMRI、次はエコーで、MRIは確実に切れていることが分かる。基本的に腱は繋がらない、元に戻らない。痛みをとるような方法をとりながらリハビリを行っていく。高齢になればなるほど保存療法が多くなる。関節鏡での手術の症例や最終兵器としてリバース型の人工関節が出来たこと等も紹介した。

三橋裕之氏

(公社)日本柔道整復師会保険部長・三橋裕之氏が登壇され、日整保険部の現在の取組み状況について〝現在、日本柔道整復師会本部の動きは少し変わってきており、以前は2・3か月に1回位厚生労働省に日整・保険部長が行っていましたが、現在は厚労省調査企画室長が日整に訪れるのが通常であり、私が保険部長になってから、日整において勉強会・講習をさせて頂いています。

今、行政関係は厚労省だけではなく文科省、金融庁、国交省、経済産業省など足場が拡がっており、一昨年10月から厚労省と協議を行い、柔整療養費の内容、制度改革、協定の見直しについて現在進めているところで本年6月から正式に社会保障審議会専門検討委員会が開催され協議が進行しているところです。療養費の適正化をはかるべく全国の公的審査会、柔整審査会の審査基準の厳格化、権限の強化を求めて話をしています。

もう1点は施術者の要件の強化で、現在学校を卒業して資格をとると直ぐに開業できますが、最低3年間実務経験を積んでから開業をするという形にもっていきたい。勤務柔整師として3年間勉強をして登録して頂いて、開業の際にはその証明書を厚労省に出すという内容で保険者も全て合意の上で進めています。現在、インターネットでの広告が非常に問題とされており、医療機関と同じようなガイドラインを作成し、おそらく今年の9月か10月には医政局医事課のほうから文書が出されるはずです。検討専門委員会は8月30日に開かれ、これが最終になり、ここで決定されたことが10月に通知、来年の4月実施に向けて大きく制度改革、協定の見直しに繋がるものと思います。

今回、「柔道整復師の介護保険について」介護対策課の藤田先生からお話がありますが、中でも「地域包括ケア」、参入をしていないと来年4月からの実施には間に合わない。我々日整が目指しているのは、サテライト方式で、例えば接骨院の中で昼休みなどを使って機能訓練を行う。地域包括ケアが目指す在宅医療に医師会の協力を頂きながら進めて頂きたいというのが日整の方向性です。既に宮城県では県の地域包括連絡協議会に入っており、山形県、愛知県名古屋市が既に参入しています。様々な成功例が挙がっておりますので、日整保険部のほうに依頼頂ければ成功例をお配りしたい。今日の介護保険研修よろしくお願いします〟等、挨拶し伝えた。

特別講演Ⅱ

『2016柔道整復師と介護保険について―柔道整復師の地域包括ケアシステムへの貢献―』

(公社)日本柔道整復師会保険部介護対策課・藤田正一氏

藤田正一氏

地域包括ケアということで、世の中では医療も介護もみんな協力してやっていこうという話になっています。柔道整復師はここ何十年ずっと発展してきて今いろんな問題があって大変な時期になってきていますが、何か新しいものを取り入れていく感覚が必要ではないかと思います。地域包括ケアシステムの真中には在宅があり、基本は在宅です。中でも介護予防は一番重要課題です。このままいくと医療も介護も破綻するのではないかと言われています。病気を早期に見つけて早期に治して頂かないと大きなお金がかかってしまう。そういう意味で予防は凄く大切です。

看護師さん理学療法士さんは殆ど病院に勤めています。地域で介護予防を出来る人があまり居ない。一番活用できるのは私は柔道整復師ではないかと思います。また柔道整復師が日常やっていることがほぼ介護予防なんです。皆さんは転んで怪我したり転んで捻挫・打撲したり、腰痛の人を治している訳です。国は、生活行為を改善してほしいと。ADLは、「日常生活動作」と訳され、日常生活を営む上で、普通に行なっている行為、食事や排泄、整容、移動、入浴等の基本的な行動です。また、IADLは「手段的日常生活動作」と訳され、日常生活を送る上で必要な動作のうち、ADLより複雑で高次な動作を指し、例えば買い物や洗濯、掃除等の家事全般、金銭管理や服薬管理、外出して乗り物に乗ること等で、最近は、趣味のための活動も含むと考えられるようになってきています。高齢者の生活自立度を評価する際、ADLだけではなく、IADLに着眼して介護予防をすることが重要視されています。

来年の4月から全ての市町村で総合事業が始まりますが、既に始まっている市町村もあります。サービスを使うためにこれからは基本チェックリストだけで判断できるという、簡単な方法を使うようになりました。介護認定審査会を通さなくてもいいというもので、画期的なことです。多様なサービスがあり一番の理想は、通所型のAに入る、又はCに参入できるように交渉して頂きたい。Bに対し、地域でそういう活動をしている人たちが居れば柔道整復師として運動指導等健康予防の話をアドバイスしていくことができます。最近大きな病院には地域連携室があり、入院患者さんが退院後に何所に行くかを考えてくれます。こういう所とのお付き合いも大切でいろんな所に顔を出していく姿勢が大切です。費用対効果を考えると、安くて済むならば安いほうが良い訳で、そういう意味では柔道整復師は料金的に抑えることが出来ます。介護保険制度を理解して、その中の地域支援事業について理解して頂きたい。これから行われる総合事業も理解して頂きたい。その中で柔道整復師は何ができるのか、市町村と交渉することを頭に入れて考えて頂きたい。介護予防ではIADLが必要だということを頭に入れて頂きたい。基本的に皆さんは介護予防に貢献しているのです。それを公的なものに変えていくことが大切だということです。私たち柔道整復師は介護保険法では機能訓練指導員と言われており、整骨院という場所もある。是非その中で介護予防を行うことを提案したい。市町村、また国に対して貢献できる訳です。地域包括ケアの中で柔道整復師として地域で活動して、これから益々盛り上がっていくように新しい分野にも参入して頂ければと思います。

他には、会員による8題の研究発表が行われた。(以下、演題名と氏名)

  1. 「足関節可動域制限に対する距骨押圧手技法」福岡県・木村剛会員
  2. 「シンスプリントに対するストレッチポールを使用した運動療法
    ~臨床におけるQ-angle及びNRS値の比較検証~」
    福岡県・舛尾勝也会員
  3. 「Roland骨折の非観血的療法による一症例」大分県・河合竜之介会員
  4. 「難治性鎖骨骨折のoutcome」大分県・安部良太郎会員
  5. 「撓骨遠位端骨折における臨床経験の一考察」佐賀県・古澤均会員
  6. 「遠位脛腓関節損傷を伴った左腓骨下端部骨折の一症例」佐賀県・寺田亘佑会員
  7. 「高齢者の膝関節痛に対する疼痛抑制と大腿四頭筋の筋力強化アプローチ」熊本県・村上秀明会員
  8. 「腰部症状を有す患者にロベットブラザーの法則を用いた効果
    ~従来の施術との比較~」
    長崎県・本田陽祐会員

また3階のポスター会場では、7題のポスター発表が行われ、医療機器展示会場ともに盛況を呈した。

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