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第33回日本東方医学会開催!

2016/01/16
会頭講演「プラセンタ療法総論」

日本胎盤臨床医学会理事長、吉祥寺中医クリニック院長・長瀬眞彦氏

長瀬氏会頭講演で長瀬氏は〝プラセンタ療法というのは古い言葉でいえば中西医結合、新しい言葉でいえば統合医学の形です。注射製剤ですが、完全に日本オリジナルのものです。日本が世界に誇るべき製剤の一つではないかと思っています。副作用は西洋医学的治療と比べて頻度は少ない。プラセンタは基本的には、皮下注射だけなので簡単であり、またプラセンタはツボに注射することをメインに行っています。課題は、代替医療、漢方もそうですが科学的な作用機序の解明がなされていない。

プラセンタ療法の医学会を作り約400名の会員がいます。会員は正しい知識を持っていますが、正確な知識をもって扱える医療従事者が不足しています。釈迦に説法で申し訳ないが、知らない先生もいらっしゃるので、お話させて頂きます。プラセンタ療法は胎盤を治療に使用する治療法です。注射剤とサプリメント・化粧品の2種類があります。我々基本として使っているのは注射剤です。注射剤はヒトのもので、ヒト以外ありません。サプリメント化粧品はブタかウマです。以前はウシのものも使われていたが、狂牛病問題で使われなくなりました。因みに動物は産後胎盤を食べます。ライオンとかヒョウなどの肉食動物だけではなく、ウマやヒツジなどの草食動物も食べます。どうして動物がこういうことをするかというと、体に良いということを本能的に分っているのではないか。産後のひだちが良いことが本能的に分っているのではないかと言われています。

胎盤が面白い臓器であると思うのは、出産すると捨てられてしまうのです。他の臓器ではあり得ない。縁の下の力持ち的な存在です。妊娠中に作られる臨時の臓器ということで、プラセンタ、英語で胎盤のことですが元々はラテン語でお菓子を意味する言葉です。ヒトの胎盤の形状が円盤状で平たいホットケーキに似ていることからこう呼ばれるようになったと言われています。ご承知のように胎児の発育を支えることで、胎盤の主な機能は、母体側と胎児の代謝物交換、ガス交換、胎児側への免疫下的支援、ホルモン産生を行って妊娠を維持するとなっています。面白いことは、お母さんと赤ちゃんの血液型が違ってもOKです。拒絶反応はおこりません。それには胎盤が関与し、免疫関与を一時的につかさどる臓器であるということが分っています。

実は胎盤は長年動物性生薬として有名な「紫河車」という生薬名で東洋医学の世界で使われてきています。主として肺結核、神経衰弱、貧血、気管支喘息、老人の慢性気管支炎などに使用するが長期間服用しなければ効果は表れないとされています。胎盤がどういう過程で注射製剤として50年以上にわたって日本で使用され、保険適用もあるのにあまり知られていません。プラセンタの歴史は、1930年代に旧ソ連・オデッサ医科大学教授のフィラートフ博士が始めた。その後、この療法が多様な疾患に効果があることが確認され、日本でもこの影響を受け1950年頃、胎盤埋没療法を施行する医師が現れた。その後、胎盤埋没療法よりも簡単で安全にできる方法が1950年代中頃研究され「メルスモン®」「ラエンネック®」という胎盤抽出エキスからなる注射液が日本で開発されました。「メルスモン®」は更年期症候群及び乳汁分泌不全に、「ラエンネック®」は肝機能障害に、現在でも保険適用がある。これら2つの注射剤は約60年以上にわたる臨床経験上、上記疾患以外に、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症等のアレルギー疾患、膠原病、精神神経疾患、整形外科疾患、また癌のQOL改善などに対して幅広い効果が証明されています。

遠藤周作さんが書かれた、私が見つけた名治療家32に鉄砲洲診療所の埋没療法、木下繁太郎先生、今私が院長をしている吉祥寺クリニックの張瓏英先生の話も出ています。最初は私も胎盤埋没療法について懐疑的でしたが、臨床家として診ていく内に、やっている人が凄くよくなっていくので、やはり何かあるんじゃないかと思って始めたところ、はまっていったみたいな感じはあります〟など総論的に説明され、幾つかの【症例】28歳女性・アトピー性皮膚炎、41歳男性・気管支喘息、72歳男性・脳腫瘍、76歳女性・腰部脊柱管狭窄症等を紹介し、〝こういう事例報告ばかりでは、やった・効いた・治っただけではないのかと言われることが非常に多い〟として、ラインネックを使用して更年期障害・疲労・神経系疾患のリスクファクターの軽減に対しての韓国の論文や日本の論文を報告し、ツボ注射についても詳しく解説した。

また安全性について、原料胎盤の安全性は、国内医療機関において、HBV,HCV,HIV陰性の健康成人の胎盤。vCID感染を防ぐため、渡航歴の問診。トレーサビリティーの確立と実証。受入時のウイルス核酸増幅検査(NAT)の実施。また、製造上の安全性については、製造工程において、101℃以上、1ha以上の加水分解及び121℃、1ha並びに121℃、30min、高圧蒸気滅菌を施行。ホルモン、蛋白の否定。ウイルス、細菌の否定が実施されている。しかもプラセンタ注射をした人は、2006年から献血をしてはいけないと日赤が決めています。玉石混交なところもあってまだ解明されていない点も多い。学会で臨床試験を開始しているので、今後いろんなサプリメントが我々の臨床試験に参加してくることになる。放射線障害にも有効ということが分っている。最後に〝東方医学会は良い意味で何でもあり、代替医療を含めて、上手くミックスしてより良い医療を提供できるのではないか〟と結んだ。司会は、(一財)東方医療振興財団理事長・帝京平成大学ヒューマンケア学部教授・上馬場和夫氏が務めた。

 

シンポジウム「教育臨床カンファレンス」

「統合医療の実例」鈴鹿医療科学大学鍼灸学部鍼灸学科教授・佐々木和郎氏、「多様なアプローチを尊重する土壌を創る」東邦大学医療センター大森病院東洋医学科講師・田中耕一郎氏、「3D腹診の病態解析への臨床運用(経絡が一つの架け橋)」東京医科歯科大学老年病内科臨床・准教授、漢方医療頼クリニック院長・頼建守氏ら3名のスピーカーを迎えシンポジウムが行われた。講演後、それぞれの立場から治療への助言などが出され、非常に有意義な検討が行われた。司会は証クリニック吉祥寺院長・入江祥史氏が務めた。

シンポジウム

一般口演 「日本と海外における管鍼法の違い」

鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸学科・鈴木聡

海外の管鍼法では抜管後に押手で鍼体を触れない理由として、WHOの鍼灸安全ガイドラインに鍼体を直接押手で触れないように記載されている。中国の教科書で管鍼法の説明に抜管後押手で鍼体を保持すると記載されていないことなどが考えられる。また、管鍼法を用いる理由として、刺鍼痛を少なくするにはできるだけ細い鍼を刺す必要があるが、撚鍼法では刺鍼が難しいことが考えられる。日本では管鍼法において未だ鍼体を直接押手で触れることが多いが、衛生安全上からもクリーンニードルテクニックの教育と普及が望まれる。
<JSPS科研費(24790523)助成研究>

会場意見:〝安全性と押手の大切さ、どちらかを重視するかで結論はまだ出ていない〟〝エビデンスに基づいて学術的な検証をしてもらいたい〟。

 

一般口演「舌診と白血球分画の関連」

「舌診と白血球分画の関連」永野医院・永野剛造・越沢譲、新潟大学・渡邊真弓

44例(全体の93.6%)で虚証を示す結果が得られ、「気」の異常が病気の原因であることが示された。寒熱については疾患で特徴がみられ、アトピー、多発脱毛は虚熱が、全頭脱毛、リウマチ、がんは虚寒が中心であった。全頭脱毛(虚寒)と多発脱毛(虚熱)の違いは、白血球分画にも表れていて興味深い。顆粒球増多を示した全頭脱毛、ガンは交感神経緊張からくる強い冷え(気虚、虚寒)を示した。両者の併用で「気」と「自律神経」の両面からのより正確な診断が得られ、有効な治療法の選択が可能になった。

会場意見:〝気のことを教育でしっかり教えていない現状がある〟。

 

「動作時痛に対する局所への刺鍼が痛みに及ぼす影響」

常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科
村上高康・福世泰史・藤田格・関真亮・中澤寛元

動作時痛は最圧痛点への単刺術で有意に痛み度が減少したため、その特性はスポーツ分野に生かされるものと考えた。

会場意見:〝競技中に発生した動作時痛に効果的で今後に期待がもてる〟。

他には「刺絡により下肢痛が軽減した閉塞性動脈硬化症の2例-動脈だけでなく静脈の循環も大切-」帝京平成大学ヒューマンケア学部・上馬場和夫・小河原滋子、「鍼灸治療院内での施灸による微小粒子物質について」常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科・福世泰史・村上高康・有馬義貴・藤田格・沢崎健太・中澤寛元・関真亮、「Gate Control 説による漢方的除痛機序の一考察」長岡市小国診療所・福本一朗ら、11題(敬称略)の発表が行われた。座長は、筑波技術大学保健科学部教授・形井秀一氏、鈴鹿医療科学大学鍼灸学部鍼灸学科教授・佐々木和郎氏らが務めた。

 

 
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