menu

『日本転倒予防学会第1回学術集会』開催

2014/10/16
高齢者介護施設における転倒・転落事故の特徴と予防への示唆

河野禎之
(筑波大学大学院人間系障害科学域特任助教)

河野禎之氏介護施設における転倒予防は早急に対処すべき課題であるが、常に困難が伴う。入居する高齢者が転倒の高リスク群であるという個人要因と、施設の職員数などの人的・物理的問題を含む環境要因が主として考えられる。施設での転倒予防は、入居者の安全とQOLの両立の考慮が必要となる。


認知症高齢者の転倒予防 ―看護師の立場から考えた急性期の病棟におけるケアの視点―

梅原里実
(独立行政法人地域医療機能推進機構JCHO本部研修センター専任教員)

梅原里実氏加齢による注意機能、記憶機能、睡眠維持機能等の低下、筋肉量や運動機能の低下等に加え、認知症になると転倒リスクはより高まる。認知症高齢者にとって治療のために環境が変化することは混乱の要因となる。転倒は特徴を捉え、正しいアセスメントを行なうことである程度予防できる。


人間工学から見た転倒リスク

山本創太
(芝浦工業大学工学部機械機能工学科准教授)

山本創太氏工学的観点から転倒の要因を考えると、加齢による人体特性の変化に起因するものと環境に起因するものに大別できる。加齢による人体特性の変化は本質的には不可避である。環境に起因する要因は対象者の人体特性に応じ危険度が変化する場合があり、施設や場所に応じて検討する必要がある。


紛争事例から見た転倒リスク

望月浩一郎
(虎ノ門協同法律事務所弁護士)

望月浩一郎氏転倒事故をなくすことができないが、施設や介護者の責任となる紛争をなくすことはできる。リスクマネジメントとして、①転倒自体を防止する、②転倒しても大きな怪我にならないよう配慮する、③入居者・患者とその家族との間で転倒は回避できないという共通認識を持つ、という3点がある。


 

シンポジウム

討論では〝施設の移動や病院内での転科等の際に、転倒予防策をどう共有していくか〟という問題については〝病院内で転倒したことがあれば、転倒の状況や転倒リスクについて看護サマリーに詳しく書くようにしている〟や〝認知症患者の場合、その人の特徴的な考え方や人生史を踏まえた情報も書いて、他の職員がアセスメントできるようにすることが大切〟との意見が挙げられた。

さらに、転倒時の被害を最小限に止めるための策として〝事故を未然に防ぐことが一番だが、事故はいつか必ず起こる。そこには理由があり、各段階で対策をきちんと取っておく。また、転んだ時のダメージを抑える安全な転び方など示せたらと思う〟との意見が上がったが、若いうちであれば身につけられる技術も身体能力が衰えると難しくなる。〝加齢に伴い、サルコペニアやフレイルの問題が加わると転倒を完全に防ぐことが難しくなる。しかし若いうちであれば予防できる可能性は非常に高い〟という意見にみられるように、早い段階から転倒予防を行なうことが効果的であるようだ。座長の松下氏は〝高齢者が骨折をしたりするとなかなか治らず、寝たきり状態になり認知症が悪化するというケースも多い。転倒を予防し、それでも転倒して怪我をしてしまったらすぐに治すという連携が必要〟と結んだ。

この他、パネルディスカッション2題・ワークショップ1題・ランチョンセミナー2題・一般口演28題・ポスター発表21題が行われ、盛会のうちに終了した。

 

前のページ 次のページ
大会勉強会情報

施術の腕を磨こう!
大会・勉強会情報

※大会・勉強会情報を掲載したい方はこちら

編集部からのお知らせ

メニュー