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運動器超音波塾【第3回:肩関節の観察法】

2015/04/01

株式会社エス・エス・ビー
超音波営業部マネージャー
柳澤 昭一

近年、デジタル技術により画像の分解能が飛躍的に向上した超音波は、表在用の高周波プローブの登場により、運動器領域で十分使える機器となりました。この超音波を使って、柔道整復師分野でどのように活用できるのかを、超音波の基礎からわかりやすくお話してまいります。

 

第三回「母さん お肩をたたきましょう」の巻
―上肢編 肩関節の観察法について―

肩たたき
作詞:西條八十 作曲:中山晋平

母さん お肩を たたきましょう
タントン タントン タントントン

母さん 白髪が ありますね
タントン タントン タントントン

お縁側には 日が いっぱい
タントン タントン タントントン

真赤な 罌粟が 笑ってる
タントン タントン タントントン

母さん そんなに いいきもち
タントン タントン タントントン

童謡に歌われた『肩たたき』も、日本の肩こり人口の多さを表す代表的な例かもしれません。縁側で繕いものをする母親の傍らで、小さい子が肩をたたいている光景が目に浮かびます。最近は、縁側やその先に咲き誇る初夏のケシの花という風景は少なくなっているかもしれませんが、肩こり人口についてはパソコンなどの普及に伴って増えているのではないでしょうか。それと、中高年以上の人が多く悩まされる肩の痛み、いわゆる「五十肩」も、高齢化社会の訪れとともに増加しているのでしょう。いわゆる「五十肩」は、50歳代以降に、肩関節周囲組織の退行性変化を基盤として、明らかな原因なしに発症する、肩関節の痛みと運動障害を認める疾患群と定義されています*1

*1 佐藤毅ほか:骨・関節・靭帯 17(10):1079-1083, 2004

診断技術の普及により腱板断裂,石灰沈着,上腕二頭筋長頭腱炎,腱板疎部損傷,不安定症など痛みや機能障害の直接的な原因が突止められるようになった半面、まだ原因の特定できない症例も多数あります。そのような事で、最近は発症のはっきりしない痛みと拘縮がある肩をfrozen shoulder と呼び,癒着性肩峰下滑液包炎および腱板炎として捉えられてきています。

今回の「運動器の超音波観察法」の話は、「肩関節の観察法」について、考えてみたいと思います。

 

肩関節の観察法 基本肢位は座位

超音波での観察法の場合、最も考慮すべき点の一つとして、観察肢位が挙げられます。被験者はもちろん観察者も楽な肢位での観察が、的確なプローブワークにつながります。
肩関節の場合、仰臥位では後方からのアプローチが出来ない事や、肩甲骨が床面と接触してしまう事により、内外旋運動や外転運動のような、自然な肩の動きができなくなるという理由によって、基本肢位は坐位が良いと考えられます。手のひらを上にして大腿部の上に置き、肘を体側につけてもらいます。

図 肩関節の観察法 肩関節の基本解剖  基本肢位は座位

図 肩関節の観察法 肩関節の基本解剖  基本肢位は座位

 

運動器の超音波観察法は触診の延長であり、触診の答え合わせを解剖学的に行う

第一回でも書きましたが、肩関節を観察する場合に限らず超音波で運動器を見る場合には、必ず触診や徒手検査などの身体所見を取ってから始めます。触診で得られる熱感や圧痛点、硬結や陥凹を触れるといった情報を基に、実際に解剖学的にどうなっているのかを答え合わせしていくということが使い方の基本です。柔道整復師の皆様はその触診のエキスパートですから超音波は取っ付き難いものでも、難しいものでもないわけです。「触診した指の方向に超音波をあてる」、これが運動器分野の超音波観察法の、最大の極意でもあり、基本中の基本でもあるわけです。
では、結節間溝と上腕二頭筋長頭腱の短軸走査を行ってみます。結節間溝を触知しながら、上腕前面上部に対して、前額面より骨頭に垂直になるように微調整しながらプローブをあてます。 (短軸走査) この時、骨頭は丸い形状である事から、プローブは、やや下から上に向けた傾きが骨頭に対しての垂直となります。

図 結節間溝と上腕二頭筋長頭腱の触知と短軸走査

図 結節間溝と上腕二頭筋長頭腱の触知と短軸走査

 

上腕二頭筋長頭腱は、結節間溝の谷の中に納まっており、その上から横靭帯が溝を閉じた形状になっています。この事から上腕二頭筋長頭腱は骨頭に沿って走行することになり、長頭腱への正しい描出方法は骨頭に対して垂直にプローブを傾けることになります。

図 肩関節の解剖

図 肩関節の解剖

 

 
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