柔道整復師と介護福祉【第90回:介護保険の基礎知識ver3】
所得で異なる自己負担割合
介護保険の自己負担割合は、所得に応じて1~3割と幅があります。 2000年の介護保険制度開始当初は、自己負担額は所得に関わらず一律1割でした。中高所得層が福祉サービスよりも負担の少ない病院に入院する「社会的入院」問題、福祉サービス利用時に所得調査が必要で抵抗があるという問題を解消するためにも、所得とは無関係に少ない負担で介護サービスを利用できる制度になっていました。しかし一律の負担では、所得によって生活への影響が大きく異なります。さらに少子高齢化も急激に進行するなか、一律負担のままでは介護保険制度の持続が危ぶまれるようになりました。そこで世代内・世代間の不公平感を解消し介護保険の制度を存続させるため、個人の負担能力に応じて自己負担割合を変える方針に転換されました。
2015年8月には一定以上の所得の人は2割負担、さらに2018年8月からは現役並みの所得がある人は3割負担まで引き上げられました。現行の利用者負担割合の判定方法は次の通りです。
利用者負担割合の判定方法
65歳以上の人が1人の場合の負担割合判定方法・65歳以上の人が2人以上の場合の負担割合判定方法
本人の合計所得金額が160万円未満の人は、すべて「1割負担」となります。利用者負担が2割、もしくは3割になる可能性があるのは、本人の合計所得金額が160万円以上の人です。
合計所得が160万円以上でも、年金収入とその他の合計所得金額の合計額が単身世帯で280万円未満、2人以上世帯で346万円未満の場合は「1割負担」となります。反対に合計所得金額が220万円以上、かつ年金収入とその他の合計所得金額の合計額が単身世帯であれば340万円以上、2人以上の世帯であれば463万円以上ある場合は、負担が最も大きい「3割負担」です。どちらにも当てはまらない人は「2割負担」となります。
このように負担割合の区分は複雑でわかりにくい部分もあるため、市区町村は介護保険サービスの対象者に毎年「介護保険負担割合証」を発行し、ひと目で割合がわかるようにしているのです。
介護保険サービスの1カ月利用上限について
1~3割の少ない負担で利用できる介護保険サービスですが、要介護認定が下りれば無制限にサービスを利用できるわけではありません。「区分支給限度額」として、要介護度に応じて利用できる上限が定められています。上限を超過してもサービスを利用することは可能ですが「全額自己負担」となりますので、注意が必要です。介護保険サービスは、金額ではなく「単位」で計算されるため、利用上限も「単位」で決まっています。単位数に1単位当たりの単価をかけ合わせることで利用金額を求める仕組みです。1単位当たりの単価はサービスごと、地域ごとに10~11.40円の間で設定されています。単価に差があるのは、人件費の地域差やサービスごとに異なる人件費の割合を金額に反映させるためです。
一覧表は、1単位を10円として計算した場合の区分支給限度額と自己負担額を示したものです。地域や利用サービスによっては多少の差異が生じます。
高額な介護サービス費を払い戻す制度
2・3割負担の人で要介護度が上がると、自己負担額も相当に大きくなります。なかには10万円を超えるケースもあるほどです。月額の介護サービス費が一定の上限を超過した場合、各市町村に申請することで超過分が払い戻される制度があります。それが「高額介護サービス費」制度です。所得によって上限金額は異なりますが、最大でも世帯当たり4万4,400円に抑えられます。なお老人ホームの居住費や食費、差額ベッド代、生活費などは対象に含まれません。高額介護サービス費に該当する人には、サービスを利用した約3カ月後に市区町村から通知と申請書が送付されます。申請書に必要事項を記入し市区町村の窓口に提出すれば、申請完了です。一度申請すれば、それ以降は条件に当てはまるときに自動的に支給されます。申請期間は、介護サービスを利用した月の翌月1日から2年間ですので、期限を過ぎてしまうことのないよう気をつけましょう。
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