柔道整復師と介護福祉【第85回:介護保険制度とは?具体的なサービス内容と制度についてver1】
「介護保険制度」という仕組みがあるのをご存知でしょうか。介護保険は、自分の老後や家族を介護することになったときにサポートしてくれる心強い制度です。高齢化が進む中、「私にはまだ関係ない」「両親や配偶者はまだ元気そうだから大丈夫」と思っていても、いつ、どのタイミングで身近な人に介護が必要になるかわからない状況です。そこで今回は、これから介護に関わる可能性のある全ての人に向けて、介護保険制度の仕組みや介護保険サービスの内容、利用するために必要な「要介護認定」について、解説いたします。
介護保険制度とは?
介護保険を理解するために、まずは介護保険制度の意義や成り立ちについて把握しておきましょう。
介護保険制度の基本理念
介護保険制度は、介護を必要とする人が適切なサービスを受けられるように財源を確保し、社会全体で支え合うことを目的とした制度です。少子高齢化や核家族化にともない、被介護者の介護負担を家族だけで支えるのは難しくなっています。被介護者の自立を支援したり、介護する側の家族の負担を軽減できるようサポートしたりする制度が必要です。介護者・被介護者の双方が安心して生活できる社会を目指し、1997(平成9)年12月に「介護保険法」が制定され、2000(平成12)年4月から施行されました。介護保険は、単に身の回りの世話をするだけでなく、被介護者の自立をサポートする「自立支援」、被介護者本人が自由に選択することで、介護サービスを総合的に受けられる「利用者本位」、納めた保険料に応じてサービスや給付金を受ける「社会保険方式」の3つの柱を基本に成り立っています。介護保険サービスや日常生活の支援については、各自治体の地域包括支援センターに相談可能です。全ての高齢者が人間としての尊厳を保ち、自立した生活を送れるよう、地域社会で支え合いながら介護サービスの充実を目指すのが、介護保険制度の基本理念となります。
介護保険制度の対象者
介護保険は、40歳になった月から全ての人が加入することになり、支払い義務が生じます。年齢によって区分が分かれていて、65歳以上は「第1号被保険者」、40歳~64歳までは「第2号被保険者」に該当します。たとえ要介護状態になったとしても、39歳以下の人は介護保険を利用できません。第1号被保険者は、介護が必要であると認定を受けると、その状態によって、日常生活の支援や介護のサポートを受ける際に介護給付を受けることができます。第2号被保険者の場合、末期がんや関節リウマチ、初老期における認知症・脊柱管狭窄症・早老症・多系統萎縮症・糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・閉塞性動脈硬化症・脳血管疾患などを含む全部で16種類の特定疾病のいずれかに該当し、要介護認定を受けた人のみ、介護給付を受けることができます。
介護保険制度の仕組み
介護保険制度の仕組みや、第1号被保険者・第2号被保険者それぞれの場合の保険料の支払い方法についてご紹介します。
介護保険制度は、40歳以上の国民全員が納めた保険料と、国や市区町村の公費(=税金)を1:1の比率で合わせ、介護の費用に充てるという仕組みになっています。それにより、利用者が実際に支払う介護サービスの自己負担額を原則1割(所得に応じて2割や3割の場合もある)に抑え、要介護度に応じてさまざまなサービスが受けられるようになっています。
国民は40歳になった月から支払い義務が生じ、その後は一生涯払い続けることになりますが、第1号被保険者か第2号被保険者かによって、保険料の支払い方法も異なります。
保険料と支払い方法について
第1号被保険者は、市区町村から納付通知書が届き保険料を納めるか、年金から天引きされる形で保険料を支払います。保険料は、住んでいる市区町村により基準額が異なり、合計所得金額によっても変わります。具体的な金額について知りたい人は、各市区町村の公式サイトにて確認してください。
第2号被保険者は、厚生労働省が1人当たりの介護保険料の負担率を設定し、それに基づいて計算した保険料額を、健康保険組合や共済組合などの医療保険者に知らせます。通知を受けた医療保険者が、第2号被保険者から医療保険料と一緒に介護保険料を徴収するという仕組みです。健康保険に加入している人の介護保険料額は、被保険者の給与の月額を全50等級に区分した「標準報酬月額」によって算定、健康保険料と同じように給料から天引きされますが、被保険者と折半する形で、事業主も介護保険料を負担します。国民健康保険に加入している人は、医療保険料に上乗せする形で請求されます。市区町村ごとに計算方式は異なり、所得や固定資産額を考慮する場合や、それらにかかわらず、加入者1人ひとりに均等に保険料を賦課される場合があります。
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