柔道整復師と介護福祉【第66回:障害福祉サービス「生活介護」vol.2】
障害福祉サービス「生活介護」vol.2
(1)生活介護のサービスを利用するメリット
生活介護は、日常生活の支援を受けることができるとともに、介護者のレスパイトケア(預かり)にもつながります。生活介護のサービスを利用することで、常時介護等を必要とする障がい者やその家族にとっては、食事や入浴、排泄といった介護や日常生活上のさまざまな支援を受けることができます。
生活介護は日中のサービスが提供されるので、その分の家族の負担が軽減されます。家族の休暇やリフレッシュのためにも、生活介護を利用することは有意義であるといえます。
【生活の豊かさに通じる活動を促進できる】
また、生活介護のサービスの一つでもある創作活動においては、創作的な活動の機会を提供する一環として発表の場を設けるなどしています。これによって成果を形にできるのをはじめとして、制作物が収益につながることもあり、障がい者の生活を豊かなものにする副次的なメリットも生まれることがあります。
(2)生活介護の費用
生活介護サービスを利用する際には食費や日用品費などの実費負担が発生するとともに利用者負担も発生します。
報酬額基準
生活介護サービスでは、種類ごとにサービスを提供する事業者が受け取る額が決まっています。これを報酬基準といい、1時間1,000円の報酬基準の場合、2時間利用すれば報酬額は2,000円となります。このうち利用者の負担は報酬額の1割と定めらているので、この場合には200円を負担します。ただし、提供されるサービスの種類によっては、実費を負担するケースもあります。
利用負担の上限
生活介護サービスの利用者負担は1割と定められていますが、多くのサービスを利用すると負担が高額となることから、これが要因でサービスの利用を控えるといったことがないよう、利用者負担額には上限額が設けられています。そして、この上限額は世帯の収入状況などに応じて、4つの区分があります。
また世帯とは、
- 18歳以上の障がい者であれば障がい者本人とその配偶者
- 18歳未満の障がい児であれば保護者が属している住民基本台帳上の世帯
世帯収入による上限額の区分
生活介護サービスの利用者負担における上限額の区分は以下のようになっています。
(3)生活介護を担う「生活支援員」
障がい者支援施設や生活介護事業所において、生活介護の主な担い手となるのが「生活支援員」です。生活支援員は、障がい者の日常生活上の支援や身体機能・生活能力を向上するための支援を行うことをはじめとして、創作や生産活動の支援も行います。
具体的には、障がい者が快適に生活を送れるように衣服の着脱や食事、入浴などの生活習慣の指導や支援、施設における人間関係の不満や、将来への不安などの相談に応じることもあります。また、本人だけではなく家族や介護職員などからも必要な情報収集を行うことによって、障がい者の課題やニーズを分析します。それを整理した上で関係者間での共有を図り、サービスの提供や関係機関との連絡調整などを行います。
(4)生活介護を利用する手順
介護給付における、生活介護のサービスを利用するためには以下のような手順が必要となります。
- 申請をする
- 市町村に生活介護のサービス利用の申請を行う
- 「指定特定相談支援事業者」により「サービス等利用計画案」を市町村に提出
- 認定調査員が本人や家族から基本調査、勘案事項調査などが行われる。
- 通知を待つ「概ね1か月程度」
- 調査に基づき市町村はコンピュータによる一次判定を行う。
- 市町村は、「医師の意見書」と勘案事項調査を参考に、二次判定として審査会で障害支援区分の判定を行う。
- 市町村より1~6に分類された、障害支援区分の該当結果が通知される。
- サービス利用へ
- 特定相談支援事業者によるサービス利用意向聴取が行われる。
- 利用意向聴取と障害支援区分を踏まえ、特定相談支援事業者により「サービス等利用計画案」を作成する。
- 支給が決定すると、支給決定通知書と受給者証が交付される。
- 特定相談支援事業者により、支給決定の内容に基づいてサービス事業者の調整などの上、利用計画を市町村へ提出する。
- 事業者や施設などと利用契約を締結し、契約に基づいてサービスを利用する。
(5)生活介護について理解を深める
生活介護は、申請手続きや障害支援区分、サービスの内容などにおいて、介護保険制度と類似している部分があります。ただし、大きく異なるのは利用者の年齢層が幅広いという点です。特に、青年期や壮年期の利用者の中には、積極的に社会と関わったり、さまざまなチャレンジをしたいといった健常者と同じ思いを持つ人が少なくありません。生活介護は、自らの意思によって、その思いを実現するための支援の一つとなっています。
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