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柔道整復師と介護福祉【第30回:介護保険制度の歴史シリーズ④】

柔道整復師と介護福祉 特集

介護保険とは何か?介護保険制度ができた背景・制度の本質について。

介護保険を利用する側としては、介護保険制度そのものについてあまり細かな点まで知っておく必要はないが、それでも最低限の常識として認識すべき点があります。

シリーズ④では、「介護保険の利用者としておさえておきたい、実用的・実際的な知識は何か」という点を中心に解説いたします。

今回の①~⑯の内容は、介護保険を実際に利用するときに直面する、問題や疑問への理解も進むと推測いたします。介護保険は平成12年(2000年)4月にスタート。制度ができてから、すでに15年以上が過ぎております。

介護保険を一言で言えば、「介護を必要とする高齢者とその家族をサポートするための保険システム」です。根拠となる法律は「介護保険法」となります。

介護保険制度ができた最大の理由は、日本社会において少子高齢化が大きく進むなか、これまでの「老人福祉制度」「老人保健制度」をこの先も続けることが困難であり、将来的に国民医療費の増大により財政面もひっ迫し、また制度としても成立しないため制度が施行されました。

老人福祉制度をささえる「老人福祉法」では、老人医療費の自己負担は原則無料化されていました。しかしその結果、病院の過剰受診やいわゆる「社会的入院」などが著しく増え、老人医療費が激増しました。また制度面でも、低所得高齢者への配慮が中心となり、一般の家庭が利用できるサービス提供が多くありませんでした。介護の必要の有無を行政が決めるなど、利用者が使いにくい行政主体の制度でもあったことから、一般家庭の多くが介護を家庭内で丸抱えせざるをえず、「介護離職」、介護による精神的疲弊に伴う「介護側の自殺」が社会的に問題視されるようになりました。

まとめ
高齢者医療介護をすべて国が保護するしくみでは、財政的に先行きもたない、そして介護を社会全体で支えるような仕組みにしていかないと、家族ももたない…ということで、「高齢者の日常生活の自立を、国が支援する」という考え方に移行しました。
高齢者の自立を支える仕組みを根幹として、社会保障・社会福祉の制度体系を組み直すことになりました。

この時代の流れを受けて、健康保険法の改正や後期高齢者医療制度などの導入が次々と後に続いています。

政府は、介護は国民の保護・救済を第一目的とはしておらず、あくまで「国民が自己責任のもとで自立した日常生活がおくれるように、国が支援(サポート)する」という考えで、この介護保険制度の全体が設計されていることを認識いただければと思います。

これに対し「最低限度の生活」を国民の権利として認め、給付を(保険でなく)税金で賄う所得保障・社会福祉の制度が「生活保護」です。

介護保険とは、通常の保険と違い、介護が必要なときに保険金(お金)が支払われる制度ではありません。介護保険料を支払った人ならば原則として65歳以上から(40歳~64歳でも使えるが、利用の制限あり。シリーズ➂参照)、被保険者として「介護の必要に応じて、介護に関わるサービスを本来の料金の1割の負担で利用できる」という制度です。これはいわば、「現物給付」のシステムです。

この介護保険法は、「5年ごとに内容を見直す」ことが定められています。現在では、3年に1回見直しがかけられています。

一回目の見直しの結果、平成18年(2006年)4月から「改正介護保険法」が施行されました。このときの改正の目玉となったのは「介護予防の導入」「地域密着型サービスや地域包括支援センターの創設」に代表される、「予防重視型システムへの換転」でした。

介護保険制度ができた後、介護保険の利用者が想定の2倍を超えるスピードで増えたことから、高齢者の要介護度ができるだけ重くならないようにするためにも、この介護保険制度を「予防重視型」のシステムにしようということで、「介護予防サービス」が平成18年度から制度に正式に組み込まれました。

平成24年(2012年)4月、再度改正された介護保険法が施行されました。 この時の改正のメインテーマは、高齢者が住み慣れた地域で医療・介護・生活支援等のサービスを総合的に受けられるようにする「地域包括ケアシステムの構築」になります。この前年(2011年)には、高齢者の住まいの整備を目的に「サービス付き高齢者向け住宅」も創設されました。 整備目標は60万床を掲げ、国土交通省、厚生労働省が連携して、公的資金に頼らない住まいのインフラ整備に着手いたしました。また、すでに社会問題化していたにも関わらず動きの乏しかった「認知症対策の推進」を掲げ、地域の実情に応じた認知症支援策を、国としても後押しする方針が示されました。

平成27年(2015年)4月からは、2014年に成立した「地域医療・介護総合確保推進法」の理念に沿うかたちで、5年を待たず再び改正された介護保険法が順次施行されています。平成27年(2015年)の介護保険改正(1)~特養への新規入所者を限定 今回の改正の特徴は、「社会保障全体の枠組み」の中で医療と介護の連携を強化して、介護保険制度の再構築を図ろうとしている点になります。

国として限りある資源をどの部分に重点的化し、どの部分の費用を削って効率化していくかについて、「医療・介護・介護予防・生活支援などを一体のものとして考える」社会保障制度改革の名のもとに「地域医療・介護総合確保推進法」が作られ、その展開の一つとして介護保険法でも改正が施されました。具体的には、前回の改正で登場した「地域包括ケアシステム」をさらに洗練させて「地域の医療機関・介護施設の効率化と連携」をはかり、同時に「在宅医療や在宅介護の普及」を促そうとしています。

これら流れをスローガンでまとめると、「国から地域へ」「施設から在宅へ」「入院から予防・リハビリへ」となります。国の要支援者向け介護保険サービスの一部が市町村の事業に移されることは、そのひとつの典型例となります。「総合事業:平成27年(2015年)の介護保険改正一部サービスの市町村移管」

これまでの経緯を見ればわかるように、その都度方式で制度の仕組みが変更されています。
仕組みを定着・普及させることによって膨張する社会保障費を抑え、介護保険制度の持続可能性を高めることが国の狙いではありますが、その思惑どおり進むかどうかは今後を注視する必要があることを認識ください

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