柔道整復師と介護福祉【第27回:介護保険制度の歴史シリーズ①】
介護保険制度は、主に高齢者を対象とした社会福祉(高齢者保健福祉)の一つとして2000年4月から実施された政策です。
急速に進む高齢化と、それに伴う医療費の増加に対する対策として制定されました。
介護保険制度の導入の理由として
- 介護を必要とする高齢者の方が年々増え続けていること
- 核家族化や介護をする方の高齢化などの要因から、介護にかかる負担は心身ともに重くなり、家族だけで介護をするということが限界のため
- 「社会的入院」解消のための施策。病院に長いこと入院することによる医療保険の負担を軽減するため
介護保険制度が導入される前までは、高齢者に対する介護は老人福祉法と老人保健法のもとで実施されていました。
老人福祉法
1963年に制定 特別養護老人ホーム創設。
老人家庭奉仕員(ホームヘルパー)法制化
老人保健法
1982年に制定。
2008年より、「高齢者の医療の確保に関する法律」に改称。この法律により、後期高齢者医療制度が新設されました。
老人病院(療養型医療施設)
2003年までに廃止され、介護療養型医療施設と医療療養型施設に引き継がれています。2030年までに廃止予定。
- 超高齢化社会に対応して
- 介護難民や医療難民が出ないようにするため
介護療養病床に変わって、介護療養型医療施設を準備
介護保険制度導入までの流れ
介護保険制度実施までの流れを示します。
1963年高齢者を対象とした社会福祉に関する法律である「老人福祉法」が制定。この年に、特別養護老人ホームやホームヘルパーの制度が開始されました。
当時のヘルパーは、老人家庭奉仕員の名称で働いておりました。
1973年老人医療費無料化の制度が導入された為、老人医療費が増大しました。
療養費制度も適応されておりました。
1982年老人保健法が制定され、老人医療費を一定額負担する制度が導入されました。
80年代に入り、社会的入院(老人病院)やねたきり老人が社会的問題として取り上げられるようになりました。
1989年ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進十ヵ年戦略)が策定されました。
ゴールドプランは厚生省と労働省の1988年の「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」を踏まえたもの。ゴールドプランでは、10年間で6兆円以上を投じて、特別養護老人ホーム整備、ホームヘルパー・デイサービス・ショートステイの整備による在宅福祉対策などを進めました。ゴールドプランを受けた流れの中で、1991年6月の「老人福祉法等の一部を改正する法律」が制定されております。
1994年新・ゴールドプランが策定され、在宅介護の充実が勧められました。
高齢化が当初の予想を超えて急速に進んだため、1994年に全面的に改定された新ゴールドプラン(高齢者保健福祉5ヵ年計画)が策定されました。2000年4月の介護保険制度による需要増加に対応するため、在宅介護強化の数値目標として、ホームヘルパー17万人確保、訪問看護ステーション5000箇所設置などを掲げられ現在の基盤を構築しました。
1997年介護保険法が成立しました。
2000年介護保険が施行されました。
介護保険制度施行までの問題点
老人福祉法の問題点
サービスの種類やサービスを提供する事業者を市区町村が決定。利用者には選択権がありませんでした。又中高所得者にとっては、経済的に大きな負担がかかります。
老人福祉法による主なサービスには、ホームヘルプサービスやデイサービス、特別養護老人ホームの利用などが挙げられます。
老人保健法の問題点
中高所得者は、老人福祉法による福祉サービスを利用するより、老人保健法に基づく老人医療費制度で医療機関などを利用した方が、経済的に負担が小さいメリットがありました。また、福祉サービスの体制が不十分だったため、一般病院への長期入院(社会的入院)が多くなり社会問題となりました。
老人保健法による老人医療の主なサービスには、訪問看護、デイケア、一般病院や療養型病床群への入院、老人保健施設などの利用などが挙げられます。
その他の問題点
- サービスを利用する際は、福祉と医療の別々に申請しなければならなかった
- 利用者中心の選択でないため、サービスの質が低下しやすい
- 所得調査が必要
上記の経緯から介護保険制度が積み上げられております。
次回は、介護保険制度導入後の改善点や見直しと改正、財源の確保などについて掲載いたします。
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