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柔道整復師と介護福祉【第21回:在宅医療の現場概要】

柔道整復師と介護福祉 特集

在宅介護においては、高齢者が何らかの病気の治療を受けながら、同時に家族の介護を受けているのが普通のはずです。そして、本人の状態や体調が悪化したときはあわてて病院へ連れていく、ということになりがちですが、医師に自宅に診察にきてもらう「在宅医療」については、どれくらいご存知でしょうか?

1、在宅介護を支える家族への普及

国が「在宅医療の推進」に力をいれているにもかかわらず、在宅介護に追われる家族の多くはその中身をよく知らないというのが現状のようです。
「在宅医療」とは、通院が困難な患者の自宅に医師が訪問して、医療サービスを提供するものです。在宅医療は、医師が計画的に訪問して医療を行う「訪問診療」と、臨時に医療サービスを提供する「往診」の二種類があります。

一般的には、動けない患者の状態が悪化したときだけ急いでお医者さんを自宅に呼ぶようなイメージが強いですが、これは「往診」で、「訪問診療」と区別されています。

2、これからの在宅医療の問題点

  1. 私たちは、在宅医療については、あらかじめ「月4回、毎週×曜日」のように往診する日を決めて行うハード面「訪問診療のシステム」と、ソフト面「医療提供の質」を中心に、考えていく必要があります。
  2. 日本では、専門設備の整った病院で治療することで、はじめて高水準の医療が受けられるようになっています。病院で行われている、治療レベルの絶対的水準という点では、現在の在宅医療は病院治療にとうてい及ぶものではありません。

3、在宅医療を支える医師の課題

在宅医療を担当する医師は、休日・夜間の電話対応、往診対応の負担は非常に大きいです。24時間365日拘束され、旅行や学会に行けず、精神的ストレスを感じている医師も少なくありません。

今後ますます在宅医療ニーズが高まる社会的環境の中で、一人あたりのドクターの限界値をもっと広げなければドクターの負担は増え続ける一方となってしまいます。

4、介護従事者の課題

患者様に対して医療や介護サービスを向上させる、より良い環境を整えるためには、多職種間での活発な情報共有が求められます。

しかし、現状、医療・介護の現場では、職員が忙しすぎて情報共有が必要最低限しか行われていません。また、1人の患者様に対して、医師、薬剤師・ヘルパー等多くの事業者が関わるため、情報の連携が取り難く、横断的な情報共有が難しいのが現状です。

5、患者本人、家族の課題

介護者(ご家族)だけで夜間看護を対応するのは非常に不安なものです。困った時に、誰に電話をすれば良いかが、明確に判断出来ないために、その不安が大きくなっているとも言えます。また、休日・夜間でも電話可能とあるが、遠慮して連絡できないという声も多く上がっています。

患者、家族の不安を払しょくするためにも医師からのムンテラのみならずインフォームドコンセント(IC)が非常に需要であることがうかがえます。

ムンテラは、MundTherapyの略で、直訳で口の治療、つまり患者や家族を言いくるめるという意味から来ています。
日本では病状説明のこととして、ムンテラという言葉を使用していますが、欧米ではあまり良い意味としてはとらえられておらず、ムンテラという言葉の代わりに、Patient Education=患者教育という言葉が多く使用されています。

6、在宅医療で実施される検査

  • 血液生化学などの検体検査(POCT検査)
  • 経皮的酸素飽和度測定装置(SPO・EtCO2)
  • レントゲン検査(X線照射装置)
  • 携帯型超音波装置
  • 心電図検査装置
  • 細径内視鏡

事例1:熱発の原因診断

POCT検査で確定診断できないケースで、腹部超音波検査により、膀胱の緊満、軽度水腎症確認。導尿後キノロン投与。尿培養からキノロン感受性大腸菌検出。

事例2:喘息と心不全の鑑別診断

超音波検査で両上肺野に強いBライン検出。POCT検査によるトロポニン陰性と判明。心不全の急性増悪による呼吸不全と診断し利尿薬投与、在宅酸素療法導入。3日後喘息消失、SpO296%(room air)。

事例3:誤嚥性肺炎診断

細径内視鏡を用いた、嚥下機能検査を施行。喉頭蓋谷部に食物遺残と喉頭侵入を認める。 歯科による嚥下リハならびに口腔ケア、嚥下調整食導入。呼吸器感染頻度軽減する。

7、診断機器の制限

在宅医療の現場で用いられる検査は、医療施設と比べて条件が悪く、制限も多いです。また、在宅医療の体操となる患者本人が検査を希望しないことも多く、医学的検査が必要であっても多くの検査が施行されるわけではありません。検査はあくまで理学的診断の裏付けと考えるべきでしょう。

8、在宅緩和ケアの課題

1、在宅緩和ケアの普及

現在、8割の人が病院を含む医療施設で人生の最期の時を地域との関係性や日常性を欠落した状態で医療従事者と過ごしている。しかし、国民の半数以上が、できれば自宅で家族と一緒に最後の日々を過ごしたと希望している。希望がかなわない理由は、病状の不安や、介護力の問題など様々であるが、自宅で暮らすことを支える医療提供体制が全国津々浦々に整備されていないことが最大の理由になります。

2、在宅緩和ケアの条件

  1. 通院が難しい場合
  2. 痛みや麻痺のために歩くのが難しい
  3. 病気のために疲れやすく外来で待ちや病院の中を移動するのが大変
  4. 少し動いても息切れがある
  5. 認知症や高度の聴力障害があり一人では通院できない
  6. 高齢夫婦の二人暮らしで通院が難しい
  7. 知的障害や精神障害などのため受診が難しいなど

自宅で経管栄養や点滴などの医療処置を行うのに支援が必要な場合には、自宅で生活をしながら、自宅に医師や訪問看護師に来てもらい、緩和ケアを受けることができます。

3、在宅緩和ケアの心得

在宅緩和ケアを受けるに当たっては、ご本人が自宅で療養することを望んでいて、ご家族がいる場合は、ご家族も本人の意向を尊重したいと思っていることが大切です。

4、在宅緩和ケアの課題

5、地域緩和ケア支援ネットワーク

地域緩和ケア支援ネットワークとは、地域内の医療および介護にかかわる職種と地域住民が協働し、人生の終わりを迎える人とその家族の生活を支え、そして看取りを支える地域社会のシステムです。 このシステムは、医療支援システムと生活支援システムの2層構造となっております。 医療支援システムでは医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士などの職種が、病院、診療所、保険薬局、介護支援事業所などの機関から出向きます。 生活支援システムでは、ケアマネジャー、ホームヘルパー、介護や福祉の行政担当者などが市や町の行政機関、介護支援事業所、福祉事務所、民間業者などから、また、地域住民も“隣家のおばさん”あるいはホスピスボランティアとして参加します。

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