柔道整復師と介護福祉【第18回:総合事業概要】
平成24年(2012年)の介護保険法の改正で「介護予防事業」の中に位置づけられた「介護予防・日常生活支援総合事業」。平成27年(2015年)4月施行の改正介護保険法により、「新しい総合事業」へと発展的に見直されております。
平成27年4月以降3年の移行期間を経て、平成30年(2018年)度から完全に、市町村事業となります。財源も市町村財源で賄われるため報酬単価においても考え方においても地域差が生じてきます。詳しくは市区町村の「地域支援事業」をご参照下さい。
介護保険からの給付サービスとして、これまで要支援者のために「介護予防サービス」が用意されていました。
総合事業の5つの問題点、指摘事項
「介護予防・日常生活支援総合事業」は、利用者の状態・意向を市町村が判断し、「介護予防サービス」と「生活支援サービス」が一体的に提供されるサービスです。また、これらのサービスは、いずれもこれまでの「地域支援事業」の財源の枠内で行われることになります。
1. 実際のマネイジメント役
この「介護予防・日常生活支援総合事業」を導入するかどうかも含めて、サービスの利用料なども市町村が決定し、実際の導入後は、市町村が主体となって行うことになります。しかし、実際の活動主体は、地域包括支援センターとなり、対象者の把握、サービス調整、サービス提供者とのパイプ役など、介護予防事業のマネイジメントとほぼ変わりません。
2. 対応してくれる事業者は?
「介護予防・日常生活支援総合事業」という呼び名からして、介護予防以外にも生活支援のサービスをしてくれるなら、内容が手厚くなって良いのでは?と思われるかもしれません。しかし、その中身については、もう少し検討が必要のようです。
注意したいのは、この「介護予防・日常生活支援総合事業は、介護保険の指定サービスではない」と言うことです。
3. サービスの選択権は?
サービス供給の決定権は市町村にあるため、市町村の判断次第では、現在介護保険の介護予防サービスを利用している人が、この「総合事業」に移されてしまう可能性もあることになります。
介護保険の要支援者が持つサービス受給権を侵害するものではないのか、との批判も出ているところです。
4. 現状のサービス事業者の行く末は?
平成27年(2015年)の介護保険法の改正では、「介護予防訪問介護」・「介護予防通所介護」の2サービスが、平成29年(2017年)度末までの3年以内に、国の介護保険のサービスから外れ、市区町村の地域支援事業(新しい総合事業)へと移行することになります。
「国は最終的に介護保険財政の枠組みから、すべての介護予防サービスを外すことを意図しているのでは」との憶測も、根強く出ているところです。
5. 地域格差を助長する恐れも
今後は市町村が地域の実情に応じた独自の判断していくことを容認している以上、将来的には「介護サービスの地域格差・自治体間格差」を広げる要因となる恐れもある点には、注意が必要です。
総合事業該当者のスクリーニング方法
現状では、対象者の選定に基本チェックリストを活用している市区町村が多数みられます。
1. 運動器疾患の事例
年齢:65歳
性別:女性
介護認定:未申請
疾患:高血圧
かかりつけ医:近所の内科
現状:最近転倒が増えており、打撲もしくは捻挫を頻回に繰り返している。外出することに不安を感じている。転倒による恐れから車での行動が増え15分くらい続けてあることが減っている。
2. 該当項目(3/5)
- 手すりを使わずに歩くことができる:非該当
- 椅子から何も使わずに立てる:非該当
- 1年間で転んだことがある:該当
- 15分続けて歩く:該当
- 転倒の不安が大きい:該当
総合事業は健康管理へ
運動器の事例からも、整形外科、接骨院・整骨院の外来患者のほとんどが該当することが推測されます。
医療保険(整形外科疾患)、療養費(接骨院、整骨院)、介護保険制度(要支援者)を利用している該当者はすべて、総合事業に移行していくことが推測されます。
社会保障制度は、予防にかかわる一切から手を引き、重度、中等度の要介護者もしくは医療が必要な特定の疾患に限定した供給と、けがに関する介入のみに的を絞らざる負えない現状です。恒久的な取り組みが必要な予防は、自己管理に委ねられ対象者は膨れるばかりです。医療財政が逼迫している日本において、国民は今後の予防対策を真剣に考える時期に来たのではないでしょうか?
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