柔道整復師と介護福祉【第7回:認知症高齢者と柔道整復師の関わり】
認知症に対する施策
厚生労働省は、認知症施策推進5カ年計画「オレンジプラン」を公表しています。この計画では、これまでの病院・施設を中心とした認知症ケア施策を、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けられる在宅中心の認知症施策へシフトすることを目指しております。 地域包括ケアシステムの発信と同時に認知症に関しても地域で医療や介護、見守りなどの日常生活支援サービスを包括的に提供する体制づくりを目指し、具体的な方策が示されております。
オレンジプラン(認知症5カ年計画)
1、認知症ケアパスの作成
標準的な認知症ケアパス(状態に応じた適切なサービス提供の流れ)の作成・普及を図るため、2012~13年度に調査・研究を実施、2013~14年度に各市町村でケアパスの作成を推進、2015年度以降、介護保険事業計画(市町村)に反映させる計画になります。今年度が整合性ある計画に成就するための本番になります。
2、早期診断・早期対応
認知症の早期診断・早期対応を進めるために、かかりつけ医認知症対応力向上研修の受講者数を2017年度末には累計5万人を目指す数値目標を立てています。これは、高齢者人口約600人(認知症高齢者約60人)に対して、1人の「かかりつけ医」が受講するという形を目指しています。また、認知症サポート医養成研修も、2017年度末には累計4000人の数値目標としています。全国に約10万ある一般診療所25カ所につき1人のサポート医を配置する形を目指しております。
3、認知症初期集中支援チームの設置
地域包括支援センター等に配置し、家庭訪問によりアセスメントや家族支援等を行う「認知症初期集中支援チーム」の設置に向けては、2013年度は全国10カ所程度で、2014年度は20カ所でモデル事業を実施し、2015年度以降はモデル事業の実施状況等を検証し、全国普及のための制度化に向けて進んでいきます。初期支援チームには、専門医、看護師、保健師、療法士、薬剤師、柔道整復師などの専門職が検討されております。
4、早期診断医療機関の整備
認知症の早期診断等を担う医療機関は、12~17年度に約500カ所整備する方針です。認知症疾患医療センターを含めて、二次医療圏に1カ所以上設置する方針で検討されております。
5、地域ケア会議の普及・定着
地域包括支援センターが主体的に多職種協働で実施される「地域ケア会議」の普及・定着を目指しております。「地域ケア会議運営マニュアル」を作成、「地域ケア多職種協働推進等事業」による「地域ケア会議」の推進を目指しております。15年度以降、これをすべての市町村で実施する計画になっています。
6、認知症薬物治療ガイドライン
地域での生活を支える医療サービスの構築のため、「認知症の薬物治療に関するガイドライン」を策定、医師向けの研修等で活用していきます。精神科病院に入院が必要な状態像を明確化するため、調査・研究を実施。その結果から、1年以上の長期入院患者が明確化されたことにより、精神科病との機能再編が示されております。退院に向けての診療計画「退院支援・地域連携クリティカルパス」は、医療従事者向けの研修会等を通じて普及を図ることとしています。同時に退院見込者に必要な介護サービスの整備を介護保険事業計画に反映する方法を検討し、2015年度以降、介護保険事業計画に反映させる方針です。
7、認知症地域支援推進員の増員
地域での本人・家族の日常生活支援を強化するため、認知症地域支援推進員を17年度末には700人に増やす。将来的には5つの中学校区につき1人、合計2200人の配置を目指しております。また、認知症サポーターも、2017年度末には累計600万人を目指す数値目標を掲げております。認知症の人や家族、地域住民、専門職などが集う場「認知症カフェ」の普及促進の計画に盛り込まれております。市民後見人の育成・支援組織の体制を整備している市町村を将来的に約1700全市町村で体制整備を図る方針です。
8、若年性認知症施策
若年性認知症支援のハンドブックを医療機関や市町村窓口などに配布する方針。また若年性認知症の人の意見交換会開催などの事業を実施する都道府県を、都道府県とする方針です。
9、「認知症ライフサポートモデル」研修で活用
認知症ケアに携わる医療・介護人材の支援策として、認知症のケアモデルとなる「認知症ライフサポートモデル」の策定に向け、調査・研究を実施、認知症ケア従事者向けの多職種協働研修等で活用する方針です。 認知症介護実践リーダー研修は、2017年度末には4万人を目指す数値目標を掲げています。これは、全ての介護保険施設とグループホームの職員1人ずつが受講し、小規模多機能型居宅介護や訪問介護、通所介護などの職員は、全中学校区内で1人ずつが受講することを想定した数値目標です。また認知症介護指導者養成研修は2200人に、新規に行われる一般病院の医療従事者への認知症対応力向上研修は、17年度末で延べ8万7000人の受講を目指しております。
認知症とは?
以前までは痴呆(ちほう)と呼ばれていた概念でありますが、2004年に厚生労働省は用語検討会により、「認知症」への言い換えを求める報告がまとめられ、まず行政分野および高齢者介護分野において「痴呆」の語が廃止され「認知症」に置き換えられました。
認知症は、老化に伴って物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下するもののみをさします。また統合失調症などによる判断力の低下は、認知症には含まれません。頭部の外傷により知能が低下した場合などは高次脳機能障害と呼ばれております。
認知症に対する柔道整復師の関わり
社会課題にまで発展している認知症高齢者施策は、柔道整復師の職域に関しても全面的に支援するべき特定疾患であります。
接骨院、整骨院の外来で通院される後期高齢者の方々も、MCI(軽度認知症)の恐れがあります。認知症の初期支援は、地域で連携することが重要であり、気づいた時点で介入することが予後を決定します。身だしなみの変化、頻回な物忘れなど柔道整復師のライセンスでも十分に対応できます。地域包括ケアシステムによる認知症高齢者対策には、住み慣れた地域で支援する担い手として、コンビニ、消防士、学校、理髪店など多種多様な資源を繋ぎ合わせることを目指しております。
業界団体としても必要な認知症施策
地域貢献と地域に根差した柔道整復師の施術所は、今後の超高齢化社会に対し、外傷や急性、亜急性症状に対する部分医療従事者として貢献すると同時に、業界として社会貢献する公益事業に認知症高齢者に対する施策を講じることは必然でしょう。
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