HOME 特集 調査票の実態 調査票の実態【第23回:多部位施術や長期施術、頻回施術について】

調査票の実態【第23回:多部位施術や長期施術、頻回施術について】

特集 調査票の実態

柔道整復施術療養費特例受領委任では、いわゆる部位別算定として負傷や損傷として判断されたすべての部位に対して請求が認められていました。ところが平成4年以降、料金改定の都度「アメとムチ」と称される改定方式となります。それは、料金のアップがなされても逓減算定が導入され且つ部位制限が強化される方式です。例えば、施術情報提供料加算が新設されると同時に多部位逓減・長期逓減算定が課せられます。部位数のその後は6部位が5部位までとなり、急性・亜急性の文言が現れ、柔道整復療養費支給申請書への受診者による押印の省略と同時に5部位が4部位までとなり、現在は3部位までの算定となっています。(平成11年までは申請書すべてに受取代理人の欄=受診者署名欄に押印する必要がありました。)

算定部位数の削減は医科で見られる「マルメ」とは異なる制限であり、平成24年に4課長通知が発令されました。4課長通知は保険者による適正化推進を求めた内容であり、決して柔道整復に対する受診抑制や柔道整復師へのいたずらな圧力であってはなりません。
あくまでも保険者サイドにおける適正化の推進でなければなりません。しかし、その後は数々の返戻屋(調査業務委託民間業者)が台頭することになり、適正な柔道整復師の皆様までもが一様に受診抑制の被害を受けておられることは想像に難しくありません。4課長通知では、返戻屋による調査業務代行を認めており、まるで返戻屋保護対策通知のようにも思えます。

多部位施術(現在では3部位が上限)や長期施術は、本当に悪しき例なのでしょうか?
部位別算定が基本となっていた柔道整復療養費の取扱いにおいて、その定義も検証されないまま会計検査院の検査結果や、民主党政権下に実施された行政刷新会議(法的拘束力はありません)の結果を踏まえた一方的な理由による「ムチ」が2年ごとの料金改定で強化されています。

多部位施術は多部位逓減算定を、長期施術は長期逓減算定を行うこととなり、多部位算定では負傷原因記載・長期施術は長期施術理由の記載が必要となっています。
これらの規程に則り負傷原因や長期施術理由記載については、算定内容の正当性を示す一手にもなりますが逓減算定に比例するように施術の内容までをも減じたりすることは到底できません。
「算定の低減に乗じて、あなたの治療も逓減します…」など無理なことです。

また4課長通知によって示された概念として、頻回施術があります。月に10回~15回以上の通院は、頻回施術としてとして定着させているようです。注射や投薬により経過観察が行える医科診療とは異なり、柔道整復の場合には日々の来院が治療の根本であり、1回の治療で5回分の治療を行うことなど不可能です。症状が好転しにくい損傷や強度な疼痛を有する場合、或いは筋力の低下により回復が遅延するような例も多々あると思われます。これらを十把一絡げに頻回施術として捉える概念は、国家が認めた柔道整復師身分や柔道整復施術をも否定することになっていないでしょうか?月に9回までの通院での治療が柔道整復の基本なのでしょうか?

4課長通知による弊害は、保険者による適正化の名を借りた受診抑制にほかならず、柔道整復師の先生方に対して人としての生活必需利益を奪う不公平な結果を生じていると編集部では捉えております。さて上記資料でも強権的な指摘が示されています。「傾向的に」とは、どのような場合を言うのか。多部位算定や月に10回以上の治療についても、明らかな抑制です。
体質や年齢的な素因から運動器損傷を繰り返される受診者もおられることでしょう。
介護や介護予防における機能訓練や健康ブームに乗じたジムトレーニングなどにより損傷を繰り返す受診者もおられます。

上記資料は、4月1日にアップ致しました『調査票の実態【第21回:受診の可否は施術者が判断すべきこと】』の後半に掲載しました資料の続編となります。平均請求額は、前回に指摘された金額より1200円も低額となり、3部位以上の多部位施術は全国平均より僅か1.2%高値でも指摘され、長期施術者が多い点も指摘しています。

長期の治療では、長期施術理由記載や長期施術逓減計算を行うことになり、これらの規程を順守していれば問題視されることはありません。しかし文面からは、全国平均と同じ数字でなければより厳しい調査や返戻を行うとあります。被保険者である加入者の皆様が安全で安価に安心して受診することができる柔道整復師に対して、このような強権的文面を当然のごとく郵送されるこの保険者ならびに同県の柔道整復施術療養費審査委員会への疑念を大きく感じます。
平均請求額は受診者の年齢層や地域性などで左右され、多部位請求の負傷原因の検証や長期施術の理由について十分な検討がなされているのか、文面構成を考えると甚だ疑問です。

支給基準を遵守し申請書が作成されている場合には、明確な根拠なく返戻を行うことは通知違反となります。保険者や柔道整復施術療養費審査委員会は、疑義ある請求に対して疑義の解消に努めることが第一であり、特に定期的に傷病名を変更し長期間の施術を継続する「部位転がし」こそ適正化を欠く傾向的な手口だと言えます。長期施術や多部位算定は規程を遵守され、通院回数については、柔道整復師の皆様と保険者の適正な対応をいただくよう願います。

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