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調査票の実態【第20回:保険者機能強化アクションプラン】

特集 調査票の実態

今回は、全国健康保険協会のホームページで公開されている資料をご覧いただきます。

全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」と略す)は、これまでにアクションプランを計画し実行され、またパイロット事業としても柔道整復施術療養費に対する独自性のある適正化を展開されています。保険者としての調査は、柔道整復施術療養費のみが対象ではありません。
医科・歯科・調剤においても、慎重なレセプト点検や外傷点検が行われます。特に外傷点検では、医科・歯科を受診された原因が「第三者行為」によるものか否かを調査されています。

上記資料は、協会けんぽのホームページで公開されている一部を抜粋しています。

(平成29年9月4日 第86回全国健康保険協会運営委員会 資料)
「保険者機能強化アクションプラン(第3期)の検証結果について」と「保険者機能強化アクションプラン(第3期)」と題した資料には、全国の各支部において、柔道整復施術療養費の照会業務の強化などを含めた、適正受診のための利用者への働きかけを強化する。とあります。
これらの業務は保険者として当然の使命であり、不適正な請求は受診者照会が強化され、加入者への正しい啓蒙、柔道整復師に対する適正な請求を求めることになります。
例の4課長通知(保医・保保・保国・保高発 第0312号 平成24年3月12日)が、より根拠となって実行される重要な保険者機能のひとつと言えます。

協会けんぽでは、点検員としての研修が実施され、十分な知識や技能を備えた職員が点検を行うことにより、結果(アウトプット)を得て、アウトカム(成果)が示されています。
診療内容等査定効果に係る金額ベースでは、平成27年が189億円、平成28年が203億円。
1年で14億円もの組織努力が現れています。
(査定とは、医科の請求について、審査で不適当と判断された場合に一部の項目内容を減額や減点し、調整された金額で支払いが行われること)

柔道整復施術療養費については、多部位(3部位以上)かつ頻回(月15日以上)受診の申請を中心に、加入者に対し文書で施術内容の確認を実施。納入告知書同封チラシや文書照会時にリーフレットを同封し、加入者に対して適正な受診を依頼。という実施状況です。
金額ベースでは、平成27年に対して平成28年は1件当たりの支給額が41円の減額という結果が示されています。多部位請求の割合は平成27年の25.3%に対して平成28年は24.8%で0.5ポイント減少、頻回受診率では平成27年の3.3%に対して平成28年は3.1%で0.2ポイント減少という驚くべき結果です。

他の資料からは、職員の能力向上に向けた育成政策の状況や、地域医療構想に係る会議体への参加、国保運営会議などへも参加され、保険者としての機能をより向上されている様子が伺えます。柔道整復師の先生方も、これら保険者としての使命や適正化推進に関する知識などを得て、積極的に理解を深められることが大切です。

上記資料は、「平成30年度全国健康保険協会事業計画(案)」抜粋です。

PDCAサイクルに始まり、保険者機能強化アクションプラン(第4期)について、KPI設定について記述され、柔道整復施術療養費については、部位ころがしによる過剰受診に対する調査が強化されると同時に、3部位請求(多部位)や頻回(月15日以上)に対する申請の割合をより減じる方向へ進めるようです。

(PDCA=目標設定:Plan、取組を実施:Do、評価:Check、取組改善:Action)
(KPI:key performance indicator 企業における目標の達成度を評価するための主要業績評価指標)

平成30年度の協会けんぽ運営基本方針のアクションプランに係る柔道整復施術療養費に対するKPIは、3部位・頻回の施術申請の割合を前年度以下とする。とされています。
また特に意図的な負傷部位変更による過剰受診、いわゆる部位ころがしに対する調査の強化が予定されています。

例えば、多部位請求や長期・頻回治療が悪しき算定例であるかのように指摘される場合がありますが、はたして本当にそうなのでしょうか?
それぞれには、負傷原因記載に加えて多部位逓減算定が定められ、長期・頻回治療には長期・頻回の理由記載が求められています。これらの請求例は、柔道整復師の先生方が治療の必要性を判断し、通知や協定(取扱規程)を遵守して実行される正当な行為です。
ただし意図的な部位ころがしの場合は、正当かつ適正とは言えません。

柔道整復による治療と、医科による治療を単純に比較することは必ずしも正しいことではありません。ですが仮に足関節を損傷した場合、医科では「関節靭帯損傷や関節損傷」として診断が下されます。柔道整復の現場では、関節を構成する組織を含めて足関節捻挫として判断し、周辺筋組織に至る症状も認められれば「足関節捻挫・下腿部挫傷」等の傷病名を下して治療と算定が行われます。いわゆるマルメなどと呼ばれ包括算定を旨とする医科診療報酬と、部位別算定を旨とする柔道整復施術療養費とでは、単に点数と料金の違いのみならず、算定に対する診断や判断の基本的捉え方が異なります。

そして何よりも、初診・検査・処置・投薬が行われ、数日ごとに再診で経過確認となる医科の主な診療に比べ、柔道整復では初検・整復・固定がなされ日々の通院を得て、電療や温熱と共に柔道整復後療が実施されます。
当然のことですが両者の通院日数比較も根本的に大きく異なります。疼痛緩和や消炎処置として注射や投薬が行われる医師の診療に対して柔道整復師の先生方による治療は、十分な通院こそが治療の大切な根幹となります。
従いまして、部位数制限や頻回治療という概念は、柔道整復施術の在り方を完全に否定するものだと考えられないでしょうか?

これらは単に、柔道整復師サイドに立った考え方です。
ですが保険者サイドにおいても、単に組織業績として数字を追いかけることなく、また適正化の名を借りた受診抑制とならないよう配慮ある保険者機能の向上を切に望みます。
新年度に向けて柔道整復師の先生方は勿論、関係者の皆様共に、国民保護・加入者の利便性・健康を基本として今日まで継承されている柔道整復であることを再認識し、より良き方向へ展開されることを編集部では願っております。

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