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調査票の実態【第14回:電子メールを利用した受診者調査】

特集 調査票の実態

血圧やコレステロ―ルの正常範囲を表す基準値が変更されると、その症状や疾病に効力を持つ医療用医薬品の消費が増大し、製薬会社と厚生労働省の癒着がウワサされることもしばしばあります。話題は異なりますが、医科の診療報酬請求(医科レセプト)の調査点検業務を主としていた民間業者は、医科レセプトが電子請求にシフトすることによりその分野ではおおよそ業務縮小されることになりました。それらの民間会社を救済するために柔道整復療養費支給申請書に係る受診者調査について、民間業者の導入を容認することになったのであろうと考えることは歪んでおり、編集部の勝手な解釈ですが読者の皆様は、どのようにお考えでしょうか?

いわゆる返戻屋については、このコーナーにおいて解説を重ねておりますが、保険者サイドにおける柔道整復療養費適正化として、平成24年3月12日付けで4課長通知が出されました。近畿地方を中心とするエリアでは、それまで以前から患者調査の名を借りた返戻屋が柔道整復の先生方を困らせていたようだと聞いておりますが、『「柔道整復療養費の適正化への取り組みについて」適切な実施』を掲げる同通知の主眼は、「被保険者及び施術所等の負担の軽減」「支給決定までの迅速化」「手続きの公平さ」を勘案しつつ、保険者による適正化の推進です。決して受診を抑制することが目的ではありません。

柔道整復の現場における返戻屋業務は、適正化の名を借りた受診抑制にほかありません。
保険者と民間業者で契約時に取り決めた調査基準、或いは民間業者が提案する調査基準により調査対象となる申請書が抽出されます。このようにして調査対象者が選定されると、当該の受診者についてオートマチック方式のように定期的な調査が繰り返されます。調査の対象となる治療内容は数か月も過去の内容であり、殆どの受診者は定かとは言えない記憶から明確な回答が行えず、申請書との整合性を欠くことになります。4課長通知によれば保険者は、疑義を生じた際に当該の施術所等に照会し迅速な疑義解消に努めなければなりません。ですが実際は、申請書に不備が無いにもかかわらず申請書は単に返戻を繰り返されることになります。

柔道整復師の先生の中には、この返戻により不要な不安を抱かれ申請書の再提出を行わない方もおられると耳にします。再提出をされない申請書が増えれば増えるほど返戻屋のお手柄と言えなくもありません。加えて受診者が調査に対して、受診先の柔道整復師の先生に当時の治療状況等を確認することは差し支え無い、と厚生労働省保険局保険課による判断通知が発出されています。ところが返戻屋や保険者によっては調査の回答にあたって、柔道整復師への問い合わせを禁じている例も少なくありません。さて今回は、紙ベースによる調査ではなく電子メールを利用した受診者調査をお示しいたします。

時代に即した調査手法であるものの、電子メールを受信された(おそらく被保険者)方が受診対象者でない場合(ご家族の通院に関する調査など)には、安易に回答がなされる懸念があります。申請書の作成や支給基準による規定は厳しく定められているにもかかわらず、保険者サイドの調査に関する規定は、非常に安易な対応を可能としていることは否めません。
この電子メールによる受診者調査にある質問2.では複数回答可となっているものの、支給基準に沿った適正な回答選択例はありません。すべて認められない選択肢ばかりが列挙されています。いわゆる筋肉痛は、急性・亜急性損傷の結果として自覚される場合もあり、身体運動器における損傷とは、一瞬の受傷機転・アクションでのみ生じるものではない筈です。柔道整復師の先生方がこれまでに学習され、治療技術を研鑽された諸経験から急性又は亜急性の骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷と判断下された場合に、特例的受領委任方式をもって健康保険取り扱いの根拠となります。その判断内容は、受診者へ説明がなされ受診者の理解をもって申請書への署名行動に進み、その上で治療が実施され、月末に支給申請書が完成することに至る筈です。

受診者の皆様が一様に、自らの身体運動器損傷の機転を十分に理解されるとは到底考えられず、適正に実施された治療と算定に対する受診者調査こそ、当該の柔道整復師と受診者が共に相互理解を得て堂々と回答すべきが本来の姿かもしれません。受診者調査と共に、適正な柔道整復の受診を促す目的であろう啓蒙文書が同封される例も少なくありません。しかし、その内容は受診否定のスタンスによる文面構成が殆どであり、「○○のような症状、○○のような外傷、○○により現れた痛みなどを自覚された場合には、適切に柔道整復に受診することができます!」などと記載されることなく、被保険者や加入者・扶養者を保護する精神からは逸脱した内容が多いようです。

昨今、柔道整復師に係る広告は確かに目に余るものが横行しており、検討専門委員会においても今後は厳しい広告規制が対処されそうだと窺えますが、柔道整復師が広告制限で「骨折や打撲などの傷病名表記が認められない限り、保険者による啓蒙文書に骨折や打撲などの傷病名が記載されているのも制限されるべきでありましょう。」医科の受診においても病名の判断は医師が行います。医師とは異なる柔道整復師ではありますが、協定(個人契約:取扱規定)には、「施術の必要があると認められる負傷に対して、的確な判断をもとに~施術をおこなう~」とあり傷病名の決定は柔道整復師が行うべき大切な責務です。骨折や挫傷を受傷したから柔道整復を受診するのではありません。身体運動器に何らかの症状を自覚して、柔道整復の受診を希望された患者を初検した上、柔道整復師の先生方が協定(取扱規定)に則り、判断が行われて柔道整復療養費特例受領委任に値する対応が可能か否か判断されることになります。白紙委任などと犯罪者扱いされる謂れのないように、正確な判断・確かな治療・特例受領委任を理解いただく説明など大切に励行頂きたいと願います。

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