調査票の実態【第4回:近畿圏内における某市町村国保】
今回ご紹介する患者調査票は、近畿圏内における某市町村国民健康保険課による手法です。
直接の業務は、「保険管理センター:ガリバー・インターナショナル(株)」が実施しています。12月において施術が行われ、その申請書についての調査ですが調査の実施日は3月31日となっていますので、3カ月もの期間を経て行われています。 いわゆる4課長通知においては「~患者の記憶が曖昧になり照会の意義が薄れることから、適切な時期に実施すること。」と規定されています。ですが、一般社会情勢からも3カ月以上も経た記憶が正しく調査反映されるのか?甚だ疑問が感じられます。
では、詳細に内容を見て参りましょう。調査依頼を表す文面には「本件の回答にあたりましては、わかる範囲で御記入ください。」とあります。ですが、僅かな回答誤りであっても提出された申請書は安易に返戻される例が後を絶たないようです。申請書と患者回答の内容が一致しない場合、「疑義を解消するよう十分な調査に努めること」と通知で規定がなされていますが現実には返戻屋と表せる業者による調査結果をもとに、あたかもオートマチックに申請書の返戻が行われているのが実情です。
特例として、80年の歳月を経て今尚その利用が認められている柔道整復療養費特例受領委任の方式は、昭和11年に許可された方式です。通知によって認められた方式であるものの、今日までの経年から柔道整復の現場における患者保護「制度」であると表すことができます。国民健康保険法は、昭和13年制定。現在の法解釈では、療養費は保険者判断であり、その扱い方法は償還払いが原則です。受領委任方式は法的な規定ではありません。ですが例え「特例」であっても、いわゆる法の不遡及概念をその解釈に応用することが可能であると編集部では捉えています。国民健康保険法により療養費は保険者判断だと法的な規定をなされる以前に、受領委任という形態を柔道整復の現場において既に方式化され確立していたと考えることが可能な訳です。受領委任方式は、月初の来院日や初検時に申請書への署名をいただき、その上で受領委任方式の説明を行い、推定的同意(いわゆる治療~請求行為等を包括した同意)を得て行われることを言い、これは白紙委任ではありません。
ですが〇〇市からのお知らせ・・・には、「①施術の内容 ②日数 ③負傷名・負傷原因 ④支払った金額を確認して署名をお願いします。」と受領委任の方式を覆すような記載が見られます。このような保険者による歪曲した啓蒙が原則化に向かう可能性も考えられることから、柔道整復の現場では、これまで認められてきた受領委任の方式について、十分な患者説明が重要です。
(クリックするとPDFが表示されます)
さて、この2枚の回答書に見られる回答の選択肢を比較して、読者の皆様はどのような感想をお持ちになったでしょうか?
Aの受診内容回答書では明らかに意図が読み取れます。 受診の事実を問う質問の回答順位は、「受診をしていない」が優先されています。 負傷原因を問う質問の回答は、「けがをした」という回答のみが保険治療(施術)として認められる回答であり、その他の回答選択肢は認められないことになります。 「けがをした・・・」とは外傷である表現として一般的ではありますが、介達外力による筋・腱の損傷などは「けが」と認識されない受診者が比較的多いと耳にいたします。 一見、簡単な設問・回答形式に見えますが、果たして柔道整復の患者目線による内容だと言い切れるでしょうか?ガリバーインターナショナルによる作成書面であるのでしょうが、患者調査の業務委託を請け負う会社として、返戻第一でなく受診者保護第一での業務遂行を願いたいものです。
Bの受診内容回答書は保険者によって工夫がされ、非常に回答しやすい内容に変更されています。保険者による患者視点の理解が伺えます。 受診の理由を回答する選択肢では、いわゆるケガや損傷があり柔道整復療養費特例受領委任において、保険治療の対象となる場合には誤回答が少ないであろうと判断されます。 いずれにしましても、これらの調査票が同一の受診者に何度も繰り返し送付されることには変わりなく、適正化の名を借りた受診抑制といえる手法です。
厚生労働行政について、先読み確かな役人の方々が柔道整復適正化を真剣に考え、不適正な柔道整復師には抑制作用を生じ、適正な柔道整復師はその業務をより認める方向で4課長通知が発令されたとは考えがたいです。柔道整復の現場では受診抑制効果により来院患者が減少している院が少なくありません。返戻の繰り返しにより再提出を断念する事案や、単に受診者による誤回答や記憶違いであっても不支給決定がなされることにより、誤った抑制政策が功を奏していると言える現状は明らかに誤りではないでしょうか。 適正に柔道整復業務の推進をなさる柔道整復師の先生方は、真摯に業務に精励され「信頼の回復」を常に意識して頂きたいと切に願います。
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