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調査票の実態【第3回:協会けんぽ京都支部】

特集 調査票の実態

今回は、全国健康保険協会京都支部による患者啓蒙文書・調査文書についてのご紹介です。まず全国健康保険協会(以下協会けんぽ)について、少し触れてみたいと思います。

厚生労働省の外局であった社会保険庁は、政府管掌健康保険(社会保険)事業、船員保険事業、厚生年金事業を担う行政機関でありました。年金事業不祥事も発覚し、平成21年末をもって廃止となりました。

廃止に伴い、全国都道府県に配置されていた社会保険局も解体されることとなり、保険者としての機能や保険医療機関・保険薬局・社会保険診療報酬支払基金等の指導監督権限も再整備され、現在は行政事務・指導監督は地方厚生局が行うことになっています。厚生年金等の年金事業は、日本年金機構が担うこととなり、保険者としての健康保険事業であった社会保険は、協会けんぽが担うこととなり現在に至っています。

協会けんぽは非公務員型法人として設立し、全国都道府県に支部が置かれ、全国の支部長は民間から採用されています。

これらの経緯から設立された協会けんぽは、民間的位置にある保険者ではあるものの、その職員の多数は柔道整復師の皆様にとって、もと管理行政の立場であったと表すことができます。また現在においても、「柔道整復師の施術に係る療養費の審査委員会」(柔整審査会)委員の委嘱権を有しており、柔道整復師の管理行政であったなごりなのでしょうか?つまり協会けんぽは、保険者ではあるものの柔道整復療養費に関しては柔整審査会委員委嘱権を有することから、事業に対する視点は常にニュートラルで公平なものでなければなりません。

この中立的視点をもとに事業を遂行しなければならない全国的組織であり、厚生労働省に最も近距離にある保険者として、柔道整復に係る患者調査の方法も他の保険者の模範となる手法でなければなりません。公平中立で適正な保険者でなければならないのです。

では協会けんぽ京都支部が行う患者調査票をご覧いただきましょう。

整骨院・接骨院は正しくかかりましょう
回答書

(クリックするとPDFが表示されます)

受診に際しての注意喚起文書構成では、まず受診制限を基本としたスタイルであることが読み取れます。「健康保険を利用した受診は細かく規定されています。」とあります。

加入者や(被保険者)被扶養者に誤解を与えず適正な柔道整復受診を目的とするならば、受診の参考になるような例を正しく挙げ示すことが第一であるはずです。

「全額自己負担」などの文言は抑制の際たる表現です。いわゆる4課長通知では、患者の記憶が曖昧にならない時期をもとに且つ疑義を生じた場合には速やかに疑義の解消に努めることが規定されています。ところが、患者回答と申請書が整合しなければ柔道整復師に対して一方的疑義を持ち、申請書は返戻されることになります。長期に渡りかつ日数が多い請求があたかも疑義ある請求であるかのような記載には、明らかに行き過ぎた表現だと疑問を感じます。

適正化推進を目的とした通知には、いわゆる偏重した意図的な長期の請求例や実日数頻回算定が高率に見られる場合など、特に意図的傾向が認められる場合に重点調査の対象とするように規定されています。ですが、実際には理由を問わず長期や頻回通院はあたかも悪しき例だと言わんばかりの申請書返戻の繰り返しや加入者啓蒙を行う様は、まるでゲームのようにも見えなくもありません。

また申請書への署名は、柔道整復療養費特例受領委任の方式に則る限り、月初来院日において(初検の場合を含む)、治療(施術)から申請書作成・提出までの主な事務作業までを包括した同意、いわゆる「推定的同意」をもとに料金算定等の作成前の申請書へ受診者署名をいただくのが本来です。 償還払い方式のように、申請書がすべて完成した後に署名をすることが適正な方法であるなどと誤解を生じかねない説明文の記載にも大きな疑問を感じます。

家族の付き添い来院が行われる場合を唯一、受診の機会としなければならない「ついで受診」も通常起こり得るひとつの受診形態であるはずです。

ホームドクターならぬ、かかりつけ柔道整復師として信頼を得て、家族の皆さんが通院をされ健康回復される例も現場では数多く見られます。この場合においても、家族通院は悪しき例であると捉えられていることからの申請書返戻があると聞きます。

受診状況回答書にも疑問が散見されます。柔道整復師の治療を受けた理由を回答する選択肢は、「けが」「慢性疲労」「その他」しかありません。協定や契約は勿論、支給基準においても「けが」や「慢性疲労」などの文言は見当たりません。これでは誤った動作による損傷や自覚できていない負傷の場合には、回答の余地はありません。柔道整復の治療は、投薬コントロールなどは認められておらず通院ごとに的確な判断のもとに患者の健康増進上妥当適切に施術を行うと規定されている限り、月に15日を超えた治療の理由は当該の柔道整復師が保険者の理由ある求めに応じて回答するべきことであると編集部では考えております。

協会けんぽと言う組織の設立の経緯・現在有する審査会委員委嘱権限から、特に公平中立な保険者機能推進が求められる筈ですが、非常に残念な手法であると言えそうですが読者の皆様はどのように感じておられるでしょうか。

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