調査票の実態【第1回:東京都後期高齢者医療広域連合】
柔道整復師の先生方が国民健康保険や後期高齢者医療広域連合の対象となる柔道整復療養費に係る保険請求を提出された場合には、柔道整復師の施術に係る療養費の審査委員会(柔整審査会)による審査と共に、国民健康保険団体連合会による審査を経て支払が行われることになります。
国民健康保険団体連合会(国保連合会)は1次審査・支払機関としての機能を果たしています。
国保連合会は、国民健康保険法第83条に基づき、市町村や国保組合等の保険者が共同し、目的を達成するための必要な事業を行うために設立された公法人です。柔道整復療養費に係る支給申請内容は、柔整審査会と国保連合会において審査がなされているのに何故?民間業者による患者調査までが行われるのでしょう。
柔整ホットニュース読者の皆様は、数か月も以前に柔道整復を受診され、その詳細な内容を記憶することができるでしょうか。例えるには失礼ですが単に感冒様症状で医師の受診をした際にレセプト記載をされる病名をすべて理解し記憶されるでしょうか。
単なる風邪引きとして受診されても、それは病名では無く、医師による診断の結果、数種類の病名が下されることは稀ではありません。
ですが医師による医療保険請求については、受診に対する調査は行われず従って特に記憶する必要はありません。では何故?柔道整復では受診内容を記憶しておく必要があるのでしょうか。どのような目的によって、どのような理由によって受診者調査が実施されるのでしょうか。
今回、編集部では東京都後期高齢者医療広域連合が民間業者へ委託された受診者調査書類を入手したので、この書類をもとに考えてみましょう。
これまでも柔道整復療養費特例受領委任における現場では、受診者照会・受診調査の類は以前から実施されていました。ですがその実態は主に、健康保険組合による調査がおおよそを占めていました。ところが昨今、国民健康保険や後期高齢者医療加入者においても盛んに実施されているようです。
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この最大の理由は、平成24年3月12日保医発・保保発・保国発・保高発0312第1号(いわゆる4課長通知)が発令されたことが第一であると言えます。目的は「柔整療養費の適正化への取り組みの一環」(同通知より)と考えられます。
国保連合会において、審査・支払いが実行された後、保険者である市町村が改めて点検を実施することを2次点検といい、これまでも行われていた保険者による点検です。 柔道整復に係る申請書は、その算定内容や傷病名、逓減計算や負傷原因など柔道整復のすべてを理解していなければ非常に困難な作業となることは明らかであり、紙ベースでの内容確認はその作業をより煩雑にしており、民間業者の手法による業務委託方式がもてはやされることは容易に想像することができます。そのような状況にある現場に、上記の通知が発令されました。
通知には、『「被保険者及び施術所等の負担の軽減」「支給決定までの迅速化」「手続きの公平さ」等を勘案しつつ、保険者が療養費の適正化に取り組むことを主眼としています。』とも記載されています。そして、あたかも民間業者による調査手法が望ましいと受け止められる内容であると言えなくもありません。
保険者であり行政の立場にもある市町村にとっては調整交付金による財政上の支援を受けられ、実際の調査業務全般は民間業者任せとなることから、まさに渡りに船なのかもしれません。その患者調査の実態のひとつとして、東京都後期高齢医療広域連合による内容はどうでしょう。このような調査票がアンケートと称して、当該月受診後3〜4ヶ月を経て受診者へ郵送される。年齢75歳を超えた高齢者の皆様が自らの傷病名・通院回数・身体の損傷や負傷そしてケガなどの内容を正確に記憶しておくことができるでしょうか。
勿論、通知に則り発行された領収証と照らし合わせれば金額や日数の確認は可能です。また比較的大きな受傷機転があった場合の通院であれば負傷の原因も、その記載は比較的容易いかもしれません。ところが、いわゆる亜急性損傷など単に「ケガ」と言い切れない損傷による場合には負傷原因の具体的記載が困難な場合も十分あり得ます。提出された申請書と患者調査結果との整合性が認められなければ、疑義として、申請書の返戻が行われることになります。
これらの手法が本当に正しく適正化推進の一環と言えるのか、編集部では疑問視しています。これらの患者調査は、保険者と業者との契約期間中繰り返し行われることになります。許してはならない不正行為抑制には一定の効果が見込まれるものの、適切に柔道整復を実践されている柔道整復師の先生方にとっては大きな受診抑制になる筈です。
この国の厚生労働行政の数年も先読みをされ、正しく導くことを旨とされる役人の諸氏は本当にこの手法が公正な柔道整復適正化であるとお考えなのか?通知を発令される方々は国家における公務員でありますが、柔道整復の現場を支える柔道整復師の先生方も国が認めたライセンスを所有している国家資格者です。
国家資格者であるにもかかわらず、すべてひとくくりな受診抑制政策には甚だ疑問を感じます。編集部では今後も様々な患者調査書類を入手し皆様にお見せしたいと予定しております。
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