HOME 特集 保険請求の手引き 保険請求の手引き【第10回:療養費の支給基準 その9】

保険請求の手引き【第10回:療養費の支給基準 その9】

保険請求の手引き 特集

近接部位については、地域によってやや解釈の異なる場合があると聞きます。 各都道府県に設置された「柔道整復療養費審査委員会」における取扱いが異なる、いわゆるローカルルールとも呼ばれる事実があるようです。これらの解消もさることながら、全国的に統一された審査基準構築のためにも、柔道整復療養費審査委員会設置規定も十分な見直しを期待したいところです。

4 その他の事項

(1) 近接部位の算定方法

  • 頸部,腰部又は肩関節のうちいずれか2部位の捻挫と同時に生じた背部打撲(肩部を含む。) 又は挫傷に対する施術料は,捻挫に対する所定料金のみにより算定すること。
  • 左右の肩関節捻挫と同時に生じた頸部捻挫又は背部打撲に対する施術料は,左右の肩関節捻挫に対する所定料金のみにより算定すること。
  • 顎関節の捻挫は,捻挫の部の料金をもって左右各1部位として算定して差し支えないが,同時に生じた同側の顔面部打撲に対する施術料は,捻挫に対する所定料金のみにより算定すること。
  • 指・趾骨の骨折又は脱臼と同時に生じた不全骨折,捻挫又は打撲に対する施術料は,骨折又は脱臼に対する所定料金のみにより算定すること。
  • 関節近接部位の骨折の場合,同時に生じた当該骨折の部位に最も近い関節の捻挫に対する施術料は,骨折に対する所定料金のみにより算定すること。
    また,関節捻挫と同時に生じた当該関節近接部位の打撲又は挫傷に対する施術料は,別にその所定料金を算定することなく,捻挫に対する所定料金のみにより算定すること。この場合の近接部位とは,次の場合を除き,当該捻挫の部位から上下2関節までの範囲のものであること。

① 手関節捻挫と前腕部打撲又は挫傷(上部に限る。)
② 肘関節捻挫と前腕部打撲又は挫傷(下部に限る。)
③ 肘関節捻挫と上腕部打撲又は挫傷(上部に限る。)
④ 肩関節捻挫と上腕部打撲又は挫傷(下部に限る。)
⑤ 足関節捻挫と下腿部打撲又は挫傷(上部に限る。)
⑥ 膝関節捻挫と下腿部打撲又は挫傷(下部に限る。)
⑦ 膝関節捻挫と大腿部打撲又は挫傷(上部に限る。)
⑧ 股関節捻挫と大腿部打撲又は挫傷(下部に限る。)

(注)上部,下部とは,部位を概ね上部,幹部,下部に三等分した場合のものであること。
なお,当該負傷の施術継続中に発生した同一部位又は近接部位の負傷に係る施術料は,当該負傷と同時に生じた負傷の場合と同様の取扱いとすること。

近接部位に係る支給基準規定には、「同時」という文言が示されており、同文言がこれまでに様々な解釈を招くことがあったようです。では、平成23年3月3日付で発令された事務連絡(平成22年5月24日保発0524第2号に続く)の一部抜粋を見てみましょう。

(問28)両側の肩関節捻挫と同時に生じた背部打撲に対する施術料はそれぞれ算定可能か。
また、一側の肩関節の捻挫と同時に生じた背部打撲に対する施術料は算定可能か。

(答)「柔道整復師の施術に係る算定基準の実施上の留意事項」(平成9年4月17日保険発第57号医療課長通知)の第5の4(1)イでは、「左右の肩関節捻挫と同時に負傷した頸部捻挫又は背部打撲に対する施術料は、左右の肩関節捻挫に対する所定料金のみにより算定すること。」とされているが、両側の肩関節の捻挫と同時に生じた背部(下部に限る)の打撲については、第5の4(1)カ④「算定可能な部位の負傷例(脱臼・打撲・捻挫・挫傷の場合)」の4によりそれぞれ算定可能である。また、一側の肩関節捻挫と同時に生じた背部打撲については、第5の4(1)カ④「算定可能な部位の負傷例(脱臼・打撲・捻挫・挫傷の場合)の2によりそれぞれ算定可能としているが、同側の背部打撲(上部)については算定できない。

この内容から

  • 左肩関節捻挫・右肩関節捻挫・頸部捻挫=算定不可(左右の肩関節捻挫の所定料金のみ)
  • 左肩関節捻挫・右肩関節捻挫・背部打撲=算定不可(左右の肩関節捻挫の所定料金のみ)
  • 左肩関節捻挫・右肩関節捻挫・背部打撲(下部)=算定可能
  • 左肩関節捻挫・左背部打撲(上部)=算定不可
  • 右肩関節捻挫・右背部打撲(上部)=算定不可
  • 左肩関節捻挫・背部打撲=算定可能
  • 右肩関節捻挫・背部打撲=算定可能
  • 左肩関節捻挫・左背部打撲(下部)=算定可能
  • 右肩関節捻挫・右背部打撲(下部)=算定可能

と考えることができます。

(問29)「柔道整復師の施術に係る算定基準の実施上の留意事項」(平成9年4月17日保険発第57号医療課長通知。以下「留意事項通知」という。)の第5の4(1)近接部位の算定方法ア~オでは「同時に生じた負傷」についての算定方法が示されているが、同時ではなく、それぞれ別に負傷した場合には、同時に負傷した場合と区別してそれぞれ算定してもよいか。

(答)「留意事項通知」第5の4(1)オなお書きに記載されているとおり、施術期間中に発 した同一部位又は近接部位の負傷に係る施術料は、それぞれ別に負傷した場合であっても同時に生じた負傷の場合と同様の取扱いすることとされており、区別してそれぞれ算定することはできない。

この内容から「同時」という文言について、例え同時負傷で無く、それぞれ別に負傷した場合においても算定はできないことになります。

例として、頸部捻挫・右肩関節捻挫を治療している期間中に、新たに背部打撲が発生してもその施術料は、頸部捻挫・右肩関節捻挫のどちらかに含めることとなります。

柔道整復師の先生方におかれましては、柔道整復療養費審査会や保険者による指摘を受けることなく、近接算定について正しい認識をお持ち下さい。いわゆるレセコン任せとならないよう受診者の負傷に対して、的確な判断のもとに傷病名を下して頂きたいと願います。

Visited 45 times, 1 visit(s) today