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これだけは知っておいて【第97回:「柔道整復師」「柔道整復術」を考える ―Ⅳ―】

これだけは知っておいて 特集

長尾淳彦

(都道府県知事の指示)

第18条
都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長、以下同じ)は、衛生上害を生ずるおそれがあると認めるときは、柔道整復師に対し、その業務に関して必要な指示をすることができる。
医師の団体は、前項の指示に関して、都道府県知事に意見を述べることができる。
逐条解説より
  • 本条は、柔道整復師の業務に関する都道府県知事等の指示及び指示に関する医師の団体の意見陳述権につき規定したものである。
  • 柔道整復師の業務は、医業と密接な関係があるが、前条の脱臼又は骨折の患部に施術する場合に医師の同意を要すること以外独自に行うことができ(他の医療関係職種の業務については、医師の指示の下に行うことが定められている。)しかも、通例、その業務は、病院、診療所ではなく、施術所において行われる。
    したがって、本条において、衛生上害を生ずるおそれがあると認めるときは、都道府県知事に必要な指示を与える権限を与えるとともに、医療に関する専門家集団である医師の団体が都道府県知事にこの指示に関し意見を述べる権限を与え、国民の危害を防止し、柔道整復師の業務の適正な実施を担保しようとするものである。

 

第5章 施術所

(施術所の届出)

第19条
施術所を開設した者は、開設後10日以内に、開設の場所、業務に従事する柔道整復師の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。その届出事項に変更を生じたときも同様とする。
施術所の開設者は、その施術所を休止し、又は廃止したときは、その日から10日以内に、その旨を前項の都道府県知事に届け出なければならない。休止した施術所を再開したときも、同様とする。
逐条解説より
  • 本条は、施術所の届出について規定したものである。
  • 第一項は、施術所を開設した者は、厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならないことを規定している。施術所は、施術者以外の者でも開設し得る。
  • 第二項は、施術所の休廃止及び再開につき規定している。
    施術所の休止は、施術所が一時的にその機能を停止することである。施術所の開設者は自己の意思によりその業務を停止し、施術所の機能を一定期間停止させることができる。この場合には、開設者は、十日以内に施術所所在地の都道府県知事に届け出なければならない。施術所を廃止したときも同様である。休止した施術所を再開したときも、同様十日以内に届け出ることを要する。

届出事項(施行規則第17条)

開設者の氏名及び住所(法人については、名称及び主たる事務所の所在地)
開設の年月日
名称
開設の場所
業務に従事する柔道整復師の氏名
構造設備の概要及び平面図
施術所の開設者は必ずしも柔道整復師の免許を有している者でなければならないという規定はなく、何人でも施術所を開設することが出来る。ただし、開設される施術所には業務に従事する柔道整復師がいなければならない。
開設者が婚姻などで氏名を変更したときは開設者は同一人であるから届出事項の変更を届出ることになるが譲渡や相続などの開設者が別の人に変わった場合にははじめに施術所を開設した者が「施術所の廃止」を届け、新たに施術所を開設する者が改めて「施術所の開設」届出をしなければならない。
施術所の開設者は自己の意思によりいつでもその業務を停止し、施術所を一定期間休止することが出来る。
施術所を廃止する場合には、開設者の意思による場合、開設者の死亡または失踪の宣告による場合、開設した法人の解散などによる場合などがある。

罰則(柔道整復師法第30条第6号)

施術所の開設、休止、廃止、再開の届出や届出事項の変更の届出を行わなかったり虚偽の届出をした者は30万円以下の罰金に処せられる。

両罰規定(柔道整復師法第32条)

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他従事者が、この開設等の届出や届出事項の変更の届出(柔道整復師法第19条第1項、第2項)をしなかったり、虚偽の届出をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても同じ刑を科せられる。

 

(施術所の構造設備等)

第20条
施術所の構造設備は、厚生労働省令で定める基準に適合したものでなければならない。
施術所の開設者は、当該施術所につき、厚生労働省令で定める衛生上必要な措置を講じなければならない。
逐条解説より
  • 本条は、施術所の構造設備及び衛生上必要な措置につき規定したものである。
  • 施術所の構造設備基準及び衛生上必要な措置については厚生労働省令で定められる。

施術所の構造設備等

施術所の構造設備基準(施行規則第18条)

6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
3.3平方メートル以上の待合室を有すること。
施術室は室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること。
ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りではない。
施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。

衛生上必要な措置(施行規則第19条)

常に清潔に保つこと。
採光、照明及び換気を充分にすること。

施術所に対する監督

施術所に対する監督は施術所所在地の都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては市長又は区長)が行う。

保健所の設置については地域保健法第5条に「保健所は都道府県、地方自治法に定める指定都市、中核市その他の政令に定める市又は特別区が、これを設置する」と定めている。
都道府県(47)
指定都市(18市)
札幌市、仙台市、千葉市、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、北九州市、福岡市、さいたま市、静岡市、堺市、新潟市、浜松市、岡山市

 

(報告及び検査)

第21条
都道府県知事は、必要があると認めるときは、施術所の開設者若しくは柔道整復師に対し、必要な報告を求め、又はその職員に、施術所に立ち入り、その構造設備若しくは前条第2項の規定による衛生上の措置の実施状況を検査させることができる。
前項の規定によって立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められるものと解してはならない。
逐条解説より
  • 本条及び次条は、施術所に対する監督につき規定したものである。
  • 施術所に対する監督は、都道府県知事(保健所を設置する市の市長)が次により行うことができると規定している。
    施術者に対する報告命令―都道府県知事は必要な報告を施術者に提出させることができる。
    当該吏員による立入検査―都道府県知事は、当該吏員に施術所を臨検し、その清潔保持若しくは規格に関して検査をさせる。この際立入検査を行う当該吏員は、その身分を示す証票を携帯しなければならない。
    この報告を怠り、若しくは虚偽の報告をした者又はこの検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は十万円以下の罰金に処せられる。(法第28条参照)
職員が携帯する身分を示す証明書は様式第6号による。(施行規則第20条)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従事者がこの法第21条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による職員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避(柔道整復師法第30条第7号)したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても刑を科する(両罰規定:柔道整復師法第32条)。

 

(使用制限等)

第22条
都道府県知事は、施術所の構造設備が第20条第1項の基準に適合していないと認めるとき、又は施術所につき同条第2項の衛生上の措置が講じられていないと認めるときは、その開設者に対し、期間を定めて、当該施術所の全部もしくは一部の使用を制限し、若しくは禁止し、又は当該構造設備を改善し、若しくは当該衛生上の措置を講ずべき旨を命ずることができる。
逐条解説より
  • 本条は、施術所の使用の制限、禁止命令及び構造設備の改善命令、衛生上の措置命令につき規定したものである。
  • この規定に基づく処分又は命令に違反した者は、二十万円以下の罰金が課せられる。(法第27条参照)

施術所の使用制限など

施術所の構造設備が標準(柔道整復師法第20条第1項、施行規則第18条)に適合していないか、衛生上必要な措置(柔道整復師法第20条第2項、施行規則第19条)が講じられていないときは、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては市長又は区長)は、施術所の開設者に対し、次の旨を命ずることができる。

期間を定めて、当該施術所の全部もしくは一部の使用制限又は禁止。
当該構造設備の改善。
当該衛生上の措置を講ずべき旨。
この処分又は命令に違反した者は30万円以下の罰金に処せられる(柔道整復師法第30条第4項).
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従事者がこの法第22条に定める処分又は命令に違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても刑を科する(両罰規定:柔道整復師法第32条)。

 

(平成28年度版 柔道整復師のための保険請求の手引き 長尾淳彦著 より引用)

 

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