HOME 特集 これだけは知っておいて これだけは知っておいて【第95回:「柔道整復師」「柔道整復術」を考える ―Ⅱ―】

これだけは知っておいて【第95回:「柔道整復師」「柔道整復術」を考える ―Ⅱ―】

これだけは知っておいて 特集

長尾淳彦

「柔道整復師法」から「柔道整復師」「柔道整復術」をについて考えていきましょう。

(平成28年度版 柔道整復師のための保険請求の手引き 長尾淳彦著 より引用)

柔道整復師法 (昭和45年4月14日法律第19号)
第1章 総則

(目的)

第1条
この法律は、柔道整復師の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律することを目的とする。
逐条解説より

本条は、柔道整復師の資格を定め、その業務の適正な運用を規律するという目的を定めたものである。

*免許制度を設ける理由(著者注釈)

柔道整復術は人体に危害を及ぼすおそれのある行為も含まれているため、一定の水準の知識及び技能を有する者が行うのでなければ、衛生水準の低下を招くことになる.このため、法により免許制度を設け、免許者のみが独占的に施術を行うこととするとともに、免許者の業務が適正に運用されるように規律し、衛生水準の向上を図ることとする。
現状の柔道整復師は国民(患者)が求める医療水準に応えられるのだろうか?免許取得までの養成プログラムと卒後、生涯教育・研修プログラムを充実させなければならない。現状実務と制度が極端に乖離しているならば、国民の要求に沿った制度の改正が行われるべきである。

 

(定義)

第2条
この法律において「柔道整復師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者をいう。
この法律において「施術所」とは、柔道整復師が柔道整復の業務 を行なう場所をいう。(昭和63法72・一部改正)
逐条解説より
  • 本条は、柔道整復師及び施術所の定義を定めたものである。
  • 柔道整復師の業務は、脱臼、骨折、打撲、捻挫等に対しその回復を図る施術を業として行うものである。
    この施術の業務は医業と密接な関係にあり、身体に及ぼす影響も大きいので、この業務を行うことは一般には禁止されている(医師を除く。)が、柔道整復師はその解除(免許)を受けてこれをなし得る資格を付与される。
    昭和63年改正法は、柔道整復師の免許の付与者を、都道府県知事から厚生大臣(厚生労働大臣)とするとともに、受験資格について養成施設における修業年限を中学校卒業後四年(高校卒業後二年)以上を、高校卒業後三年以上に改めた。
  • 施術所は、柔道整復師がその業務を行う場所であるが、施術者が公衆又は特定多数人のために施術をなす場所をいうのであって、特定の個々人だけを対象とするものは、ここにいう施術所には該当しない。したがって柔道整復師が出張して患者の家において施術を行う場合、その場所が「施術所」になるものではない。
  • 施術所の名称については医療法において病院又は診療所にまぎらわしい名称をつけることが禁じられている。すなわち、医療法第三条第一項は次のように規定している。
    「疾病の治療(助産を含む。)をなす場所であって、病院又は診療所でないものは、これに病院、病院分院、産院、療養所、診療所、診察所、医院その他病院又は診療所に紛らわしい名称を附けてはならない。」
    それ故、施術所が医院、診療所、療院などという名称を付け得ないことはいうまでもない。ただ、従来の行政実例に従えば「あん摩療院」「○○鍼灸治療院」等のごとく、それぞれの施術の名称を上に付するときは許されるものと解されている。これ以外にはその名称について特別の制限はない。施術所なる文字をその名称中に用いることを強制されているわけではない。
    なお施術所が病院又は診療所に紛らわしい名称を付した場合は、十万円以下の罰金に処せられる。(医療法第74条参照)

*「柔道整復師」とは?

柔道整復師とは、厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者をいう。
業とするとは、反復継続の意思をもって施術を行うことをいい、その施術の対価として報酬を目的とし、またはこれを現実に受けたか否かを問わないものとされている。
また、反復継続して行う意思があるときは、必ずしも数人に対しまたは一人に対し数回施術を行うことを要せず、一人一回の施術を行った場合でも業として行ったことになる。

*「施術所」とは?

施術所とは、柔道整復師が柔道整復の業務を行なう場所をいう。
柔道整復師が行う柔道整復の業務とは、脱臼、骨折、打撲、捻挫等に対しその回復を図る施術を業として行うもの.とされている。

 

第2章 免許

(免許)

第3条
柔道整復師の免許(以下「免許」という)は柔道整復師国家試験(以下「試験という」)に合格した者に対して、厚生労働大臣が与える。
逐条解説より
  • 本条及び次条は、免許の要件につき規定したものである。
  • 免許を取得するために積極的に具備していかなければならない要件を積極的資格要件といい、他方、免許を取得するためには該当してはならない一定の要件を消極的資格要件又は欠格条件という。一般に、人がある地位に就いたり、ある業務を営んだりすることができるための前提条件として、その人が一定の資格を備えていることが法律上必要とされている場合に、その資格要件を欠いている状態(したがって、逆に、一定の事由に該当しないことが法律上必要とされている場合には、その事由に該当している状態)を「欠格」といい、欠格条件とは、欠格となるべき条件をいう(欠格となるべき事由を「欠格事由」という。)柔道整復師の免許を受けるためには、この積極的要件を満たすとともに消極的要件に該当していてはならない。
    本条は、免許の積極的資格要件を定めている。免許の積極的資格要件は、柔道整復師試験に合格することである。すなわち、柔道整復師の学校養成所の卒業生など受験資格を有する者が、柔道整復師としての業務を支障なく行うことができるための十分な知識技能を修得しているかどうかを試験というふるいにかけて判定しようとするものである。

 

(欠格事由)

第4条
次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
  1. 心身の障害により柔道整復師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
  2. 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
  3. 罰金以上の刑に処せられた者
  4. 前号に該当する者を除くほか、柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者
逐条解説より
  • 本条は、免許の消極的資格要件(欠格条件)につき規定したものである。
  • 免許の消極的資格要件とは、免許を受けるためには備えていてはならない要件である。柔道整復師の免許については相対的な欠格事由だけが規定されており、この条項のいずれかに該当する者から免許申請があったとき、厚生大臣はその情状や疾病の程度等を勘案し免許を与えるかどうかを決定することになる。これに該当する者には試験合格等の積極的資格要件を満たしていても免許は与えられないことがある。
  • 柔道整復師の業務に関して犯罪又は不正の行為があった者に対しては、刑に処せられたか否か、起訴されたか否かを問わず免許を与えないことがある。このような犯罪又は不正の例としては、無資格で柔道整復の業を行う場合や、診療報酬の不正請求を行った場合などがある。
    素行が著しく不良であるとは、いろいろのケースがあり、一概にいうことはできないが、一般論としては柔道整復師としての業務を遂行する者として著しく不適切、つまり、著しく信用を失墜する行為をした場合である。
    精神病者、麻薬、大麻若しくはあへんの中毒者はその精神能力が不全であるおそれが強いこと、また、伝染性疾患にかかっている者は、業務の性質上患者に感染させるおそれが強いことにより柔道整復師としては不適切であるからである。
    なお、柔道整復師として業務に従事させることが適切でないような中毒患者かどうか、重大な伝染病かどうかは個別のケースにつき医師の診断に基づき厚生大臣が判断する。

*「免許」とは?

免許とは、社会公共の秩序を維持し、その障害を除去するために、一般人には禁じられているある行為を特定人に対して解除し適法になし得る資格、または身分を与える行政機関の行為をいう。
免許は特定人(法人等も含むが柔道整復師免許は自然人のみ)に与えられた無形の身分や資格であり、申請者の主観的事情に着目して与えられるもの(例えば医師免許、柔道整復師免許など)は特定人のみしか効果が及ばず、他の人に貸与したり、譲渡や相続などをすることはできない。また何らかの理由(取消や業務停止命令など)がない限り、その効力は免許の有効期間中(柔道整復師免許の場合は終生)存続するものである。

 

第5条~第9条 省略

 

第3章 試験

第10条~第14条 省略

次号につづく

Visited 58 times, 1 visit(s) today