これだけは知っておいて【第91回:腹(腑)に落ちる内容に裏付けられた柔道整復の制度設計 そのII】
長尾淳彦
明治初期の西洋医学への完全転換、戦後GHQの関与などにより現在「柔道整復」は、医療の中では亜流としての存在となっている。しかし、柔道整復を利用される国民の支持はいまも高いものがある。また、接骨院での業務以外にも柔道整復師の資格をベースに介護支援専門員や機能訓練指導員として介護保険に係る業務にも携わっている。スポーツ現場では、メディカル、フィジカルなどのトレーナーとして活躍の場がある。
ただ、平成に入ってからの35年間で接骨院って何をしてくれるところ?という世代の人たちが多くいることも確かである。
柔道整復師、接骨院、整骨院、ほねつぎなどの名称についても国民は正しく理解しているか?病院や医院、歯科医院などの医療機関と似たような窓口業務であるが現物給付の医療費ではなく、現金給付である療養費の受領委任の取扱いによりそのような方法が行える。
これは柔道整復師のためでなく患者さんである国民の利便性を考えての取扱いであることを忘れてはならない。
ケガをして健康保険が使えると思って来院した患者さんに対して、接骨院・整骨院と看板をあげていても「ウチは保険は使えません」とその院・店が勝手に決めた実費料金を徴収される。これは広告の制限により保険で治療できるのか否かは施術所の中に入ってからでないとわからない。こうした点も標榜できる内容に是正していかなければ患者さんに不利益となる。
我々、柔道整復師がどのように社会に貢献するかを常に問わなければならない。
柔道整復師法に傷病(負傷)名が全く記載されていないにも関わらず、療養費の支給基準での柔道整復師の業務範囲は「骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷」の5つの傷病名に限定されてきた。1920年の柔道整復術公認時から何も変わっていない。
しかし、時代(生活様式など)の変化とともに起因や病態も変化する。いままで大きくかわることも変えることもなく残っている。現在、制度疲労ともいうべき事態に陥っていると考える。
保険請求のために単に傷病(負傷)名を変えるという短絡的なものでなく「柔道整復師法」の業務制限(第4章「業務」第15条・第16条・第17条)と現状に照らし合わせて柔道整復師の「業務範囲」いわゆる柔道整復師が出来ること、出来ないことを明らかにしていくことが必要である。
療養費の請求、審査、支払いの一体化と透明性を確保して、いまこそ厚生労働省、保険者、柔道整復師によって、腹(腑)に落ちる内容に裏付けられた柔道整復療養費の制度設計が行われ、国民に示す時期であると思う。
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