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これだけは知っておいて【第85回:第30回柔道整復師国家試験の結果から】

これだけは知っておいて 特集

明治国際医療大学 教授
長尾淳彦

令和4年3月6日に実施された第30回柔道整復師国家試験の結果が発表された。

受験者数4359(第29回4561)名、合格者数2740(第29回3011)名合格率62.9(第29回66.0)%であった。

過去を追うと第28回柔道整復師国家試験受験者数5270(第27回6164)名、合格者数3401(第27回4054)名、合格率64.5(第27回65.8)%。であった。

第26回柔道整復師国家試験の合格率58.4%が近年の最低合格率であったが平成26年度からは65%前後の合格率で年間3-4000名の有資格者が誕生している。

平成4年度が柔道整復師国家試験第1回目であり、一学年の定員が1050名の総量規制であった時代である。平成4年度の受験者数1066名(既卒も含む)、合格者数963名、合格率90.3%であった。

平成10年の柔道整復師養成施設設置の裁判を経て、千名単位で受験生が増えた年度は、平成14年度の第11回柔道整復師国家試験、受験者数2454名、合格者数2108名、合格率85.9%で翌15年は受験者数3000名、合格者数2215名、合格率73.8%、16年は受験者数4122名、合格者数2902名、合格率70.4%、17年は受験者数5127名、合格者数3755名、合格率73.2%、19年は受験者数6702名、合格者数5069名、合格率75.6%であり、21年は受験者数7156名、合格者数5570名、合格率77.8%が受験者数、合格者数のピークであった。

柔道整復療養費が4000億円前後の最高値レベルにあったのもこの時期である。

平成30年度からの新カリキュラム導入により養成施設の定員や充足数の減が起こっており新カリキュラム養成施設完成年度の令和3年、大学完成年度令和4年の合格者数が3000名前後、合格率が65%前後というのも興味深い。

制度の沿革に合わせて受験者数の増減があるのはわかるが年々合格率が下位で推移していることは柔道整復師の質が担保されていないことを表している。

基礎学力の低下は倫理観の低下にも繋がり養成施設入学から卒業までの人格形成のコアカリキュラムを構築しなければならない。

また、近年、大学の合格率が相当低水準で推移している。高等教育の大学がこんな合格率では?と首をかしげる関係者の声が聞こえる。これは、大学の単位を取得し大卒条件として公務員や一般企業に就職をする人が多くなって、柔道整復師の資格を取ることを第一優先としていないところに起因している。このような不合格者は次年度受験しない傾向にある。

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