これだけは知っておいて【第77回:学会が認定する「骨折施術柔道整復師(仮称)」「脱臼施術柔道整復師(仮称)」「超音波観察装置取扱柔道整復師(仮称)」について】
明治国際医療大学 教授
公益社団法人日本柔道整復師会 理事
一般社団法人日本柔道整復接骨医学会 理事
長尾淳彦
学術団体である学会の「認定〇〇」という称号は、各種学会が定めた認定取得のカリキュラム等に基づいて研鑽に努め、治療・研究実績や学術的活動による認定審査に合格した者を指します。
医療職種の資格の上に更なる最新の知識と技術が積まれて定められたカリキュラム等を受け審査を経て「認定〇〇」となります。
医師の世界では、「〇〇専門医」と称するには「日本専門医機構」に登録された基本領域学会・研修プログラムを履修することから始まります。
日本専門医機構が認定する「専門医」とは、それぞれの診療領域における適切な教育を受けて、十分な知識・経験を持ち患者から信頼される標準的な医療を提供できるとともに先端的な医療を理解し情報を提供できる医師と定義されています。
現在の日本柔道整復接骨医学会「認定柔道整復師」の取得条件は「本医学会正会員在籍5年間+学会主催研修会1回以上の参加+生涯学習履修申告書の提出」と自己申告を基本としております。現在、柔道整復師業界全体で学や術をアップデートする環境は整っているでしょうか?どの職種でも知識や技術のアップデートをしていない業界は衰退していきます。
柔道整復師業界にはアップデートするための「階層化認定制度」が必要です。
医師以外で応急手当と言えども「骨折」「脱臼」に対する施術を行えるのは柔道整復師だけです。広告の制限で「ほねつぎ」が認められているのは「骨折」「脱臼」に対する施術を行えるからです。
柔道整復師は国家試験合格し登録すれば施術をすることは可能です。療養費の受領委任の取扱いを行うためには3年間の実務経験と2日間16時間の研修を受ければ受領委任の取扱い施術所を開業して施術が行えます。ただ、これだけでは患者である国民が自身の身体を柔道整復師に預けるに足りる信用を得ることは難しいと思います。
まずは、柔道整復師(ほねつぎ)の根幹である「骨折」「脱臼」施術に関しての認定制度と「超音波観察装置」の取扱についての認定制度に着手したいと考えております。
この認定制度は、日本柔道整復接骨医学会だけでなく、公益財団法人柔道整復研修試験財団、公益社団法人全国柔道整復学校協会、公益社団法人日本柔道整復師会が協調して実施し研修カリキュラム・プログラム等は日本医師会、厚生労働省の監修を受けて行っていく予定です。
特に「超音波観察装置」の取扱については、超音波が患者に与える浸襲は低いと考えられますが得られた結果を正しく判断しなければなりません。誤った判断となれば患者にとって重大な不利益を被ることとなり超音波観察装置を施行する者は極めて大きな責任を有するものであるという認識が必要です。超音波観察装置取扱いの研修については法令遵守とともに慎重に徹底的に行う必要があります。
柔道整復術の根幹は何か?
柔道整復師という職業はどのような目的で存在しているか?
どのような教育、研修の内容を進めていかなければならないか?
例えば、鍼灸師は、はり、きゅうを治療の手段とするために教育、研修の内容を進めて理学療法士は運動療法と物理療法を治療の手段とするために教育、研修の内容を進めています。柔道整復師は何を対象にどのようなオリジナリティある治療手段を教育、研修の内容として進めるのか?私は骨折、脱臼施術が正しく出来れば捻挫、打撲、挫傷はそれに準ずればコア・カリキュラムは構築できると考えています。超音波観察装置取扱いも同様です。
骨折、脱臼施術を継続して加療する時の「医師の同意」や治療計画の進捗の確認など医接連携についても信頼関係なくては行えません。医師との信頼関係構築には相手に柔道整復師を正しく理解してもらうことです。
最後に、柔道整復師という資格を持つ人の多くが業界で唯一日本学術会議登録の日本柔道整復接骨医学会を「学べる場」、「研究できる場」、「自分の考えを発信出来て検証できる場」として活用していただきたいと思います。まず、既存の「認定柔道整復師」を取得してください。
業界を「明るく」するのも「暗く」するのも私たち柔道整復師です。皆で「楽しく明るく」していきましょう。
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