これだけは知っておいて【第50回:柔道整復師の就職と年収】
明治国際医療大学 教授 長尾 淳彦
昭和から平成に元号が変わる30数年前、「接骨院の先生」は憧れの職業であったと思う。
全国14校の柔道整復師養成施設も1学年の定員1050名という総量規制の中、年間800-900名の柔道整復師を輩出してきた。(当時の国家試験合格率80-90%)
街の名士であり、高級車に乗り豪邸に住むイメージがまだあった時代である。
現在、大学16校、専門学校90数校、1学年定員7000名、年間5000名以上の有資格者が誕生している。
最近の学生の就職動向は、柔道整復師業界へ3割、関連医療業界、介護福祉業界へ3割、全く医療と関係のない職種に3割、公務員1割という割合である。
即開業はほぼ0で将来出来れば開業も2-3割という傾向である。
開業に係る経済的リスクや精神的リスクを負いたくないというのが大きな理由らしい。健康保険をはじめとする福利厚生が完備されている.昇給や手当の条件などがオープン化されている.なども就職先を選ぶ優先順位の高い条件である。
一人施術所の多い接骨院で上記の条件をクリアするところは皆無である。開業ノウハウとほねつぎの技を教えてもらうために徒弟制度の中で低賃金重労働に十年前後、耐えていた時代は終わった。現在は「安定」を望む時代である。
現在、10万人を超えた柔道整復師、開設施術所5万を超えている。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査2017によると
医療職種別の年収(フルタイム)は
- 医師 1233
- 歯科医師 757
- 薬剤師 544
- 放射線技師 503
- 看護師 478
- 臨床検査技師 468
- 歯科技工士 407
- 准看護師 406
- 理学療法士・作業療法士 405
- 栄養士 346
- 歯科衛生士 343
(万円)
医療職種別の時給(パートタイム)は
- 医師 11362
- 歯科医師 4475
- 放射線技師 2736
- 薬剤師 2390
- 理学療法士・作業療法士 2336
- 歯科技工士 2327
- 看護師 1716
- 臨床検査技師 1636
- 歯科衛生士 1500
- 准看護師 1433
- 栄養士 1208
(円)
柔道整復師の給与、時給の平均は定かではないが、専門学校、大学の高い学費を払い、安い給与・時給で修業をし、開業に係る資金を融資してもらい何年で回収できるか?過当競争の業界を生き残れるのか?夢のある選択は出来ない状況だと思う。
こうした問題解決には実態調査を行い柔道整復師の年収、時給を上げていく努力が必要である。そのためには柔道整復師の質の向上と存在価値を高める以外にないと思う。
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