これだけは知っておいて【第22回:柔道整復師が行政とともに取り組むべき事項 その2】
明治国際医療大学 教授 長尾 淳彦
柔道整復師の業務範囲についての共通の認識
柔道整復師の業務の範囲は下記の禁止事項(第15条、第16条)以外柔道整復師法には記されていない。
では、療養費の「骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷」の傷病名はどこからでてきたのか?
また、新鮮外傷(外傷性)や急性、亜急性などの用語の定義は?
柔道整復師、保険者、患者(国民)、行政執行者が共通の認識として同一定義を持たなければいけない。
第4章 業務
(業務の禁止)
第15条
医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行なってはならない
*「業務独占」とは?
柔道整復の業務は医師と柔道整復師のみに許された独占的業務である。
違反した者は50万円以下の罰金に処せられる(法第29条第1号)。
*医師が柔道整復の業をできるのは、医師の業務の中に柔道整復の業務が含まれているからであり、柔道整復師の免許を取得したからではない。医師であっても柔道整復師の免許を取得するには、学校又は養成施設において必要な知識及び技能を修得し国家試験を受験し、それに合格しなければならない。
*「名称独占」「業務独占」とは?
医師法では、医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない(医師法第18条)と定めている。これを医師の「名称独占」という。また、医師でなければ、医業をしてはならない(医師法第17条).と定められ、これを医師の「業務独占」という。
柔道整復師法では、医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行ってはならない(柔道整復師法第15条).として業務は独占するが、柔道整復師以外の者が柔道整復師の名称を使用することを禁止する条文はないので、柔道整復師は名称は独占していない。
(外科手術、薬品投与等の禁止)
第16条
柔道整復師は、外科手術を行ない、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない。
*医師法第17条:医師でなければ、医業をしてはならない。
柔道整復師が販売又は授与の目的で調剤した場合は薬剤師法第19条違反となる。
薬品投与の範囲(厚生省見解、昭和24年6月8日、医収662)
患部を薬品で湿布するが如きも理論上薬品の投与に含まれると解するが、その薬品使用について危険性がなく且つ柔道整復師の業務に当然伴う程度の行為であれば許されるものと解する。
(施術の制限)
第17条
柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。
医師の同意を得ずに、応急手当でなく脱臼又は骨折の患部に施術をすれば 30万円以下の罰金に処せられる(柔道整復師法第30条第2号)。
*「医師の同意」とは?
同意を得る医師は整形外科以外の医師でもよいが、歯科医師は含まない。また、同意 を得る方法としては書面であっても口頭であっても良いが、医師が直接患者を診察することが必要である。
平成22年9月1日(9月の施術分)から骨折・脱臼の医師の同意に関する記載は施術録と同様に、申請書の摘要欄にも記載することとする。
従来は「実際に医師から施術につき同意を得た旨が施術録に記載してあることが認められれば、必ずしも医師の同意書の添付を要しないこと。」とあったが今回からは「医師の同意に関する記載は施術録と同様に申請書の適用欄に記載すること」となった。施術録・支給申請書ともに記載されていないと返戻対象となる。
原則として「同意年月日」「医療機関名」「医師の氏名」を記載しなければならない。○○病院整形外科担当医 患者より聴取」と記載する。
*「応急手当」とは?
脱臼、骨折の場合に医師の診察を受けるまで放置すれば、生命または身体に重大な 危害を来す恐れがあるとき、柔道整復師がその業務の範囲内において患部を一応整復 する行為をいう。止血剤を注射したり、強心剤を注射したりすることはもちろん許さ れず、また、応急手当の後、医師の同意を受けず引き続き施術をすることはできない。応急手当は1回とは限らない。
(秘密を守る義務)
第17条の2
柔道整復師は、正当な理由なく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。柔道整復師でなくなった後においても、同様とする。
*「守秘義務」とは?
柔道整復師は、正当な理由なく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならな い。免許を取り消される等で柔道整復師でなくなった後においても、この業務上知り 得た秘密を守る義務(守秘義務)は課せられる。これに違反すると50万円以下の罰 金に処せられる。
医師にも守秘義務は課せられているが、これは身分法である医師法ではなく、刑法により規定され処罰される。
*刑法第134条第1項
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職に あった者が正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて、知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
柔道整復師や医師が、その業務上知り得た人の秘密を漏らした罪は親告罪であり、被害者が告訴することを必要とする。(柔道整復師法第29条第2項、刑法第135条)
秘密とは、いまだ他者に知られていない内容であり、医療と関わらない内容も含む。 そして、その秘密が漏らされることで本人に不利益があることが本義務違反となる(告訴において:親告罪)。なお、守秘義務は、職を辞しても、免許証を喪失してもなくなるわけではない。
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