HOME 特集 これだけは知っておいて これだけは知っておいて【第5回:柔道整復の定義】

これだけは知っておいて【第5回:柔道整復の定義】

これだけは知っておいて 特集

明治国際医療大学 教授 長尾 淳彦

「柔道整復師」は国が認めた資格です!堂々と患者さんのために治療を行なおう!

本日、平成27年3月1日、第23回柔道整復師国家試験が全国10か所で実施されている。今年も数千人の「柔道整復師」が新たに誕生する。多くの柔道整復師が患者さんである国民に寄与できる環境つくりを行わなくてはならない。

保険者や外部委託の調査会社から患者さんに送られてくる調査票の中の「柔道整復師」はまるで犯罪者または容疑者のような扱いです。「柔道整復師」という資格は国が行う国家試験に合格し、国が認めた国家資格です。患者さんに良質な柔道整復術を提供できるよう法律にも、柔道整復の業務とは具体的に何かという定義を定める規定を早急に作ることが必要です。11年前の3月1日衆議院予算委員会での吉田泉衆議院議員と国とのやりとりを記載いたします。いろいろ考えさせられるやりとりです。

第159回国会 予算委員会第五分科会
平成16年3月1日(月)

○吉田 泉(衆議院議員)分科員

柔道整復師の役割という問題でございます。私の知り合いに、整骨院の先生、つまり柔道整復師さんがおられるんですけれども、その先生のお話ですと、患者さんのほとんどが、腱鞘炎、五十肩、肉離れ、筋肉の挫傷、それから老人性の変形膝関節症、今五つの症状を申し上げましたけれども、この症状を訴えて接骨院を訪ねてくる患者さんがほとんどだということでございます。そして、それに対して柔道整復師独特の施術をする、そして健康保険を請求する。

しかしながら、請求すると、厚生労働省からの通達というのがあって、先ほど申し上げた五つの症状については、捻挫か打撲という傷病名にしないと保険金がおりないという問題が頻発しております。したがって、柔道整復師サイドとしては、五十肩のことは肩関節捻挫、それから肉離れなどは下腿部の打撲というように、実際の名前と異なった診断名をつけて保険請求をしているということでございます。ところが、そうすると、今度は、請求された健康保険組合、それから社会保険事務局、こういうところからはクレームがやってくる。慢性の五十肩を肩の捻挫と偽って請求しているんではないかと、こういうようなクレームが保険者の方からくる。

そんな話がだんだん伝わってくると、今度は患者さんの方も、腱鞘炎とか五十肩は柔道整復師のところに、接骨院に行っちゃまずいのかというような混乱も今起こっている。そういうことで、整復師としては、ぜひ治療の実態に合った傷病名を使いたいんだというようなお話でございました。

そこで、まず一番最初に、担当の厚生労働省として、今申し上げたような柔道整復師の傷病名表記の問題を、どのように現実を把握しておられるのか、最初にお伺いします。

○辻 哲夫(厚生労働省保険局長)政府参考人

お尋ねの柔道整復に係る施術についてでございますけれども、柔道整復師の業務範囲、これが、今ご指摘の骨折、脱臼、打撲、捻挫等とされておりまして、私ども、医療保険の療養費の算定基準上、正確に申しますと、急性または亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫、それから、急性または亜急性の介達外力、これは間接的に加える外からの力という意味でございますけれども、介達外力による筋または腱の断裂、これはいわゆる肉離れという意味でございますが、これらを療養費の支給対象としております。

現在、一部の柔道整復師の団体より、腱鞘炎、椎間板ヘルニア、頸肩腕症の傷病名により療養費の請求を行いたいとの要望を受けておりますが、そもそも、これらの傷病に係る施術が柔道整復師の業務範囲に含まれるか否か、ただいま申し上げましたような解釈の業務範囲に含まれるか否かということにつきましての整理も必要でありますことから、私ども、十分かつ慎重な検討が必要であると考えております。

○吉田 泉(衆議院議員)分科員

今のご答弁にあったように、保険局が平成9年に出した通知で、療養費の支払い対象は、今おっしゃった五つですか、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷というふうに書かれている。その結果、柔道整復師の業務範囲というのがその五つに限定されているというような印象を世の中に与えていると私は思うんです。 そこで、この平成9年の通知及び柔道整復師の業務範囲の法的な根拠は何であるのか、これをお伺いしたいと思います。

○岩尾總一郎(厚生労働省医政局長)政府参考人

柔道整復師は、柔道整復師法第2条によりまして、柔道整復を業務とする者ですが、施術範囲につきましては、昭和45年の柔道整復師法案に係る提案理由説明におきまして「その施術の対象も、もっぱら骨折、脱臼の非観血的徒手整復を含めた打撲、捻挫など新鮮なる負傷に限られている」とされていることを踏まえて、一般的に、骨折、脱臼、打撲、捻挫等と解釈しているところでございます。

○吉田 泉(衆議院議員)分科員

法的根拠が、昭和45年に法律をつくったときの提案理由説明であるというお話ですが、法律にも書いてあるんですか。

○岩尾總一郎(厚生労働省医政局長)政府参考人

法律には、柔道整復の定義を定める規定はございません。

○吉田 泉(衆議院議員)分科員

どうも、そこがもうひとつ腑に落ちないところなんですが、なぜ法律で柔道整復師の業務範囲というのを規定していないんでしょうか。

○岩尾總一郎(厚生労働省医政局長)政府参考人

そもそも、昭和22年にあん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法として法律であったものを、昭和45年に今の法律から柔道整復業に関する部分を分離して、単独法として柔道整復師法を制定したということになっております。

そのとき与野党挙げての議員立法だと承知しておりますが、その中で先ほど言いました説明があったわけです。それを解釈いたしますと今までのあんま、はり、きゅうというものと柔道整復というものがそもそも違うんだということで単独法に設定したといたしますと先生もご承知のように脱臼とか捻挫というのは、いわゆるスポーツその他、急激な事故ですとか急性の発症した傷害によるものを治すということで、例えばあんまですとかはり、きゅうというような病態の慢性的に起こるものと違うのではないかということで昭和45年に議員立法がなされたのではないかと推測はしております。

何にせよ、議員立法ということで出されて、全会一致で可決したという記録のみ残っておりますので、どのような定義づけがなされていたかということは、残念ながら承知しておりません。

○吉田 泉(衆議院議員)分科員

今のご答弁にあるように昭和45年の提案理由説明の趣旨は、今まで、はり、きゅう、マッサージと柔道整復師は一緒だったんだけれども、それを分けるというときの提案理由説明ということですので、何か、これをもって保険局の平成9年通知の法的根拠であるというのはちょっと無理があるような気がしているところでございます。

それはさておいて、一つの別の例を申し上げますと、司法の世界、これは平成15年の改正司法書士法施行によりまして、例えば、司法書士さんが弁護士にかわって簡易裁判所ですけれども弁論ができるようになった。それから、裁判外で和解等の調停も司法書士ができるというような法律改正がなされました。これは一つのヒントになるんじゃないかというふうに思うんです。

つまり、弁護士と司法書士がともに裁判に参加している。そして役割分担をして共存しているわけでございます。ただ、だからといって弁護士が使っていい用語、司法書士が使っていい用語、これを資格によって分けるということは当然のことながら司法の世界にはないわけであります。

しかし、医療の世界では、お医者さんじゃないと使っちゃいけないという表記名という規制がある。柔道整復師は、先ほどおっしゃったような五つの表記しか認められない。

私は何か腑に落ちないというような気持ちでございます。柔道整復師、そして例えば整形外科、同じような傷病については共通の表現が認められてもいいんじゃないかな、そんなふうに思います。

いずれにしましても、この傷病名表記の問題は、最終的には、柔道整復師という業とあとは医師、整形外科のお医者さん、業のせめぎ合いの問題を含んでいる。したがって、現実問題はなかなか難しいんだというふうに言われております。私もそうだろうと思っておりますが、これから大分いろいろと問題になっている柔道整復師と整形外科医師の間の役割分担、できたら、弁護士と司法書士におけるような共存関係が実現できないかなということなんですが、その役割分担はこれからどうあるべきかお伺いいたします。

○岩尾總一郎(厚生労働省医政局長)政府参考人

柔道整復、我が国における古来からの伝統医療として、国民に広く受け入れられておりまして、これを担う整復師の方々は、骨折、脱臼、打撲、捻挫等の患者に対して施術を行うことにより、国民保健の向上にご尽力していただいているものと認識しております。柔道整復師と医師との役割分担につきましては、例えば、柔道整復師による骨折または脱臼の施術には医師の同意が必要となっているように柔道整復師が医師との連携を図りながら施術を行うことが重要であると考えております。柔道整復師については医療の一翼を担う者として引き続き、柔道整復の業務の範囲において質の高い施術を行うとともにサービスの質の向上に努めていただくことにより、その役割を十分果たしていただくことを期待しております。

○吉田 泉(衆議院議員)分科員

ご答弁の趣旨はよくわかりましたが、平成9年の通達も含めて、何か制度の工夫というのが必要じゃないかというふうに思います。いずれにしましても、最終的には患者さんが自分の考えを基準にして、どの医療を選ぶか、そういう選択の自由といいますか、それが保障されなくちゃいかぬという問題だと思います。ぜひ、これからこの傷病名表記の問題の改善に向けて努力をお願いしたいということで質問を終わります。ありがとうございました。

○谷口隆義(衆議院議員)主査

これにて吉田 泉君の質疑は終了いたします。

Visited 21 times, 1 visit(s) today