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国会議員に聴く!水戸まさし参議院議員インタビュー!

インタビュー 特集

我が国がTPPに参加することを正式に表明したことで、今後日本の皆保険制度を守っていくことが出来るのかとして、不安視する声が高まっている。

一方、柔道整復業界は第2回目の柔整療養費検討専門委員会が3月26日に開催され、今後の成り行きを見守っているところである。日本の社会保障の在り方そのものが変わろうとしている現在、万民が暮らしやすい社会は絵に描いた餅でしかないのか?それとも被災地のように民間が自力で立ち上がるしかないのか。

水戸議員に忌憚のない意見を伺った。

『地域に密着した医療の担い手として、柔道整復師の活躍を今後も期待しています!』

参議院議員   水戸 まさし  氏

―日本の医療制度は、世界から高く評価されていますが、日本の医療制度についてお考えがありましたらお聞きかせ下さい。

我が国の皆保険制度は、世界で高く評価されており、世界に誇れる制度であると思っております。日本の皆保険制度は子どもからお年寄りまで、また貧富の差もなく非常によく行き届いていると思います。どなたでも一定の負担をすることで、或いは負担をしなくても一定の医療を受けることができるもので、其処には差別はありません。つまり、平等ということであります。こういった平等の精神に基づいた医療制度が我が国の社会を構成する一つの要因になっていると思います。そういうことを含めて皆保険制度を必ず守っていかねければなりません。民主党の時代に後期高齢者医療制という名称がよくないということで廃止になりました。75歳以上の方を年齢で区切ることに反発があったからですが、それについては、年齢で区切ることにもちゃんとした意味があったように思います。また皆保険制度が少しずつ崩壊しつつあるという危機感を持たれていることも事実でしょう。従って今の皆保険制度を維持するためには、その人の能力に応じた負担、年齢を問わず一定の応分負担は必要になってくると思います。結局一定の保険料のお支払があって、成り立っている制度ですから、財政的にはそういう形で維持していかなければならないと考えております。

―近年、西洋医学の限界も言われ、人間の体を丸ごとみる全人的医療やオーダーメイド医療が唱えられておりまが、それらについてどのように思われますか?

手術も含め医療機器や薬品を使用した西洋医学的な技術力といいますか、それらにはやはり限界があると感じております。体の一部分だけが病原菌等に侵されるのではなく、それに付随した精神面への影響もあると思いますし、病気を発症するまでの生活環境等もありますから、それらを含めて何故そういう病状になっているかとして多面的に追及し分析していくことがどうしても必要です。伝統医療や代替医療と称されるものがどの程度、学問的に確立されているのかということまでは分りませんが、やはりそういった代替医療的なもののほうが経済効果が高いという話もお聞きしています。まだ、私にはどちらが良いかどうかの判断はできませんが、ホームドクターや掛かりつけ医といった医療システムは半ば浸透、定着しています。これからの医療では、普段の生活の中で如何にお医者さんと身近に接していけるか、一般庶民の生活の中にお医者さんをどう取り入れていくかという地域に根差した医療システムをどのように作り上げていくかが問われていると思います。しかも漢方薬も含めて東洋医学が近年かなり見直されていると思いますので、東洋医学並びに代替的な医療をもっともっと生活に取り入れていくべきで、有効性をしっかり検証した上で推進できればと考えております。

―民主党に統合医療を促進する議員連盟があったことはご存知でしょうか。水戸先生は統合医療に対してどんなお考えをお持ちでしょうか。

私はそのメンバーでしたからよく存知上げております。統合医療の中には、アロマとか漢方、音楽療法等々ありまして、私は温泉療法小委員会の事務局長を務めておりました。日本は温泉大国で、学会ではその効用が証明されている訳ですが、中々医療界の中では認められていない。科学的に立証されていない代替医療・統合医療を体系化していこうということで、民主党が野党であった時代からスタートしたものです。しかし、与党になってからは柔整小委員会は活発に開かれておりましたが、その他はあまり活発な動きが無かったと思います。効果効用に関してはその重要性を十分我々も認識し、どのように体系化して法的な後押しができるかということを考えておりましたけれども、残念ながら法案提出までには至りませんでした。

―水戸議員は維新の会に属されていますが、超党派の柔整議連を作ることは可能でしょうか?

私も中井洽先生が作られた柔整議連のメンバーでした。しかし、民主党があのような形で敗北しまして、それ以降は消滅したに等しいのではないでしょうか。民主党が野党時代に何故こういう統合医療の推進に取り組んでいったかというと、やはり今までずっと自民党政権の下、厚生労働省が主体で医療行政を司ってきた訳ですが、この間統合医療的なものが日本の医療制度の中に上手く組み込まれて来なかったという想いがあったように思います。従って野党時代に統合医療を促進する旨を提起しておいて、与党になった時点で、上手く野党時代の考え方を取り入れていくという方向性をもって立ち上げた形だと思います。期間は3年位でしたが、与党になって目標を到達するまでには至らなかった。野党に戻って未だ間もないですし、また民主党の数だけで出来るのかどうか分りませんけれども、其処はやはり粘り強くやっていくべきテーマであると思います。元々柔整業界は自民党支持団体ですから、どういう形で纏めていくかというのは注視していきたいと思いますし、今後の課題でしょう。勿論、自民党主導で良いと思いますし、政権与党なので敢えて野党と組む必要があるのかというところです。超党派で議連を作る意味は、議員立法を作る。議員立法というのは国会の議決ですから、超党派を作っておけば通りやすいということですね。

―小泉総理の頃から国民皆保険の危機が言われ始めました。TPP導入により、拍車がかるのではと危惧する人たちもいます。また、混合診療の拡大も取り沙汰されています。今の格差社会において貧乏人は医療にかかれなくなる惧れがあります。水戸先生はどのようにお考えでしょうか。

やはり危惧されることは、公的医療保険制度への影響です。過去にアメリカが医療保険分野への民間参入拡大を強く求めてきた経緯があり、公的保険のカバー範囲が縮小し、国民皆保険が崩れることになるとした懸念があるためです。これについて、政府は「医療保険制度は対象外」と説明しています。また厚生労働省は、アメリカの関心は医薬品や医療機器のシェア拡大との見方を強めています。先ほど話しましたように日本の医療の特徴は、全国民が公的保険に加入し、等しい医療を受けられる国民皆保険にありますので、保険診療と保険外診療を組み合わせる混合診療は原則禁止とされています。しかしながら、アメリカの医療は民間保険に入るのが基本であり所得の低い人は高度な医療を受けられません。外国の保険会社が広く参入したり、営利企業が病院経営に参画したりすれば、高額の保険外診療が増えて病院にかかれない患者が続出することになりかねません。しかもアメリカの巨大製薬企業は、日本市場でのシェア拡大をはかりたいとして、販売好調な新薬の公定価格を下げていく日本の仕組みについても見直しを迫ってくるでしょう。私は昔からTPPに関して、慎重論でした。何故かと言うと、TPPはご案内の通り、多国間貿易交渉です。FTAでアメリカと2国間交渉するのは良いんです。韓国は国策として2国間でしかやりません。私は、それで良いと思っています。多国間になればなるほど、みんな自国の利益を優先して交渉する訳ですからハードルを下げなければなりません。だんだん下げて関税は結局ゼロに近くなるということなんです。例えば、アメリカが良いと言っても他の国がダメ、自分たちの国益も勿論ありますが、やはり相手に合わせていかなくてはダメです。結局いろんな分子が入ってきてしまうことに関して私は非常に否定的な見方です。そうは言うものの、そうも言っていられない時代になってきてしまったというのが現実で、消費税の導入も含めて経済的な観点からすれば、今TPPに入らなければ益々日本の経済は悪くなります。

―柔道整復の業務形態や内容は、歴史的な経緯や社会通念と共に、柔道整復診断や治療によって多くの国民が治癒を期待できると考えているために存在してきたと考えられます。昨年、柔整療養費の在り方について社会保障審議会医療保険部会で専門委員会が設置され第1回が10月に開かれ、間もなく2回目が開催されることになっております。このことについて水戸先生の見解をお聞かせください。

この動きというのは、民主党政権になったからこそ、出て来た動きなのではないでしょうか。良い風に解釈するならば、野党時代からやってきたことに関して、当然自民党もそれなりにやられていたと思いますが、柔道整復師の方達の療養費の在り方について、近年特に不正請求が多いということを指摘されておりましたから、不正請求を極力排除しながらちゃんとした形で柔道整復師のポジションを確立して行こうという切っ掛けづくりで専門委員会が立ちあがったという気がします。実際、中味や今後の方向等についてはハッキリ分りません。ただし、柔道整復師の在り方が表面に現れたということで公的な場で議論されることは、それは良いと思います。この話はある意味、先ほどの膨大な医療費を如何にして抑えていくかということの裏返しかもしれませんけれども。もしも、いろんな問題を突つくのであれば、やはり制度の在り方そのものを変えていかなければダメでしょう。JBさんが一生懸命おやりになっているようなことを実現させるためには、たとえ困難であっても柔道整復師が一本化して、ちゃんとした機関を通して保険請求を行うように持っていくべきでしょう。今のままでは、混乱を招くことになりますし、保険者との間の信頼関係が今非常に悪化しているのを解消する意味でも整理していく必要があります。いろんな団体同士が、お互いに鍔迫り合いをするのではなく、纏まって一元化していったほうが良い結果が出せると思います。

―日本では超高齢化社会が急速に進行し、逼迫する医療保険財政を考えた時、柔整は保険医療の面でも十分な費用対効果において活躍が期待されると考えます。”柔整は、高度診断機器、薬物を用いることなく医療先進国、日本で非医師として尚存在し続けており、その事から柔道整復学は世界的に多くの人々を救い得る有用な学問となる可能性を秘め、「国際化」の可能性も大きい。西洋医のみが医師で医療行為を行なうとする時代は過ぎ、伝統・相補、代替医療の一つとして、柔道整復は保険医療分野の改革に更に貢献が期待される”とある柔整師が話しておりました。しかしながら”発展途上国では人口の6~8割が経済的理由で西洋医学の恩恵を受けていない”と言われております。医療先進国と途上国における伝統・相補、代替医療は、双方とも経済的理由で必要であるものの、その役割や捉え方に違いがあるように感じます。日本の柔道整復は世界の民族医療に〝柔道セラピー〟として仲間入りしましたが、医療先進国、日本において、なお存続している柔道整復は医療先進国ばかりでなく発展途上国においても有用性が高いとしてモンゴル国等で柔整師がJICAの草の根活動で国際交流を通して医療支援と医療指導を行っております。水戸先生は、こういった意見や活動をどのように思われますか?

大変結構なことだと思います。柔道整復師の医療技術、日本の文化を海外輸出することは非常に良いことだと思います。JICAを通じて正式に柔道整復師の方々が、医療がいきわたっていない国々に対して医療支援と医療指導を行っていることは日本国のポジションが上るのではないでしょうか。ただ、規制緩和の一貫として柔道整復師養成校の乱立による柔整師数の急増問題が背景にありますので、柔道整復師の人材がしっかり育成されているかどうかという話も行政機関がちゃんとしていかなければなりません。こういったことを言うと怒られるかもしれませんが、質の高い技術と能力、そしてある程度経験を積んだ柔道整復師さん達をどんどん海外に派遣していけるように、統合医療の観点からも進めていくことは良いことだと思います。

―阪神淡路大震災や東日本大震災の時にも柔道整復師の方々はもの凄く活躍されてきました。災害医療に対して力を発揮できる医療者として、被災地をはじめ認識が深まっていると思います。今後、大きな災害があると予測されている中で柔道整復師の存在は重要と思いますが。

その通りと思います。医療機器が何もなくても治療を行えるということは、今後どんなに大きな災害が起きたとしても力強いことであり素晴らしいです。直ぐに医療技術を提供できるということは、願ったり叶ったりですし、今増え続けている柔整師さん達にとっても国民から期待されている重要な職業であると認識され、職業に誇りを持つことが出来ると思います。

―柔整は、日本で歴史的に十分な貢献をしてきた一方で、制度としてみますと、目をつぶってきてあげたといえば、聞こえは良いのですが、むしろ余りに、曖昧な立場や環境を強いられた中で活躍し存続してきのではないかとも思えます。今後の日本において、パンク間近といわれている医療経済の中で、医師以外の者による医療行為、医業の活躍が必要であると考えられますし、医療経済にも良い影響があるのではないかとも思います。しかしながら、周囲から見て問題点もあろうかと思います。そこで水戸先生から見て、柔整(伝統・民族医学)の問題点はどこだと思われますか。また、制度として、充分な活躍を期する意味で、改革が必要だと思われますがお考えをお聞かせください。

繰り返しになりますが、やはり制度の不備もあったため、不正請求がはびこってしまうことに対してのチェックも出来ないといったことが保険者の疑心暗鬼を生んでしまっていると感じております。非常に良質で良心的な柔道整復師さん達もそういう目で見られるかたちになってしまうということは、不本意なことだと思います。もちろんこれは柔道整復師さん達だけの話ではなく、あらゆる分野にも共通の話なんでしょうけども、レベルの高い良質な人たちを如何に確保していくか、そういう人たちが如何に活躍していけるかを考えるならば、先ほども話しましたように、不正請求を排除し受領委任払い制度をどう継続していくかに尽きると思います。ちゃんとした支払機関を設置するなど、保険者との信頼関係をどのような形で再構築していくかとしての仕組みづくりをもう一度原点に戻ってやっていくことでしょう。

―日本が世界で最も早く超高齢化社会を迎えることになり、それをどのように乗り越えていくべきかの模索が続いていると思われます。これから日本国民はどのようにして健康生活を維持し、長寿社会を存続させるべきでしょうか?一方で、貧しい者こそ、病気になります。病気になっても医療が受けられない社会になりつつあるのではないかと危機感を募らせております。健康保険非加入者の増加や生活保護受給者の問題も気になります。水戸先生は日本の社会保障や医療をどのようにしていくことで国民が幸せになれるとお考えですか。

難しい問題です。医療費は一定の規模で必要ですけれども、地域格差は小さいほうが良いに決まっています。しかしながら、ある程度のことはやむを得ないということも認めていかなければならないと思っています。地域に根差した医療の仕組みづくり、かかりつけ医を中心として、その人に合ったような施術や治療が必要です。地域社会の中で住民が希望すれば統合医療も受けられるような仕組みが出来上がれば良いと思います。全国一律同じような網をかけるのではなく、我々は道州制を目指していますから道州がいいのか都道府県が良いのかは別としましても、それ位の規模で地域性を加味した中での医療制度の在り方を夫々の地域毎に考えていく必要があると思います。極論になるかもしれませんが、全国津々浦々診療報酬が、同じ点数でいいのかという話に必ずなってきます。しかし、これが最終的に医療費の高騰を抑えることにも繋がってくるかもしれません。医療システムの中で、ある程度地域としての自主性、独自性を所謂点数を含めて考えていく必要があると思います。医療行為の中でも技術的なものというのは殆ど評価されてこなかったということもあります。なるべく社会的な弱者を減らしていく。そのためには経済を元気づけていこうということになります。

水戸まさし議員プロフィール

昭和37(1962)年7月生まれ。昭和56年3月、神奈川県立湘南高校卒業。昭和60年3月、慶応義塾大学商学部卒業。サラリーマン生活を経て政治家秘書。平成7年4月、神奈川県議会議員当選。以後平成19年4月まで連続3期当選。平成19年7月、参議院議員初当選。

主な役職:国土交通委員会委員、税理士・行政書士・保護司など兼務
著書:『等身大のニッポン-希望と楽観主義を携えて-』
趣味:サッカー観戦、水泳
特技:出会った方の「顔を忘れない」
好きな食べ物:チョコレート
家族構成:妻・長女・長男・次女の5人家族

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