スペシャルインタビュー:武蔵野市長・邑上守正氏
武蔵野市の人口は、約14万人。うち高齢者の人口は約3万人である。高齢化の進展は加速しており、特に単身高齢者が多いため、地域の見守りが重要視されている。ただし、ここ数年武蔵野市では0歳児の人口が微増していることから、今後の人口減少社会にとって、何かのヒントになるかもしれないと思われる。
2025年までに地域包括ケアシステムの整備が急がれている今の状況等、武蔵野市・邑上守正市長にいろいろお話いただいた!
地域包括ケアシステムの構築に向けて、 きめ細かくしっかり取り組んでおります!
武蔵野市長・
邑上守正氏
―日本の社会保障制度について邑上市長のお考えをお聞かせください。
私の認識として、日本の社会保障制度は長い歴史を積み重ねてきており、様々なメニューが出来てきたという風に思っております。しかしながら、日本のこの社会保障制度をこれからどうやって維持していくかが問われているんですね。例えば、65歳以上の高齢者の人口がどんどん増えています。武蔵野市も今21%を超えています。現在、武蔵野市の人口が14万人になり、高齢者が3万人を超えました。高齢者の人口が極めて増えてきているということは、我が市だけの問題ではありませんが、高齢者福祉施策をどのように維持していくのか、実は非常に大変なことで、今いろいろ工夫しながら取り組んでいるところです。ただ一番の基本は、市民の健康・長寿に向けた社会保障制度の充実をしっかり考えていくべきであると思っています。
もう1つは、制度というからには公的な支援が勿論メインなんですけれども、一定程度までしか公的支援はできないものだということを市民・国民の方々にご理解いただきたいと思っております。その足りない分を誰が補うのかということになると自助なり互助なりといった形、或いは共助といったことで、公的な支援とは違った様々な支援が不可欠です。現在、高齢者施設が不足していると言われており、例えば特別養護老人ホームも足りていないと言われています。ただし実際に作るとなると、介護保険料が上がってしまうということがありますし、それに対する予算もどんどんかかっていく中で、それでよいのか、可能なのか、中々難しい。勿論必要な施設は作らないといけませんが、片や限界があります。在宅で介護や最期を迎えられるためにも如何に支援をしていくかについても深く考えていかなければいけないと思っています。
―人口減少社会に突入しました。武蔵野市の少子化に対する取組みを教えてください。
全国に人口減少時代を迎えているんですが、今のところ武蔵野市は人口が微増しておりまして、近い将来も減る傾向にはありません。全国的にみると、やはり地方は過疎化が進行しており、逆に首都圏に人口が集中している状況にあります。今の段階で、武蔵野市でいえば当面はそんなに多く増えることはないにしても、多く減ることも先ずないだろうと予測されております。ただ少子高齢化の大きな流れが起きていますから、相当の方策がない限りこの流れを変えることは難しいだろうと考えております。特に高齢化、長寿化で高齢者人口は先ほど申し上げた通り、どんどん増えています。
しかしここに来て武蔵野市では、赤ちゃんの数が増えているんです。私が市長になった約10年前くらいは毎年赤ちゃんの誕生数は900人くらいでした。しかしそれ以降ちょっとずつ増え、1000人を超えて、昨年で1200人を超え増え続けているのです。現在、年齢別人口で0歳~19歳の間までの中で、一番多いのが0歳児です。全国的に赤ちゃんの数が減っているということですが、武蔵野市はそういう嬉しい状況にあります。特別なことはしておりませんが、総じて様々な子育て施策、或いは教育等について、極めていろんな面で充実してきた成果とも思います。
ただ、今盛んに言われている保育園の待機児童に関しては、逆に増えてしまっています。この間ずっと、解消をはかろうと取り組んできたのですが、それを上回る赤ちゃんの人口が増え、保育園に入りたい方、希望される方も増えています。社会状況の変化もあって、仕事をしたいという女性も増えており、当然それは良いことなんですが、増える割合が極端に多いため、待機児童解消が中々出来ていないという現実がある訳です。所謂待機児童の対象となり得る保育園というのは、認可保育園と認証保育所と特例の保育所とがあるんですが、去年その定員を150人増やしました。それでも解消できずに今年度の計画では、260人以上増やす予定です。かつて10年前の保育園の定数は1300人位だったと思いますが、今は2000人です。過去のことはさておき、何としてでも待機児童解消に向けて頑張っていきたいと考えています。
―武蔵野市の健全財政は全国的にも有名な市であると思います。財政について邑上市長のお考えをお聞かせください。
武蔵野市はやはり財政的には豊かなほうだと思いますが、今後のことを考えると無駄遣いはできません。なにしろ超高齢化と公共施設や上下水道の老朽化が進行しています。これから大きなお金がかかる訳です。リニューアルをやり遂げるためにも原資が必要です。例えば、建物をリニューアルすると建物を作った時と同じくらいの費用がかかってしまう訳です。そういったお金が今後必要になってきますから、やはり財政を厳しくみていかなければなりません。特に民生費は、ここ数年増えており、民生費だけでいうと今年が242億円、去年に比べて3.8%増です。当市の一般会計が約602億円ですから、民生費の割合は40.2%で、人口一人当たりの予算規模は高く、従って一人当たりの民生費は他の自治体に比べると多いと思います。
―地域包括ケアシステムの整備が急がれておりますが、武蔵野市の理念や施策、今後の取組みについて教えてください。
地域包括ケアの理念は、「介護保険法」(平成23年6月改正、24年4月施行)第5条第3項に「国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との“有機的な連携を図りつつ包括的に推進する”よう努めなければならない。」と規定されております。
また23年6月の介護保険法改正で第5条第3項に地域包括ケアの推進について明記され、その後、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会において、介護サービス提供体制の充実、認知症対応の推進、マンパワーの増強等についての方向性が出され24時間定期巡回・随時対応サービス等の創設や「認知症施策推進5か年計画」の策定等が行われてきました。
更に25年8月6日に内閣官房の社会保障制度改革国民会議より報告書が出され、自助・共助・公助の最適な組み合わせ、医療と介護の連携と「地域包括ケアシステム」というネットワークの構築、介護サービスの効率化・重点化等について明記されました。国のいう「地域包括ケアシステム」とは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、“医療”、“介護”、“予防”、“住まい”、“生活支援”が一体的に提供されるケアシステムであり、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を単位として想定されています。
高齢化の進展状況には大きな地域差が生じているため、保険者である市町村や都道府県が地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要となっております。武蔵野市では、平成5年に最初の在宅介護支援センターを設置して以来、市民一人ひとりのニーズに対応できる小地域完結型のサービスの確立を目指して、従来市役所1カ所が担っていた高齢者への相談・在宅サービス提供機能を在宅介護支援センターに持たせ、おおむね中学校圏域ごとに1カ所整備してきました。現在、市直営の地域包括支援センター1カ所と在宅介護支援センター6カ所があります。武蔵野市においては、平成12年に「介護保険条例」とともに制定した「武蔵野市高齢者福祉総合条例」に基づき総合的な高齢者施策を進めてきています。
この高齢者福祉総合条例を制定した背景は、「介護保険制度だけでは高齢者の生活の一部しか担えない」「高齢者の生活を支える総合的な“まちづくり”の目標が必要」との問題意識がありました。高齢者福祉総合条例の「基本理念」(第2条)は、①高齢者の尊厳の尊重、②高齢者が住み慣れた地域で安心していきいきと暮らせるまちづくりの推進、③自助・共助・公助に基づく役割分担と社会資源の活用と保健・医療・福祉の連携の推進、④市民自ら健康で豊かな高齢期を迎えるための努力の4点を掲げている訳ですが、図らずもこれらは現在国が進めている地域包括ケアシステムの理念と合致しております。つまり、武蔵野市にとっての地域包括ケアシステムは、新しい取り組みというよりも、寧ろ「高齢者福祉総合条例」に基づき進めてきたこれまでの高齢者施策そのものなんですね。従って、武蔵野市における地域包括ケアシステムは、〝第5期長期計画の重点施策である「地域リハビリテーション」の理念に基づくとともに「武蔵野市高齢者福祉総合条例」の総合的な施策体系を基礎とした2025年に向けた包括的・継続的なサービス提供システム〟というのが基本的な方向性であり、基本目標は〝重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう「尊厳を尊重」し、「居宅生活の限界点」を高める〟であり、その推進手法として〝行政だけでなく財政援助出資団体や介護サービス提供事業者をはじめ、保健・医療・介護などの関係機関多職種が、地域住民の「互助」「共助」の力とともに協働して推進していく〟としております。
―武蔵野市では、「武蔵野市第五期長期計画」(平成24年度~33年度)の重点施策として「地域リハビリテーションの推進」を掲げておりますが、地域包括ケアとの違いについてお聞かせてください。
言葉的には若干混乱を招くと思いますが、武蔵野市では、「地域リハビリテーション」という基本理念を掲げ、〝すべての市民が生涯を通じて住み慣れた地域で安心して過ごすことができるように、地域生活に関わる人や組織が、保健・医療・福祉・教育などの分野を越えて連携し、継続的で体系的な支援を行っていくことができる仕組みづくりに最優先で取り組む。〟としています。所謂「リハビリ」といいますと怪我した時に回復するためというイメージが強いのですが、意味するところはそうではなく、もっと広義なもので、どんな人でも地域で安心して暮らし続けられるように、トータル的なケアをしていこうというのが「地域リハビリテーション」の理念なんですね。従ってその理念の下に、福祉分野であれば地域包括型ケアシステムという仕組みを作っていこうということです。国が言われているものとは若干のズレがあるかもしれません。つまり武蔵野市の考え方は福祉や医療に限らず教育も含めて、例えば障害児のことを考えた時、どうしても教育は避けられません。そういったことも含めて、あらゆる分野を包含した理念として考えています。大きな枠組みの中で地域包括型ケアシステムが位置づけられている訳で、その大きな枠の中に含まれる分野を繋いでいく必要があります。とかく今まで医療は医療、福祉は福祉となっていましたが、それを繋いでいかないといけないということで、その取り組みを今盛んに進めています。地元の医師会や赤十字病院の方も凄く熱心にご協力いただいておりますし、そこに市の福祉分野の職員も参加をして、いろんな分野で会合を開き、連携をはかっています。
―ボランティアの必要性について教えてください。
ご高齢の方を含めて一般の地域住民の方は、二極化の傾向にあります。つまり、市政に強い関心があって、一生懸命活動される熱心な方たちと、そうではなく隣は何をする人ぞ的な市政や地域に全く無関心な方々とに二分されると思います。所謂マンションとかアパート等、共同住宅に住む世帯が武蔵野市では7割です。一概に、マンションにお住まいの方が全てコミュニティがないとは言えません。また地域のボランティア活動をしていないということでもないのですが、とかく都会的で匿名性のある生活をお好みの方は、やはり地域にそれ程出てこられませんし、ボランティア活動も積極的ではない人が多い傾向にあります。地域のコミセンに入って地域のコミュニティ活動を一生懸命されている方と比べると凄く開きがあります。その隔たりをもう少し埋めるような、無関心な方々に対して如何に関心を持って地域に参加いただくかというのはこれからの課題です。
実は、武蔵野市にはコミュニティがない、町内会が無いということで、40年数年前にコミュニティ構想というのが出来まして、「コミセン」を作ってコミセン活動が始まった訳ですが、その成果として広く薄く繋がりは出来たけれども、綿密にいろいろな課題を解決するようなところまでは至りませんでした。いろんな課題ごとの組織が出来ていますから、それを繋ぐ役割をコミセンが出来ないかということを検討しているところで、具体的に今委員会で議論をいただいている最中ですけれども、コミセンが主体となって「地域フォーラム」という協議の場を作ろうということで、其処に夫々の団体に入っていただいて、ネットワークを構築しようと考えております。
また、高齢者の3人に1人が認知症であるとも言われておりますように、認知症に関しての課題も十分認識しておりますので、様々な取り組みを今積み重ねております。武蔵野市の特徴の一つとして、とても単身の高齢者が多い。つまり一人住まいの高齢者が極めて多くなってきている状況で、そういう方々を支えるのは地域しかありませんので、見守りを含めて単身高齢者或いは高齢者のみの世帯という方々に対する繋がりというものをしっかり考えていきたいと思っています。
今、それらに関連することとして、「地域支え合いポイント」といったポイント制度が出来ないかという議論をしています。稲城市でも介護保険制度に結びつけたポイント制度をやられているんですが、私共が考えているのは、必ずしも介護保険云々ではなく、地域活動なども含めてもう少し幅広く何か出来ないかと考えております。従って、ボランティア活動の遣り甲斐というのは、相手が喜んでくれるのが一番の遣り甲斐であるのかもしれませんが、自分にとってもお互い様みたいな、今は自分がボランティア活動をする側であるけど、次はそのポイントを使って自分もお世話になるとか、そういう少し形あるものにすることでインセンティブになるのではないかと考えますので、研究していきたいと思っています。
―介護の人材不足、在宅系看護師不足等、人材が不足していると聞きます。武蔵野市においては人材は足りているのでしょうか。
いま在宅医療をどのようにして取り組んでいくかということの検討を始めております。これについては医師会や赤十字病院をはじめ関係機関と連携をして委員会をスタートさせるところです。昨年、災害時の医療体制をどうするかという議論を先に行ったところ〝災害時も勿論重要ですが、先ず平常時の医療連携等をしっかり構築しよう〟と、逆に医師の先生方からご提案がありました。一応災害時のほうはある程度構築できましたので、更に平常時の在宅医療を含む医療連携を考えていこうということを始めています。その中でも、これから大きなキーポイントになってくるのは、やはり在宅医療です。医師会の先生方もかなり在宅医療に関心を持たれていて、そういう仕組みがキチンと出来れば積極的に協力したいというお話も頂いておりますから、しっかりとした枠組みを作り上げて在宅医療を進めていきたいと考えています。しかしながら、その在宅に不可欠な訪問看護師さんやヘルパーさんの数字を正確に把握しておりませんが、数が足りていない、在宅系のヘルパーさんのなり手が少ないと聞いておりますので、如何に育成していくべきかの対策も併せて考えていきたいと思っています。
―要支援等の軽い方たちが来年度から市町村の事業に移行することになっていますが、これはやはり市町村の力量にかかってくるみたいですね。
武蔵野市では、要支援者の皆さまも従前のサービスが提供できるようにと準備を進めていますが、自治体としては大きな課題となっています。自治体によって大きな格差があってはならないことです。市長会という組織がありまして、そこでの提案は、自治体によって格差が出来ないように国や東京都に〝支援を充実してほしい〟という要望を出しております。当市はこれまでも独自のいろんな福祉制度を実施してきており、きめ細かにやって来たつもりですので、要支援の方達が市の事業に移行されても、今までと同様に継続していこうと考えています。ただし、当市だけが良ければいいという話では決してありませんから、他の自治体にも声をかけていきたいと思っております。
―柔道整復師は、古来から地域医療を支えてきた医療職種であり、骨接ぎ・接骨院の先生として地域住民の方々に親しまれてきました。また柔道整復師はスポーツ現場でもスポーツトレーナーとしてアスリートの怪我やパフォーマンスの向上に役立つ指導を行ってきました。今後の超高齢化社会においては、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。運動能力を維持していくには、単に痛みを取るという考えではなく、能力そのものへの取り組みとしてトレーナー的な業務は必要と感じます。武蔵野市では健康教室、転倒予防教室、市民ウオーキング等、予防医療の取り組み並びに様々な取り組みをされていることが分ります。たとえば転倒予防教室などはどのような方を対象に行われ、その指導者はどうやって選ばれているのでしょうか?また介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種です。地域包括型ケアシステムの中に柔道整復師の参入は可能でしょうか。邑上市長のお考えをお聞かせ下さい。
東京都の柔道接骨師会の方達は熱心で活動が盛んです。また医師会・歯科医師会・薬剤師会で構成される3師会に、柔道接骨師会も入った4師会として、防災分野でも大いに協力いただいています。特に柔道接骨師会の方は若い方が結構多くて意欲的です。活動が広がっていって認知度が上がっていくと良いですね。先日も、わんぱく相撲の大会で柔道整復師の方がボランティアで救護にあたっていて、勿論接骨師の方だからお手のもので中々良いなと思いました。 「健康やわら体操」という事業では、柔道整復師の方に指導員として、ご協力いただいております。今後可能であればそういったことを拡充していけたらと思います。また、ケアマネ支援のために開催している「地区別ケース検討会」に柔道接骨師会を含む4師会に出席いただくなどご協力を得る予定になっており、事例によっては、接骨師さんと連携していく形ができていくと思います。まずは、ケアマネと意見・情報交換等する中で、お力をいただければ良いのではないでしょうか。
―昨今、地球規模で大災害が多発しています。武蔵野市の防災計画について教えてください。
既に昨年度、全面的に地域防災計画の見直しをしております。今回の見直しは地域減災目標として、怪我人或いは死者の割合を6割以上減らそう、帰宅困難者の確保をはかろう、ライフラインを60日以内に95%以上回復しよう等、いろいろきめ細かく基本的な減災目標を掲げております。具体的にはどういう風なことをしていくのか、武蔵野市ならではの独自な方法が幾つかございます。
避難所の充実については、これまでコミセンというのは、実は位置づけがありませんでした。しかしコミセンは、地域の重要な拠点になり得るため、災害時における「地域支え合いステーション」という位置づけにして、夫々のコミセンが出来る内容で支援をしていただく。つまり、従来の避難所では、広い大きな体育館にどっと集められてしまいますから、精神的に弱い方や障害を持った方は中々なじめないようです。そういう方々をコミセンでみましょうだとか、しかもコミセンというのは市と直結した防災無線を持っていますので、市の情報がダイレクトにコミセンに伝わりますから情報の拠点としてなり得る訳です。また避難というのは避難所だけに限ることなく、在宅避難ということも視野に入れてこれからお願いしていくようにします。つまり、建物の耐震化が出来ていて、家具転倒防止がしっかり出来ていれば、揺れても「壊れない」・「倒れない」・「怪我しない」であれば、わざわざ避難所に避難されなくても在宅で可能でしょう。ただし、物資がなかなか来ないことも考えられますので、そういう時にコミセンが物資を配る、或いは取りに来ていただくなど、地域の防災の拠点になり得るということなんですね。ただそれは、こちらから押しつけるのではなく、コミセンで可能な対応をしてもらおうと、目下コミセンで検討していただいている段階です。
他には、帰宅困難者が吉祥寺で大勢出ますので、その受け入れ態勢について、公共施設だけではとても無理ですから、吉祥寺のいろいろな民間施設、例えば学習塾であったり、お寺などそういう所と協定を結び、いざという時は部屋を開放して収容してくださいと。もう1つはペット対策として、当市はペットが非常に多く市内に1万匹を超えるワンちゃんがいるだろうと言われています。やはり皆さん家族のように飼われていますし、これまで避難所ではペット禁止が原則でしたが、そういう訳にもいかないということで、同行避難を可能にするような工夫を考えていこうと。例えば避難所の入口に大きなケージを設けて其所にワンちゃんを収容するなど、やはりペットも避難する工夫をいろいろ考えていこうということも防災計画の中で謳っています。
先にお話しした医療連携についても整備されております。 〝自分たちの町は自分たちで守る〟というのは大原則であり、それが自治の第一歩だと思います。しかし万が一の災害時には、助け合わないといけません。とにかく連携が大事なので、いま武蔵野市では周辺の自治体と全て災害協定を結んでいます。ただし武蔵野市が被災するということは周辺も同じように被害を受けることになりますから、周辺の自治体との災害協定だけでは不十分でしょう。従って武蔵野市は、仲良しの友好都市が幾つもありますので、交流の一環として、防災的な交流もしましょうということで、9つの自治体と防災協定を結んでいます。いざという時にはそういう地方都市から支援が期待されます。また、武蔵野市では連携の視点から、東日本大震災の被災地である岩手県の陸前高田市と大槌町に計3名職員を派遣し、支援を続けており、これからも必要な連携はしていこうと思っています。
―今後、病院で死ぬことが出来ない時代がやってくる中で、どのような地域社会を構築できるか。或いはどのような町づくりを目指されているのか、お聞かせください。
健康長寿社会に求められるのは、予防的な医療と健康に対する住民の意識を高めていくことであると思っております。しかしながら、健康づくりの考えというのは子どもの頃から醸成されないと中々大人になって直ぐ始めるという訳にはいかないと思いますので、生涯を通じた健康づくりを推進していかなければいけないだろうと考えています。実は高齢者に対する健康事業もいっぱいあるんですが、それが上手く伝えられていない、機能していないということもあるかもしれません。従って、これからは上手く伝えていく努力も大事でしょう。市の健康事業等については、よく利用されている方もいらっしゃれば、全く知らないという方も多々いらっしゃいますので、そういう意味ではもっと多くの方に現在市が行っている事業をもっとご理解いただいて参加いただくような取り組み方が大切ではないかと感じています。
また、高齢者が自主的にいろんな取り組みをされていることも多々あります。例えば、老人クラブ等で、みんなが一緒にラジオ体操をやっていますし、健康づくりはかなり皆さん関心を持たれていらっしゃいますから、プログラムの提供だとか講師の派遣だとかそういった自主的な活動を支援するようなかたちがあっても良いのではないかと思います。
もう1つ、これは私個人の考えですが、高齢の方々を所謂「高齢者」として位置づけるのではなく、地域の一員として、例えば子供たちに何か教えるなど、役割を持っていろんな活動が出来れば、体を動かすことは健康にもなりますし、精神的にも良いと思います。そういった地域での役割をお願いすることが、実はそれが健康づくりになったり、生き甲斐づくりになったりするのではないかと思います。〝どうぞお風呂に入ってのんびりしてください〟というのも良いかもしれないけれども、地域の子供たちにけん玉であったり独楽の回し方を教える、自分たちの出来る範囲で活動してもらうことが良い結果に結びついていくのではないかなと思いますし、それこそが地域のコミュニティ、或いは「地域力」に繋がっていくのではないかと思っております。
邑上守正氏プロフィール
昭和32年10月9日、武蔵野市吉祥寺北町に生まれる。 昭和51年、東京都立立川高校卒業。 昭和56年、早稲田大学理工学部建築学科(都市計画専攻)卒業。昭和56年、都市計画コンサルタント会社入社。平成15年、都市プランナー。平成17年10月、武蔵野市長就任。平成21年10月、武蔵野市長就任(二期目)。平成25年10月、武蔵野市長就任(三期目)、現在に至る。
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