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スペシャルインタビュー:大和市長・大木 哲 氏

インタビュー 特集

大和市の人口は約23万2千人。2009年に「健康都市やまと」を宣言して以来、健康を市政の中心に据えてきた。WHO(世界保健機関)の提唱する「健康都市」の考え方に則った同市の取り組みは国内外でも注目されており、2014年10月29日に香港で開催された健康都市連合国際大会で、「健康都市優秀インフラストラクチャー賞」を国内では初めて受賞している。

その大和市・大木市長に大和市の健康政策、そしてご自身の健康に対するダイナミックな考えについて熱く語っていただいた。

わが大和市は「健康」をど真ん中において、人の命を育むまちづくりを目指しています!

大和市長
大木 哲 氏

―日本の社会保障制度について大和市・大木市長のお考えをお聞かせください。

かつてないほど、社会保障制度に対する課題が、大きくなってきていると思います。しかも、その大きさは今後ますます大きくなることはあっても小さくなることはないということで、今ある様々な政治課題の中でも、最も大きな政治課題の一つではないでしょうか。これだけ高齢化率が高く、しかも人口減少社会に早く突入していく国は、世界的にも例がないことです。そういう意味でも日本の社会保障制度をより充実させて世界に見本を示していかなければなりません。是非その舵取りをしっかりと国のほうでやっていただければと思いますので、しっかりと国の動向を注視していきたいと思っています。

昨年10月末、本市においても高齢化率が21%を超え、遂に超高齢社会に突入しました。我が国の高齢化は、世界に類を見ないスピードで進行していますが、本市では、それを上回る速さになることも考えられます。活力のあるまちを維持することは、これまで以上に重要となり、そのための取り組みを確実に進めていかなければなりません。

―人口減少社会に突入しました。少子化に対する大和市の取組みを教えてください。

まず少子化対策において市が具体的に出来ることは限られていると思いますし、本来は国がしっかりやるべきことと思います。例えば、不妊治療には、「一般不妊治療」と「特定不妊治療」があります。 大和市は、神奈川県内で一番初めにこの「一般不妊治療」への助成を導入した自治体であり、また、「特定不妊治療助成」についても国の助成に上乗せをしております。そして、忘れてならないのは「不育症」で、本来生まれてくるはずの赤ちゃんが流産という非常に残念な結果になってしまう。それを防ぐための「不育症治療」への助成も神奈川県内では初めて行っております。

ここ数年は他の自治体でも「不育症治療」に対する助成を始めていると思いますが、全国的にも早い段階で取組みました。つまり、「不妊症」「不育症」の方々は赤ちゃんを望んでいる方なので、国が少子化対策云々というのであれば、こういったところに対してもっと全国ベースでしっかりと予算立てをして、まずこういう方々にこそ国が思い切って支援をしていくべきではないでしょうか?この辺の国の対応策というのは、非常に遅いと思います。お子さんが欲しいご両親に対して国のほうで治療費の支援、極端な話100%助成しても私は良いと思います。大きな橋一本架ける費用よりもそれ以上のお金がかかる筈がない訳ですからね。少子化対策のメニューを作るだけではなく、メニューを作ったら中味、そしてその中味を国民一人一人に理解していただくようなメッセージを出していくべきだと思います。

―近年、在宅型のケアを含め包括型の医療ケアシステムの構築が求められております。大和市では今後どのような地域包括型ケアシステムの整備を行おうとされているのでしょうか?

非常に難しいと考えております。何故なら、「在宅型の医療」というのは本当に出来るのかどうか。この根底にあるのは、〝在宅で家族に面倒をみてもらいましょう〟という考え方であり、在り方そのものが、古き良き時代の発想です。政治家の方々がこういうシステムを構築しようとされているとしたら全然戦略性がないということになります。古き良き日本の時代というと、なんとなく良い響きに聞こえますが、女性の方、お嫁さんに頑張っていただいて初めてその上に成り立っているのであって、その前提条件は現在殆ど失われており、10年後にはもっと失われていく、20年後は益々失われていくという大きな流れの上で考えていかなければならない筈なのに、今の政治家の方達が未だ先を見られていないのか、全く現実的ではない古い時代の考えを踏襲している訳です。10年後になったら今よりもっと現実的ではない「在宅」という考えにはどうしても無理があり、少なくとも家族にそれを期待するというのは不可能に近い。何故なら85歳以上で一人暮らしの人が50%を超えているからです。一人暮らしで、何をどうやってやれというのか。それには、お嫁さんがいたり、ご長男が一緒にいるとか、前提条件があって初めてやれることなのです。隣近所の方といっても自ずから限界があります。従ってどうしてもここにはコストがかかってくるのです。実は、根底にあるのは、このコストの問題をどうしていくかということです。そういう背景があって地域包括的な考えを国が打ち出してきていると思いますが、これは確かに難しい問題です。しかし、難しい問題であればある程、其処には別の意味の可能性が秘めていると思うのです。「ピンチはチャンスだ!」という発想で、この問題に真正面から向き合う覚悟で臨まなければ、中々前に進まないと思います。具体的にどうしていくかということを考えていく時に皆さんで叡智を出し合っていくことが必要です。

―古来から地域医療を支えてきた医療職種である柔道整復師は、骨接ぎ・接骨院の先生として地域住民の方々に親しまれてきました。今後の超高齢化社会においては、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種です。地域包括型ケアシステムの中に柔道整復師の参入は可能でしょうか。大木市長のお考えをお聞かせ下さい。

柔道整復師の方のお仕事というのは、今までも重要な仕事であり、だからこそ、柔道整復師になろうという人がどんどん増えてきている訳です。ただこれからは、今よりももっと社会的責任が大きくなってくる時代に入ってくるのではないかと思っています。それをどういう風にしていくのか、願い通りになっていくのか、或いはその逆方向になっていくのか、大河は願われている方に向かって流れていると思います。しかし大河は流れていたとしても、その大河のほうに流れていかないで、ボートを何処かの木にくくりつけた状態で其処にとどまっているかどうかは柔道整復師の方々が決めることで、答えは柔道整復師の方々の中にあります。

現在、介護予防として通所型の地域支援事業が行われておりますが、その中に柔道整復師の方も関わっていらっしゃって、ただ今のところ一人のため、その輪を広げていくということで今後はもっと関わりが出てくると考えていますし、予防の部分で柔道整復師の方の役割はかなり増えてくると思っています。ただし、鍼灸師の方々の一番弱い部分はエビデンスと言われていますように柔整の方も同様で、その辺をどうやって説得するかにかかっていると思います。本当に大事なことは痛みがとれて治ることであるのにエビデンス一辺倒で、現場の方々は辛い思いをされているでしょう。現実にしっかりとした治療をなさっていることに対してもっと高く評価されるべきではないかと思います。

―大和市においてはボランティアなどの人材は足りているのでしょうか。

大和市内11地区に地区社会福祉協議会があります。其処で介護とかお年寄りの見守りとか、簡単なお手伝いなどしていただいております。所謂ボランティアの方たちは、地区社協の方とか、民生委員さんなど、又その方達の人脈もあります。いま現在、大和市の民生委員は276人で、大和市はこれらの方々が一生懸命ネットワークを組んでおり、多分これくらい充足されている自治体はあまりないと思います。地元のボランティアのなり手がいっぱい集まって、ボランティア活動を行っており、高齢社会だけではなく子どもの福祉にもご協力いただいています。しかしながら大和市は、地区社協が比較的発達しているから足りているかというと今後は多分足りないと思いますし、やはり人手不足になっていくと思います。少なくとも介護職員はまだまだ足りておりません。大和市は3年毎に調査を行っている訳ですが、平成19年の段階では、介護事業を運営していくための課題として「職員の確保」について72%の事業所が挙げていましたが、22年の時は50%でしたから少しずつ改善されてきています。ただその中で「介護報酬が低い」というのは、やはり多く、3割ほどの事業所が課題に挙げています。

―今年の4月に「60歳代を高齢者と言わない都市 やまと」宣言をされたそうですが…

ことのほかマスコミからも取材していただき、サミエル・ウルマンの〝年を重ねただけで人は老いない、理想を失うとき初めて老いる〟などお話しましたところ、朝日新聞の天声人語にも取り上げられました。 宣言の内容は、以下の通りです。

  • 人生80年の時代を迎え、これまで高齢者とされてきた世代の意識も大きく変わり、今では、多くの方々が生き生きと過ごしています。
  • 家庭や地域を支えている方、職場で頑張っている方など、豊かな知識と深い経験を持つ人材は大和の貴重な宝です。
  • こうした方々に、いつまでも、はつらつと元気に活躍していただきたいと考え、ここに「60歳代を高齢者と言わない」ことを宣言します。

これまで本市が〝何が一番重要なのか〟を模索し追及する中で、私どもが「健康都市」を掲げた切っ掛けになったのは、初詣に行くと神様仏様にお願いをします。これは口に出して言わないんですが、その時に〝自分自身が一年間元気でいられますように、健康でいられますように、家族みんなが健康でいられますように〟ということをお願いする人が一番多いのではないかと思います。市民の方々が一年に一回神様に手を合わせて初詣の時にお願いをする、これに嘘はないと思います。偽りのない真実の気持ち、「健康」こそ、正に一番大切にすべきではないかということで市のど真ん中に掲げることにした訳です。本市は今後も、市民が健康で幸せに暮らすことが出来るまちを目指し、健康創造都市の実現に向けた取り組みを力強く推進して参ります。

大木哲(さとる)氏プロフィール

東京都出身、昭和23年生まれ。青山学院大学経済学部卒。

サラリーマン生活を経て、鶴見大学歯学部に入学、卒業。勤務医を経て、歯科医院を開設。平成7年の統一地方選挙において、新進党より神奈川県議会議員選挙に立候補し、初当選。2期目の選挙では、民主党より立候補し当選。平成15年、3期目当選。平成19年、大和市長選挙に立候補し当選。第14代大和市長に就任。
平成23年、2期目の選挙に立候補し当選。第15代大和市長に就任。現在に至る。

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