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スペシャルインタビュー:大田区長・松原 忠義 氏

インタビュー 特集

大田区の人口は、約71万人。内、高齢者人口は約16万人で、高齢化率は約22.5%である(平成27年1月1日現在)。 大田区は、1984年8月に平和都市宣言、また2012年6月にはスポーツ健康都市宣言を行っている。

来たる2020年の東京オリンピック・パラリンピックを成功に導くため準備に余念がない大田区は、何より「地域力」が強い地域である。地域住民の情熱で更なる進化・充実していくことでますますの発展を遂げるであろう。あふれる叡智と辣腕の大田区長・松原忠義氏にまちづくりの原点と今後の抱負を話して頂いた。

地域包括ケアシステムを切れ目なく万全に構築し、情熱とパワーを結集して「共に信じあえる」まちづくりを行っています!

大田区長
松原 忠義 氏

―日本の社会保障制度について松原区長のお考えをお聞かせください。

日本の社会保障制度は、乳幼児から高齢者まですべての国民が安心して生活するために幅広く実施されており素晴らしい制度であると思います。世界と比べると社会保障がこれだけ多面的になされている国は珍しいと思います。所謂ヨーロッパ、スウェーデン・デンマーク等の先進事例がいろいろ紹介されますが、やはり夫々の国によってやり方がいろいろ異なります。日本の場合、全般的に若い人からお年寄りまでかなり行き届いた施策をしていると思います。ただし、残念ながらもの凄い勢いで少子化と高齢化が進んでおり、深刻な課題に直面しています。国の推計では、2060年には、10人中4人が高齢者となり、出生数は現在の半分以下となるとしています。子どもや生産年齢人口が減少し、高齢者の割合が増えていくことが推測される中で、社会保障費の財源不足などが一層深刻化していくと思います。

大田区では、2060年を見据えた「人口ビジョン」と「総合戦略」を今年度中に策定し、長期的な人口構成の変化に対応できる持続可能な地域社会の実現を目指してまいります。子育て政策の充実、高齢者の健康づくりの支援など区民に一番身近な自治体として出来る取り組みを行っていくことが社会保障制度を支えることにも繋がると考えております。 そういう状況の中で、社会保障制度成り立たせるには2つあると思います。1つは、安心して産んで、育てて学べる環境を如何につくるか、この環境が作れたところは当然魅力が出てきますから、若い方が増えますので、お子さんも増えてきます。子どもが増えれば将来的に長続きする自治体になると思います。もう1つは、これだけ元気高齢者の方が多く、65歳以上の方の8割は元気高齢者です。その元気高齢者の方に対してもっと元気で寝たきりにならないようにやっていくには、所謂介護予防です。要するに地域包括センターの機能を如何に充実させるのか。特に東京では特別養護老人ホームを作るといっても土地もありませんし、建築費も嵩むため、需要に追いつけないので、そういったことがとても大事だと思います。今社会保障費が110兆円になり国家予算よりも大きくなってしまいました。

―人口減少社会に突入しました。超高齢化の進展と少子化に対する大田区の取組みを教えてください。また、予算規模等についても教えてください。

平成27年度当初予算について申し上げると、一般会計の予算規模は2,501億円で、前年度比が約81億円、3.3%の増額となっております。保育園待機児童解消に向けた対策強化など、産みやすく育てやすい環境を整備すると共に、高齢者の在宅生活を支える24時間サービスの拡充等、地域包括ケア体制の構築を推進し、区民の誰もがいきいきと暮らしやすいまちづくりを進めるための予算を計上しています。

因みに予算のおおまかな内訳を申し上げると、子育て・教育予算として、①待機児童解消に向けた取り組み―保育ニーズにあわせた保育施設の整備(36億9,113万円)②小学校における放課後児童の居場所づくり事業―学童保育事業及び放課後子ども教室事業(7億2,035万円)③計画的な小中学校校舎の改築―志茂田小・中学校等(18億7,395万円)となっております。また、健康・福祉・医療予算としては①さぽーとぴあ管理運営・第二期工事(4億3,262万円)②高齢者の在宅生活を支える24時間サービスの拡充―高齢者見守りキーホルダー、訪問サービス等(2,201万円)③生活困窮者自立支援事業―大田区生活再建・就労サポートセンター開設等(1億1,159万円)④介護予防事業の充実―いきいきシニアサロン等(1,574万円)⑤体力向上の推進―体育・健康教育授業地区公開講座・小学生駅伝大会等(545万円)⑥スポーツ健康都市宣言記念事業「第2回おおたスポーツ健康フェスタ」の実施(555万円)⑦地域医療施策に関する調査・研究(1,578万円)⑧がん検診等健康診査の推進(13億596万円)、等となっております。

―近年、社会保障費の財源が苦しくなっていることに加えて、高齢社会で医療費も介護費も大変な増加が見込まれ、それに伴い在宅ケアを含め包括型の医療ケアシステムの構築が求められております。大田区で現在取り組まれている地域包括ケアシステムの構築状況についてお聞かせください。

大田区では、住み慣れた地域で安心して暮らせることを目指して、地域包括ケア体制の構築に取り組んでいます。昨年度末に、平成27年度から29年度の3か年計画で、大田区の高齢者福祉計画と介護保険事業計画を合わせた『おおた高齢者施策推進プラン』を地域包括ケア計画と位置づけて計画の推進を図っているところです。大田区では地域包括支援センターのことを「さわやかサポート」と称していますが、その「さわやかサポート」が核になっています。ご承知のとおり「さわやかサポート」で行うサービスというのは、「医療・介護・介護予防・住まい・生活支援」の5つが地域包括ケアの主たるサービスで、適切かつ円滑に受けることができる体制を目指し、今果敢に取り組んでおります。そういった中で、柔道整復師会大田支部の先生方には介護予防事業として高齢者の方々のための体操教室の講師としてご協力をいただいており、このような介護予防のための取組みも地域で安心して暮らせることを目指す地域包括ケアを支えていく極めて重要な要素だと思います。そういうことを頑張ってやっていただいている柔道整復師会の先生方を有難いと思っています。

大田区政の2本柱の1つは「地域力」であり、もう1つは「国際都市」ということです。何故なら大田区には羽田空港がありますから、羽田空港を拠点に幅広い展開を目指していこうということですが、「地域力」と「国際都市」は乖離するものではなく、実は表裏一体なんですね。先に申し上げた少子化と高齢化が同時に進んでいる中で一番大切なのは、問題を放置しておくと人口がどんどん減っていきます。政府も1億人を維持しようということで一生懸命やっている訳ですが、中々難しい面もあります。昨今、例えば「ゴミ屋敷」・「空き家」・「孤独死」等、様々な問題が出てきておりますが、我々行政だけでは見守り体制がとても困難になっている状況であり、「地域力」が物凄く求められている訳です。

「地域力」というのは、他の自治体でも取り組みが始まっておりますが、中でも大田区は最初のほうで、元々阪神淡路大震災で出てきた言葉です。地域住民みんなで助け合わないと復興できませんから災害が最も「地域力」を必要とします。高齢だからといって引っ込んではダメです。つまり、周りが引きこもらないようにしてあげることです。新聞配達の人にも、郵便物がたまっていると見てあげるなど、様々な形で協定を結んでいます。

また私ども大田区は、「地域力」を〝地域力とは区民一人一人の力を源として自治会・町会・事業者・団体・NPOなど様々な主体が持っている力、それらの相互及び区との連携・協働によって生まれる力を含んだものであり、防犯・防災・福祉・子育て・教育・産業・環境・国際交流・まちの魅力づくりなどを行う。その結果、多様な地域の課題を解決することによって魅力ある地域を創造していこう〟と定義しており、この定義が大田区の考え方そのものです。従って、福祉の問題や健康の問題も、すべて「地域力」の大事な核なんですね。そういった意味では柔道整復師の先生方の力というのはまさに地域力の源でもあるという風に我々は考えております。

大田区の「さわやかサポート」では、高齢者見守りコーディネーターを配置して、様々な活動、例えば、いま全国的に人気になっている「高齢者見守りキーホルダー」の普及事業を展開しており、見守りキーホルダーは区長が1番ということで、私自身いつも身につけています。認知症の方が何所かで家に帰られなくなった場合、杖にホルダーがつけてあると連絡先の「さわやかサポート」が記載されていて、そこに問い合わせをすると個人情報なので配慮を要しますが、番号でその人の氏名・住所等全部分かるようになっています。また「見守り支え合いネットワークづくり」や社会福祉協議会とのネットワーク等も作らせて頂いております。そういう形で、みんなで支え合う自主的な取り組みが行われており、区内の商店街或いは事業者等にも高齢者の見守りに取り組んで頂いて、地域の力を結集して共に支え合う地域を作っていこうと推進している真っ最中です。

有難いのは、大田区は町会と自治会の組織率が高いんです。勿論、他にも高い区はありますが、70万という大きい自治体で町会に入っている方が多いというのは珍しいと言われています。町会・自治会がしっかり地域に根付いていて、様々なイベントをやっており、その方々との連携・協働が凄く大事です。また、民生委員の方は其処から推薦されて出てくる人で、犯罪をおかした人の立ち直りを支援する保護司さんも地域から出て頂いて、いろんなコミュニケーションをはかって、今は犯罪非行防止ということで前面に出て頂いて町会・自治会で一緒になって、みんなでやっていこうとなっています。しかも大田区には18の出張所があり、その18の出張所が一緒になって1つの大きなイベントをやってもらおうということで動いて、私どもも信じられませんでしたが、なんと田園調布で1万4・5千人、池上も1万5・6千人が出てきます。いま年配の方が多いので大変ですが、イベント会場に来て頂いて、みんなで触れ合っていくことが健康を維持したり、見守り合うことで災難を防いだり、イザという時の防犯活動や防災活動に役立っています。要するにイベントが活発だということはとても大事なことで、やり方次第だと思います。

かつて町会の役員さんは殆ど同じ顔ぶれでしたが、一般の方も来てくれるようにと、町会も自治会も民生委員さんも保護司さんも、学校も保育園も幼稚園も、警察も消防も事業団体全部、結果として50団体を核に呼びかけをしました。そうすると地域の人みんなが集ってきてくれて、いま非常に大きな祭りになりました。大田区は71万人ですが、オール大田の一大イベントとしてすっかり地域に定着した「おおたふれあいフェスタ」では、去年はお天気に恵まれたので約38万人が集いました。応募が180団体、自分たちも出させて欲しいというのでとうとう籤引きにしました。中には出て来れない人もおりますが、出来るだけ声をかけ合うように全体で取り組んでいます。大田区は、安くて美味くて人の触れ合いが多い、それが特徴です(笑)。

―柔道整復師は、骨接ぎ・接骨院の先生として地域住民の方々に親しまれてきました。また柔道整復師はスポーツ現場でもスポーツトレーナーとしてアスリートの怪我やパフォーマンスの向上に役立つ指導を行ってきました。今の高齢化社会において、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。介護分野で柔道整復師は、機能訓練指導員として働いています。地域包括型ケアシステムの中に柔道整復師の参入は可能でしょうか。松原区長のお考えをお聞かせ下さい。

参入の可能性について、私は大いにあると思っています。私の体験ではありますが、父が柔道3段で、戦前は「骨接ぎ」が出来るとされておりました。戦争に行って、衛生班に回され、医療・衛生班は前線部隊であり、負傷者に対し骨接ぎの仕事を全て父がうけて行っていたそうです。また昔は、今みたいに直ぐにお医者さんに行くのではなく、子どもの頃を思い出すとそんなにお医者さんに行きませんでした。骨折したり捻挫した時には「骨接ぎ」に行ったものです。そういった意味では非常に大事な要素が沢山ある訳です。しかも、骨接ぎの先生方って凄く親切な人が多くて行きやすいということもありまして、私は非常に良いと思います。特に大田区の支部の先生には、膝痛腰痛ストップ体操を現在区内4か所で実施して頂いております。中でも膝の関節が変形することで痛みが起こる変形性膝関節症等は要支援や要介護の原因になりますので、当区では早くから膝痛や腰痛が少しでも楽になるように椅子に座った状態で家庭の中でも簡単に出来る体操を昨年の2月から開催しています。

柔道整復師会の先生方は、指導方法も大変ユニークで、参加者からも評判がよく特に六郷地域力推進センターで開催している教室では、毎回定員を大きく上回るぐらい人気があります。柔道整復師の方は地域に密着しているため患者さんの立場になって話してくださいますし、気安さがあると思います。先ほどお話しましたように介護予防は地域包括ケア体制を構成する5つの要素の1つであり、高齢者が積極的に介護予防に取り組むよう支援していきます。当区では、これからも東京都柔道整復師会大田支部の先生方と連携して、介護予防事業を展開していく予定ですが、機能訓練指導員としての地域包括ケア体制の担い手になって頂くことは、十分に可能であると思います。

―やはり、医療のいきづまりといいますか、今後は治す医療ではなく、生活支援型の医療を目指すといわれているお医者様も多くいらっしゃいます。生活支援、QOLの向上をはかっていくことは今後重要になっていくと思います。大田区でも健康教室、転倒予防教室、市民ウオーキング等、予防医療の取り組み並びに様々な取り組みをされていることが分ります。その指導者はどうやって選ばれているのでしょうか?よろしければ教えてください。

大田区でも、区民の皆さんが病気やけがをしないように、健康で丈夫なからだを作って頂くための施策を行っています。特に区内4か所の地域健康課では、生活習慣病予防教室やフォローアップ教室、健康相談等を開催し、区民自らが健康づくりに主体的に取り組めるよう、健康情報や知識を提供するだけでなく、グループワークを通じた仲間づくりも進めています。特に女性への健康支援として、女性医師による女性の専門相談を今年度から開始し、女性特有の症状や悩みに対応しています。併せて閉経後の女性に多い骨粗鬆症予防のため、骨密度測定や寝たきり防止の観点から保健・栄養指導・運動・歯科を中心とした教室を開催しています。

また、健康づくりが住み慣れた地域で気軽に行えるよう、区内の名所を盛り込んだウォーキングマップ「私の健康づくり大・作・戦」(第二版)を作成しています。多くの方にマップを手元に持って区内ウォーキングコースを歩いて頂くものです。区民の皆様が、健康づくりに自ら気づき、行動に踏み出し、地域の仲間と一緒に健康づくりに取り組める環境を引き続き努めて参ります。 介護予防事業では、要支援や要介護の認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象に、現在区内4か所の公園で「いきいき公園体操」を実施しています。「いきいき公園体操」は、本体操を考案した事業者が2年かけて地域のボランティアである「いきいき公園体操地域指導員」を育成し、2年経過した後には「いきいき公園体操地域指導員」が主体となって体操教室を開催しています。また、「認知症予防体操」や「ポール・ウォーキング」等、多くの介護予防事業では、他の自治体においても十分な実績を有している事業者に委託のうえ実施しています。

―昨今、地球規模で大災害が多発しています。大田区の防災計画について教えてください。防災計画を立てる時に極めて重要なことは、何を前例として何を想定するかと言われておりますが、その辺についても教えてください。

ご承知のように東日本大震災は、津波が目に大きく焼き付いていると思いますが、その前の阪神淡路大震災では、火災の被害が大きかった訳です。これらのことを教訓にしまして、大田区の総合防災力を更に強化するため、防災対策の抜本的な見直しを行う必要があると考え、平成23年7月に「大田区総合防災力強化検討委員会」を設置しました。委員会には、区内各分野の皆さんに委員として参画いただき、区における災害対応の在り方について様々な角度から議論を深め、防災対策の方向性を検討して頂きました。大規模地震と被災支援から得た教訓と、この「大田区総合防災力強化検討委員会」の提言をもとに、平成24年に東京都が発表した「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」の「東京湾北部地震(冬の夕方18時・風速8m/秒)」を前提として防災計画を立て、総合防災対策の基本的な考え方として、①自助・共助・公助の協働②あらゆる区民の関与と繋がりの形成③災害後に生じる問題の理解と対策の充実④防災意識の日常化⑤防災に強い区民とまちづくりへの継続的な取り組み、を『5つの柱』として防災力強化のために基本方針としています。この基本方針を踏まえ、「区民の命を守る」「最低限の生活を守る」「地域防災力を維持・強化する」の視点から、防災力強化のための施策を推進しています。

具体的な対策をいくつかあげますと、防災市民組織のある212の自治会・町会に初期消火用スタンドパイプを配備、市民消火隊への新型D級ポンプを配備しました。都市での地震災害で最も恐ろしいのは火災による被害であり、火災による被害を最小限に抑えるためには、地域が協力して延焼を防ぐための初期消火活動が重要となります。もう1つは、児童生徒の身の安全を迅速に図るため区内全小・中学校に緊急地震速報受信機を設置しました。また、平成24年度から平成28年度までの5か年で、91か所の小・中学校等の学校避難所を「学校防災活動拠点」と位置付け直し、地域の方々のご協力を得ながら、これまでの「避難する場所」に加え、「情報収集機能」「地域活動機能」を持たせ、救助物品や備蓄物品を充実させ、防災活動拠点に転換を図る取組みを進めています。

災害に強いまちづくりの観点からは、住宅・マンション等民間建築物の耐震化促進のための助成制度の充実をはかる一方、建物の不燃化を促進するため、建て替え時には燃えにくい準耐火・耐火建築物として頂く東京都建築安全条例に基づく新たな防火規制を23区最大の面積、約1551ヘクタールにかけさせて頂きました。 防災対策においては、「公助」だけの力では限界があります。「自助」「共助」が加わることによって、災害に立ち向かうことが可能となります。

―柔道整復は阪神淡路の大震災、2011年の東日本大震災時においても活躍してきました。柔道整復は、高度診断機器、薬物を用いることなく救護にあたれる医療職種として、また近年盛んに言われ出したエコ医療であると言えます。松原区長から見て、柔道整復(伝統・民族医学)は今後どのような活用が望まれるでしょうか。

大田区では、阪神淡路や東日本大震災の教訓をもとに、今年度から、病院の門前又は近隣に緊急医療救護所を設置することとしました。震災など大規模な災害が発生したとき、この緊急医療救護所には、医師会の先生方などの他、柔道整復師の先生方も参集して頂き、主に軽症者の処置をお願いしています。訓練にも積極的にご参加頂いていますが、柔道整復師の先生方はとてもフットワークが良く、医師の指示のもとテキパキと動いていらっしゃることに、とても心強く感じています。災害医療の分野だけでなく、柔道整復師の先生方には、介護予防や健康増進など、区民の健康を向上させるために様々な場面でご活躍頂くことを期待しています。

―平成24年6月30日大田区総合体育館開館セレモニーで『スポーツ健康都市宣言』を行ったとありますが、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けての意気込みなどお聞かせください。

大田区では、2020年東京大会に向け、3つのビジョンを定めています。

1つ目は、「大会の開催を契機として、『スポーツ健康都市』及び『国際都市おおた』としての取組みを推進する」ことです。2つ目は、『おおた未来プラン(後期)』の計画事業をはじめ、積極的かつ大胆な施策を展開し、大田の都市機能・まちの力を向上させる」ことです。3つ目は、「大会の成功に向けて、大会組織委員会及び東京都に全面的に協力すること」です。こうしたビジョンの実現に向け、「大田区オリンピック・パラリンピックアクションプログラム」を策定し、様々な取組みを展開しているところです。

オリンピック競技会場をめぐる状況にも大きな動きがありました。去る9月15日には、東京都が都立大井ふ頭中央海浜公園の会場レイアウトの変更を発表しました。これに伴い2020年東京大会におけるホッケー競技会場のサブピッチが大田区に整備されることが決定しました。新たな計画では、現在、品川区内にある第1球技場とゲートボール場、ドッグランがある場所にメインピッチが整備され、これに隣設する大田区東海1丁目の第2球技場がある場所にサブピッチが整備されることになります。更に現在、大会組織委員会は、国際オリンピック委員会(IOC)に対し、2020年東京大会の追加競技として野球・ソフトボールを提案しています。大田区は、都内屈指の規模を誇る大田スタジアムを有しており、大田スタジアムは、選手村からも8キロ圏内に位置し、羽田空港からのアクセスも抜群です。また、仮設スタンドの設置が可能であり、先ほどのホッケー競技会場のサブピッチが整備される第2球技場の隣にあることから、コンパクトな大会運営にも貢献することが可能です。区では、区議会と共に大会組織委員会に対し、大田スタジアムへのソフトボール球技会場の誘致に向けた要望書を提出しました。追加競技の正式決定は、来年8月のIOC総会で行われます。野球・ソフトボールは、国民的スポーツとして人気もメダル獲得の可能性も高い競技です。引き続き、大田区への競技会場の誘致に向け、関係機関に対し積極的な働きかけを進めていきます。

区内には、大田区総合体育館から海側にかけて、多くのスポーツ施設や公園が集積しており、区では、このエリアを「新スポーツ健康ゾーン」とし、施設の改修や水辺を活かしたスポーツ施設の整備を進めています。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催は、大田区の全域を大胆かつ戦略的に変えていく絶好のチャンスであると考えています。この機会を捉え、区民がスポーツに親しみ、体力の向上や健康づくりを通して地域に賑わいと活力を増すことができるよう、ソフト・ハードの両面で積極的な取組みを進めて参ります。

また大田区では「国際都市」ということを宣言していますが、大事なのは来て頂いて良く迎えてくれたという印象が凄く大切です。大田区に住んでいる外国の方を来~る大田区大使に毎年10人位ずつ選んで、現在62名になっております。まさに他所の国に行って観光大使になろうという方々ですから若くて前向きな方が多く、そういう人が一堂に会すると本当の意味での国際都市になります。大田区まちかど案内所やウェルカムショップを260位設置して、言葉が通じなくても指差しマップを作ってきめ細かく対応するなど、やはり国際都市というのは交流し合うことが大切ですし、また外国人や区民と同じ目線に立ってやっていくことが凄く大事で、そこが国際都市の一番条件になると思っています。大田区に来て頂いて、世界中と商取引が出来たら良いねということで、熱い情熱が漲っております(笑)。 昨今みんな下を向いてばっかりいるんですが、それでは絶対ダメなんですね。盛り上げるにはやはり「地域力」と「国際都市」で外に出なければ、置いていかれます。大田区としては、一生懸命、元気な大田区・魅力的な大田区をつくるということで頑張っています。

松原 忠義(まつばらただよし)氏プロフィール

昭和18年2月8日生まれ。
学歴:昭和41年、早稲田大学法学部卒業。 平成21年、明治大学大学院ガバナンス研究科修了 経歴:昭和58年から平成5年 大田区議会議員(3期)。平成9年から平成19年、東京都議会議員(3期)。平成19年4月27日、大田区長(1期目)。平成23年4月27日、大田区長(2期目)。平成27年4月27日、大田区長(3期目)。現在に至る。
趣味:読書、旅行
スポーツ:ウォーキング
座右の銘:努力と忍耐

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