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スペシャルインタビュー:調布市長 長友貴樹氏

インタビュー 特集

映画のまちとして知られる調布市。角川大映スタジオ、日活撮影所をはじめ、石原プロなど芸能プロダクション、東京現像所等々、映画・映像関係の会社が多い。しかも、本年9月には多摩地域最大級の待望のシネマコンプレックスが誕生する。
また調布飛行場は、大島、新島、神津島など東京都諸島間を結ぶ離島航空路線の拠点であり、防災・医療・消防など緊急活動に使用されている。
「ラグビーワールドカップ2019日本大会」、東京オリンピック・パラリンピック2020競技大会の会場となる味の素スタジアム周辺では、東京都が建設する武蔵野の森総合スポーツプラザの竣工が予定され、バドミントン競技等の試合が行われることに決定している。
そんな未来輝く調布市の長友市長は、日本貿易振興会(JETRO)に長年勤務していた方であり、世界各国を見てきた方である。広い見聞と知識で調布市の将来を深く熱く考えている人物である。ビジョンをお聞きした。

「みんなが笑顔でつながる・ぬくもりと輝きのまち調布」の実現に向け、確実な歩みを続けて参ります!

調布市長
長友 貴樹   氏

―日本の社会保障制度について長友市長のお考えをお聞かせください?

少子高齢化の進行に伴い、年金・医療・福祉にかかる社会保障関係経費は増大を続けている中、持続可能な仕組みの整備に向けて、国を中心に社会保障制度改革が進められています。
地域の福祉増進を担う基礎自治体の役割としては、保健・医療・福祉の連携はもとより、住環境政策や地域コミュニティづくりを含め、総合的な施策展開により、市民が住み慣れた地域で暮らし続けることができるまちづくりを進めていく必要があると考えています。

―人口減少社会に突入しました。超高齢化の進展と少子化に対する調布市の取り組みを教えてください。

全国の傾向と異なり、調布市は現在も総人口、年少人口ともに増加していますが、平成30年代後半には人口減少に転じると推計しています。
こうした将来人口推計も踏まえながら子ども・子育て支援施策では、調布市子ども条例に基づく「調布っ子すこやかプラン」を策定し、子どもを安心して産み育てられる環境整備を図っているところです。
認可保育園の整備などハード面の取り組みはもとより妊娠期から出産、子育て期を通した「切れ目のない支援」を行っていく必要があると考えており、子育て世代包括支援センター機能の充実やゆりかご調布事業などに取り組んでいます。
高齢福祉施策では、「公助」及び「共助」はもとより、地域で地域住民を支える「互助」「自助」の仕組みを構築していくことを目指しています。その一環として、「生活支援体制整備事業」を実施し、「地域支え合い推進員(生活支援コーディネーター)」を配置することにより、地域の互助及び自助力を高める取り組みを行っています。

―近年、社会保障費の財源が苦しくなっていることに加えて、高齢社会で医療費も介護費も大変な増加が見込まれ、それに伴い在宅ケアを含め包括型の医療ケアシステムの構築が求められております。調布市で現在取り組まれている地域包括ケアシステムの構築状況ついてお聞かせください。

市では、「一人ひとりに必要な支援が届くこと」「誰もが誰かとつながること」を目標に掲げ、地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいます。
平成28年度までは、地域包括ケアシステムの構成要素である「住まい・医療・介護・予防・生活支援」の各分野において、関係機関との連携を推進し、顔の見える関係づくりに努めてきました。その一例として、公益社団法人調布市医師会と連携した「在宅医療・介護連携推進事業」があります。
この事業は、調布市医師会に委託して在宅医療の相談窓口を設置するほか、医師、歯科医師、薬剤師などの医療関係者と、特別養護老人ホームの施設長、地域包括支援センター等の福祉関係者が一堂に会し、医療介護の連携に係る協議会を開催するものです。

―また地域包括支援センターの力量差も言われており、地域力が弱くなっている現在、「互助」による支援体制が機能する可能性についてもお聞かせください。

市内に10箇所ある地域包括支援センターの後方支援を行うために、市の高齢者支援室が基幹型地域包括支援センターの役割を担い、各センターと連携しながら事業を進めています。また、市が平成27年度から開始した「生活支援体制整備事業」では、「地域支え合い推進員」が地域に出向いて、地域の様々な取り組みを調べたところ、一定の「互助」による支援体制がすでに地域に醸成されていることが確認できました。
こうした地域の「互助」機能を持続させること、また新たな「互助」機能を付加していくには、専門職の関わりや地域における担い手の育成支援が不可欠であるため、今後行政としてどのような仕掛けをするか、地域包括支援センターと連携しながら、調査・研究を重ねているところです。
市では、制度の狭間で既存の公的な福祉サービスだけでは必ずしも十分な対応ができていない方などに対し、福祉の生活課題の解決に向けた取り組みを行うため、地域福祉コーディネーターを配置しています。
地域福祉コーディネーターは、地域の福祉課題やニーズを発見し、受け止め、地域組織や地域包括支援センターなどの関係機関と協力しながら、地域における支え合いの仕組みづくりや地域での生活を支えるネットワークづくりを行うなど地域福祉の推進に取り組んでいます。

―介護の人材不足、在宅系看護師不足等、人材が不足していると聞きます。調布市において、人材は足りているのでしょうか。

市内では、人員不足により事業を廃止した介護事業所の事例は今のところ聞いておりません。
しかしながら、どの事業所においても、人員確保には苦慮されており、特に専門的知識をもった看護人材の確保が難しい状況にあることは伺っています。
介護従事者の処遇の改善や、労務管理の改善が雇用の安定につながり、結果的に介護の質の向上にもつながると考えています。そのため、市では事業者の雇用の安定に向けた研修会を実施するなど、積極的に支援しています。
また、調布市独自の仕組みとして平成28年度から開始した介護予防・日常生活支援総合事業では、「調布市高齢者家事援助ヘルパー養成研修」を実施しています。平成28年度の養成研修受講修了者は42人であり、地域の介護人材育成につながっているものと考えています。
さらに今後の後期高齢者の増加に対応するために、養成研修修了者が介護予防・日常生活支援総合事業や地域の支え合いの担い手として、より一層活躍できるようきめ細かなフォローアップを行って参ります。

―待機児童対策について中々解消されていかない原因は何所にあるとお考えでしょうか?子育て支援、女性の雇用対策や働き方改革などについて長友市長のお考えを教えてください。

定員拡大を上回る、保育園入園申込者の増加が続いている状況です。
待機児童対策としては、調布っ子すこやかプラン(調布市子ども・子育て支援事業計画)に基づき、認可保育園整備を中心とした保育受け入れ定員の拡大を図っております。
平成30年4月に向けては、さらに認可保育園11園の整備を進め、800人規模の定員拡大を行う準備をしています。申込者数の増加の要因は、女性の就労意欲の高まりや就学前児童数の増加によるものと考えており、働き方改革などによる多様な就労形態に合わせた様々な保育ニーズを的確に把握し、今後の子育て支援施策に反映させる必要があると考えています。
そのため、来年度実施予定の保育ニーズ調査では、保育を必要とする要因や時間などを詳細に把握し分析することで、認可保育園の整備だけでなく、短時間就労家庭の保育ニーズを満たすような一時預かり保育や定期利用保育などの多様な保育サービスの活用についても検討していきます。女性の活躍推進や働き方改革に関しては、昨年4月に制定された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」を受け、市では「調布市特定事業主行動計画 第六次行動計画」を策定し、女性職員の活躍推進、時間外勤務の縮減などの取り組みを進めています。
また、男女共同参画推進センター運営委員会では、昨年から「地域における女性の活躍」というテーマで議論・検討を重ねているところです。

―やはり、医療のいきづまりといいますか、今後は治す医療ではなく、生活支援型の医療を目指すといわれているお医者様も多くいらっしゃいます。生活支援、QOLの向上をはかっていくことは今後重要になっていくと思います。調布市でも健康教室、転倒予防教室、市民ウオーキング等、予防医療の取り組み並びに様々な取り組みをされていることが分ります。たとえば転倒予防教室などはどのような方を対象に行われ、その指導者はどうやって選ばれているのでしょうか?よろしければ教えてください。

市で実施している介護予防教室は、65歳以上で、要支援・要介護になるおそれの高い方、転んだ経験のある方や転倒への不安のある方を対象としています。その委託先は、シナプソロジーという独自に開発したプログラムを構築し、高齢者の介護予防に積極的に取り組んでいる事業者で、「2つのことを同時に行う」「左右で違う動きをする」といった普段慣れない動きで脳に適度な刺激を与え、活性化を図るプログラムを実施し、介護予防に密接に関わる運動・栄養・口腔・認知の項目に対して一体的に行っています。
また、高齢者の健康の維持・改善に向け、安全かつ適切な運動プログラムを提案・指導するため、直接指導に当たる指導者は健康運動指導士の資格を有する者としています。
市の介護予防事業は、従来の行政主体型から住民主体型の介護予防への転換に向けて、地域住民に普及啓発を行っているところです。その中で住民主体型の介護予防教室では、地域住民が自分たちのコンセプトに合う指導者を探していただく仕組みとしていますが、指導者を選ぶことが難しい場合は、地域包括支援センターや地域支え合い推進員(生活支援コーディネーター)が地域住民からの相談に対応しています。

―昨今、地球規模で大災害が多発しています。調布市の防災計画について教えてください。防災計画を立てる時に極めて重要なことは、何を前例として何を想定するかと言われておりますが、その辺についても教えてください。

地震対策では、阪神・淡路大震災や東日本大震災、それ以降の熊本地震も含め、激甚災害の経験と教訓を生かし、各地でまちの実情に応じた対策の改善・強化に取り組まれていることと存じます。市の地域防災計画では、東京都が平成24年に発表した被害想定(避難者数等)を基に、避難所の整備や避難所備蓄品の位置付けを計画的に実施しています。
これらに加えて、地域と協働で避難所運営マニュアルを学校ごとに策定し、災害時の円滑な避難所の運営ができるように検証を行っております。そのほか、調布市避難行動要支援者避難支援プラン(総合計画)に基づき、避難行動の際に支援が必要な方の名簿を、平常時から消防、警察、民生委員・児童委員、地域組織等に提供するための同意確認を引き続き行うとともに、地域の支援体制の整備を進めています。
また、市の地域防災計画では、自助、共助の推進による地域の防災力の向上を重要な施策の一つとしております。災害時においては、自発的に避難行動をとり、地域コミュニティで助け合い、救助活動、避難誘導、避難所運営等を行うことが重要です。
市民の皆様には、日ごろから家屋の地震対策や家族での話し合い、備蓄品の準備、避難経路の確認等、能動的に防災対策を行い、被害の軽減に努めていただくよう様々な機会を通じてお願いしているところです。
水害対策としては、平成28年度に国土交通省が発表した多摩川の新たな浸水想定を踏まえ、洪水ハザードマップを更新し、市内全戸配布を行うことで周知・啓発を図り、市民の安全・安心に努めていきたいと考えています。

―柔道整復は阪神淡路の大震災、2011年の東日本大震災時においても活躍してきました。また柔道整復は、高度診断機器、薬物を用いることなく救護にあたれる医療職種として、近年盛んに言われ出したエコ医療であると言えます。
古来から地域医療を支えてきた医療職種である柔道整復師は、骨接ぎ・接骨院の先生として地域住民の方々に親しまれ、スポーツ現場でもスポーツトレーナーとしてアスリートの怪我やパフォーマンスの向上に役立つ指導を行ってきました。今後の超高齢化社会においては、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。運動能力を維持していくには、単に痛みを取るという考えではなく、能力そのものへの取り組みとしてトレーナー的な業務は必要と感じます。
介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種であります。地域包括型ケアシステムの中に柔道整復師の参入は可能でしょうか。長友市長のお考えをお聞かせ下さい。

可能性はあると考えます。
市では、地域包括ケアシステムの一つの要素である介護予防の取り組みとして、高齢者健康づくり事業を実施していますが、柔道整復師が運営する体操教室に対しても支援を行っており、参加者からも好評を得ていると聞いています。

―今後、病院で死ぬことが出来ない時代がやってくる中で、どのような地域社会を構築できるか。地域における健康づくりを従来型の健康政策のみではなく、機能の集約化、住居環境及び交通網の整備などまちづくりの視点も加えた総合的な施策の構築等についてはどのようなお考えをおもちでしょうか。

地域の医療体制について、東京都が検討している地域医療構想と整合を図りながら、市でも在宅医療と介護の連携体制を構築するなどの取り組みを行うほか、要介護状態を予防するための生活習慣病予防や介護予防などの健康づくりに取り組んでいます。
平成29年度から「生活支援体制整備事業」の第1層協議体(会議体)として、庁内連携会議を開始します。メンバーは福祉健康部門だけでなく生活文化スポーツ部門、都市整備部門なども加えて構成し、地域における健康づくり等を協議する場となります。
その他様々な庁内横断的な連携体制を活用し、地域包括ケアシステムの構築を目指し、総合的な施策の展開を検討して参ります。

―調布市の将来ビジョンなどについてお聞かせください。

平成24年6月に調布市議会の議決を経て定めた調布市基本構想(平成25年度~平成34年度)において、「みんなが笑顔でつながる・ぬくもりと輝きのまち調布」をまちの将来像と位置付け、良好なコミュニティの形成を通じて、人と人とが思いやりの心でつながり、ぬくもりを感じながら、子どもからお年寄りまで、誰もがいきいきと安心して住み続けることができるまちを目指しています。
今後も多様な主体の連携の下、調布市基本計画に掲げた4つの重点プロジェクト、震災の経験を踏まえた災害に強いまちづくり、子育てや教育、福祉の面で市民が安心してくらせるまちづくり、ソフト・ハード両面で利便性が高く快適で豊かなまちづくり、そして、環境面にも配慮したうるおいのあるまちづくりに重点的に取り組みながら、これまで以上に魅力あふれるまちづくりを進め、まちの将来像の実現を図っていきたいと考えております。

長友貴樹(ながともよしき)氏プロフィール

生年月日:昭和27年11月23日
略歴:昭和51年3月、慶応義塾大学法学部政治学科卒業。同年4月、日本貿易振興会(JETRO)就職。平成14年4月、日本貿易振興会(JETRO)退職。その間、通算9年間にわたりフランス及びベルギーに留学、勤務で滞在。平成14年7月、調布市長就任(4期目)。
現在の公職等:東京都市長会会長、ふじみ衛生組合副管理者、東京都十一市競輪事業組合管理者
趣味・スポーツ:ソフトボール、テニス、読書
好きな映画:「ドクトル・ジバゴ」「草原の輝き」

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