HOME 特集 インタビュー スペシャルインタビュー:参議院議員 石井苗子氏 前編

スペシャルインタビュー:参議院議員 石井苗子氏 前編

インタビュー 特集

日本維新の会参議院議員・石井苗子さんは女優、同時通訳という華麗な経歴の持ち主であるが、難病を患う妹の介護を決意し1997年に聖路加看護大学を受験。看護学を学び、さらに東京大学医学部大学院に進学し、修士・博士課程に進み2008年に保健学博士号を取得し保健学の研究者となった。
その後、都内の病院でカウンセラーとして勤務しながら2011年に勃発した東日本大震災医療の医療支援プロジェクトチーム「きぼうときずな」のリーダーとして被災地で健診活動を8年継続している。しなやかさと逞しさを兼ね備え、政治家としての資質も申し分ない石井さんに、今後の取り組みについて、真摯かつダイナミックに話して頂いた。

『国民の多くが意識改革と行動変容をすることで、世の中は必ずや変わっていくでしょう!』

参議院議員 石井苗子氏

参議院議員
石井 苗子   氏

―日本の社会保障制度について石井先生のお考えをおきかせください。

政治家としての予見を先に述べますと、「社会保障制度」は政治的に複雑に発展してきた経緯があり、基本的には高齢者に対して手厚く保障する制度ですが、現在のように高齢者人口が増えて、若者の労働人口が減った日本社会にはなじまない制度になってきています。このままですと制度自体の維持が難しくなってきているところにあります。

2015年に社会保障制度で保障されている年金や医療、介護などの給付額が、過去最高になったという報告が国立社会保障・人口問題研究所から出されました。この2015年度の報告に基づき政府は昨年、「年金見直し法案」を国会で可決しました。
どうして年金の見直しが先だったかと言えば、社会保障給付金の半分を年金が占めているからです。このまま高齢人口が増えていけば、給付額が大きく膨らんでくる。財源の確保ができなくなっていくかもしれない。将来、高齢者が増えて年金を受け取る人の数が増すことになるのであれば、社会保障制度のもっとも大きなところから修正していかなければ維持できなくなる。これが政府の姿勢です。

若者層は、将来年金をもらえなくなると感じれば、”年金の納付は止めて自分の貯蓄を増やそう”と考えるようになります。そこをくい止めるために、若者が年金納付離れをしないように、保険料の納付期間を25年間から10年に短縮しました。満期でなくても年金を払うからとすれば、納金してくれる若者の数がふえるのではないかと考えたわけですが、逆に10年しか納めてくれない若者が増えるかもしれません。これは、ぐらついている土台を騙し騙し修復工事をやっているような政策で、かつて100年安心と言われていた年金が制度として維持できなくなっているのですが、抜本的に見直す法案ではありません。抜本的に社会保障制度を見直そうと発言している政治家は、今のところいません。制度に大きなメスを入れなければならないからです。そうすればどこかに犠牲が出てくる。どこに痛みを伴うか正確に考えて進めるのが改革ですから、そう簡単にはできません。誰に我慢してもらって、制度のなにを修復して全体を変えていくかまで責任もって年金改革をする発言すれば、政治家としてそれが実行できなかったら、口先だけになってしまいますからね。

維新は年金改革法案を提出しています。しかし、いまもって国会で議論してもらえません。今のところ与党は、あちこち年金制度の修復工事をしながら、騙し騙しなんとか持続性を補っていこうとしているわけです。
日本の社会保障制度について、私個人の考えを申し上げれば、まず少子化と高齢化といった2つの問題を、区別して考える時期にあります。あたかも少子化があるから高齢化が起きているといったような話し方では、問題の印象を悪くしているように感じてなりません。国民の皆さんに誤解を招きかねないと思います。

私は、少子高齢化の問題はまず、労働人口の減少をどう解決するかであって、子供を出産しないとか、高齢者が長生きをしているからどうするかばかり議論していても、全く解決につながらないと思っています。たとえばですが、高齢化のせいで若い人が苦労を強いられていると言えば、高齢者の方々はいい気持ちがしませんでしょう?

私の意見は、人口の真ん中にある「労働人口減少問題」を先に解決していかなければならないということです。
若い女性に結婚、出産、子育て、仕事の継続をお願いし、1人が2~3人ぐらい子供を作って出生率を上げてもらいたい。それが「女性が輝く時代」だと盛んに働くことを奨励していますが、子供が産まれたからといって、すぐ18歳になるわけじゃありませんし、働きながら2~3人作ってくださいなんて、若い人にかなりの負担を強いることになります。子供が労働年齢になるまでの時間のギャップを埋める政策を議論していません。労働人口不足を、どこから持ってくるのか、どう増やしていくのか、そこを考えなければ人口減少を解決しているとは言えません。

私が所属する日本維新の会は、労働人口を増やすために日系4世の日本滞在資格の緩和を政府に求めて法案を提出しています。3世までは待遇が明確なのですが、若い労働力といえば4世なのです。彼らが日本に来て即戦力になっていただくことは大変助かりますし、日系4世の方々も法律を緩和してくれることを希望しています。私は個人的にもこの法案に賛成しています。

現在の日本を構成している「人口の形(人口動態)」を見れば、逆三角形になっています。高齢者が多く、中間の労働人口が少なく、さらに生まれてくる子供が減少し続けている状態です。AIやICT革命といった技術で中間の労働人口が少ないところの生産性を補っていくと言っていますが、技術の発展が高齢化のスピードに間に合っているでしょうか。AIの開発は何年かかり、どこまで生産性を上げられるかの計算は政府から発表されていません。IT技術を駆使して社会の生産構造を変えていくことができる技術者をどれほど確保できているかもハッキリしていません。また、IT教育の能力を備えた人が自治体の職員をどこまで教育しているでしょうか。そういった具体的な対策が技術革新をもたらすには必要なのですが、あまり議論されていません。

次に、働き方改革にも関係しているのですが、女性が働きながら子育てとなると、子供の教育にお金がどのくらいかかるかが、気になるものです。教育費がかかる時代に親が子供の出産をどうしようかと考えるのは当然だと思う。ここは大きなポイントです。教育費がかからない日本社会となったら、出生率がどう変わるかです。

今は、保育所や保育士の確保に躍起になり、若い女性に子供を預けて出産や子育てを強いているように私には見えてしまいます。夫婦間で父親の育児休暇を取りつつ助け合いを奨励していますが、依然として、男性が休みを確保しにくい社会です。育児休暇を取れるのは、ほんの一部の特権階級にすぎません。そもそも男性は育児休暇を取れるような働き方をしていません。

こうした問題を考えると、日本維新の会が日本国憲法で教育費の完全無償化を高等教育まで保障する方向で認めるべきだという提案は、私はよいと思っています。
憲法で高等教育まで無償が保証されていれば安心して子育ての将来設計ができるでしょう?今は与党である自民党が制度を作っているだけですから、奨学金制度の充実と言っていますが、政権が変わったらそれもどうなるかわかりません。政権交代したら急にまた教育が無償でなくなり、お金がかかるようになったでは、安心して2~3人なんて計画できないでしょう?憲法で高等教育まで無償が保障されたら、政権が交代しても安心ですし、子供も勉強しようと思えば、頑張っていい大学に行けると思えるでしょう。

大学のレベルも相殺されていかなくてはなりませんね。本当に勉強がしたい子供が、いい大学にいけるような社会でないといけませんし、企業も、専門学校を出ている子供と、大学の学位ももっている子供の初任給に差をつけてはならないと思います。むしろ逆に専門性の即戦力の方の給料を高くするとかね。今はお金もちの家の子が塾に行って大学を出たということで就職が優遇されている。ここも直していかないとなりません。

日本維新の会は、教育無償化については党の創立期から憲法で無償化を保障するという法案を提出しております。「財源はどこから引っ張ってくる!」とよく指摘されるのですが、行政改革を要求しています。つまり会社が赤字なら当然やっている人員削減ですから、国も行政で働いている公務員にも人員削減や給与削減をしてもらおうと訴えています。しかし、他党に同意してもらえません。膨らむだけ膨らんだ税収から公務員の給与を上げていく、議員年金制度までこっそり復活しようとしています。一度廃止になったのにです。

いつの時代にもある行政の腐敗ですが、国が豊かになっていかなくてはいけない時に、行政改革は自民党が与党であるうちはできないと思います。自民党には大手企業から莫大な政治資金が来ていますからね。
社会保障制度が維持できないのは、高齢化だけの問題ではなくて、もっと積極的に労働力の確保や、教育の無償化対策を政策として考えていくべきだと思います。

―現在すすめられている地域包括ケアシステムの構築についてもお考えを教えてください。

地域の医療従事者が連携を取って、その地域の健康を維持していくシステムで、まだ始まったばかりで、このシステムの構想は、先の「社会保障制度」と密接な関係があります。

社会保障制度で政府が一番先に手を付けたのは年金だったと申し上げましたが、次は医療や介護といった社会保障制度についても今後は修正していかなくてはならないのです。そのひとつが、「地域包括ケアシステム」の構想です。
社会保障制度とは「高齢、あるいは若い人でも、病気や失業などによって生活を支えられなくなった人を、国が税金で支えていく」というものです。当然高齢者が増加すれば医療や介護への給付金に影響が出てきます。社会保障制度をどう持続させるかと考えたとき、高齢になっても仕事を続けてもらいたいと政府は提案してきました。

その背景には、日本の高齢化のスピードが世界に類を見ないという要因があります。高齢者とは何を意味するのか、私たちがそこにもっと自覚をもって欲しいということです。このまま高齢人口が増え続けると、医療と介護の社会保障給付金額が増え続けることになるからです。

日本の65歳以上の人口はすでに3000万人を超え、2年後のオリンピックパラリンピックから5年すると、75歳以上の人が800万人になります。日本の平均寿命は男子81歳、女子86歳で、人生100年時代です。多くの75歳の方々が2025年にご存命だとすれば、その上の年代の方々も社会保障制度で支えていかなくてはならないわけです。

そこで政府は、年金の受け取り年齢を先延ばししてもらいたい。加えて、高額所得者には年金の給付を遅らせてくれないかと考えています。さらに高齢者も納税の担い手の1人として働き続けてもらいたい。同時に健康で、なるべく医療や介護についてのサービスを受けないでもらいたいわけです。すでに慢性疾患のために長期入院することは出来ない社会になりつつありますし、病院側は高齢であっても、なるべく早く退院してもらい、自宅で暮らし、町全体が退院後の介護に責任をもってもらいたい。これが「地域包括ケアシステム」に期待することなのです。 地域全体が病院のようになって、1人暮らしの高齢者の生活を支えるシステムにしていってほしいというものです。政府は、「地域包括ケアシステム」によって社会保障制度で払う金額を少しでも減らしていければよいと考えているわけです。

私も63歳になりますが、若いころに比べれば面倒くさいと思う家事も多くなりましたし、疲労も蓄積しやすくなりました。もし慢性疾患をかかえていれば、ゆっくり家で楽に過ごしながら、手厚い医療や介護サービスを病院で受けられるといいなあと思う。これは自然な気持ちでしょう。ところが高齢者の介護について日本は、社会のインフラ作りを怠ってきました。整備が遅れているということです。

介護は家族が、とくに女性が、最期まで診てくれると思っていた国だったからです。このように家族構成が核家族化して崩れていくことを想像していなかったのでしょう。
一方で、医学の方は世界一の水準になりました。国民皆保険医療によって、みなさんいつでも、どこでも、誰でも、年齢に従ってどこの病院でも医療サービスを同じ金額で、あるいは無償で提供してもらえるのです。なので、総合病院に高齢者の方々は朝から治療に並んでいらっしゃいます。ここのラッシュ状態を「地域包括ケアシステム」にシフトしてもらうように今からやっていこうとしています。病院の外で高齢者の方々が治療をうけられるようになってもらいたい、という構想です。

国民皆保険は最高、しかし介護のインフラは整ってないというアンバランスな社会が現在の日本の地域の環境を悪くしています。社会保障制度においては、給付金の財源の確保の問題の他に、サービスをしてくれる介護人材の担い手が足りなくなっていることを解決していかなくてはなりません。
「地域包括ケアシステム」を形にして実働部隊を地域で作っていかなくてはならないのです。そうしなければ、介護は再び家族内の問題に逆戻りしていき、女性は外で働けなくなります。考えてみてください、育児と仕事の両立をしながら介護もやってくださいでは、どうなりますか?労働人口として女性を期待できなくなります。

結婚したのち介護まで担うのは、これほど長生きの社会ではなかった時代だからできたことです。老々介護という言葉が示すように、介護の問題は切迫してきています。地域で暮らす高齢者を高齢者が家で介護しているという状態をなんとかしなくてはなりません。地域全体で丁寧に個人を見守れないものか、これが「地域包括ケアシステム」の考え方です。
私が小学校4年生だったころ、53年前になりますが、日本人の9人で1人の65歳以上を支えておりました。それでも大変だったと思います。2018年現在、日本が「人生100年時代」と言われるまでの長生きの社会になり、社会が大きく変わりました。長生きになったのです。平均寿命は世界最高で、男子81歳、女子86歳です。少ない人口で生産性をあげなければ支えていけなくなります。

社会の構図を今からどう変えていけばいいかを考えなければなりません。それをイメージしたのが「地域包括ケアシステム」です。高齢者が自立して、なるべく介護を受けないでいてもらうこと。これが何歳まで、どのような環境だったらできるかを考えていかななければなりません。高齢者がどうやって買い物、食事、身の回りの整理、排せつなど自分で出来るような地域になれるか。慢性疾患があっても自律した精神力で生きていっていただくには、まだ身体が十分動くときから食事や運動などの生活習慣を変えていってもらわなくてはなりません。意識を変え、予防にむけて行動を起こしていく。これをサポートしていくのも「地域包括ケアシステム」です。

地域ぐるみの予防対策は、今のところ高齢化のスピードに追いついていっていません。さきほど申しましたように、退職してゆっくり暮らしたいという気持ちに逆行し、あたかも年をとっても働くことを奨励しているように聞くと、高齢者に厳しくて冷たい社会が周囲におしよせているのではないか?と思われるでしょうが、実際は、そうでもないのです。

「意識改革」「行動変容」は保健学の専門用語ですが、個人の意識を変え、何歳からでも自分は生まれ変わるのだという気持ちをもって、もう一度自分を育て直していく。人生のギリギリまで介護のお世話にならないで生きていけるにはどうしたらいいかを一人で考える。周囲はそのお手伝いをする。個人が、「地域包括ケアシステム」の中で自分がどうして生きていけばいいかを考えるのです。

ヒントとしては、これまでの長い人生で癖がついてしまった悪い生活習慣を、今日から少しずつ気づいていき、生活の自立をめざす、こうしたことを意識改革と言います。食べ物を変える、食べ方を変える、歩き方を変える、人との付き合い方を変える、これらは行動変容といいます。この二つを楽しいと思ってやっていただくことが大切です。

これからの高齢者には、ぜひ意識と行動を変えていくことをすすめます。極端な話、何もしないでも、お金さえあれば大丈夫だろうと思っていると、急にどこかに入りたいですといってもサービスを提供してくれる担い手がないため、施設に入れない社会が待っているかもしれないのです。家族を見渡せば、時間があいている人がいない。社会を見渡せば介護施設が整ってない。べッドが余っているのに、お世話をしてくれる人手がいない。こうした働き手がいない地域に、自分が自立していない独居の生活がまっていたとしたら、どうしますか?

さて「地域包括ケアシステム」がどこまできるかについてですが、大きな課題です。絵にかいた餅にならないためにどう構築していくかは、調査をしなければなりません。地域の高齢者1人ひとりの生活が今どうなっているかの調査をしなければなりません。ここがやられているようで、意外にできていないのです。たとえば、マイナンバー制度を作りましたが、なんと驚くことに普及率は1割程度です。マイナンバーカードを医療サービスの管理や研究につなげることはまだできていません。医師会の反対もあってなかなか前に進まないのです。無駄な薬などを出さないようにしていくことは、予防医学として大切なのですが、企業の利害関係に水をさすことになるからなのか、データベース作りが遅れてきました。従って、なかなか高齢者の生活状態の集計がとれないままでいます。たとえばひとりひとりが受けている医療サービスの頻度や程度も地域で見ることができるようにはまだなっていません。「あなたは今どこに暮らしていて、老後や介護を誰に診てもらう計画ですか?薬は何を飲んでいて、かかりつけ医は確保していますか?」という個人からの集計も取れてないという状態です。私は厚生労働委員会でこうした国の医療データベースの構築をマイナンバーカードを使って急ぐように提案したのですが、しがらみ政治が絡んでいるようで、よい解答はもらえませんでした。

地域包括ケアシステムは、高齢の方々や病院から退院した人々を地域で支えるために、あらゆる健康に関する人材を投入し、連携を強めていくことで自立を助けようとするものです。しかし、まだシステムとして完全なものになっていないのであれば、私たちは、今日からでも、個人個人が自分の健康管理にむけて、何歳からでもかまいませんから、意識改革と行動変容をしていくことが必要です。国がなんとかしてくれると頼っていると、住み慣れた地域で生活していけなくなるかもしれないからです。

―先生のホームページに「公に係る仕事を通じこの国の様々な仕組み全体がいかに重大な制度疲労をおこしているかを痛感しました。現場のニーズは政策決定者に伝わらず古い仕組みが作る閉塞感が人々から改革精神を奪っているように思えてなりません。この国の仕組みを根本から作り直すことで、きずなが希望につながる日本を作ろうではありませんか」と書かれておりました、石井先生の政策などをお聞かせください。

それはホームページにある言葉で、私が立候補する前に書いたものではないかと思います。今も気持ちは変わっていません。政治家になったキッカケのような言葉です。
公にかかわる仕事、とは東日本大震災の福島県での医療支援活動「きぼうときずな」プロジェクトのことでしょう。この国の様々な仕組み全体がいかに重大な制度疲労を起こしているかについては、先の社会保障制度や、それに関連した地域包括ケアシステムの構想が追い付いてないこともありますが、しかし日本で災害が起きたときの保健師の活躍についても、制約や制限が大きく彼女たちが即効性を持って活動できない窮屈さを感じました。上司からの指令がないと動けませんとかね。お分かりいただけないかもしれませんが、地域ごとにそういう社会構造になっているのです。

現場のニーズが政策決定者に伝わらないという気持ちは、こうしたことを被災地で保健師さんたちと活動を一緒にやった時に感じたところから沸いてきました。災害時における保健師の権限をもっと持たせ、保健師の社会的地位の向上を、法案に書いて提出していこうと思ったのですが、数々の保健師にまつわる法律が縦横無尽に関係してくるので、法律の変更手続きが大変になると、ものすごい圧力がかかってきます。政治的な既得権という圧力です。重圧的な閉塞感を感じました。保健師さんたちの間や有識者の間でも、古い仕組みが作り出す閉塞感と、権限の拡充を訴えることによって、既得権を持っている現職に少なからず影響を与えるという怯えもあり、改革精神は意気消沈します。つまり「やっぱり、どうせできない」という諦めの気持ちが閉塞感をつくりだしているのですね。

「きずなが、きぼうにつながる日本を作るように」という言葉は、故・日野原重明先生から私が遺言のように頂いたものです。被災地に向かい、現地の保健活動をしている時は「まず、現地の保健師のみなさんと仲良くなって、きずなを作り、それがきぼうにつながるような仕事をしていきなさい」。そう日野原先生に教わりました。私が2016年に立候補の時も、先生に背中を押してもらいました。今でも東北の支援活動は続けています。

2011年3月11日の東日本大震災から8年目に入るのですが、当時6万人の方々が福島県外に避難されていました。それが昨年末の情報によりますと、3万4千人に減ったということです。半分になったということでしょうね。昨年の数字をみると、被災地の84%の農地が回復したとか、宮城、岩手、福島県の水産加工施設は93%も設備が回復されたとあり、いかにも良くなってきていると思ってしまいますが、まだ半分の方が避難生活をしていますし、住宅再建が14万戸、高台移転は1万7千戸が完成という数字を見ても、現地にいくと閑散としていて人が入ってません。数字をどう判断したらいいのかわかなくなります。現場のニーズとは、何をさしてニーズというのでしょう。予算がついて土木工事が始まり、新しい施設ができても人が来ない。そんな状態です。

私は予算委員会で福島イノベーションコースト構想に力をいれ、地元で就職してくれる若者や、地元で卒業してくる学生を雇うことを保障してもらうように呼び掛けました。
かつて筑波学園都市がそうだったように、人が集まるのには時間がかかります。東北の被災地の復興事業を、土木工事だけやり、後は漫然と手をこまねいていたのでは、若者はますます東京や都心に集まってきてしまうでしょう。

ホームページに、仕組みを根本から作り直すことで、きずなをきぼうにつながる日本にと私の意気込みを書いていますが、「東北の復興なくして日本の再生なし」、と声を大にしての総理大臣の意気込みが、演説だけで終わらないようにしてもらいたいです。あれから8年目になっても現場のニーズが何なのだか、詳しく調べて実施しようとする人は少ないと思います。

最初に述べた、日本の現在の社会保障制度のように、制度自体が維持できなくなっていく中、年金などはまさしく、古い仕組みから起きている「制度疲労」です。現状の人口動態に即していないからです。数の圧力に浸っている圧政政治の前に改革精神は委縮していると言った方がいいですね。

改革精神の例として、たとえば国民の皆様はあと19年も東日本大震災の復興特別税が課されているのです。おそらく皆さん忘れていらっしゃるのではないかと思うのですが、どう使っているのかについても、「復興庁がやっているでしょ」なのだと思います。我々の税金は被災地のどこに行った!と声を上げる方はいらっしゃいません。この点についてはさらに言いたいことがあります。国会議員は2011年の震災当初、衆参全員の給与を2割カットして返納していましたが、たった2年で辞めてしまいました。国民の皆さんには納税の負担を負ってもらっているのにです。こうしたことの是非をめぐった議論はされません。

国民のみなさんの与党好きは、昨年9月の衆議院選挙の結果も影響していると思います。総数465人のうち、自民党が284人です。圧倒的な数です。立憲民主党55人、希望の党50人、公明党29人、共産党12人、日本維新の会は11人(合計157人)というバランスですから、自民党が押し切ることができます。日本維新の会は、いまもって給与の2割をカットして党に返納して被災地に持っていっていますが、国会議員は共産党もあわせて耳をかしません。ひとりよがりの維新と揶揄されています。私がメッセンジャーとして被災地にお金をもっていっておりますことを、前回の衆議院選挙の応援でマイクを通して言いましたら、「初めて聞いた、知らなかった」という人が多いのに驚きました。

維新の国会議員が給与を2割カットして被災地に持っていくことについて、維新の仲間が誰も反対しないことに私は感銘を受け、今後は被災地以外のイベントその他にも、改革精神をもって企画してお金を寄付をすることで、きずなが、この国のきぼうにつながっていく日本を作っていくことを、ひとりの政治家としても続けていきたいと思っております。

いまのところ、自民党が数で圧政している政治で、議員立法をいくら出しても、国会や委員会で議論すらしてくれない国会制度はよくありません。投票率も下がっているのですから、古い選挙制度の仕組みが作る閉塞感は、有権者の皆様も感じているのではないでしょうか。

私は、国民投票や住民投票といった直接で自由な活動がもっとできる社会であるといいと思います。政治というのはビジネスのように白黒がハッキリしたら止めみたいなところがありません。意地でもやっていくみたいな世界がうずまいているところがありますから、きぼうが見えてくるのに時間がかかる、あるいは途中で挫折する人もいるのではないかと思います。しかし、1人の政治家として何かをやれる政治家として育っていきたい。独立した政治家を育てることを日本維新会は理想とし、道州制や統治機構改革を訴え、東京一極集中型の社会を崩そうとしています。個人の政治活動を認めている政党なので、私も福島の医療活動を続けていられます。2割カットした給与の使い方を被災地以外にも考えていこうと思って、審査会を開こうかと考え中です。こうしたことができる日本維新の会は、ぶれない政党なんです。

一人の政治家として真実を述べられている石井先生のお考えに共感された方も多いのではないでしょうか。いよいよ「後編」は佳境に入ります。お楽しみに!

石井苗子氏プロフィール

東京都浅草うまれ、横浜育ち。
私立山手学院高校卒業。アメリカワシントン州に留学。ルーテル教会の牧師宅に滞在し州立大学に通学し、帰国してから上智大学を卒業。水産庁の日米漁業交渉団の同時通訳をやりながらテレビのニュースキャスターをTBS「CBSドキュメント」で6年務める。故・伊丹十三監督にスカウトされ映画「あげまん」の準主役で女優デビュー、その後数々のテレビドラマで活躍したが、1997年に難病をわずらう妹のために聖路加看護大学に入学、卒業後は東京大学医学部に進学し、修士課程・博士課程を修了し2008年に保健学博士号を取得。看護師・保健師・ヘルスケアカウンセラーとして都内の病院の心療内科で12年勤務している。
東日本大震災NPO「きぼうときずな」のプロジェクトリーダー。
近著に2016年「病と向き合うことは自分を育て直すこと」(ワニ・プラス出版)。
2016年参議院選挙全国比例・日本維新の会公認で初当選。

Visited 21 times, 1 visit(s) today