HOME 特集 インタビュー ビッグインタビュー:(一社)日本感染症学会理事長 舘田一博 氏

ビッグインタビュー:(一社)日本感染症学会理事長 舘田一博 氏

インタビュー 特集

東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授・舘田一博氏は、日本感染症学会の理事長を務められている。今回のコロナ禍において、専門家の立場から政府に助言を行っておられるのは言うまでもないが、世界中を震撼させる大規模な感染症は、間違いなく数年後には起きるので危機管理を怠らないようにと警鐘を鳴らしている。
昨年の8月に開催された第94回日本感染症学会総会学術講演会・市民公開講座で舘田理事長が話された講演内容を基にいろいろ教えていただいた。

コロナは収束しつつありますが、パンデミックは何年か後に必ず起きますから今回の経験を忘れないで下さい!

(一社)日本感染症学会
理事長
舘田一博 氏

―2020年8月19日~21日の3日間、グランドニッコー東京 台場で開催された第94回 日本感染症学会総会学術講演会「FUSEGU2020 市民公開講座」において、舘田理事長は、『新型コロナウイルスからの学び with コロナ・after コロナにおける私たちの生活』と題した講演で〝4月7日の緊急事態宣言に繋がってしまった第一波を乗り越えて、いま我々は第二波の真っただ中に居ます。第一波を乗り越えることで、いろんなことを経験し、その対応が少し上手くなりました。医療の現場、病院の中でもその対策を学びつつある状況が反映され、いろんな要因が検討されています。第二波では治療法に関して確実的な方法は無かったが、いろんな経験が蓄積されて、ウイルスの変異が起きてその病原性が下がっているのではないか等も可能性として考えなければいけない状況にある〟等、述べられましたが、その後の状況及び現在の状況を舘田理事長はどのように分析されていらっしゃいますか?

非常に大事なポイントです。丁度、この時は第二波の真っ只中と言っていた頃ですが、ただ夏のコロナでしたから、ある意味緊急事態宣言を出さずに何とかこの時は乗り切ることが出来た訳です。しかし予想通りといいますか、下がりきらないような状況が続いて9月10月には、東京で200人位の人が1日に感染していました。そういう状況が続きながら10月11月になると、300人、400人、500人になってきて、結局第三波になってしまった。実はこれには様々な要因があります。なんとか第二波を乗り切ることが出来ましたが、その時に燃え出していた火は、段々拡がっていって第三波になってしまいました。しかも冬のコロナという時期に重なっており、我々が想像していた以上にコロナが拡がりやすくなっていましたし、そして残念ながら重症の症例も多くみられるようになってきてしまいました。そういう風なところが第三波までの経緯です。今は第三波の緊急事態宣言が漸く解除されるところまできており、そういう状況が見えてきている訳です。

従って、今になって振り返ってみると、第二波の時にもう少し対策の取り方があったのではないかだとか、4月の第一波が終わった5月の末は、1日に20人位でしたが、既にその時に何処かで燃え出していた火が第二波になってしまいました。第二波を乗り越えたとしておりましたが、未だ燃え残っていた火があり、増加してきて第三波になってしまった。そういう風なことを経験していく中で、この感染症の急所が分かってきました。その急所というのは「飲食の場」、「お酒を飲む場」、そういった場所ではどうしてもマスクを外して、近くで大きな声で話をするといった状況の中で拡がるということが分かってきたのです。ということで第2回目の緊急事態宣言で、その急所に対応した感染対策をとることになります。つまり、第一波、第二波を経験しながら、所謂急所が分かったので、それを狙った緊急事態宣言を出すことによって、この第三波を乗り越えられたということは大きい成果です。ある意味、これは予想通りですが、飲食のリスクを減らすと収まってきます。一方で、感染者数は下がり止まっている状況ですから、結局未だくすぶっていますし、其処からジワジワ拡がっていくとまた増えてくるという、所謂リバウンドが起きてきます。ということで、それを如何やって抑えるかが今とても大事です。緊急事態宣言の解除ということが今問題になっているけれども、実は解除した後の対策を如何とっていくのかということが非常に重要になるということです。勿論、私たちの学会の中でいろいろ議論が行われていますが、政府が何を採用して如何なるのかということまでは分かりません。ただし政府もその辺はよく分かっています。

政府は緊急事態宣言の後、或いはその前に使うような「まん延防止等重点措置」という新しい法律を作りました。もっと地域を限定した形で都道府県の首長が判断して、例えば時短営業、或いはリスクの高いお店を閉じてください等、お願いが出来るような特措法を作った訳です。つまり、まん延防止等重点措置という法律を上手く使って、宣言を解除した後にも、例えば歌舞伎町、或いはどこかの歓楽街について、〝ここだけは未だ待ってください〟というような形でお願いをする、これは僕の個人的な想像ですけれども、正に其処を狙った対策をとることは大事な要素になるのではないかと思います。一気に解除になりましたとなれば、みんなは喜んで食べに行ったり、飲みに行ってしまいます。やはり、〝そうではありませんよ〟というところが、重要なポイントです。しかしながら難しいのは、解除になった時に、〝何が解除なの?解除じゃないじゃないか〟という話になりかねません。宣言下の時には、お店の時短営業に対して1日6万円支払われていましたけれども、今度解除になったらそれが無くなりますから、それなのにお願いだけで時短営業してくださいとなれば、〝そんなの出来ないよ〟という話になってしまいます。まさに社会経済と感染対策の両立というのは、ある意味トレードオフの関係になる訳です。つまり、どういうバランスの中で行うかということがとても大事です。難しいけれどもこの一年間、一波、ニ波、三波を経験してきて、「COVIDO-19」の特長がもう分かってきております。如何すると拡がりやすく、如何することで拡がらないかが分かってきていますから、其処をちゃんと抑えることです。

そして、あと1つ大きな変化は、やはりワクチンです。ワクチンが普及してきて、未だ日本での接種者は少ないけれども、アメリカ、ヨーロッパ、或いはイスラエル等は、かなりの人が接種を行って、その有効性がデータで上がってきていますし、かなり効果が高いワクチンの1つではないかと思います。今は7万人ですが、あと1週間、2週間でまた7万人、その内70万人になるでしょうし、700万人になるでしょう。しかも4月になれば高齢者も接種するとなっています。そうすると大分落ち着いてくるのではないでしょうか。今は世界的に感染者数が下がってきています。日本だけではなく、それが世界のレベルです。

―同講演で、〝偶然かもしれないが、日本のマスク文化が最初の段階で新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑えた可能性は、十分にありうると考えて良いのではないか。みんなが行う文化としての行動が感染症をセーブしていく上で大事であることを改めて感じる事例ではないか〟とも仰られています。世界各国が日本と同様にマスクをつけることを始めました。ただ、その対策が遅すぎたのでしょうか?

昨年の1月というのは、インフルエンザのシーズンでしたし、花粉症のシーズンが始まろうとしていた時期ですから、日本では多くの人がマスクをつけていました。不織布マスクをみんながつけるという文化が育ちつつありました。やはり、そういった生活習慣や文化がコロナ感染症を抑えられた可能性は高いと私は考えています。というのは、あの当時この新型コロナは、咳とかクシャミ或いは手で触ることによって感染すると言われておりました。飛沫接触感染、飛沫感染或いは接触感染って言われていたのです。ところが後から分かってきたのは、会話の時に出るマイクロ飛沫等を防ぐことによって感染が抑えられるということが分かってきました。しかも、様々な疫学的研究で「3密」というのが分かってきた訳です。

中でも日本は、マスクをつけてということをやり始めていましたので、かなり感染を抑えることに効果があったと考えられます。マスクをつける文化が無かったアメリカやヨーロッパは、咳やクシャミが無いのにマスクを着用する必要がないとしていました。しかしながら、実は会話の時に非常に多くのマイクロ飛沫が出て、感染を拡大させてしまいました。しかも唾液腺の中にコロナのウイルスが感染する訳ですから、唾液に沢山出て染すということが分かってきました。ある意味、偶然だったのかもしれませんが、日本のマスク文化によって、かなりもちこえられたと考えられますし、防げた国の1つだと思います。やはりマスクをつけなかったのはまずかったと反省して、WHOもCDC(米国疾病予防管理センター)もマスクをつけるようにとなって変わりました。日本はたまたまマスクの着用をしていたということで救われたんです(笑)。

4月の第一波の時に、日本は1日東京200人位でしたが、それでも医療現場は悲鳴を上げて、今よりも相当大変でした。しかしあの時、アメリカは感染者が1日に1万人位発症したのです。それだけの数がもしも日本で起きていたとしたら、日本も医療崩壊になっていました。従って最初の感染者をどれだけ抑えるかということがとても大事で、抑え込むことにマスクが非常に有効であったということが大事なことです。「ファクターX」を考える人もいますが、そもそも感染者数が違います。日本は感染者数を抑えており、少ない。アメリカは50万人も亡くなっています。日本で亡くなった人は、7千人ちょっとです。ただし死亡率は日本が1.7%、アメリカは2%と殆ど変わりません。他の国、フランスもイタリアも、スペインも2%位です。メキシコは、やはり医療体制がちゃんと出来ていないために8%と高いけれども、他の国は大体2%前後です。つまり、感染した人が多いと、当然ですが多くの人が亡くなるということです。

―世界的な動向があまり知られていませんが、アフリカ等ではマスクの着用とかされているのでしょうか?

アフリカは、感染者の数が爆発的に増えるのかと思っていましたが、増えていません。どうしてなのかは未だ分かっておりませんが、いろんな可能性があると思います。1つは、やはり気温との関係が大きいのではないかと、私は考えています。温度が高いとウイルスは死にやすくなりますから、恐らく拡がり難くなります。多分インドやタイ、フィリピン等もそうですが、温度が高いということでかなり助かっていると思います。温度が下がるような時期には、日本も感染者数が拡大したように、夏になれば下がっていきます。コロナというのは風邪のウイルスです。風邪というのは寒い時期に増えるウイルスです。つまり温度が高い所ではそんなに増えません。従ってアフリカはそんなにマスクをしている人が少なくてもそんなには増えませんし、人口密度もそんなに高くないので、あまり密にはなりません。そういう風なところに要因があるのではないかと私は考えております。

―また、アジアの感染者数が低いというのは、どういった要因によると思われていらっしゃいますか?

アジアに共通する「ファクターX」があるのではないかと考えている研究者もいますが、赤道近くの国、例えばタイとかベトナムで感染者の数は少ない。一方、コロンビアとか南米の国は、多い。これらの事実は、温度だけではないということを示していると思います。やはりマスクも効いているでしょうし、アジアの国々はマスクを付けることにあまり抵抗なく行えています。ところがアメリカ、南米等も含めて、ブラジルでもマスクはしませんし、ヨーロッパにしても最初は着用しませんでした。やはり、そういうようなことが感染の増加に繋がってしまった一因ではないかと思います。

―いかに最初に抑え込むかが大事なんですね。

はい。私は、其処が大事だと思っています。昨年の4月5月に、日本で抗体率を測りましたが、日本は陽性が0.1%でした。その時にアメリカは10%でした。ということは100倍感染者数が多かった。4月の時点で、日本は200人で大変だと言っていたけれども、その100倍の感染者が一度に出た場合、絶対医療崩壊します。ですから如何に感染者数を抑えるかということが大事であるかを示していると思います。50%以上の人が感染したとするならば、その人達は感染を拡げませんので、それに守られて感染していない人達も守られるというのが集団免疫効果です。しかし、日本はこの前の抗体検査が、0.91%でした。幅を考えると恐らく2%位が感染しているんですが、それでも未だ2%です。しかも今、ワクチン接種が始まりましたから、ワクチン接種を受けた人が1%、2%と上がって50%位になると感染は収まるのではないかと考えられております。ただし、それには恐らく1年という単位がかかると思いますし、そのくらいで収まれば良いのではないかと…。

―言い方が悪いんですが、オリンピック・パラリンピックの開催予定がなければ、もっと落ち着いた対策が出来たのではないかという風にも思いますが…。

そうかもしれません。オリンピック・パラリンピック開催を前提にしないで、感染対策に集中することが出来れば、正にその方が本当は良いのかもしれません。延期は出来ないという事情を考え、その上でオリンピック・パラリンピックを行うとすれば、先ほど述べたように4月までに日本の状況がしっかり落ち着いて、世界の状況もかなり落ち着いてきていないと開催は難しいのではないかという意見も出てくると思います。みんななんとなく分かっています。しかしながら諦めるのは未だ早いのではないかと。ただこういうことは早く決断しなければいけないというところも確かにありますが、私は今こうやって下がっているような状況の中で、もう少し様子を見ても良いのではないかと考えております。今これだけ下がってきて、リバウンドが起きないようにすることが最も大事です。

―舘田理事長は、〝最後に、人・社会・国の分断を引き起こすのがこのウイルスの特長です。その中で、差別や偏見が知らず知らずの中で起きているとするならば、これは何かをしなければいけない。こういう時だからこそ、みんなで協力し合って、差別に至ることがないように、我々一人一人がそれを認識して考えていかなければいけない。それはある意味、メディアの責任もありますし、我々専門家の責任もあります。我々専門家の知識とメディアが共存を組む、そして皆様がた一般の人達との連携・理解の下に差別をなくしていくことが大事です〟と述べられました。このコロナ禍において益々差別が大きくなっているのを感じますが、国民はどのようなことを心がけたら良いと思われますか?

感染症の歴史というのは、差別の歴史でもあります。ハンセン氏病にしても、結核にしても、HIVにしても差別の歴史でした。それと同じで、やはり人間は〝怖い〟〝分からない〟ものに対して過剰に恐れるあまり差別や偏見に繋がるのです。結局、〝正しく恐れる〟というのが如何に難しいかということなんですが、しかし今回こういう風にコロナウイルスは分断を引き起こす。その分断が差別や偏見を引き起こすんだということで、みんなが声を上げ始めています。それが凄く大事です。こういった経験を踏みながら、社会が感染症に強い状態に少しずつなっていく。

パンデミック、感染症はまた必ず起きますので、それが起きた時に社会として、もう少し強い対応ができるような、そういう社会を作り上げようという気持ちを持つことが大切です。残念ながら差別は起きてしまっていますが、しかし一方でメディアもその差別や偏見を取り上げて、差別や偏見が無いように声を上げてくれたり、或いは新聞報道も含めて記事に書いてくれたりというのがありますから、もっともっとみんなが声を大きくしてやり出せば「差別や偏見はあってはならない」という社会が形成されていくでしょう。今も地方に行くと〝何で東京のナンバーの車が此処にあるんだ〟となって大変なことになってしまいます。そのようなことが今でも起きていて、非常に残念です。私たちはメディアの人達との協力をしっかり頂きながら直していかなければいけないだろうと思います。そういった思いもありまして、こういう雑誌等の取材に対しても出来るだけ応えるようにしています。差別や偏見をなくすことは、とても難しいです。しかしながら私が知らないところがあるのかもしれませんが、日本の9割位の人は性善説で動いているのではないかと信じています。日本の緊急事態宣言は、お願いです。お願いなのにこれだけみんなが言うことを聞いてくれています。やはり日本に住んでいる人達の気持ちの違いというのか、一人一人の気持ちが、今回のコロナに繋がっているのだろうと思いますし、それは日本の良いところです。

―『FUSEGU2020』は、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、大規模集会マスギャザリングで生じる感染症のリスクを考え、一般市民の人達の目線、視点で考えようといった目的の下に発足したとお聞きしましたが、今その役割はどのように果たされていらっしゃいますか?

『FUSEGU2020』ということでスタートしましたけれども、東京オリンピック・パラリンピックが延期になってしまいましたから、今また『FUSEGU2021』ということで、活動を再スタートしています。一般市民の人達に向けて、感染症のリスク、そして正しく恐れるという考え方を教育、啓発しようとする方向性です。ワクチンを適切に接種して感染症を防いでいこうということを活動の柱にずっと続けております。

―変異型についてゲノム解析をすべきとされておりますが、現段階ではどの程度解明されているのでしょうか?

変異型については、よく言われているイギリスの変異株、ブラジルの変異株、南アフリカの変異株等があります。特に日本では、イギリス型が多く分離されています。とは言っても、見つかっているのは未だ100とか、200とかのレベルです。水面下ではもう少し入っているのかもしれません。日本の今の状況は変異株の影響だけでは説明できないと思いますが、今後どのように推移していくのか注意深く見ていく必要があると思います。変異というのは2週間に1つずつアットランダムに出てくるのです。それはある意味、もう仕様がないことです。変異株になって感染が拡がりやすくなることが報告されていますが、重症化しやすくなるか、ワクチンが効き難くなるかなどに関してはまだ良くわかっていません。変異株であっても対策は一緒です。過剰に恐れる必要はないと思います。注意して見ていかなければいけないということで良いのではないでしょうか。

―ヨーロッパでは感染者の30%以上、或いは半数位が変異株が拡大していると言われておりますが、その辺については如何なのでしょうか?

欧米での変異株の増加が報告されています。再増加を認めている国もあることから注意しなければいけません。ただし、英国や南アフリカでは感染者数が減少していることも報告されています。先程申しましたように、変異は常に生じています。日本の国内のウイルスにおいても変異が生じています。日本の国内から感染性が高いウイルスが出てこないか、こちらについても注意深く検討していく必要があると思います。

―高齢者が病気になったりしないよう、健康長寿でいられるためには社会参加が凄く大事であるとされていましたが、コロナ禍において人と人との繋がり、社会参加が出来なくなりつつあります。舘田教授はどのようなことを危惧されていらっしゃいますか?

結局、高齢者の死亡率が高いために「高齢者を守る」という戦略を打ち出していかなければいけない訳です。特に老人ホームとかそういった高齢者の施設にウイルスが持ち込まれないような配慮を行っています。というのも持ち込むのは、やはり殆どが職員です。若い職員が外で食事をした時に感染をして、知らず知らずの内に持ち込んで、お年寄りに感染させてしまうのです。そうやって感染したお年寄りは重症化して亡くなるといったケースが起きてくる訳です。兎に角お年寄りを守るという視点で、勿論重症者の遺伝子検査、それ以外にも職員の人達の遺伝子検査等をしっかり行って、コロナウイルスを持ち込まさないことです。引き続きお年寄りを守っていけるような対策をとっていかなければならないと思います。

―医療職、特に看護師の方をはじめ、介護職の方たちのご苦労は並大抵のものではないと想像しています。また保健所の職員の方の疲弊も伝わっておりますが、私たち一般の国民はこの方々にどのようなエールを送ればよいのでしょうか?一刻も早い終結を願い、今言われている3密やマスク、手洗いを徹底し、人との接触を避けることしか私たちにはできませんが、何かこのようにしたら良いというアドバイス等ございましたらお願いします。

もう多くの人は既にやれることはやっています。つまり医療従事者に対する思いというのは、感謝の気持ちを持ちながら、自分たちは少しでも感染者数を減らそうという風な形で行動をとることであり、そういう気持ちを持っていれば、私はそれで良いと思うんです。外出を自粛したり、テレワークで出来る仕事はオンラインで行ったりしています。また「3密」にならないよう距離をとったり、マスクの着用、手洗い、換気を行う等、出来ることは十分行っています。一部やれていない人達が居るとするならば、そういう人達は少し協力してくれて頑張って欲しいという風に思います。感染した人、或いは医療従事者、そういう風な人達に対する差別や偏見が無いようにしていこうという、そういう社会を作っていくように、出来ることがあれば国民一人ひとりが協力していかなければならないと思います。

―ワクチンさえ接種出来れば、この新型コロナの収束は出来ると思っている人も多くいらっしゃいます。舘田理事長は、何年かおきに感染症の拡大が必ずあったが、定時に戻ると忘れてしまうとも仰られていたように思います。今後について警鐘を鳴らしていただけますか?

同じようなパンデミックはまた何年かすれば必ずやって来るという視点を常に持ち続けることです。それは2002年の「サーズ」、2012年の「マーズ」、そして今回2019年の「COVID-19」をみても明らかで、必ず来る訳です。従って、危機管理の視点でそれに対する備えをしていかなければいけないということです。此処が最も大事なところで、勿論今は大変だとやっているけれども、それが通り過ぎてしまったら、また元に戻ってしまうのではなく、また次が必ずやって来る訳ですから、平時の時からそれに対する備え、有事に備えた危機管理の視点でそれを実践していくことが大事です。

今回、やはり日本は危機管理の視点での備えが甘かった訳です。韓国とか台湾とか中国はパンデミックを経験していましたから、それに対する備えというのは結構ちゃんと行っていました。しかし日本は「サーズ」も「マーズ」も経験していなかったために、なんとなく大丈夫だろうと甘く考えていたところもあり、こんな風になってしまったのです。それでも上手くやっています。つまり今回の反省は、暫くして落ち着いたら、大きな感染症は、また必ずやって来るんだから、常日頃からみんなでしっかり気を付けていきましょうということを考えていかなければならないでしょう。

舘田一博(たてだかずひろ)氏プロフィール

1960年鎌倉市生まれ。1985(昭和60) 年3月長崎大学医学部卒業。1985(昭和60)年6月長崎大学医学部第二内科入局。1990(平成2)年10月東邦大学医学部微生物学講座助手。1999(平成11)年10月~2001年3月米国ミシガン大学呼吸器内科留学。2005(平成17)年12月東邦大学医学部微生物・感染症学講座准教授。2011 (平成23) 年4月同講座教授。東邦大学医療センター大森病院感染管理部部長。

関係学会等:
日本感染症学会理事理事長(2017- )
日本臨床微生物学会理事長(2018- )
ICD協議会議長(2017— )

Visited 15 times, 1 visit(s) today