HOME 特集 インタビュー 医療法人社団癒合会高輪クリニック理事長 陰山康成氏インタビュー

医療法人社団癒合会高輪クリニック理事長  陰山康成氏インタビュー

インタビュー 特集

3年前の政権交代で鳩山由紀夫元首相は、高らかに〝統合医療の促進をはかります〟と唱えられた。和合医療学会も設立され拡大の一途である。しかし、昨年の暮れに政権は自民党に再び戻された。今後、統合医療は前に進んでいくのであろうか?

統合医療はどうしても医師中心の縦つながりであったこともあり、一方和合医療は、真に横つながりの医療集団の形成を目指していることは間違いないと思われる。和合医療と統合医療の違いはどこにあるのか?

和合医療の実践者である陰山氏に率直にお聞きした。

『和合医療が、医療費の高騰を抑え、実学としての予防医療を普及させていきます!』

医療法人社団癒合会
高輪クリニック
理事長   陰山  康成    氏

―現在、和合医療学会の会員数は何名で、どういった職種の方々で構成されているのでしょうか。

現在、約7000名の会員を有しております。その方々は、医師、歯科医師、鍼灸師、柔道整復師、民間療法士、心理カウンセラー、薬剤師、獣医師、健康増進に強い意欲のある一般の方々等で構成されています。

―和合医療と統合医療の違いについて教えてください。

統合医療は、東西医療の繋ぎ合わせる医療に対してアメリカで命名されたIntegrarion Medicineの日本語訳です。

統合とは、「二つ以上のものを一つにすべて合せること」という定義ですので、二つ以上の存在がお互いのよいところどりをして伸ばしあうというニュアンスからは、和合という日本語のほうが当てはまるという考えから、当院の活動には和合医療という命名をしています。名称の違いだけで目指すものは同じです。

―西洋医療と東洋医療が和合するとどのような可能性を見出せるのでしょうか?

慢性疾患、アレルギー、膠原病などの難病に三千年近い歴史をもつ中国の医学が素晴らしい結果を出すことは、医師よりも医療の受け手の患者さんが感じているところです。その医療の担い手の中医師(鍼灸、漢方、スイナ、気功)が世界中で国家資格の医師として活動し始めています。(中国の資格がスペインを除くユーロ圏およびカナダ、韓国で自動的に国家資格として認められました。)同様に日本の鍼灸師、あんまマッサージ師、柔道整復師など知事が認可をだしている準国家資格者や資格のないカイロプラクターやリフレクソロジスト、シャーマン(原始宗教を伝える語り部、神の言葉を伝える巫女、自然医療従事者メディソンマンの総称)の医療に携わるメディソンマンなどのうち、真理を押さえ本当に治す能力のある治療家が、和医師という。まずは日本での国家資格になること。そして、その資格が中医師と同様に、世界中で有資格者として機能し、確固たる社会的ステータスを得るべきと考えています。また、和漢の復興も必須です。論語・子路でいわれる「和して同ぜず」の感覚で、西洋医療と東洋医療がお互いの長所を生かし合って国民に真に役に立つ医療を創造するのです。

―歯科医療と一般医療の和合についても教えてください。

西洋哲学を基盤とした西洋医療においては、縦割りに各科を分離する歴史をたどりました。

その最たる分離は医科と歯科です。発生学的に早期にできあがる口腔内が理論的にも法的にも完全に全身と分離され、臨床上矛盾だらけの医療システムが常識となっている現状を根本から考え直す必要があります。歯科と医科をつなぐ横つながりの医療システムを採用して口腔内環境を整えることで、難病の治癒が多々報告されていることからも、歯科と医科の横つながりのシステムが必須と考えられます。

歯科と医科が和合することで医療の流れが分離していく異化から集結していく同化へと変わっていくと思われます。

―昨年の8月24日(金)に民主党統合医療を普及・促進する議員連盟の勉強会で陰山先生は、「伝統医療と現代医療の和合を目指して」と題した講演をされ、〝18年間西洋医学一辺倒で学んできたが、臨床の現場で患者さんを目の前にした時、残念ながら西洋医学だけでは実学としての医療に役に立たないと感じることが多かった中で長年の歴史を持った東洋医療・伝承医療では患者さんへ恩恵を与えられる武器があるという確信のもと、新しい医療を組み立てる必要があるのではないか〟と話されましたが、そのお考えをもう少し詳しくお聞かせください。

西洋医療の限界は、根本治療とは言えない対症療法であり、横つながりの医療ネットワークが希薄な縦割りの仕組みになっています。しかも精神、社会的要素をないがしろにしている肉体的要素を中心に扱うために、慢性疾患、生活習慣病、癌の再発予防、精神疾患、膠原病、アレルギーに対しては残念ながら完治にもちこめるシステムができあがっていません。長年、医科と歯科の両方の臨床および研究に携わり、内部に入り込んだ者が感じたことですので、真理です。

そこで医学的裏付けは薄くても長年の歴史をかい潜ってきた伝承療法、東洋医療、各種民間療法には、西洋医療の足りない面を補って余るものがあり、多様性に富む問題を抱える方々を臨床で拝診するにあたっては、その両方を採用すべきと思ったのは自然な流れです。

―和合医療のキーワードとして「和合精神」「医療費の削減」「ホスピタリティ医療」の3つを上げられましたが、夫々についてご説明ください。

和合精神とは、多神教の精神であり、健康観においては、人それぞれに崇高な内在する神仏が病気から回復する根源であるという思い。また治療にあたっては、西洋医療と伝承療法、東洋医療が和して同せずという感覚の元、根源に和の感覚をもちながらシステムに関しては餅屋は餅屋の感覚で出番を弁えるというニュアンスをふくんでいます。

医療費削減は政府、官庁主導でなしうるものは少なく、全国民の意識にかかっています。むやみに医療機関にかかることがないように平素から健康管理を本気で実践すること、己に内在する自然治癒力の及ぶ範囲を知り、医療機関との付き合いを最低限にすること、薬物に無闇に頼らない意識づくりが大事です。また予防医療指導のプロが不在の日本において医療費削減のためにも、病気にかかってからの医師と同格の予防医療のプロとして医師資格が日本にも必須と考えられます。その候補として未病という概念のある東洋医療を扱う鍼灸師、マッサージ師の方および殺法、活法を基盤として伝統的な柔道整復師があげられます。準医師資格であるこれらの資格を有する方々が、実践で役立つ予防医療の伝道師としての医師資格を有することが理想です。

17世紀に医学の世界から精神的要素がぬかれて以来、健康管理に心理的要素はあげられていますが、おまけの存在に成り下がって久しい状況が続いています。

患者サイドからみた質の高い医療には、病気で掛かる患者様の心理面を繊細に配慮し、当然他の業種と同様にホスピタリティーを重視することが必須です。最高の接遇マナーを有した医療スタッフ、エンターティメント設備満載の医療施設、医療システムが存在してこの施設であれば人生の終焉を迎えてもよいと思えるほどの場を増やすべきと思います。

―やはり、陰山先生は〝願わくば柔道整復師・鍼灸師等、有資格者の方たちが、中国や韓国、インドと同じように、日本の伝承医療を推奨する医師として活動できるよう、少なくとも柔道整復師の保険医化ができると水準が上がる。西と東の医師がそろって初めて、本物の統合医療・和合医療が推進されるのではないか〟とも述べられておりますが、そういったことが可能であるとお考えでしょうか?またそのためにはどのような方法や手段を用いるべきとお考えですか?

予防医療のプロとしての医師、さらに医師化して通常の医師と横並びの関係ができることで日本の東洋医療、伝承療法のスタンダードの引き上げにも確実につながると思ってます。

政治家、官庁を巻き込んで新しい医師資格をつくる是非をディスカッションした上で早々に前にすすめるべきです。その意味で統合医療普及、促進連合会の存在は一歩前にすすめる格好の会合だと思います。

―更に陰山先生は、〝専門学校では解剖学や生理学など西洋医学と全く同じような授業で、気の流れを紐解くことは全くない。元々柔道整復の始まりは「殺法」「活法」という、倒した相手に命を落とさせることなくその傷を治すという和の精神、その感覚を持って気の流れを前提とした柔道整復を復権させていただきたい。それでこそ柔道整復師の存在意義がある。東洋医療系の有資格者が予防医療として患者個人に合った食事・運動・メンタルケアを指導することによって健康づくりができるのであれば、確実に医療費の削減にもつながる。そこには気の流れなどの東洋のものの考え方が必要だと私は考えている〟とも話されています。気の流れを前提とした柔道整復の復権というのは、どういうことか教えてください。

元来、古典には柔道整復の活法は、外傷によって障害を受けた部位の物理的修復と同時に外傷によって寸断されたり傷められた経絡(気の流れ)の修復をする行為と書かれており柔道整復の源は鍼灸経絡治療で言われる気の世界と一体化していたと推測されます。今後は予防医療のプロとしての活動のために、鍼灸と柔道整復の履修を全員が必須として、かつ予防医療の実践的な内容を指導できる職業に昇華していただきたいと思います。

―今までの経緯と今後の活動予定についてお聞かせください。

私は九州歯科大学を卒業してから、以降、鶴見大学歯科麻酔教室、離島での僻地医療、東海大学医学部、愛知医科大学付属病院高度救命救急センター勤務、東京医科歯科大学大学院、岐阜大学大学院で学び、そして数々の医療現場に携わってまいりました。現在に至り、全国3か所の高輪クリニックでの臨床と岐阜大学救命救急科所属での研究活動を行なっていますが、来年岐阜大学の勤務が完了になり、いよいよ和合医療型病院設立にむけて動きを開始します。

幼少時より自律神経のアンバランスからくる様々な病態に陥り、入院も含めて医療機関には頻繁にかかっていました。その折臨床医療に対しての矛盾や憤りを子供ながらに感じ、医療の大改革の必要性を自らの体験から感じました。歯科麻酔科所属時代に鍼灸経絡治療と出会い、また島根県知夫里島での僻地医療で赴任した際に、自然志向に傾倒することになります。

其の後開業した高輪クリニックでは最先端の西洋医療である癌免疫療法、再生医療も手掛ける一方、アイヌの薬草、チベットの薬草を積極的に用いるなど和合医療を臨床において実践し続けています。

―最後に陰山先生の今後の目標などもお聞かせください。

和合医療型の東西医療が自由に選択でき、かつエンターテイメント満載の医療施設の運営、国際和合医療学会の拡大、多神教的感覚での医療システムの構築をいたします。

陰山康成氏プロフィール

●担当: 内科・歯科
●出身大学: 福岡県立九州歯科大学歯学部、東海大学医学部
●理念:
患者サイドに立って真に役立つ本物医療の構築を”和合医療”と”武士道”のキーワードで本気でねらっています。健康創造は自らの実践がなければ説得力がないので、現在、和太鼓、空手、サウナを隔日でこなしています。
●HP:https://www.takanawa-clinic.com/

Visited 400 times, 1 visit(s) today