『患者と柔整師の会』 患者副代表 島田よし子氏インタビュー
2010年、『患者と柔整師の会』が設立され、島田さんはその患者副代表を務められている。
超高齢化社会が加速する中、医療財政の逼迫は著しく、医療費をいかに抑制していくかが大きな課題である。急を要する命にかかわる医療を除くと健康を維持するための予防医療に重点が置かれるようになってきた。
元々柔道整復師は、地域住民への健康維持・管理と指導を行い、地域医療並びに福祉に貢献し続けてきた。
島田副代表に国民の声をお聞きした。
『運動器のケアをしていただける接骨院の先生を頼りにしています!』
『患者と柔整師の会』
患者副代表
島田よし子氏
―島田副代表が接骨院にかかられた経験など教えてください。
確か10年位前になると思います。急に右足、右半身がビリビリ痛くなってしまいました。自分のことですが、何で痛くなったのかが分らないんです。転びもしないのに痛くなって、丁度日曜日でした。ご近所の方が〝病院もお休みだし、とりあえずあそこに接骨院があるから行ってみれば?〟と教えてくださって、行ったのが切っ掛けです。それ以来ずっと今まで長い間お世話になっております。右足のビリビリとした痛みは、腰からきているということで〝坐骨神経痛のようですね〟と治療を始めていただいて、その痛みはおさまりましたが、高齢のせいか左足も痛くなって、左はビリビリした痛みではなく酷く重い感じでした。とにかくそれがお世話になった始まりです。やはり通うには家から近くないと、どんなに良い先生でも遠くまで電車に乗ったりバスに乗って行くというのは通いきれません。毎日は行きませんでしたが最初の頃は足しげく1週間に3回くらい通いました。随分よくなったなぁという実感を持つまでには1年弱くらいかかったように思います。
そして、私の孫も以前は同居しておりまして、その子が高校でバレーボールをやっていて足首を捻挫したと、ビッコを引いて帰って来て、やっぱりその日が土曜日の夕方だったものですから、〝救急車を呼ぶ?〟と聞いたのですが、〝そんなのオーバーだよ〟というので、それで土曜日もやっていただけるのが先ほどの接骨院でした。直ぐ先生が診てくださって、〝捻挫ですね〟と言われて松葉杖をお借りして帰ってきました。土曜日も日曜日もやっていただけるということは、あういう子供たち、学生さんとか会社員の方にとっては、とても良いですね。そういうことで学校の帰りに治療に通えて、若いですし、割に早く治りました。土日やっていただけるということは、思いがけないところで助かっています。それに病院だと長時間待たされますし、救急車はそれ程重症ではない場合もありますからちょっと躊躇してしまいます。そういう点では凄く助かったと思います。
年々高齢になってくると、出てくる痛みが違います。こっちが治ったと思ったら、またこっちがとなったり、長い間にはあっちこっち痛みの出方も違います。あんまり長々とあっちが痛いこっちが痛いといってかかるのは申し訳ないような気もしますが、高齢社会ですし、足腰が弱ってそのまま寝たきりにならないためにも接骨院の先生にケアしていただくことが大事と思っています。本当のことを言えば、これで良いという終わりというのか区切りが無いんですよね。とどまるところが無い、延々と痛みってあるみたいで・・・まるで、痛みがあることそのものが生きている証拠みたいなものなんでしょうか。
―『患者と柔整師の会』に入られた切っ掛けは、どういうことでしたか?設立当初から副代表に就任されたのでしょうか?
この会が発足する前に私が通っている接骨院の先生からお電話をいただいて、〝これから『患者の会』というのを作るんですが、代表は決まっているけれども、副代表がいないというのも片手落ちなような気がするので、名前だけでもダメでしょうか〟と話され、〝駄目です。私には出来ません〟と固くお断りした積もりでしたが、何時の間にか、副代表に就任することになってしまいました(笑)。『患者の会』という名称そのものも初めて聞いた言葉で、具体的にどういったことをするのか全く解っておりませんでした。何をやる会なのか、想像では『患者の会』というからには、患者さんだけを集めて、ここが良かった悪かったと、いろんな悩みごとを話し合うのかなと、そんな風に思っておりましたが、実際に出席してみると非常に難しいお話が多かったです。
―『患者と柔整師の会』が、活動を開始されてから約3年経過したように思いますが、これまでの感想をお聞かせください。
会議がある時は、殆ど出席しておりました。一度もお休みしたことは無いと思います。今城代表は遠くで開かれる会議にも熱心に出席され、いろいろ調査もされていらっしゃいます。今城代表のせめて片腕みたいにでもなれればいいんですが、片腕どころか指1本にもならないから申し訳なく思っております。
患者会議に出席し、様々な意見がある中で、〝レントゲンもあれば良い。レントゲンを撮ってみないと心配だわ〟という意見等もありました。こちらが痛い痛いと言っても中を観てみないと、中がどうなっているのか判りませんからね。ただ、レントゲンでどうしても観る必要がある場合には、ちゃんと接骨院の先生の紹介があれば、病院にレントゲンを撮りにいってもかまわないわけですので、必要性のある時だけのほうが、かえって無駄な医療費を使わないで済むという利点もあるように思っています。
―患者さんは何故、整形外科ではなく接骨院や整骨院に掛かるのでしょうか?島田さんから見て、整形外科と接骨院の違いはなんでしょうか?患者さんから見て両者のメリット、デメリットなど教えてください。
私の場合は、まず薬を飲みたくなかったんです。血圧が高くて、10年近く血圧を下げる薬を飲んでいましたので、あまりあれこれ薬を飲みたくなかった。元々、薬嫌いな人間なものですから、薬を服用せずに治る方法があればと思っておりました。そういう理由もあって、接骨院に行けば飲むお薬はありませんし、手技で治していただきたいという気持ちが強くございました。別に仕事をしている訳でもないため、治るまで少々時間は長くかかっても良いという気持ちもありました。「坐骨神経痛」でしたから湿布も何ももらいませんでした。孫の場合は、湿布をしていただいて帰ってきました。年々腰がダメになってきましたので、今もその先生にはお世話になっており、長くお付き合いをさせていただいております。実は、私は整形外科には行ったことがないんです。おかげ様で血圧が高い以外に病気ってしたことがないんです。これまで一度も入院したことがありません。それでも今回初めて整形外科ではありませんが、耳鼻科にかかりました。耳鳴りがするようになって、K病院の耳鼻科に行って診察をしていただきましたところ、〝耳は悪くありません。鼓膜も大丈夫です。これはもうしようがない、年のせいだ〟と言われました。〝それは承知しております〟と言いました。〝つらいでしょう、これこれこういう風にしたらどうですか?〟と言ってくださるかと少しは期待しておりましたが、〝年をとると足が痛くなったり腰が痛くなったりするのと同じなんです。よかったですね〟って、言われました。何がいいのかなと思いました。〝あ、そうですか〟と帰ってきました。何にも教えてくれないですし、勿論薬もありませんでした。それで、ハリの先生に相談しましたら、〝大丈夫です、治りますよ〟と仰ってくれました。〝2年も3年も経っているのであれば治すというわけにはいかないけれど、まだ日にちが新しいから暫く通えば良くなりますよ〟と言われました。最初は耳鳴りの音が大きく不快でしたけど、今は音が低くなってそれ程ではなくなってきました。健康雑誌に耳鳴りのことが大きく取り上げられていますので、結構耳鳴りの患者は多いんだということが分りました。その対処の仕方は千差万別のようで、あまりにもいっぱいあり過ぎて読んでいく内に気が滅入ってしまって、もう読むのはやめることにして、ハリ治療1本にすることにしました。
―島田さんご自身は医療全般に何を望まれていらっしゃいますか?国民の求める医療というのは、どういった医療でしょうか?
いま、高齢化社会になって医療費がどんどん増えるということでいろいろ言われていますね。胃ろうのことについてもこのところ聞くようになりましたが、私は子どもに言ってあるんです。〝胃袋に穴を開けてまで栄養は要らない〟とハッキリ伝えています。私の住む地域には老人会があって月に1回は集まっています。いろんな話が出ますが、その人たちの話を纏めると、〝とにかく出来ることならば自分の家で最期を迎えたい、いろんな管は要らない。一番恐ろしいのは、何もわからなくなって、家族や関係の方にご迷惑をかけるのが辛い〟というのがほとんどの人の意見です。私の住んでいる地域も、以前は向こう三軒両隣がありました。〝ちょっと来て!〟と言えばお隣の方が直ぐみえましたけれど、今は全然お家が無くなってしまって更地になっています。家の周りはお寺さんの土地なもんですから、家は古いし、今後のこともあるからと郊外に引っ越して行かれました。それで今はもう声をかけるところが無くなってしまいました。去年の誕生祝いに娘がいま何所にいるという所在が分かるGPS(Global Positioning System)機能がついた携帯をプレゼントしてくれました。町内会も昔は子どもがいっぱい居たけれど、今はお年寄りの数が増えて子どもの数が少ないと町会長さんが嘆いていらっしゃいます。地域の住民同士が助け合えればいいんですが、そういう事情で難しくなっていますから、地域の自治体等町ぐるみでケアサポートが出来る環境を整えてもらえればと願っております。
―治療計画書というものを出していただくと、治療の目安が分って良いと思われますか?
そういうことは、難しいのではないかと思っています。そうキチッキチッと枡にはめたような訳にはいかないと思います。どの位でよくなりますというのは無理でしょう。年齢やケガの状態、症状にもよるでしょうし、患者さんは千差万別で夫々、様々ですから。それでも、こういう治療をしますぐらいのことは出していただけると良いかもしれませんね。そういう計画書をいただくことで、全く先が見えないよりも微かに希望があるような気がします。
―いま様々にある問題点の中で島田さんは一番何を改善されて欲しいと思われていらっしゃいますか?受領委任払いを償還払いに戻すといった声がよく聞かれますが、それについてどのように思われますか?
今のスタイルで通えるのでなければ接骨院にかかりにくくなることは間違いないと思います。今のほうが便利という言い方は良くないかもしれませんが、全額窓口で支払うようになるというのは、金銭的にも行きにくくなることは確かです。例えば、1週間に3回診ていただいていたものが2回・1回と減らすようになると思います。保険者さんのおっしゃられることも理にかなっていると思いますが、結局両者に良いというのは難しいのでしょうけれど、なんとか今の形でやっていって頂きたいと願っております。
―患者照会が当たり前のようになってきましたが、患者さんにとって毎回接骨院にかかるたびに「どのような内容でしたか?」と質問され、またその都度記述させられることはとても大変であると思います。まして後期高齢者の方が2月も3月も経過してから、その内容について回答することは困難ではないかと思われますが、島田さんご自身のご意見をお聞かせください。
今はそんな風になっているんですか。お若い方ならいいでしょうけれど、ある程度の年齢になると記憶力というのはあてになりませんから、先ほどの治療計画書のようなものがあると確認できますので、良いかもしれません。私自身は、まだ受け取ったことはありません。そういった質問状が毎回のように届くと確かにイヤになってしまいますわね。接骨院に行く度に回答書を書いて出さないといけないということになるんでしたら、接骨院に行くことが憂鬱になってしまいます。一般の方は皆さんよく知らないですから、集めて説明してあげることも親切と思います。こういったイヤがらせみたいなことを行政が奨励しているということは、高齢者はどんどんあの世に行けってことじゃないでしょうか。きっと、年なんだから、いい加減にしろということなんでしょうね。
―島田さんは柔整のどこに一番問題があると思われていますか?
私の場合は別にレントゲン等を撮らなくても、治していただきましたし、孫も治していただきました。〝今日は何所が痛いんですか?〟と聞かれて、気安く〝今日はここです〟と言って、また次の日には別の個所が痛かったりで、なんとも我が儘なことですが、そういうのはいけないってことなんですよね。年を取り過ぎちゃったということなんですが、そうだとしてもとにかく接骨院の先生を頼りにして、寝込まないことが大事であると私は思っております。
ただあまりにも接骨院が増えすぎるというのは、どうなんだろうと思います。町を歩いてみると、本当にいっぱいあるので、接骨院の先生というのはそんなに簡単に出来るものなのかなということは感じております。人の命を助ける、健康を守るお仕事ですから、やっぱりいっぱい勉強をしていただきたいという気持ちがございます。
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