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患者代表インタビュー 『弁護士  加藤真美  氏』

インタビュー 特集

超高齢化社会が加速進展する中、医療財政の逼迫は著しく、増え続ける医療費をいかに抑制していくかが大きな課題である。急を要する命にかかわる医療を除くと健康を維持するための予防医療に重点が置かれるようになってきた。

元々柔道整復師は、地域住民への健康維持・管理と指導を行い、地域医療並びに福祉に貢献し続けてきた。患者により添う患者に優しい医療とは何か?

加藤弁護士に国民の声、そしてあってはならない医療過誤など訴訟問題で注意すべき点についてお聞きした。

身体に優しい医療を提供していただける接骨院に好感を持っています!

弁護士 
加藤  真美   氏

―加藤弁護士が腰痛を発症された原因とその後どういう治療を受けられてきたかについて経過をお聞かせください。

今年の8月お盆の頃に、突然腰痛になりました。突然のことなので原因は思い当りませんでした。普段私は、室内でエアー縄跳びをやっておりまして、それをやろうとしたところ凄く違和感があり腰がおかしい、飛び跳ねることは続けられないなと思って止めました。その後、立ち上がる時に腰が曲がって伸びない状態が始まりました。こういうことは全く初めてのことではなく、実は4年程前にもそのようなことはありました。腰痛といってもどちらかというと激痛というより腰が伸びない感じです。4年前は、直ぐに治りましたので今回もたいしたことではないと思いましたし、今は普通の生活に支障はありませんが、お盆の頃はちょっと痛みもありましたから、仕事を休んで整形外科に行きました。結局、原因は分らずじまいで、病名は「変形性腰椎分離すべり症」でした。患者さんがあまりにも多く1人2・3分の診察時間で、先ず画像を撮って、画像を作っている間に他の患者さんを診られて、画像が出来た頃にまた呼ばれて、骨に異常や特別大きな異常はないということと、他には診察用ベッドの上で足を持ち上げ〝痛くないですか?〟等、検査を受けました。多分、椎間板ヘルニアかどうかの確認だったように思います。それも大丈夫ということで〝ヘルニアとか重篤なものではない〟と言われて、湿布と痛み止めの薬だけ貰って帰りました。多分ドクターは一過性のもので直ぐ治るだろうと判断されたようで〝また来なさい〟とは言われませんでした。

実は4年前の時には、それが良かったのかどうか分りませんが、牽引をやったら直ぐ治ったものですから、その病院でも牽引を希望しましたが〝貴方みたいな症状の人に牽引は向かない〟と言われ牽引はしてもらえませんでした。結局、様子をみるという感じでしたが、牽引をして貰えなかったため、又別の医療機関、直ぐ近くの東洋医学研究所クリニックに行って整形外科の先生に診て頂いて、リハビリと牽引をやって頂きました。で、もう一か月位経ちますが良くなったり悪くなったりで4年前の時のようには治らなくて困っています。

東洋医学研究所は直ぐ近くで比較的空いておりますので週に1回位行ける時に行っていますが、友人である酒田さんに相談して接骨院に行きまして、1時間くらい詳しい問診と触診、屈折等の動きを診てもらいました。施術自体は手技で骨盤調整をして頂きました。酒田さんが友人ということもありますが、接骨院で診てもらおうとした理由としては、整形外科は何所へ行っても同じで、整形外科の診察は2・3分です。画像プラス足が上るかどうかを確認するだけです。先ほど申し上げましたように「椎間板ヘルニア」以外は「すべり症」とか「脊柱管狭窄症」等の可能性があるという診断で何所へ行っても殆ど同じです。でも酒田さんの所は、患者さんの症状の聞き取りなど一人の診察に1時間くらい時間をかけ、しかも施術もしてもらえるので、酒田さんにお願いしました。

―結果的にどうだったのでしょうか?

ハッキリ言ってそんなに劇的に変わったという感じではありませんでした。酒田さんが〝自分より手技の上手な先生が居るので、その方にちょっと診てもらったらどうか?〟と言うので、その先生に1回診ていただいて「仙腸関節障害」のことを言われましたが、その後はまだ診ていただいておりません。〝2週間に1回くらい受けてみたらどうですか〟と言われています。ちょっと遠いんですが、行ってみようと思っています。

―今まで他の接骨院にもかかられた経験はあったのでしょうか?

それはありません。私がかかったことがあるのは酒田さんの所だけです。私が整形外科に行く目的は、やはり画像を撮ってもらうことぐらいと思っているんです。所詮、原因とか分からないでしょうし、診察時間が限られているということがネックで、それで酒田さんの所に行くようになりました。これまで怪我は無いんですが、一時、指先が震えるようになったことがあって、行ったこともあります。と言っても、行ったのは酒田さんの所だけですが(笑)。その時も凄く丁寧にやってもらいまして、どちらが痺れるとどうだということで、いろいろ細かく全部調べてもらいました。重篤な病気ではないということでしたが、一応脳外科でMRIも撮って頂きました。何も無かったので、様子をみましょうとなって放っておいたら治りました。

―多くの国民は、整形外科と接骨院を使い分けられているように感じます。加藤弁護士は、そのことをどのようにお考えでしょうか?

整形外科は医師なので、患者はその権威を求めて病院に行くように思います。例えば、交通事故の患者さんの場合、整形外科の診断書がないと保険会社は相手にしてくれません。つまり、そういう権威です。権威ともう1つは客観的で多角的な所見としての画像、診断は画像を撮ってもらうことから始まるので、どうしてもそのとっかかりとして整形外科に行く訳です。接骨院の先生のほうが親身になってやってくれるので接骨院に行って相談、施術を受けるようになるんだと思います。内臓疾患と違って整形外科は、一刻を争うなど致命的な緊急性を要するものもないからなのか丁寧にという感じではないですね。過去、整形外科で20分も30分も診てくれるような病院は、ありませんでした。病院に行かないとレントゲンが撮れないというのがあるので行く、一応の診断をもらうことでしょうか。

―近くに感じのいい接骨院があれば、行ってみようと思われますか?

はい、思います。実際に患部を触診してもらわないとあまり治療を受けているという感じに思えませんし、ちゃんとした手技を受けて治してもらいたいという思いがありますので、近くに評判のいい接骨院があれば行きます。

―ご自身は医療全般、または社会保障制度に対して何を望まれていらっしゃいますか?

あまり普段病院にかからないもので深く考えたことはないのでよく分りませんが、近年医療費が膨れ上がっているため、後期高齢者の負担を増やすという話もあります。また健康保険証を持たない人も増えていると聞いております。その辺は難しいですけれど、みんなが医療を受けられるように、税金で賄えるようなシステムを導入する必要があるように感じています。健康保険と介護保険・年金等、全てそうなんですが、納めてきたから給付を受けられるけれども、じゃ納めてない人をどうするかという問題も生じてきて、また納めていない人にも給付されるという様になると、それはそれでちょっと不公平感もあります。年金の場合、生活保護費より年金のほうがが低かったりなど逆転現象もあります。やはり国民全体で支えるようなシステムの構築が求められているのではないでしょうか。

医療そのものについては、これからの医療というのは、長寿を目的にするのではなく、自立した生活が送れるようにケアサポートしてくれるような医療が求められていると思います。

―治療計画書というものを出していただくと、治療の目安が分って良いと思われますか? また、今接骨院にかかると頻繁に照会文書が届くようになっているようですが、加藤弁護士はそれについてどのように思われますか?

そうですね。治療計画書については、患者さんにとってメリットはあるという気がします。しかし今回たまたま私が加入している弁護士国民健康保険組合から組合報が届きました。その中にチラシが同封されておりまして、接骨院・整骨院では保険適用できるものは限られているんだよと。肩こり腰痛はダメなんだよということ、それから照会が行くことがありますよと記載されていました。これを読んだ感想としては、恐らく柔道整復師業界に対する締め付けが非常に厳しくなっているのかなと感じました。治療計画書というものもそういった方向での義務付けというか締め付けの方向でのものなのかなとちょっと思いました。これ自体は、治療の目的が分かって別に悪いものではないですね。

しかしながら照会文書については、回答させられたり、窓口で全額負担して自分で療養給付申請を出すといったことは、患者さんにとっては非常にマイナスです。償還払いにすることも患者照会も、こういったことを行えば、患者の負担を増やすことに繋がり、しかも柔道整復師の人たちへの不信感みたいなものをあおるような形になって、良くないと思っています。こういったチラシを読むと接骨院・整骨院で保険を使われる時は注意が必要ですよという、そういった中身になっていて、ネガティブなイメージを与えるものなのでちょっと酷いなという気がします。医科と同じに自己負担分だけ窓口で支払うという今まで出来ていたものを本来の姿に戻しますという、流石にそこまでなってくると患者さんも反対すると思うんですが、反対の声を出す以前に通わなくなっちゃったりするというのが良くないですね。これは、患者さんには全くいいことがないので止めてもらいたいと思いますけれども。

―いま様々にある問題点の中で加藤弁護士は一番何を改善されて欲しいと思われていらっしゃいますか?

接骨院自体の問題については、あまり分らないことをとやかく言えませんが、交通事故に限って申し上げると、健康保険を使うか使わないかというところで、今最終的には健康保険を使ったほうがいいんだよという風にだんだん世間では言われるようになってきています。やはり自賠責保険の受給が120万円までという上限がありますので、いくら自分が被害者であっても総額を抑えないと、任意保険の額に食い込んでいくことになるため、どの保険会社も渋るんですね。自賠責の分は全く保険会社のお腹を痛める訳ではないので、自賠責の中で支払える分に関しては保険会社は全然抵抗して来ないんですけど、それを超えてくると渋るので争いになり、結果として休業補償や慰謝料も含めて総額で高くなってしまうとよくない。

結局、慰謝料や休業補償も貰いたいから治療費の総額を抑えたいということで〝健康保険を使ったほうがお得です〟というガイドがされています。それでまあ、私達弁護士も依頼者にそう言わざるを得ないんですね。こと自賠責に関しては接骨院も病院も変わらないのかもしれないんですが、健康保険を使うより自由診療で行うほうが良いという場合、本当にそのほうが良いということであれば、何所が違うかということの十分な説明をしていただいて、最終的には患者さんが選択できるような形をとってほしいと思っています。そうじゃないと金儲けのためと叩かれてしまうと思うんですね。ハッキリとした裏付けがない中で、健康保険を使わない方がいいですよと言うと、健康保険のほうが点数が低いので、医療機関が儲けたいから健康保険を使わせないようにしているのではないかと疑われてしまいますし、こういう治療法のほうが効果あり、コストパフォーマンスもよいということであるならば、それをPRしていただきたいですね。

―加藤弁護士は、これまで柔道整復師の治療ミスなどの訴訟を扱われたことはございますか?もしございましたら、差しさわりのない範囲でお聞かせください。

私自身は、接骨院に対する損害賠償という話を直接聞いたことも扱ったこともありません。ただ自分の所で治せなかったとしても、しかるべく病名を疑って医師の診断を受けさせるとか、医師を紹介するなどしませんとやはり注意義務違反ということで問われると思います。自分で救済したり、治すことができないとしても重篤な内臓疾患等の可能性もありますので、それを疑って医師を紹介するという義務はあるのではないかという気がします。

実は以前、私の母も叔母も酒田さんの接骨院に連れていったことがありまして、元々は叔母が膝が痛いということで行って、いろいろ丁寧に診ていただいて、適切なお医者さんを紹介していただきました。その後、当法律事務所の所長のお母さんも坐骨神経痛で〝何所か良い先生は居ませんか〟ということで、酒田さんに紹介していただいた病院で手術して非常によくなったということです。それだけではなく、私が一番驚いたことは、叔母を連れて行った時のことで、母は元々叔母の付添で行っただけなんですが、行く途中で眩暈がして、それで母のいろんな症状も聴いてくださって「椎骨脳底動脈循環不全」ではないか、その症状に似ていると言われ、それで脳外科に連れていって画像を撮ったところ、椎骨動脈が詰まっているということでした。やはり柔道整復師の方も、いろいろ医学的な勉強を深くされている方であれば、自分では治療は出来ないかもしれませんが適切な対応をしてくれるので、凄く助かります。地域の接骨院は、その辺も重要な役目を担われているのではないでしょうか。

最後に近年多いトラブルでの事例を若干紹介しておきます。

  1. 賃金未払いのトラブルです。訪問介護・看護の移動時間は「労働時間」の盲点です。賃金トラブル回避のため、職員の労働時間を客観的な記録方法で把握しておくことが重要です。
  2. 有休取得等のトラブルです。多忙な医療・介護現場では、有休取得の明確なルールづくりが大事です。必要なときに休める人員体制が優秀な人材確保を可能にします。
  3. メンタルヘルス関連のトラブルです。医療・介護現場では、人の生死に直面することが多いため、ストレスがかかりやすく、採用時の既往歴把握や、メンタルヘルス研修・面談など、事前の対策を講じておくことが大切です。
  4. パワハラ・セクハラに関するトラブルです。女性が多い医療・介護現場には、職種ごとの目に見えない”上下関係”が存在し、人間関係のトラブルが生じやすいため、事前の防止策を講じておく必要があります。

また最近の話ですが、接骨院や整骨院など柔道整復師法に基づく施術所が、効能として「肩こり」「腰痛」などの広告を違法に掲げる例が後を絶たない中、奈良県橿原市が独自調査を始め、改善指導に乗り出したということを耳にしました。違法な広告は今後取締が厳しくなっていくものと思われるため、自分の接骨院の職場環境等、違反とされるものはないかチェックを厳重に行っておくことが大事です。

加藤真美弁護士プロフィール

東京都出身、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社に6年間勤務。

弁護士経歴:
1997年4月 弁護士登録
2004年4月~駿河台大学法科大学院 非常勤講師
2008年10月~ 第二東京弁護士会高齢者・障がい者総合支援センター委員
2009年8月~2010年3月 BS朝日「週刊しっかり見ナイト」コメンテーター
2010年4月~2012年3月 東京都労働局 あっせん委員
2012年4月~ 第二東京弁護士会副会長 東京簡易裁判所調停委員

企業法務(多くの契約書類の作成やレビューをはじめ、人事労務等にいたるまで)、離婚事件(内縁、婚約不履行も)、刑事事件、破産事件等をもっとも得意とするが、近年は、成年後見等の高齢者問題を多く扱っている。最近では、犯罪被害者問題に強い関心をもっており、犯罪被害者の声を直接聞いて、心の癒し、回復のための問題に取り組みたいと考えている。

著書:
ロースクール生のための刑事法総合演習(島伸一編 現代人分社 共著)

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