ビッグインタビュー:帯津三敬塾クリニック院長 板村論子氏
今、統合医療学会が脚光を浴びている。緩やかに、一歩一歩着実に活動を展開し続けてきた結果、ここに来て一気に実を結んだものである。
近年、我が国は超高齢化と人口減少社会に突入。多くの人たちが人間の生き方はどうあるべきか、医療は如何あるべきかを真剣に考え始めた。その先駆けであり、牽引してきたのが統合医療の考え方そのものであったと思われる。
帯津三敬塾クリニック院長の板村論子氏に示唆していただいた。
『“人”が中心の統合医療を推進続けて』
帯津三敬塾クリニック院長
板村 論子 氏
―板村論子先生のこれまでの経緯をお聞かせください。
私は大学院では基礎医学を研究しておりました。ウイルス学の研究ができる慈恵医大の皮膚科に入局しまして、そこで留学もさせていただき、皮膚科の専門医も取らせていただきました。丁度、3人目の子供が出来た頃に大学を辞めることにしました。大学では、がん或いはウイルスに関係する皮膚科系や内科系の疾患、膠原病等を専門にしていました。その後、市民病院に勤務した時にアトピー性皮膚炎で長期の患者さんや重症の患者さんを多く診るようになりました。それまで大学ではアトピー性皮膚炎が専門でなかったのですが、専門外来を受け持つようになり、カウンセリングを行ったところ、効果があると感じました。それで一人一人に対応できる治療法を勉強しようと、臨床心理学や精神療法等を何所かの大学で学んでみようと思いました。
仕事を辞めて、どうしようかなと思っていた時にイギリス人の友人の医師が〝イギリスではホメオパシーがあるんだよ〟と言ってホメオパシーを教えてくれたんです。〝心理学とか精神医学に興味があるんだったらこういう本もあるよ〟と勧められて、それを読んだ後に勉強したいと伝えると、イギリスには『ファカルティ オブ ホメオパシー(英国ホメオパシー医学会)』があるよと教えていただきました。其の学会とコンタクトを取るようになり、留学は出来ない状況でしたので、グラスゴーのホメオパシー病院の通信講座を選びました。丁度その頃医師でない民間の人が行っているコースにも出席したりしました。そこでは、ホメオパシーが宗教みたいで違和感を感じていたのですが、イギリスの通信講座を取ってみると全く違って医療の中にしっかり組み込まれていました。
その後、2000年1月に日本で日本ホメオパシー医学会が立ち上がった時にイギリスの『ファカルティ オブ ホメオパシー』がバックアップをしてくれまして、学会の研修が実施されるようになりました。今の『一般社団法人日本ホメオパシー医学会』の体制が整って、社会的に医学レベルで教育していると認められるようになりました。日本ホメオパシー医学会は帯津先生が理事長で、川嶋朗先生をはじめホメオパシーを真摯に取り組んでいる会員からなっています。私自身、学会発足時はまだ開業医の先生の所でホメオパシーの治療をボランティアでやらせていただいて、その後、帯津先生の病院でホメオパシーと皮膚科を専門に診るようになりました。帯津先生が池袋にクリニックを創るということで〝ホメオパシーをやらないか〟と仰られて、参加させていただきました。2005年の4月に医療法人財団となって以来、帯津先生とずっとご一緒で、もう10年になります。
―ホメオパシーは未だ日本人にはあまり知られていない治療法であると思います。どういった治療法なのか、分り易く教えていただけますか?
現在、世界の80か国以上でホメオパシーが通常の医療の一つとして用いられています。世界保健機関(WHO)は2001年、ホメオパシーを広く世界規模に用いられている医療体系として認め、多くの国で医療保険に組み込まれていると報告しました。また2009年、ホメオパシー薬に関する安全指針についての決議を行い、翌2010年に”Safety issues in the preparation of homeopathic medicines”として発刊されました。
残念ながら日本では、ホメオパシーを知っている人は、まだ0.5%位です。それにはいろいろ理由があると思いますが、ホメオパシーは、220年前にドイツ人医師のサミュエル・ハーネマンによって確立されました。これまで何回か日本に紹介されましたが、やはり日本は漢方が強いんですね。漢方も国によっては、保険適用されていない国もあり、ヨーロッパでは保険適用されてない国がほとんどです。ホメオパシーはその逆の立場と考えると理解しやすいと思います。つまり、歴史的な流れがあってヨーロッパでホメオパシーは、日本の漢方以上に知られています。国連で働いている人を国際公務員といいますが、日本にいても国際公務員の人には、ホメオパシーは保険適用されるのです。それぐらいヨーロッパでホメオパシーは医療として知られています。
ホメオパシーは、人のもつ自然治癒力に刺激を与えて回復の手助けをすると考えられています。ただそのメカニズムは、自然治癒力自体が今の科学では解明されていないため、未だ科学的に立証出来ていないんですね。漢方もそういう時期があったと思いますし、アーユルベェーダにしてもそうです。ヨーロッパでも認めている国と認めない国と違いは各々あります。一番大きな違いは、やはりホメオパシーを誰が行うかで、認めるか認めないか国の対応がかなり異なってきて、医師のみがホメオパシーを行っている国はホメオパシーに対してバッシングみたいなことは起こらないんです。ところが医師以外の方が存在するイギリスやオースオラリアもそうですが、医師ではない人がホメオパシーを行っている国では絶えずバッシングがあります。その最先端がイギリスで、その流れで日本も何の法的規制もなく、誰でも出来るということでホメオパシーが医療として認識されるには大変厳しい状況にあります。私が最初始めた時にはそういったことは実感出来ませんでしたが、これまでやってみてそう思います。医師のみが行うということであれば、患者さんも安全だと思います。治療というのは、やはり病気が分って治療する訳で、病気が分らない人がやるのは本末転倒です。そういう意味でホメオパシーを治療として用いる場合、やはり医師が行うのが当然であると私自身は思っています。
日本ホメオパシー医学会の会員構成は、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師で、医療従事者のみです。規約があって薬剤師は処方しません。ただし日本では医師でない人たちによる民間の団体がいくつか乱立しています。それは日本には何も規制がないからで、例えば国が、ホメオパシーに関して〝治療行為は医師がやるべきである〟と定義をしていただければ、もっともっと普及するでしょう。ホメオパシーの薬をレメディと称しますが、レメディを医薬として国が認可した場合、必然的に医師以外処方できなくなる訳で、そういう国もあるんですね。ヨーロッパでもずっと認可されていなくて、様々な治療者がいたんですが、政府が〝ホメオパシーは薬です〟と認可した途端に治療者は限定されて、健全にいったケースもあります。こういったことは自分一人の力ではどうすることも出来ません。せめて私達が出来ることは、いろんな情報がある中で、正しい情報を選んでいただけるように、ホメオパシーはこういう治療であると。しかもその治療を受けるためには何所に行くのかとした時に、私たちの学会がそういう治療者を育成するところまでやらなければなりません。つまり、正しい広報活動を行うことと、その治療法を行っている医療機関で患者さんに安全に受診をしていただけるように地道な啓蒙活動を続けています。
―板村先生は日本統合医療学会の認定医もされていらっしゃいますが、統合医療を推進されるようになった切っ掛けとそのお考えをお聞かせください。
私はJACT(日本代替・相補・伝統医療連合会議)の時からの会員で、日本統合医療学会の認定医にもなっております。
2012年9月に第67回Liga国際ホメオパシー医学会大会が奈良で開催されました。ヨーロッパではホメオパシーというのは相補・代替医療の中の大きな要素で、そのことを統合医療学会でも認知はされていましたが、未だちゃんと知っていただけていないところがありました。国際大会では海外からの招待講演者が殆どで、日本の招待講演者は2人しかお呼びしなかったんですが、日本統合医療学会名誉理事長の渥美和彦先生に講演していただきました。それを切っ掛けに統合医療学会の先生方にホメオパシーをより考えていただけるようになりました。
日本ホメオパシー医学会も教育システム等がうまく安定してきたところで、外に向けてホメオパシーをより多く知っていただくことに力を注いでいく時機になっていました。また昨年より、<統合医療女性の会>の世話人として手伝うようになりました。食事に関しては、子供がいる関係で前から関心が高かったことと長男が食物アレルギーだったこともあり、元々料理が好きで、食べることも好きでした。子育てをしながら精神療法や心理療法、発達心理等にも興味がありました。という訳で、子供がいたことで教えられることが多く、食べることはとても大事なので何所かでキチッと勉強したいという気持ちを持っておりました。
―昨年の夏に『統合医療女性の会』が発足。8月24日に「かしこく、ていねいに食べる」と題した記念セミナーが開催され、論子先生は「いろどりで食を考える」をテーマに講演されました。講演の冒頭で〝食に関する情報があふれるほどある中で、本当に役立つ知識は何か?〟として話され、2011年『Food as Medicine』というアメリカのセミナーに参加されたそうですが、その動機など教えてください。
昨年の『統合医療女性の会』発足セミナーでお話しましたように、2011年に『Food as Medicine』に参加して〝アメリカのセミナーって凄い!〟とビックリしました。本当に行って良かったと思っています。とにかくニュートリション(栄養学)がよかった。5月にテキサスでアンドルー・ワイル先生が主催しているニュートリションの学会にも参加しました。
近年、栄養学は著しく進歩しており、その分野その分野の最新のデータが出されております。オメガ3とかオメガ6等の脂肪酸についての最新情報はアリゾナのプログラムで勉強しました。以前はコレステロールも悪いイメージしかありませんでしたが、コレステロールが低くなりすぎると、うつ病の発症に関わっているというデータもあります。コレステロールは神経の細胞膜を構成しています。またビタミンDの不足は骨格異常に関与するだけではなく、大腸癌の発症率に関係しているというデータも出てきたり、日進月歩で、とても複雑です。色どりについては、簡単ですし、しかも色で考えるというのは、理にかなっています。
やはりいろんな情報がありすぎて、ある程度みんな少しは勉強して自分たちで判断できるところまでいけば良いのですが、直ぐお手軽なキャッチコピーに飛びついてしまいがちです。それについては私達がちゃんと努力していないからで、実はホメオパシーもそうです。
「正しいホメオパシーの理解のために」WHO版(「ホメオパシー薬の調整と取扱いに関する安全指針」準拠)という小冊子を作る時に〝あなた達、ちゃんと努力していないよ。ホメオパシーの小冊子を作ってキチッと広報したほうが良い〟と助言されました。多くの人はもっと簡単な内容を求めていると思うんですが、あまりに簡単すぎると正しい情報が伝わり難い。人によってはちょっと難しいかもしれませんが、あれぐらいのボリュームというか、しっかりした内容のものを創らないとちゃんと伝わらないと思っています。<統合医療女性の会>ではそういう努力をしていこうということです。
―日本の医療は転換期を迎えていると思いますが、板村先生はどのように今の医療を分析されていますか?
統合医療というのはこれからの医療としての在り方だと思います。私は統合医療とは”人”を中心とした医療システム、概念だと考えています。今の医療のシステムではなく、統合医療というシステムが新たに必要だということを理解して頂くために女性の視点で拡めていこうというのが、<統合医療女性の会>の目標です。つまり、みんな形を求めるから分らないのではないのか、それはシステム論でありコンセプション(概念)・考え方であると思えば良いと思います。
<統合医療女性の会>の定義にも書いてありますが、今までの医療というのは、医療を供給する側から見た医療なんですね。要するに治してあげる、あるいは治ることを目標に、医療従事者からみた医療です。〝西洋医学がありますよ、相補代替医療もありますよ、伝統医学がありますよ〟と言ってあくまでも医療を供給する側から見ていて、それを医学モデルですが、今の日本の超高齢化が加速している中では、病気を治すことだけが求められているものではありません。病気にならない予防を含めて「患者さん中心」と統合医療学会がずっと言い続けてきたことですが、「患者さん中心」と言うこと自体、医療を供給する側から見ていたと言えるでしょうね。つまり、一人一人の”人”を中心に考えた医療の在り方であり、しかもそれは”人”である場合もあれば、人が構成する「地域」や「社会」でもある訳で、地域医療に関わってくるのです。
医療の受け手側から見た医療システムが、包括的な医療と称される地域医療だということで、既に統合医療が実践されている地域もあります。医療におけるパラダイムシフトなんですね。供給側からではなく医療の受け手側からの視点をもった医療の考え方、医療システムの在り方が「統合医療」です。従って、その人が健康を維持するために医師は治療の過程に関わるけれども、看護師さんや理学療法士など多職種の医療従事者が関わってくる訳で、グローバルな医療システムだと思います。多職種の人達が協働して一人の”人”のためにいろんな医療を統合していけば良い訳です。たとえば、病気の人が病気を持ちながら生きるとなっていったら、西洋医学が重要になってきますし、関わる医療のパターンが変わってきます。アメリカの統合医療は、医師主導であくまでも医療を供給する側から見ているものです。しかしながら医療を受け手側から見るということは日本式の超高齢化社会の医療システムの在り方に深く関わると思います。
西洋医学をやっている先生たちに〝統合医療って何なの?〟と聞かれた時に、〝システム論です。今までの医師中心の医学モデルではなく、受け手から見た「人」を中心とした医療システムなんです〟と言うと、〝あっ、そうなんだ〟と言って、みんな素直に理解してくださいます。所謂地域医療を包括していく大きな考え方が統合医療ともいえます。中には医師が中心でやるべきだと言う方が未だいらっしゃいますが、そうではないと思うんですね。「人」が中心なんです。だから「食」も「運動」も関係しますし、「建築」など「生活環境」も、あとは「教育」、「子育て」もみんな大きく関係しています。
―統合医療はエコであると皆さん言われておりますし、医療費を削減するとも広言されていらっしゃいますが、それは本当でしょうか?保険財政上とても良い医療であると思いますが、反面国民の自己負担は大きいのではないでしょうか?
自然に治癒するほうに目を向けてみると、過剰に投与されている医薬品が予想以上にたくさんあるのです。やはりそういうことから考えると、患者さんや病気の人の意識を変えていくことは重要です。なんでもかんでも病院にかかるのではなく、これくらいは自分で出来るんじゃないかと、病院に行く前にもっと別の方法があるんじゃないかと。直ぐに大病院に行って検査という考え方ではなく、もっと他に違う道筋があるのではないかということを示すのも統合医療です。統合医療を推進すると無駄な医療費はかなり削減できると思います。受け手にとってこういう選択肢があるということを統合医療学会は教育と啓蒙活動を行って、みんなに分っていただかないといけないと思います。
しかも、薬しか出せないという今の医療を変えていけたら、医師のほうも楽になります。例えばホメオパシーを行うことは薬を削減する方法でもあるのです。もうこれ以上の手段は無いということではなく、他にも手段があるという多様性があることで、選択肢が拡がる訳です。おそらく、今後の医療というのは個別性と多様性が重要なテーマになっていくと思います。勿論拡がっただけではダメで、その中から何を選択するかという教育が伴わなければなりません。統合医療のシステムの中で、治療を提供する側が先ず身につけないといけないため、結構大変な医療だと思いますし、やはり患者さん、受け手の人もある程度知らないといけない。それも統合医療学会が指導していかなければと皆さん考えていると思います。
地域医療のスタンスでは、国民の意識も変えていかなければならないということもあります。なんでもかんでも大病院に行って薬をもらって、極端に薬漬けの高齢者も問題となっています。もっとそうではなく、例えばヨーガをやることによって、薬が幾つか減ったり、食事を変えるだけで変わったとか、食を考えるという視点だけでも随分変わるんですね。あれをしろこれをしろと言わなくても食品に注目したり、食事は大切なんだと思うだけで医療費が変わると思います。とにかく食事と睡眠は重要で、睡眠が如何に大切かと思うだけで、自分でうつ病と思っていた人がうつ病じゃなかったりすることもある訳です。自分たちが直ぐ出来ることを〝みんな一緒に参加しましょう〟と言って医療をやっていくと当然エコになると思います。
―脂質とフットケミカルについてもご教授ください。また、色どりよく食べる意味についてもお願いします。
簡単に話すことは中々難しいことですが、酸素というのは体内で1~5%活性酸素に変換されます。活性酸素は免疫に関係していて必要だけれども、鉄が錆びるように過剰な状態になると酸化ストレスとなります。酸化ストレスがすすむと、いろんな遺伝子を傷つけたり、糖や脂質を酸化して炎症が進んだり体に不都合なことが起こってきます。体の中では、炎症がいろいろな病気の原因になることから、炎症に結び付く酸化ストレスの状態にならないためにも抗酸化が必要になるのです。色のある食べ物にその働きがあることが分ってきました。色があるということは元々日光に対しての防御があるため、抗酸化作用が強いことや逆に酸化しているモノを口の中から摂ると、それが刺激になってまた炎症を進行させてしまう。従って酸化しているモノを摂らないようにする、脂質の中でも酸化されやすい多価不飽和脂肪酸やトラン酸脂肪酸を摂らないようにしようということです。しかも多価不飽和脂質酸にはいろんな働きがあって、炎症を促進させる作用があるものと炎症を抑えるほうの作用があるものが2通りあります。今よく言われているオメガ3とかオメガ6です。オメガ6は炎症を促進させるから、急性期には良い。つまり、感染症の急性期は炎症が起こって治っていきます。ところが炎症が慢性になってくると病気の原因となっていくのです。その炎症を抑制するのがオメガ3のほうです。従って、体の中に入ってオメガ3とオメガ6がどのように働くかを理解して油の摂り方を考えたり、或いは酸化された油を摂ることは炎症のほうに進むというような、ちょっとややこしいんですが考えるというのが大切です。
実は、『続 かしこく食べる!』のシリーズをやる予定です。場所は、新宿ファーストウェストという所で、8月30日に川嶋みどり先生、そのあと10月4日に小山悠子先生で、私は11月1日に「色どりで食を考える」を開く予定です。3人3様で、前回は時間が短かったんですが、2回目は持ち時間2時間ずつで私も簡単なドレッシングの作り方などをお話しできればと思っています。女性の会の今年のメインイベントですので、よかったらいらしてみてください。
―最後に、柔道整復師(古来より骨接ぎ・接骨院の先生として親しまれてきました)は、高度診断機器、薬物を用いることなく医療先進国、日本で非医師として尚存在し続けており、その事から柔道整復学は世界的に多くの人々を救い得る有用な学問となる可能性を秘めております。更に「国際化」の可能性も大きいと思います。西洋医のみが医師で医療行為を行なうとする時代は過ぎ、伝統・相補、代替医療の一つとして、柔道整復は保険医療分野の改革に更に貢献が期待されます。柔道整復は、日本で歴史的に十分貢献してきましたが、現在、標準化されていないなど、いくつかの問題も抱えています。医学的な根拠とは異なりますが、国民のニーズが存在している現実があり、制度上の問題点を突いて柔道整復を見るのではなく、柔道整復が存在してきた事実から、もう一度見つめなおしてみることで、パンク間近といわれている医療経済の危機的状況を救える部分のある医療として大事な役割を持っているのではないかと考えますが、板村先生から見て、柔道整復(伝統・民族医学)は、今後どのように活用されていくべきであると思いますか?
運動器のリハビリの考え方というのはとても重要だと思うんですね。年をとった方が専門の人の指導を受けて地域で自分にあったプログラムをやることは予防にもなります。この分野において今後、柔整の方達が関わっている地域医療の中に理学療法士だけではなく、一緒に出来るようになるのが良いですよね。また、どんな医療もそうなんですけど、自分が手におえないなって思う時には、次の段階の先生に紹介する、自分が抱え込まない、それは医師も一緒です。自分の専門外のものを抱え込んだり、ちょっとまずいなって思う時はちゃんと医師に紹介する道筋みたいなものを、しっかり医師と連携していけると良いと思っています。しかも、柔整に行って治る病気も多々あると思うんですね。先程言いましたように”人”を中心に考えると、その人にとって自分はどの部分で関われるかというのを、医療にかかわるそれぞれの職種の人が協働することが必要だと思います。予防医学を行う先生もいらっしゃるけれど、生活の中から予防が生まれる訳で、そこの過程においてもっと様々な医療従事者が関わっても良いと思います。医療の分業化という中で、”人”がより健康に暮らせる、病気を持ちながらよりよく暮らせるためにも、柔整の方達が関わる部分、やはりスペシャリストは、スペシャリストとして何所で関わるのかというのが大切だと思います。”人”を中心とした医療システムである統合医療において柔整の方達の役割がこれからとても重要になるのではないかと思っています。
板村論子氏プロフィール
日本ホメオパシー医学会専門医・専務理事、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本心身医学会専門医、日本心療内科学会登録医、日本森田療法学会認定医、日本統合医療学会認定医・代表代議員。統合医療女性の会世話人。
1984年関西医科大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。医学博士。マウントシナイ医科大学(米国)留学、東京慈恵会医科大学、帯津三敬病院を経て帯津三敬塾クリニック院長としてホメオパシーを担当。日本ホメオパシー医学会の第1号の専門医資格取得者で、日本のホメオパシー医学の推進者。また2003年日本人初の英国Faculty of Homeopathy専門医となる。心療内科、皮膚科が専門だが心身医学全般に対応。森田療法をはじめとする精神療法も行う。二男一女の母でお子様の診療も多く行っている。
『花粉症にホメオパシーがいい』共著、『医療従事者のためのホメオパシー』、『ホメオパシー医学の実践』の翻訳など多数。
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