柔道整復師と介護福祉【第117回:障害福祉サービスの基礎知識ver5】
令和6年度の報酬改定では、基本報酬や加算、減算からサービス、人員に関することまで、就労継続支援A型事業にもさまざまな影響があります。就労継続支援A型は、一般企業などへの就労が難しい65歳未満の障害や難病などのある人に対して、就労支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。就労継続支援A型事業では利用者と雇用契約を締結し、主に生産活動(仕事)を通じて就労スキルの獲得を支援します。そのためA型事業所の売り上げには、「障害福祉サービスとしての報酬」「生産活動による売り上げ」の2種類が存在します。
就労継続支援A型事業の報酬について
就労継続支援A型事業所が障害福祉サービスの対価として受け取る報酬には「基本報酬」と「加算」があります。基本報酬は1人の利用者に1日サービス提供をすると得られます。加算は要件を満たすことで基本報酬と別で得られます。
就労継続支援A型事業の基本報酬について
就労継続支援A型事業の基本報酬は「就労継続支援A型サービス費」といいます。算定できる単位数は「定員数」「職員の配置状況」「評価点(=スコア)」で決まります。
定員数による区分(定員区分)について
基本報酬は事業所の定員数により5段階に分かれています。これが基本報酬の定員区分です。職員の配置状況による区分(人員配置区分)前年度の平均利用人数に対する職業指導員と生活支援員の合計人数(常勤換算)の割合によって2つに区別されます。
- 前年度の平均利用人数と職業指導員・生活支援員の合計人数が7.5:1以上になるよう配置すると「就労継続支援A型サービス費Ⅰ」を算定できます。
- 人員基準上は10:1以上であれば問題なく、この場合は「就労継続支援A型サービス費Ⅱ」を算定します。
評価点(スコア)について
「労働時間」「生産活動」「多様な働き方」「支援力向上のための取組」「地域連携活動」「経営改善計画」「利用者の知識・能力向上」の7項目の点数を総合した評価点(=スコア)で決まります。
報酬改定早見表
- 「生産活動」のスコア項目の配分を高く設定。
- 「労働時間」のスコア項目について平均労働時間が長い事業所の点数を高く評価。
- 「生産活動」の評価について、生産活動収支が賃金総額を超える場合は加点、下回った場合は減点。
- 利用者の知識、能力向上のために支援の取組みを行った場合、新たな評価項目を設置。
- 経営改善計画書未提出の事業所、数年連続で経営改善計画書を提出し、運営基準を満たすことができていない事業所への対応として、経営改善計画に基づく取組を行っていない場合について新たにスコア方式に減点項目を設置。
就労継続支援A型の基本報酬の単位数(定員20人以下)
職員配置が7.5:1以上(サービス費Ⅰ)
職員配置が10:1以上(サービス費Ⅱ)
令和6年度報酬改定ポイント
就労系事業所を一時的に利用する場合について
一般就労中の障害者が就労継続支援を一時的に利用する際、就労継続支援A型のスコア項目における平均労働時間の計算から当該障害者の労働時間と工賃を除くことができる。
休職期間中に就労系障害福祉サービスを利用するときの対応について
一般就労中の障害者が休職期間中に就労系サービスを利用する際、休職者を雇用する企業や医療機関等による復職支援の実施が見込めない場合等の現行の利用条件について改めて事務連絡で周知するとともに支給申請の際に当該障害者の雇用先企業や主治医の意見の提出を求めることとする。
施設外就労に関する実績報告書の提出義務の廃止について
施設外就労に関する実績報告について、事業所から毎月の提出を不要とするものの作成保存義務は設ける。
施設外支援についての見直しについて
施設外支援については個別支援計画の位置づけが必要であり、1週間ごとの計画の見直しだったが、これを1か月ごとの見直しに変更にする。
意思決定支援の推進について
サービス担当者会議、個別支援計画の会議で、本人の心身の状況等によりやむを得ない場合を除き、利用者本人の参加を原則として会議に参加し本人の意向等を確認することとする。
本人の意向を踏まえた同性介助について
解釈通知に「本人の意思に反する異性介助がなされないよう、サービス管理責任者等がサービス提供に関する本人の意向を把握するとともに、本人の意向を踏まえたサービス提供体制の確保に努めるべき」旨明記。
虐待防止と身体拘束適正化の推進について
虐待防止はこれまで減算規定はありませんでしたが、今回導入。身体拘束適正化は減算額が多くなりました。
個別支援計画の共有について
事業所が作成した個別支援計画を相談支援事業所と共有することになりました。
高次脳機能障害の利用者に対する加算の設置
高次脳機能障害者支援体制加算の新設( 41単位/日)
高次脳機能障害を有する利用者が全体の利用者数の100分の30以上、かつ高次脳機能障害支援者養成研修を修了した従業者を事業所に50:1以上配置し、その旨を公表している場合に加算創設。
人員基準における両立支援への配慮について
「常勤」の計算:職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。
「常勤換算方法」:職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める。
管理者の兼務について
同一敷地内等に関わらず、同一の事業者によって設置される他の事業所等の管理者または従業員を兼務することが可能になります。この場合管理者は責務を果たせる場合であり、事故発生時の緊急対応について、予め対応の流れを定め、必要に応じて管理者自身が速やかに出勤できる体制を整える必要があります。
管理者のテレワーク
管理上支障が生じない範囲においてテレワークにより管理業務を行うことが可能になります。この場合、利用者及び従業員と管理者の間で適切に連絡を取れる体制を確保し、利用者の体調の急変、災害発生時等、緊急時の対応をあらかじめ定め、必要に応じて管理者が速やかに出勤できるようにしておく必要があります。
業務継続に向けた感染症や災害への対応力の取組(BCP)の強化について
感染症または非常災害のいずれか、または両方の業務継続計画が作成されていない場合、基本報酬を減算(1%)となります(令和7年3月31日のまでの間「感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備」及び「非常災害に関する具体的計画」の策定を行っている場合には、減算を適用しない)
情報公表未報告の減算について
障害福祉サービス等情報公表システムが未報告となっている事業所に対する情報公表未報告減算(5%)を新設します。
食事提供体制加算の見直しについて
- 管理栄養士または栄養士が献立作成に関わること(外部委託化)または栄養ケアステーション、保健所等の管理栄養士または栄養士が栄養面について確認した献立であること
- 利用者ごとの摂取量を記録していること
- 利用者ごとの体重やBMIおおむね六ヶ月に一回記録していること
強度行動障害を有する利用者への集中的支援加算の新設について
状態が悪化した強度行動障害をする利用者に対し、高度な専門性により地域を支援する広域的支援人材が事業所等を集中的に訪問(情報通信機器を用いた地域からの助言指導も含む)し、適切なアセスメントと有効な支援方法の整理を共に行い、環境調整を進めることを評価する。
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