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スペシャルインタビュー:介護予防研究会 総務部副理事・学術部副理事・事業部副理事 中川裕章氏

インタビュー 特集

公益社団法人宮城県柔道整復師会介護企画推進室、日本介護福祉士実務者研修養成協会・協会長、日本国際教育外語学院・校長、仙台食育推進隊、五城中学校圏域地域でつながる会代表等々多くの役職に就かれている中川裕章氏。この若さでどれだけの知識とパワーを持っているのか、計り知れない高い能力の持ち主である。
今後、中川氏が歩き続ける道のりとその成果に大いに期待したい。

共生型社会を目指し、柔道整復師の立ち位置をしっかり見据えながら、地域に貢献していきます!

介護予防研究会 総務部副理事・学術部副理事・事業部副理事 中川裕章氏

介護予防研究会
総務部副理事
学術部副理事
事業部副理事
中川 裕章氏

―障害者自立支援法には基準該当で介護保険のデイサービスは障害者も一緒に利用できるという条文があるにも関わらず、全国的に殆ど行われていないようです。この基準該当の自立訓練を中川先生が運営するデイサービス施設で行えるようになった経緯と今の運営状況についてお聞かせください。

きっかけは、接骨院に通院されている脳性麻痺の患者様で、下肢筋力の向上に機能訓練を必要としている方がおられました。その時に、現行の介護保険制度では65歳以上でなければ、障害者の方でも利用できない状況でした。この弊害を解決するためには、介護保険施設で障害者の方もワンストップで対応できることが必要ではないかと思案いたしまして、「富山型」の事例を拝見し、なんとか仙台市でも富山型を実践できないかが、この仕組みを始めたのがきっかけです。すぐに担当行政と相談させていただき、仙台市では初めての基準該当サービスで、機能訓練「自立訓練」が介護予防の現場で利用できる提供体制を実現しました。

運営状況についてですが、現在では高次機能障害の方や、脳性麻痺などの身体障害者の方々が個別でリハビリテーションを支援できる場として活用していただいております。介護保険制度が適用されない年齢でも、自立支援を継続的にサポートできる拠点として、広く仙台市民の障害者、高齢者の方にも活用いただいております。

―地域密着型通所介護の共生型として介護保険施設で障害者福祉サービスの基準該当を機能訓練(自立訓練)に加え、放課後等デイサービス、児童から高齢者まで包括的に対応できる地域資源サービスを実施されているそうですが、それについてもう少し詳しく教えていただけますか?また一番注意しなければならないことや遣り甲斐等も教えてください。

現在、当法人では、共生型社会の提案を提唱させていただいております。具体的には、地域密着型通所介護サービスで、児童から高齢者までワンストップで対応できる施設運営体制です。

仙台市では、高齢者施設に加え、児童デイサービスも乱立していることから、一つの事業体に頼らず、各柱がしっかりと共存しながら運営する仕組みが、事業継続のカギになると感じております。障害児通所支援事業のみ、また介護予防通所介護のみでは、共生型社会も実現しませんし、住民市民からも必要とされる拠点になり得ないと認識しております。公共的に場の提供ができる制度に介護保険制度は変化しておりますので、事業者側もしっかりと国の方向性を後押しできるような体制に変化することが求められていると認識しております。

介護保険制度に頼らずとも地域でサポートできる体制に最終的には成就できるような、仕組みづくりを検討していております。また、各種サービスが重なることを懸念されている行政の方や、事業者の方が多数おられますが、逆にブランディングになり職員の質もプライドも向上しますので、私どもといたしましてはぜひ全国的に進めていきたいと思っております。見学者は全国からお越しになりますので是非お立ち寄りください。

―東大のプロジェクトでは医療介護サービスに関するナビゲーションシステムの立案を5期で担当されたそうですが、その内容についてお聞かせください。

今期は、医療介護サービスのナビゲーションシステムの立案としてシステム開発を進めてまいりました。住民が、現行制度で自分の今の立ち位置でどのようなサービスが受けられるのか可視化できるシステムです。

社会保障制度には、医療保険、介護保険、障害者総合支援法、自費が入り混じって専門職でも認識しづらいこともあり、住民にとってはさらにわかりづらくなっているのが現状です。現行制度は、高度急性期から在宅医療に流す仕組みになっていますので、自分の生活圏域でどのようなサービスがどのくらい存在しているのかをグーグルマップ上に反映させて、直接問い合わせもできる仕組みを構築しております。また、脳血管疾患後に認知症になるリスクも高まりますので、事前の予防は不可欠です。

平成28年に宮城県で開催された日本認知症予防学会での学術発表時にも、座長からのご指摘に、「どこに認知症専門外来があるのか、認知症相談ができるのかもポイント」というご意見もありましたので、ナビゲーションシステムの内容にくみこんでいこうと考えているところです。

―日本介護福祉士実務者研修養成協会を設立し後進国と日本の外国人雇用の整備をすすめ、まずはベトナム、ミャンマー、ラオス、タイ、インドネシアなどで教室を開校予定とされていらっしゃいましたが、もう開校されましたか?今の状況を教えていただけますか?

当協会の説明からさせていただきます。平成28年4月から介護福祉士国家資格の免除講座として実務者研修養成講座が法令化し、受験時の必須要件に組み込まれております。昨年度は当協会の調査によると介護福祉士国家試験受験者数は15万に対して、今年度は8万人と減少傾向です。理由としては、講座の開校会場が極端に少ない、講座の修了見込み書が受験時必須であることが認識されていないなどの弊害が原因です。

日本の医療介護人材不足は、社会保障制度を持続可能なものにするためにも早急に改善する必要性が高い喫緊課題です。住み慣れた地域で共生型社会を実現させるためにも、協会に課せられた受講生の質の担保ならびに会場の拡散は必要でありますので、まずは日本人が継続的に研修できる環境整備に全力を挙げている次第です。今後、外国人人材の介護業界参入も政府の方針で検討項目に上がっておりますので、対応できるよう進めていこうと考えております。現在は開校会場23か所で、これからは全国で開校できるよう教員養成、会場確保、教育体制の充実に尽力していこうと考えています。

当協会の特徴は、卒業と同時に独自のブランディングで「認定介護士」、「認定介護福祉士」を輩出できる仕組みを構築しています。卒業生は、医療的ケアを施設内で実施できる独占業務が与えられます。今後、介護保険制度に関しては、重度者対応のみを支援する方向にありますので、看護師の確保が難しい現状ではマンパワーで対応するための職員研修が必須です。各地域で安心して生活できる環境づくりには、人材育成の構築からだと自負しておりますので、このシステムを全国展開していく方針です。まずは東北六県で先行事例を構築し、共生型社会の実現に全力で取り組んでまいります。

―地域包括ケアシステムの構築において、やはり各医療職種連携のプラットフォームを如何に作り上げるかにかかっているように思われますが、中川先生はともかく地域の先生方においてはもしかして不十分ではないかと感じます。どのように推進すべきとお考えでしょうか?

地域包括ケアシステムは、自助、公助、互助、共助の精神が大変必要です。共助においては、一切インセンティブがないにもかかわらず、専門職が連携する構図が国の方針です。連携する各専門職にしっかりとした報酬と、地域住民の互助を支えるサポートを職能団体が担う仕組みづくりが最重要課題であると考えております。各ステークホルダー「患者、住民・医療提供者・行政・メディア」が合意できる地域づくりを目指すことが重要です。民間法人としては、場の提供と、場づくりを推進しておりますので、各ステークホルダーが集まれる環境を提案いたします。

弊社では、地域密着型通所介護の「運営推進協議会」を地域連携推進協議会として各圏域で年2回4月/10月に開催しております。構成は、住民代表に地区町内会会長、地区民生委員・児童委員会長、地区社旗福祉協議会会長、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、柔道整復師、療法士、地域包括センター、居宅介護事業者、老健、特養、福祉用具貸与事業者、食品事業者、地域密着型通所介護、訪問介護、訪問看護葬儀社、弁護士、税理士、社労士、消防士などの専門職で協議会委員を委嘱させていただき地域課題や情報提供の場として活用していただいております。最近の協議会では、健康サポート薬局、かかりつけ薬局、食品の安心安全、総合事業について、福祉用具・住宅改修の活用方法など各専門職委員から住民代表の方々に向けて情報発信しております。

―平成15年から開始した地道な活動の集大成が現在の介護予防活動の基礎として活かされていると同時に今後はリーダーが各地域に入って、より地域に密着した介護予防活動(栄養、口腔、運動など)を実施していくような将来像についてお聞かせください。

介護予防の実践は、介護予防事業者がけん引する必要があります。当研究会では、機能訓練特化型の事業者が全国各地で活躍している現状です。当会の理事として、先行事例を構築し、広く会員の皆さんに活用いただける仕組みを自らが主体となり発信していかければと考えております。

今後、地域密着型通所介護は共生型の拠点になりえますので、児童から高齢者、障害者が地域で介護予防を実践する場の提供を率先することにより介護予防の概念は持続可能性を秘めていると認識しております。総合事業では、人員配置に介護予防運動指導士、健康運動指導士の配置で開業ができる人員の緩和措置が全国で広がっております。当協会で運営する東京都国立長寿医療センター 介護予防運動指導員養成講座を広く全国で開校できる体制構築を目指しております。

事例としては呉竹学園鍼灸科教員養成課と連携して、学生のうちから資格の養成を行い、卒業と同時に修了証発行ならびに現場で活躍する人材育成を推進しております。今後は専門学校のみならず、各都道府県の公益社団法人と連携して、地域に根差した柔道整復師の活躍の場を提供できれば、これから卒業する柔道整復師の活路を見いだせると期待しております。次年度事業計画構想の企画案を提出させていただければと思っていました。

―中川グループについて、今後の展望等教えてください。

当グループは、部分医療である接骨院・整骨院を主体に成長した企業であります。
初代社長中川利光の元、研修した学生、OBの固い絆がグループを支える柱であります。柔道整復師療養費制度では、長年、献身的に活動してきた医師たちの功績を表彰した医療功労賞を叔父中川久秀が柔道整復師業界で初めて受賞いたしました。私の祖父からこの業界を生業として、私の代で61年となります。柔道整復業界で培った伝統医療の技術と制度変革の過程、経緯を教訓として、今後の事業構想に活かしていきたいと常々考えております。

2代目として私の目標は、初代社長からの引継ぎました事業を、100年企業へと成就させることです。そして、企業ミッションステートとして、日本全国で医療介護人材を確保できる教育体制を構築し、社会保障制度の持続可能性に寄与することを最終アウトカムに掲げております。この実現のためには、チーム力の強化が必須です。

現在、東南アジア国際貢献プロジェクトを推進しておりますが、「ともに医療を動かす」を仲間と共に進めております。ともに働く社員、企業、行政としっかりと手を組み、日本の国策の更なる発展につながる懸け橋になれたらと考えております。具体的な内容は現在進行中ですが、具現化に向けて鋭意努めて参ります。

中川裕章氏プロフィール

昭和56年5月15日、東京都江戸川区生まれ。
略歴:東北学院大学。東京柔整専門学校卒業。
柔道整復師免許 第50280号。鍼師免許 第147615号。灸師免許 第147531号。

主な役職:NAKAGAWA GROUP 代表室長。株式会社中川 代表取締役CEO。NSチャリティー協会 代表。日本介護福祉士実務者研修養成協会 協会長。日本訪問看護師養成協会 協会長。国際日本語教師養成協会 協会長。日本キャリアコンサルティング養成協会 協会長。日本国際教育外語学院 校長。有限会社オザワ 専務取締役。株式会社藤成 首都圏事業本部長。仙台食育推進隊 五城中学校圏域 地域でつながる会 代表。私的研究会 保険・部分医療・福祉サービス研究会 代表。東京大学公共政策大学院医療政策実践コミュニティー(H-PAC4・5期)。東京大学公共政策大学院地域医療計画実践コミュニティー(RH-PAC1.2期)。公益社団法人 日本柔道整復師会 会員。公益社団法人 宮城県柔道整復師会 介護企画推進室。公益社団法人(SVM)接骨院ボランティア宮城 会員。社団法人 日本抗加齢医学会会員。社団法人 宮城県中央倫理法人会 会員。一般財団法人 サービス付き高齢者向け住宅協会 会員。一般社団法人 日本認知症予防学会 会員。エビデンス創出委員会 実行委員。一般社団法人 日本健康美容鍼灸協会会員。NPO法人 介護予防研究会 理事。日本柔道整復接骨医学会 会員。

著者:新たなステージVOL1 日本語教師養成講座【通信課程】出版 国際にほんご書店

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