柔道整復師国家試験対策【第34回:整形外科学その2】
今回も整形外科になります。
何度も言うようですが、まずは最低限の基礎基本を徹底的に身につけて下さい。
問題1予後不良な骨端症はどれか。
- オスグットシュラッテル病
- セーバー病
- キーンベック病
- 第1ケーラー病
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解答 3
骨端症は各疾患を一つずつ覚えることも大事ですが、以下のようにそれぞれの特徴から疾患を絞りだせるようにしましょう。 ※横のつながりを深めましょう。
予後は不良なものを覚えるよりも良好なものを覚えたほうが覚える数が少なく済みます。
- 予後良好のもの
小児のペルテス、年長児のブラウント、オスグット、第1ケーラー
※これ以外は予後不良 - 成人で発症するもの
キーンベック(月状骨軟化症) - 女子に多いもの
ブラウント、フライバーグ(第2ケーラー)
このように覚えましょう。あと( )内の別名も覚える必要があります。
※以下キーンベックについての補足事項です。
特徴
手の使いすぎによる月状骨の阻血性壊死。成人男子(20~40歳)に多い。
※予後は不良
症状
掌屈、背屈制限
問題2 誤っている組み合わせはどれか。
- 関節リウマチ - 関節変形
- 痛風 - ムレキシド反応陽性
- 変形性関節症 - 人工関節置換術
- 離断性骨軟骨炎 - 股関節
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解答 4
非感染性軟部・関節疾患からの問題です。
離断性骨軟骨炎は股関節よりもむしろ、膝関節と肘関節に多発します。
以下、選択肢それぞれの特徴です。覚えましょう。
- 関節リウマチ
- 特徴
自己免疫疾患(原因不明) 20~50歳の女性に多い。 - 症状
朝のこわばり(morning stiffness)
両側性かつ多発性の関節の疼痛と腫脹。
関節液貯溜(腫脹)、関節動揺性、関節変形
(尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形、外反母趾、槌趾)
握力低下、 関節液の混濁(軽度)
- 特徴
- 痛風
- 特徴
尿酸の過形成、排泄障害による。中年以後の男性に多い。 - 好発部位
母趾中足趾関節に多発。 - 症状
間欠期には無症状。局所の激痛、腫脹、発赤、痛風結節 - 診断
血清尿酸値の上昇 ※これの上昇と痛風症状の程度は一致しない。
ムレキシド反応陽性 ※陰性で同様な症状を呈す場合は偽痛風となる。
→ピロリン酸カルシウム結晶による。
- 特徴
- 変形性関節症(OA)※関節疾患の最終段階
- 特徴
関節の老化現象による軟骨、骨変性。骨棘形成、嚢胞を生じる。
中年以後の女性に多い
※老化現象によるもの →一次性変形性関節症
※炎症・外傷によるもの →二次性変形性関節症
(先天性股関節脱臼によるOAも二次性!) - 好発部位
膝関節 - 症状
自発痛は少ない。運動痛、起床時のこわばり。 - 治療
重症の場合は人工関節置換術も考慮する。
- 特徴
- 離断性骨軟骨炎
- 特徴
関節軟骨、軟骨下の海綿骨が一部変性壊死に陥り関節内に剥離し、関節障害を起こしたもの。
※完全に剥離→関節鼠、関節遊離体という。嵌頓症状を生じる。 - 好発部位
膝関節・肘関節に多い。
- 特徴
問題3 骨腫瘍の中で最も多いのはどれか。
- 骨軟骨腫
- 癌の骨転移
- 骨肉腫
- 軟骨肉腫
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解答 2
こちらも特徴から疾患を割り出せるようになりたいところです。以下を覚えましょう。
また、骨腫瘍は以下の点に注意しながら暗記してください。
- 好発年齢、好発部位、発生頻度を覚える。
- アルカリホスファターゼ値がしばしば上昇する。
- 骨腫瘍の中で1位(悪性骨腫瘍の中でも1位)
→ 癌の骨転移 - 原発性骨腫瘍の中で1位
→ 骨軟骨腫 - 悪性原発性骨腫瘍の中で1位
→ 骨肉腫 - 10歳以下に多い
→ 神経芽細胞腫 - 10歳前半に多い
→ ユーイング肉腫、骨軟骨腫 - 10歳代に多い
→ 骨肉腫、骨のう腫、軟骨腫 - 20~30歳に多い
→ 骨巨細胞腫40~60歳に多い
→ 多発性骨髄腫、骨転移癌
このように覚えましょう。
問題4先天性筋性斜頚で誤りはどれか。2つ選べ。
- 両側の胸鎖乳突筋の短縮により生じる。
- 頭部は健側へ回旋する。
- 椎体リンパ節の炎症に対する反射によって生じる。
- 殿位分娩の際に生じる。
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解答 1・3
先天性筋性斜頚についての問題です。斜頚は胸鎖乳突筋の作用を覚えなければいけません。
胸鎖乳突筋の作用は片側の場合、同側側屈と反対側回旋です。
例えば、右の胸鎖乳突筋が作用した場合、右側屈、左回旋となります。
以下、追加事項です。覚えましょう。
- 先天性筋性斜頚
- 特徴
一側の胸鎖乳突筋の血腫・短縮で生じる。殿位分娩に多い。 - 症状
胸鎖乳突筋の緊張によって、頭部は患側へ屈曲、顔面は健側へ回旋する。
※健側への回旋制限はなし、患側への回旋制限あり。 - 治療
殆どが自然治癒する。※マッサージは良くない。
- 特徴
- 痙性斜頚
- 特徴
精神的要因、錐体外路系障害、パーキンソン症候群などにより頚部筋の発作的緊張が起こり発生する。
- 特徴
- 炎症性斜頚
- 特徴
椎体前リンパ節炎症に対する反射性緊張によって生じる。
10歳前後の小児に多い。※予後は良好である。 - 症状
C0.1.2間で回旋位拘縮が起こる。
※まれに残存することもある。
- 特徴
問題5急性化膿性骨髄炎について誤っているのはどれか。2つ選べ。
- 血行性感染が多い。
- 長骨の骨幹部に好発する。
- 開放骨折も原因となる。
- 慢性化することはない。
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解答 2・4
急性化膿性骨髄炎は以下の内容を覚えましょう。
- 特徴
骨の化膿性炎症で原因菌は黄色ブドウ球菌が多い。
小児に多い。血行性感染が多い。
開放性骨折、術後の感染にて発症する。 - 好発部位
長骨骨幹端(大腿骨、脛骨、上腕骨) - 症状
腐骨を形成する。疼痛は激痛である。
※X線→初発時に所見なし。1~2週で骨膜反応、破壊像を確認できる。 - 治療
排膿後に強力な化学療法を行う。※慢性化すると難治性となる。 - 鑑別診断
ユーイング肉腫、骨肉腫と鑑別が必要。
問題6痛風について誤っているのはどれか。
- 血中尿酸値は上昇する。
- 中年以降の男性に多い。
- 二次性痛風より一次性痛風が多い。
- 下肢よりも上肢に好発する。
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解答 4
痛風は以下の内容を覚えましょう。
- 特徴
尿酸の過形成、排泄障害による。中年以後の男性に多い。 - 好発部位
母趾中足趾関節に多発。 - 症状
間欠期には無症状。局所の激痛、腫脹、発赤。
痛風結節(耳介、肘頭に多い) - 診断
血清尿酸値の上昇 ※これの上昇と痛風症状は一致しない。
ムレキシド反応陽性 ※陰性で同様な症状を呈す場合は偽痛風となる。 - 備考
白血病・骨髄腫・腎障害による二次性(続発性)通風よりも、遺伝性が指摘される一次性(原発性)痛風が大部分です。
問題7 ペルテス病について誤っているのはどれか。
- 男児に多く発症する。
- 跛行で発見される事が多い。
- 両側性に発生しやすい。
- 大腿骨頭骨端核に起こる。
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解答 3
ペルテス病についての重要事項を覚えましょう。
- 特徴
大腿骨頭骨端核を中心に発生した阻血性壊死。
※原因として、低身長、骨年齢遅延が考えられる。
4~10歳くらいの男子に多い。(男女比5:1)
一側性が多い。(両側の場合もあり) - 症状
跛行(随意性跛行)外転・内旋制限
ドルーマン徴候陽性(股関節屈曲すると自然に外旋する)
※X線所見→骨端核の扁平化をみる。 - 治療
外転・内旋位免荷装具の装着 ※変形性股関節症の防止。 - 鑑別診断
単純性股関節炎、股関節結核の鑑別を要す。 - 予後
5歳以下は良好、9歳以上は不良 若いほど良好。
問題8脊柱管狭窄症の原因として誤っているのはどれか。
- 軟骨無形成症
- 黄色靭帯肥厚
- 後縦靭帯骨化症
- 強直性脊椎炎
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解答 4
脊柱管狭窄症では先天性の原因として軟骨無形成症が、後天性の原因では黄色靭帯肥厚や後縦靭帯骨化の他、変形性脊椎症・椎間板ヘルニア・すべり症などがあります。
以下の内容も覚えましょう。
- 特徴
骨の増生、黄色靱帯、後縦靱帯の肥厚で発生。 - 症状
間歇性跛行→歩行をやめ前屈位をとり休む。※観血療法が有効
問題9先天性股関節脱臼について正しいのはどれか。
- 男子に多い。
- 尻上がり現象がみられる。
- 乳児期においてアリスサインがみられる。
- 乳児期の治療は手術療法が主である。
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解答 3
先天性股関節脱臼の治療はリーメンビューゲルが広く用いられています。
リーメンビューゲル法…あぶみ式つりバンドのことで、乳児期における先股脱時の治療法です。
その他重要な内容は下記の通りです。
- 特徴
女子に多い。(男子より4~5倍) - 症状
下肢の見せかけの短縮。内転・外旋位を取りやすい。
大腿皺壁に左右差がある。
骨頭は外上方へ転位している。開排制限、クリックサイン陽性、処女歩行の遅延
弾性墜下性跛行(トレンデレンブルグ現象) X線像にて臼蓋形成不全 - 治療
リーメンビューゲル法にて自然整復
問題10 原発性骨粗鬆症ではないのはどれか。
- 閉経後骨粗鬆症
- 廃用性骨粗鬆症
- 妊娠後骨粗鬆症
- 老人性骨粗鬆症
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解答 2
廃用性骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症に分類されます。その他続発性となるのには以下のものがあります。覚えましょう。
- 甲状腺機能亢進症
- 性腺機能不全
- クッシング症候群
- 糖尿病
など…
※以下骨粗鬆症のまとめです。覚えましょう。
- 特徴
骨量の減少による。
老人、ことに閉経後の女性に多く発生する。
※骨吸収と骨形成ともに増加だが、骨吸収が上回る場合=高回転型骨粗鬆症
→内分泌性骨粗鬆症、栄養性骨粗鬆症(続発性骨粗鬆症)
※骨吸収と骨形成ともに低下だが、骨形成が下回る場合=低回転骨骨粗鬆症
→老人性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症(原発性骨粗鬆症) - 症状
骨折しやすい。椎体では魚椎形成、圧迫骨折を起こしやすい。 - 原因
カルシウム摂取不足、女性ホルモンの欠乏
問題11関節リウマチの診断基準(アメリカリウマチ協会)で誤りはどれか。
- 対称性関節炎
- 朝のこわばり
- 関節の変形
- 手・指のX線像の変化
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解答 3
新RAアメリカリウマチ協会(1987年)を以下に記載します。関節の変形ではなく腫脹などですね。覚えましょう。
- 1時間以上持続する朝のこわばり(6週以上)
- 3個以上の関節腫脹(6週以上)
- 手関節、MP関節、PIP関節の腫脹(6週以上)
- 対称性関節腫脹
- 手・指のX線変化
- 皮下結節
- リウマトイド(RA)因子の陽性
※4つ以上でRAと診断
※以下RAの補足事項です。
- 特徴
自己免疫疾患(原因不明)
20~50歳の女性に多い。 - 症状
朝のこわばり(morning stiffness)
両側性かつ多発性の関節の疼痛と腫脹
関節液貯溜(腫脹)
関節動揺性
関節変形
(尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形、外反母趾、槌趾)
握力低下
関節液の混濁(軽度) - 関連疾患
キャプラン症候群(RA+胸膜炎+肺線維症)
フェルティ症候群(RA+脾腫+白血球の減少)
シェーグレン症候群(RA+眼、口の乾燥)
若年性関節リウマチ ※16歳未満のRA
悪性関節リウマチ(RA+全身性の血管炎)予後不良紫斑、下腿潰瘍、指趾の壊疽、高熱、心筋炎、間質性肺炎、肺繊維症などの特有な症状を呈す。
回帰性リウマチ一過性に手関節、膝関節、肩関節の関節炎を繰り返す。
RAの初期症状の場合もあり、その後RAに移行することも。
問題12全原発性骨腫瘍の中で最も多いのはどれか。
- 骨軟骨腫
- 骨肉腫
- 癌骨転移
- 骨巨細胞腫
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解答 1
以下を覚えましょう。
- 骨腫瘍の中で1位(悪性骨腫瘍の中でも1位)
→ 癌の骨転移 - 原発性骨腫瘍の中で1位
→ 骨軟骨腫 - 悪性原発性骨腫瘍の中で1位
→ 骨肉腫 - 10歳以下に多い
→ 神経芽細胞腫 - 10歳前半に多い
→ ユーイング肉腫、骨軟骨腫 - 10歳代に多い
→ 骨肉腫、骨のう腫、軟骨腫 - 20~30歳に多い
→ 骨巨細胞腫 - 40~60際に多い
→ 多発性骨髄腫、骨転移癌
このように覚えましょう。
問題13脊柱管狭窄症の原因で誤りはどれか。
- 椎間板ヘルニア
- 変形性脊椎症
- 脊髄空洞症
- 黄色靭帯肥厚
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解答 3
脊髄空洞症は脊髄中心管の拡大により生じます。脊柱管に影響は与えません。
※以下 脊柱管狭窄症の補足事項です。
- 特徴
骨の増生、黄色靱帯、後縦靱帯の肥厚で発生 - 症状
間歇性跛行→歩行をやめ前屈位をとり休む
※観血療法が有効
問題14関節液の比重について正常時との差が最も少ないのはどれか。
- 変形性関節症
- 慢性関節リウマチ
- 関節結核
- 化膿性関節炎
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解答 1
変形性関節症ではあまり変化しません。ほぼ正常です。
※以下、関節液(髄液)検査の概要です。
- 滑膜細胞の(B細胞)から分泌されるヒアルロン酸が粘度を与え、摩擦係数を減らす。
- 炎症が強くなると細胞数、淡白量は増加し、糖は減少する。
問題15 65歳女性。最近右膝に痛みを感じて来院。
外傷の既往はないが、関節水腫がみられる。患部に発赤や熱感はみられない。
X線像で関節裂隙が狭くなっており、骨棘や骨硬化像が確認できる。
血液検査では異常所見はみられない。
この疾患への初期治療として誤っているのはどれか。
- 大腿四頭筋訓練をさせる。
- 体重制限や杖の使用などに関する生活指導。
- ステロイドホルモンの関節内注射。
- 人工関節置換術を行なう。
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解答 4
「65歳女性」「右膝に痛み」「外傷の既往はない」「関節水腫」「X線像で関節裂隙が狭くなって」「骨棘や骨硬化像」から変形性膝関節症と判断できます。
初期治療として選択肢1.2.3を行いそれでも症状が落ち着かない場合は人工関節置換術をします。いきなりはしないでしょう。
※以下、変形性膝関節について補足事項です。
- 特徴
関節の老化現象による軟骨、骨変性。骨棘形成、嚢胞を生じる。
中年以後の女性に多い。
※老化現象によるもの →一次性変形性関節症
※炎症・外傷によるもの →二次性変形性関節症
(先天性股関節脱臼によるOAも二次性!) - 好発部位
膝関節 - 症状
自発痛は少ない
運動痛、起床時のこわばり - 治療
重症の場合は人工関節置換術も考慮する。
問題16痛風で誤っているのはどれか。2つ選べ。
- 慢性的な高血糖状態である。
- 中年以降の男性に多い。
- 好発部位は第1リスフラン関節である。
- 関節以外の部位でも発作がみられることがある。
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解答 1・3
高血糖ではなく高尿酸状態です。好発部位は母趾中足趾関節です。
※その重要事項
- 特徴
尿酸の過形成、排泄障害による。
中年以後の男性に多い。 - 好発部位
母趾中足趾関節に多発 - 症状
間欠期には無症状
局所の激痛、腫脹、発赤
痛風結節(耳介、肘頭に多い) - 診断
血清尿酸値の上昇
※これの上昇と痛風症状の程度は一致しない。
ムレキシド反応陽性
※陰性で同様な症状を呈す場合は偽痛風となる。
→ピロリン酸カルシウム結晶による。
プロフィール
西村 雅道
医学博士 柔道整復師 鍼灸師
一社)国際整体協会 和整體学院 インストラクター
和整體学院臨床センター センター長
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