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柔道整復師国家試験対策【第23回:柔道整復学 その3】

分野別問題 国家試験対策

前回に引続き柔整を出題します。
今回は長文問題を出題します。約10問程毎年出題されます。しっかりと解けるように準備しましょう。

問題135歳の男子。約1ヵ月前に柔道の試合中に相手に投げられ肩部から転落した。肩関節部の疼痛と上肢挙上時の疼痛を訴えて来院した。大結節部に圧痛は認められるが軋轢音は認められなかった。図に示す検査法が陽性であった。最も考えられる損傷はどれか。

  1. 上腕骨大結節骨折
  2. 肩関節周囲炎
  3. 棘上筋腱損傷
  4. 石灰沈着性腱板炎

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解答 3

腱板損傷は解剖学的に損傷を受け易い棘上筋腱に発生する事が多く、急性損傷で発生する場合と退行性変性を基盤とした場合や投球動作などのover useによる亜急性損傷で発生する場合があり、急性損傷では肩部を打撲した場合や肘や手を衝いて転倒した場合に発生する事が多い。特徴的な疼痛所見は外転60~120°の間に疼痛が生じて大結節部や三角筋中央部(前部)に圧痛を認める。運動制限は肩関節屈曲・外転運動に制限が認められて図に示す肩関節外転位を保持する事が困難であるドロップアームサインが陽性を示す事が多い。肩関節周囲炎は40歳代以降で明らかな外傷の起因がなく肩部の疼痛と運動制限を主訴とする疾患であり腱板損傷や石灰沈着性腱板炎との鑑別が必要である。石灰沈着性腱板炎は40~60歳代の女性に好発する突然の夜間痛で発症する事が多く激痛に伴う運動制限を認めるが明確な外傷の起因が存在しない。単純X線像では特有な石灰沈着像を認める。

本問題には明確な外傷の起因があり腱板損傷の特徴的な疼痛所見がありドロップアームサインが陽性である。さらに、軋轢音を認めない事から棘上筋腱損傷が最も考えられる。

問題220歳の女性。勤務上、パソコン作業が多く頸部の痛みと右上肢に出現する痺れを訴えて来院した。図に示す検査法で強い前腕への放散痛が出現した。最も考えられるものはどれか。

  1. 頚椎椎間板ヘルニア
  2. 斜角筋症候群
  3. 肋鎖症候群
  4. 過外転症候群

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解答 2

胸郭出口症候群は腕神経叢・鎖骨下動脈・鎖骨下静脈からなる神経血管束が斜角筋三角・肋鎖間隙・小胸筋下方を走行する際に圧迫・絞扼を受けて生じる症候群であり斜角筋症候群・肋鎖症候群・過外転症候群がある。斜角筋症候群は若いなで肩の女性に多く頚肋や斜角筋付着部の肥厚・筋緊張が原因で斜角筋三角部が狭小して発生する。主症状は上肢に放散する疼痛や痺れであり頸椎椎間板ヘルニア・神経性頚椎症・後縦靱帯骨化症(OPLL)との鑑別診断が必要であり斜角筋症候群では鎖骨上窩部を圧迫した際に局所の圧痛と前腕部への放散痛が生じるMorly testが陽性となる。さらに、斜角筋症候群ではAdson test・Allen testが陽性となる。過外転症候群は上肢を過度に挙上する職業者に多く小胸筋烏口突起付着部の緊張が原因で発生してWright testが陽性となる。肋鎖症候群は肋鎖間隙の狭小化により発生してAttention test・Eden test・Wright testで陽性となる。

図に示す検査法はMorly testであり鎖骨上窩部を圧迫した際に局所の圧痛と前腕部への放散痛が生じる。Morly testは斜角筋症候群で陽性を示す検査法である。

問題321歳の男性。野球部に所属しており毎日の練習後にバッティング練習を行っていた。約2週間前から小指球筋部に疼痛を感じていたが練習を継続しており最近では第4・5指掌側に痺れを感じていた。検査の結果、フローマン徴候が陽性であった。最も考えられるものはどれか。

  1. ギヨン管症候群
  2. 肘部管症候群
  3. 手根管症候群
  4. 回内筋症候群

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解答 1

ギヨン管症候群は豆状骨と有鉤骨、掌側手根靭帯、豆鉤靭帯で構成するギヨン管(尺骨神経管)内で手根部の外傷(有鉤骨骨折)やサイクリングによる長時間の圧迫、ガングリオンなどによる小指球筋部の圧迫で尺骨神経が絞扼を受ける絞扼性神経障害である。尺骨神経の圧迫により第4・5指腹部の痺れ感や疼痛が出現して陳旧性では骨間筋や小指球筋の萎縮が生じる。運動障害は第2~5指内外転不能やPIP関節・DIP関節伸展不能や母指内転運動が不能となる。また、ギヨン管部でのTinel徴候や母指内転筋の麻痺により長母指屈筋が代償作用を起こすフローマン徴候が陽性となる。

問題446歳の女性。吹奏楽団に所属しており管楽器の練習を毎日行っていたが最近になり手関節の疼痛と第2指の掌側に強い痺れを感じて来院した。図に示す検査法が陽性であった。絞扼を受けている神経はどれか。

  1. 正中神経
  2. 尺骨神経
  3. 橈骨神経
  4. 前骨間神経

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解答 1

図に示す検査法はファーレンテストであり手根管症候群で陽性を示す。手根管症候群は手根管内を走行する正中神経が骨折や脱臼、手関節の過度な使い過ぎによる屈筋腱腱鞘炎、変形性関節症、関節リウマチ、ガングリオン、脂肪腫、透析によるアミロイド沈着など手根管内の狭小化により圧迫を受けて発生する絞扼性神経障害である。第1~4指橈側1/2部の痺れ感、手関節や手指に生じる疼痛が出現する。陳旧性では母指球筋が萎縮して母指の対立運動に障害が出現する。手根管部のTinel徴候やファーレンテストが陽性を示す。

問題551歳の女性。介護施設に勤務しており肘関節外側部の疼痛と手関節の脱力感を訴えて来院した。前腕伸筋群の緊張は強く患側の握力は低下していた。中指伸展運動に抵抗を加えた結果、上腕骨外側上顆部の疼痛が増強した。治療法として圧迫バンドの適切な装着部位はどこか。

  1. A
  2. B
  3. C
  4. D

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解答 2

肘関節外側部の疼痛及び中指伸展テストの結果から上腕骨外側上顆炎と判断する。上腕骨外側上顆炎は手を多く使用する作業で前腕伸筋群のover useにより腱起始部に微小断裂を起こして発生する。強い握り動作時には前腕伸筋群が収縮する為外側上顆炎では握力低下・手関節脱力感などの症状が出現する。また、タオルを絞る動作では回外筋が収縮する為に疼痛が誘発される。上腕骨外側上顆炎の検査法にはThomsen’s test、Chair test、中手伸展テスト、Cozen test、Mill testがある。治療法として上腕骨外側上顆部の牽引ストレスを軽減させる為に外側上顆部より末梢の前腕伸筋群筋腹部に圧迫力を加える。

問題618歳の男子。ハードル競技中に突然、殿部に激痛が生じて走行が不能となった。殿部から大腿後面に疼痛を訴え、図に示す他動運動で疼痛が増強した。近医を受診した結果、骨折と診断された。最も考えられる損傷はどれか。

  1. 上前腸骨棘剝離骨折
  2. 下前腸骨棘剝離骨折
  3. 坐骨結節剝離骨折
  4. 小転子剝離骨折

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解答 3

図に示す他動伸展運動で伸長力が加わる筋はハムストリングスでありハードル競技中にハムストリングスの起始部である坐骨結節部に剝離骨折が発生したと考えられる。

腸骨綾剝離骨折

原因筋:外腹斜筋動作:野球の空振り骨片転位:外上方転位

上前腸骨棘剝離骨折

原因筋:縫工筋、大腿筋膜張筋動作:短距離のスタート骨片転位:下方転位

腸骨綾剝離骨折

原因筋:大腿直筋動作:サッカーのキック骨片転位:下方転位

腸骨綾剝離骨折

原因筋:大腿二頭筋長頭、半腱様筋・半膜様筋、大内転筋動作:ハードリング、チアリーディング骨片転位:下方転位

問題722歳の男性。2階の窓を拭いている際に誤って転落して右足踵から接地した。疼痛は著しく患側での起立歩行は不能で足部全体に腫脹が認められる。後方から踵部を見た際に図に示す様な変形と足部が外反位である事が認められた。この損傷の後遺症として誤りはどれか。

  1. 腓骨筋腱腱鞘炎
  2. 無腐性骨壊死
  3. 変形性関節症
  4. アキレス腱周囲炎

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解答 2

2.無腐性骨壊死は距骨骨折で骨片が後方に転位した場合に発生する事がある。

発生機序が高所からの転落した際に踵部を強打しており図に示す外観や足部が外反位を呈している事から踵骨骨折が疑われる。
踵骨骨折は高所から転落した際に足底部を強打して発生する事が最も多い。骨折型の多くは関節内骨折でありベーラー(Böhler)角が減少する。ベーラー(Böhler)角の減少は後距骨下関節面の損傷を示唆する。踵骨骨折では体部と踵骨隆起の連続性が断たれ足底部縦アーチが消失する為に足部横径が増大して足部は外反位を呈する。踵骨体部と踵骨隆起の連続性が離断した場合では内側縦アーチが消失して踵骨隆起は腓骨外果に接近する。その結果、足部横径が増大して外反偏平足を呈することが多い。足部外反変形により外果下方を走行する腓骨筋腱に摩擦力が増大して腓骨筋腱腱鞘炎やアキレス腱周囲炎が発生する。さらに、踵骨骨折は関節内骨折が多く距骨下関節面を損傷することが多く足根骨アライメントの不整による慢性浮腫や疼痛の持続によりSudeck骨萎縮(反射性交感神経性ジストロフィー)が続発する事がある。

問題820歳の女性。15歳の時に膝蓋骨外側脱臼の既往があり膝関節の不安定感を訴えて来院した。問診の結果、初回脱臼時は自然整復された様子でその後の治療も継続していなかった。この損傷に対して誤りはどれか。

  1. アプリヘンション・サインが陽性である。
  2. 患側のQ-angleの増大が認められる。
  3. 骨軟骨骨折を疑いCT撮影を依頼する。
  4. 再発防止の為に内側広筋の筋力強化を行う。

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解答 2

膝蓋骨脱臼は骨の形態的異常や先天的素因により膝蓋骨へ加わる応力が外側方向に強く作用して外側脱臼が発生する事が圧倒的に多い。膝蓋骨外側脱臼の大部分は大腿四頭筋の収縮による膝関節伸展動作で自然整復されて来院することが多い。自然整復された場合では脱臼症状が明確でない事が多いが、膝蓋骨を外側部へ他動的に圧迫した際に脱臼感・不安感・嫌悪感を訴えるアプリヘンションサインが陽性を示す。習慣性では膝崩れ現象や嵌頓症状、大腿四頭筋の筋力低下・萎縮がありQ-angleが減少している状態が多い。また、自然整復された場合では膝蓋骨関節面が大腿骨外顆部と衝突して骨軟骨骨折を合併する事がありCT撮影を行う事が望ましい。膝蓋骨外側脱臼では膝蓋骨に加わる応力が外側方向に強く働く為に内側広筋の筋力強化を行い膝蓋骨の安定性を高める必要性がある。

問題938歳の男性。高所作業中に誤って転落、右足底部から接地して転落した。右足での荷重は不能で片足歩行で松葉杖を用いて来院した。患肢を後方から観察するすると足部は外反位を呈しており、皮下出血班は図の様に出現していた。この損傷について誤りはどれか。

  1. ナウマン徴候出現
  2. ベーラー角減少
  3. 距腿関節屈伸運動可能
  4. 足関節回内回外運動不能

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解答 1

1.ナウマン徴候は距骨骨折で生じる症状であり骨片が足関節後方に転位した際に長母指屈筋腱を圧迫して腱には牽引力が働き第1足指が直角に屈曲する。

発生機序が高所からの転落であり皮下出血斑の出現部位や足部が外反位を呈している事から考察すると踵骨骨折が疑われる。
踵骨骨折は高所から転落した際に足底部を強打して発生する事が最も多い。骨折型の多くは関節内骨折でありベーラー(Böhler)角が減少する事が多くベーラー(Böhler)角の減少は後距骨下関節面の損傷を示唆する。踵骨骨折では体部と踵骨隆起の連続性が断たれ足底部縦アーチが消失する為に足部横径が増大して足部は外反位を呈する。踵骨骨折の皮下出血斑は特徴的であり踵骨両側から足底に沿って出現する。起立歩行は不能で足関節の回内・回外運動は顕著に制限されるが距腿関節屈曲・伸展運動は可能である。

問題1015歳の女子。自転車走行中にバランスを崩して片足をついて転倒、左膝関節部に疼痛を訴えて来院した。詳しく問診を行うと足をついた際に膝関節部に激痛を感じて膝関節は軽度屈曲位で動かすことが出来ず、膝関節外側部に膨隆を認めたと話すが、来院時には異常膨隆は消失しており膝関節の自動運動は可能であった。この損傷について誤りはどれか。

  1. アプリヘンション・サインが陽性である。
  2. 受傷直後は膝関節屈曲位で固定を行う。
  3. 骨軟骨骨折を疑いCT撮影を依頼する。
  4. 再発防止の為に内側広筋の筋力強化を行う。

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解答 2

2.膝蓋骨外側脱臼の整復後は大腿四頭筋の緊張を緩める為に膝関節伸展位で固定する。

受傷時に確認された膝関節外側部の膨隆が来院時には消失していた事から考察すると膝蓋骨外側脱臼を受傷したが来院する際に自然整復されたと判断される。

膝蓋骨脱臼は骨の形態的異常や先天的素因により膝蓋骨へ加わる応力が外側方向に強く作用して外側脱臼が発生する事が圧倒的に多い。膝蓋骨外側脱臼の大部分では大腿四頭筋の収縮による膝関節伸展動作で自然整復されて来院することが多い。自然整復前では膝関節軽度屈曲位で弾発性固定されて膝関節外側部には脱臼した膝蓋骨の隆起を触れる為に脱臼症状は著明であるが、自然整復された場合では脱臼症状が明確でない事が多い。自然整復された場合では膝蓋骨を外側部へ他動的に圧迫した際に脱臼感・不安感・嫌悪感を訴えるアプリヘンションサインが陽性を示す。さらに、膝蓋骨外側脱臼で自然整復された場合では膝蓋骨関節面が大腿骨外顆部と衝突して骨軟骨骨折を合併する事があり自然整復された場合では骨軟骨骨折を疑いCT撮影を行う事が望ましい。膝蓋骨外側脱臼では膝蓋骨に加わる応力が外側方向に強く働く為に内側広筋の筋力強化を行い膝蓋骨の安定性を高める必要性がある。

問題1118歳の男子。ラグビーの試合で相手選手のタックルを右膝に受けて受傷した。膝部の疼痛は著しく膝関節内側部の圧痛は著明である。膝関節は軽度屈曲位で完全伸展は不能であった。牽引アプレー検査では内側部に疼痛を訴えており、ラックマン検査陰性、マックマレー検査陽性であった。この患者の損傷はどれか。2つ選べ。

  1. 内側側副靱帯損傷
  2. 前十字靱帯損傷
  3. 外側半月板損傷
  4. 内側半月板損傷

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解答 1・4

  1. 内側側副靭帯損傷では外反動揺検査やApley test(牽引法)で陽性を示す
  2. 前十字靭帯損傷ではDrawer sign(前方引出し徴候)・Lachman test・N testで陽性を示す事が多い。
  3. 外側半月板損傷ではApley test(押圧法)・McMurray test・Watson-Jones test・Steinmann testで膝関節外側部に疼痛を認めた場合に陽性となる。
  4. 内側半月板損傷ではApley test(押圧法)・McMurray test・Watson-Jones test・Steinmann testで膝関節内側部に疼痛を認めた場合に陽性となる。

検査法の結果から膝関節損傷を判断する。
Lachman testが陰性である事から前十字靭帯損傷の可能性は低くApley test(牽引法)で膝関節内側部に疼痛を訴えている為に内側側副靭帯損傷が疑われる。また、McMurray testが陽性であり膝関節内側部に圧痛を認める事を合わせて判断すると内側半月板損傷を合併していると考えられる。側副靭帯は膝関節伸展時に緊張する為に膝関節は軽度屈曲位を呈して膝関節伸展運動が制限される。内側半月板は内側側副靭帯と関節包内で付着している為に外力に対する可動域が制限されて合併損傷が多く見受けられる。

問題1224歳の男性。ランニング中に右前足部が溝に挟まった状態で転倒した。足部に激痛を訴えており変形は著しく足尖部は軽度外転位を呈している。足内縁には第1楔状骨が触知され足外縁は第5中足骨底部が突出している。最も考えられる損傷はどれか。

  1. リスフラン関節外側脱臼
  2. ショパール関節外側脱臼
  3. リスフラン関節内側脱臼
  4. ショパール関節内側脱臼

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解答 1

2.
ショパール関節外側脱臼では足内側縁および内果前方に距骨頭を触知する。
3.
リスフラン関節内側脱臼の足内側縁には第1中足骨基底部が突出して足外側縁に立方骨を触知する。
4.
ショパール関節内側脱臼では足内側縁および内果前方に舟状骨を触知する。

リスフラン関節脱臼は中足骨部への直達外力や前足部に回旋力が加わった場合に発生する。外側脱臼では尖足部は軽度外転位を呈して足内側縁には第1(内側)楔状骨が突出して足外側縁に第5中足骨基底部を触知する。内側脱臼では足内側縁に第1中足骨基底部が突出して足外側縁に立方骨を触知する。底足脱臼では足背部に遠位足根骨列が触知されるが背側脱臼では中足骨部を認めて足部は尖足位を呈して前足部が短縮する。さらに、足背部に中足骨が転位する為に伸筋腱を圧迫して背側脱臼では足指は伸展位を呈する。

問題1317歳の男子。野球の練習中に打球を捕球しようと走り始めた瞬間に右大腿部を叩かれた様な感覚と共に歩行困難となった。明らかな跛行だが自立歩行にて来院した。患部に著明な陥凹部が認められ図に示す他動運動により著しい疼痛を訴えている。最も考えられる損傷はどれか。

  1. 大腿四頭筋損傷(第Ⅱ度)
  2. 大腿四頭筋損傷(第Ⅲ度)
  3. ハムストリングス損傷(第Ⅱ度)
  4. ハムストリングス損傷(第Ⅲ度)

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解答 4

  1. 大腿四頭筋損傷は腹臥位で他動的股関節伸展運動により疼痛が出現する。
  2. 大腿四頭筋損傷は腹臥位で他動的股関節伸展運動により疼痛が出現する。
  3. ハムストリングス損傷(第Ⅱ度)では患部に著明な陥凹部を呈する事は少ない。

ハムストリングス損傷は筋腱移行部に多く半腱様筋・半膜様筋損傷では大腿上部に好発するが大腿二頭筋損傷は大腿下部に好発する。ハムストリングスが急激に収縮した際に発生する事が多く発生機序には疲労度・柔軟性の低下・H/Qバランスの悪化など基礎的要因が関与している。背臥位にて膝関節伸展位での他動的股関節屈曲運動を行った場合ではハムストリングスに伸張力が加わり疼痛を訴える。第Ⅲ度損傷では患部に著明な陥凹部が触知されるが第Ⅱ度損傷では陥凹部の触知は著明でない。第Ⅲ度損傷では疼痛が著しく自立歩行は困難となり明らかな跛行を呈する。

問題1423歳の女性。上肢の痺れを訴えて来院した。デスクワーク作業が多く頸部から僧帽筋部にかけての筋緊張が強く、なで肩を呈している。上肢を挙上した際や鎖骨上窩部を母指で圧迫した際に前腕部に強い放散痛を訴える。最も考えられる損傷はどれか。

  1. 石灰沈着性滑液胞炎
  2. 胸郭出口症候群
  3. 頸椎椎間板ヘルニア
  4. 頚部交感神経症候群

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解答 2

1. 
石灰沈着性滑液包炎は棘状筋腱で石灰沈着が起こる事が多く肩関節の激痛と運動制限が特徴的である。
3. 
頚椎椎間板ヘルニアは頚部を後方に反らした際に障害神経根が圧迫を受けて一側上肢への放散痛・知覚障害・腱反射低下・筋力低下が出現する
4.
頸部交感神経症候群はむち打ち損傷で頚部交感神経や椎骨動脈が障害を受けてめまい・耳鳴り・視力障害などの自律神経症状を主症状とする症候群を示す

胸郭出口症候群は腕神経叢・鎖骨下動脈・鎖骨下静脈からなる神経血管束が斜角筋三角・肋鎖間隙・小胸筋下方を走行する際に圧迫・絞扼を受けて生じる症候群であり斜角筋症候群・肋鎖症候群・過外転症候群がある。斜角筋症候群は若いなで肩の女性に多く頚肋や斜角筋付着部の肥厚・筋緊張が原因で斜角筋三角部が狭小して発生する。主症状は上肢に放散する疼痛や痺れであり頸椎椎間板ヘルニア・神経性頚椎症・後縦靱帯骨化症(OPLL)との鑑別診断が必要であり斜角筋症候群では鎖骨上窩部を圧迫した際に局所の圧痛と前腕部への放散痛が生じるMorly testが陽性となる。さらに、斜角筋症候群ではAdson test・Allen testが陽性となる過外転症候群は上肢を過度に挙上する職業者に多く小胸筋烏口突起付着部の緊張が原因で発生してWright testが陽性となる肋鎖症候群ではAttention test・Eden test・Wright testで陽性となる

問題1536歳の男性。数か月前より後頸部の疼痛や頭痛を感じていたが肩凝りと思い放置していた。3日前に咳をしてから急激に症状が悪化して上肢の痺れと手指の運動障害を訴えて来院した。検査の結果、ジャクソンテストは陽性で中指の知覚障害と上腕三頭筋の筋力低下および上腕三頭筋腱反射の低下が認められた。障害されている神経根はどれか。

  1. C5
  2. C6
  3. C7
  4. C8

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解答 3

  1. 障害椎間板はC4-C5三角筋・上腕二頭筋の筋力低下や上腕外側部の知覚障害が生じて上腕二頭筋反射が低下・消失する。
  2. 障害椎間板はC5-C6上腕二頭筋・手根伸筋の筋力低下や前腕外側部の知覚障害が生じて腕橈骨筋反射が低下・消失する。
  3. 障害椎間板はC6-C7上腕三頭筋の筋力低下や中指の知覚障害が生じて上腕三頭筋反射が低下・消失する。
  4. 障害椎間板はC7-C8指屈筋群の筋力低下前腕内側部の知覚障害が生じる。

頸椎椎間板ヘルニアは椎間板の変性を基盤とした30~40歳代に多く男性に好発する。好発する障害椎間板はC5-C6でありC6神経根が障害を受ける事が多い。初期症状は頸部の疼痛・運動障害・肩凝りなど自覚症状は乏しい。症状が進行した場合では一足上肢への放散痛・知覚障害・筋力低下・腱反射の低下や消失などを呈する。検査法ではSpurling test・Jackson testで陽性を示す。

問題1629歳の男性。タクシー会社に勤務しており自動車から降りる際に腰部に激痛が走り来院した。患者は右側に側彎しており右側下肢に痺れ感と疼痛を訴えている。検査の結果、母趾背屈力は低下しており足背から母趾背側にかけて知覚鈍麻が確認されたが、腱反射の減弱および消失は認められなかった。陽性を示す検査法はどれか。2つ選べ。

  1. FNS検査
  2. ケンプ検査
  3. SLR検査
  4. ニュートン検査

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解答 2・3

  1. 上位腰椎椎間板ヘルニア
  2. 椎間孔圧迫試験
  3. 下位腰椎椎間板ヘルニア
  4. 仙腸関節疼痛誘発試験

腰椎椎間板ヘルニアは20~30歳代の男性に多く発生する。好発する障害椎間板はL4-L5であるが腰椎椎間板ヘルニアでは椎間板脱出高位より一つ下位の神経根が圧迫を受ける事が多く障害神経根はL4-L5ヘルニアの場合はL5神経根が障害を受ける。腰痛・疼痛性側彎・跛行が出現する他に一側下肢への放散痛や障害神経根に一致した知覚障害・筋力低下・腱反射の低下や消失を呈する事が多い。検査法では上位腰椎椎間板ヘルニアではFNS testが陽性となり下位腰椎椎間板ヘルニアではSLR test(ラセーグ徴候)・WLR test・Bow string test・Bragard testで陽性を示す。さらに、腰椎椎間板ヘルニアで陽性を示す検査法には椎間孔圧迫試験であるKemp testなどがある。

椎間板ヘルニア

問題1738歳の男性。仕事ではパソコン作業を長時間行うことが多く図に示す部位に痺れ感を訴えて来院した。最も考えられる損傷はどれか。

  1. 尺骨神経管症候群
  2. 回外筋症候群
  3. 肘部管症候群
  4. 前骨間神経症候群

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解答 3

  1. 尺骨神経管症候群はギヨン管症候群と同意義であり有鉤骨骨折や小指球筋部の持続的圧迫により尺骨神経が絞扼されて発生する症候群で知覚障害・疼痛発現部位は手掌尺側である。
  2. 回外筋症候群は前腕回外・回内運動の反復により後骨間神経が絞扼を受けて発生する神経障害であるが運動神経である為に知覚障害は出現しない。
  3. 肘部管症候群は上腕骨内側上顆下方を走行する尺骨神経に摩擦・圧迫が生じて発生する絞扼性神経障害で前腕内側から手掌尺側にかけて知覚障害が出現する。
  4. 前骨間神経症候群は円回内筋部・第2指深指屈筋の腱性起始部で前骨間神経が絞扼を受けて発生する神経障害であるが前骨間神経は運動神経である為に知覚障害は出現しない。

肘部管症候群は上腕骨内側上顆下方の尺骨神経溝で尺骨神経が摩擦・圧迫を受けて発生する絞扼性神経障害である。同部位の骨棘形成やガングリオンが生じた場合や肘関節屈曲位で長時間の連続作業を行った場合に発生する。また、上腕骨外顆骨折後の外反肘変形に続発する遅発性尺骨神経麻痺も肘部管症候群に含まれる。図に示す部位に疼痛・痺れ・知覚障害を訴え症状が進行した場合には小指球筋部や骨間筋が萎縮して鷲手変形が出現する。尺骨神経溝部のチネル徴候やフローマン徴候が陽性を示す。

問題1819歳の男性。バスケットボールの練習中に右膝に回旋力が加わり来院した。膝関節部の疼痛は著しく内側関節裂隙部に圧痛がある。マック・マレー・テストを実施した際に屈曲10°から完全伸展時に疼痛を訴えた。最も考えられる損傷部位はどれか。なお、図は膝関節の横断模式図である。

  1. A
  2. B
  3. C
  4. D

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解答 1

マック・マレーテストは半月損傷で陽性を示す検査法であり患者背臥位、股関節・膝関節最大屈曲位から下腿部に回旋力を加えて膝関節伸展した際に疼痛・クリック音を訴える検査法である。また、伸展角度の違いから半月板の損傷部位が推測できる検査法である。最大屈曲位から鋭角屈曲位で症状を訴える場合には半月後方部の損傷が疑われ直角位付近の場合には半月中央部が、鈍角屈曲位から膝関節完全伸展時に症状が出現する場合には半月前方部の損傷が疑われる。患者は屈曲10°から完全伸時に疼痛を訴えている事から半月前方部の損傷が疑われる。さらに、内側関節裂隙部に圧痛がある事から内側半月前方部の損傷が最も可能性が高い。解剖学的特徴から内側半月は外側半月に比べて大きくC字状を呈する事から考えるとAの部位に損傷がある事が推測される。

問題1922歳の男性。大学野球部に所属しており練習後に投球練習を毎日行っていた。約1ヶ月前から投球動作時の疼痛を感じていたが、最近になり疼痛は一段と強くなり夜間就寝時にも生じるようになった。来院時の単純X線像では異常所見は確認されなかったが大結節部に圧痛があり肩関節外転90°時にクリック音と疼痛を訴える。最も考えられる損傷はどれか。

  1. インピンジメント症候群
  2. 上腕二頭筋長頭腱損傷
  3. 石灰沈着性腱板炎
  4. リトルリーガーズショルダー

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解答 2

  1. フライバーグ病は思春期女性に好発する第2中足骨骨頭部に発生する骨端症である。
  2. モートン病は若年から中年女性に好発する第3・4中足骨骨頭間で総底側指神経が圧迫を受けて生じる絞扼性神経障害である。
  3. 第1ケーラー病は3~7歳の男児に好発する小児疾患で舟状骨に生じる骨端症である。
  4. 中足骨疲労骨折は長距離走者や跳躍競技者の第2・3中足骨骨幹部に好発する。

モートン病は総底側指神経が図で示す第3・4中足骨骨頭間で中足骨骨頭と深横中足靱帯の間で圧迫を受けて生じる絞扼性神経障害である。つま先立ち作業やハイヒール・サイズの小さい靴での長時間の作業では神経が引かれて靱帯と圧迫を受ける為に摩擦が生じる。第3・4中足骨骨頭間に神経鞘の肥厚による腫瘤と神経症状・痺れ・激痛が生じる。

問題2032歳の男性。約1ヵ月前に草野球の試合中に盗塁をしたが誤って転倒した。その際に手掌を衝き手関節部に過伸展力が強制された。受傷時、手関節部の疼痛は強かったので冷湿布をして様子を見ていたが、最近になり手部に痺れ感が出現してきた為に来院した。手根部掌側に骨性隆起が触れられ手関節は軽度尺屈位を呈している。この損傷について誤りはどれか。

  1. ファーレン・テストが陽性となる。
  2. 母指対立運動に障害が出現する。
  3. 第1・2指指腹部に痺れ感を訴える。
  4. 整復後は手関節背屈位で固定を行う。

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解答 4

手関節過伸展強制による発生機序と手根部掌側にある骨性隆起、手関節が軽度尺屈位を呈している事から受傷時に月状骨掌側脱臼が発生したと推測される。

月状骨脱臼は20~50歳の男性が手掌を衝いて転倒した際に手関節部に過伸展が強制されて月状骨は掌側に脱臼する事が最も多い。月状骨脱臼により手関節前後径が増大して尺側の手根骨アライメントが崩れ手関節は軽度尺屈位となり月状骨が掌側に転位する事で指屈筋腱を圧迫して指節関節は軽度屈曲位を呈する。症状が軽微な場合には手関節捻挫と誤診されやすく手根管症候群として正中神経圧迫症状が出現する

手根管症候群では正中神経が圧迫を受けて第1指~4指橈側1/2の手指掌側に疼痛・痺れが生じる。進行時には母指球筋部が萎縮して猿手変形が出現する。手根管部のチネル徴候とファーレン・テストが陽性となる

問題2172歳の男性。駅の階段から転落して肩関節部に疼痛を訴えて来院した。弾発性固定と変形から肩関節烏口下脱臼と判断して徒手整復を行った。この患者に対する治療法として誤りはどれか。

  1. 固定肢位は肩関節屈曲・内旋位で行う。
  2. 固定期間中は手指の自動運動を指導する。
  3. 約1週間は積極的な冷罨法を実施する。
  4. 反復性脱臼を防ぐ為に約6週間固定を行う。

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解答 4

  1. 関節包前面が損傷している為に関節包裂隙部を密着させる肢位である肩関節軽度屈曲・内旋位で固定を行う。
  2. 固定期間中は手指の自動運動を行い血液循環の促進と関節可動域の保持を行う。
  3. 損傷後、約1週間は炎症症状の消退を目的とした積極的なRICE療法を行う。
  4. 肩関節前方脱臼は反復性脱臼を合併する事が多いが患者の年齢は72歳と高齢であり約6週間の長期固定は肩関節の拘縮を助長させる為に治療法としては適切でない。

問題2235歳の男性。電球を取り換える為に椅子に立ち作業をしていたが誤って転落した。右上肢に強い痛みを訴えており上肢全体の運動は不能である。来院時の右手は図に示す外観を呈している。最も考えられる損傷はどれか。

  1. モンテギア骨折
  2. 上腕骨外科頚骨折
  3. 上腕骨顆上骨折
  4. 上腕骨骨幹部骨折

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解答 4

手部の変形は下垂手であり橈骨神経麻痺で出現する。モンテギア骨折は橈骨神経の分枝である後骨間神経麻痺を合併する事が多いが手関節の背屈は可能である。後骨間神経麻痺ではMP関節伸展と母指の伸展・橈側外転が不能となる下垂指変形が出現する。上腕骨外科頚骨折は腋窩神経麻痺を合併する事があり三角筋部の知覚障害と肩関節外転運動が不能となる。上腕骨顆上骨折では橈骨神経麻痺を合併する事は多く下垂手が出現する可能性は高いが患者年齢は35歳であり上腕骨顆上骨折の罹患は考え難い。上腕骨骨幹部骨折では橈骨神経が上腕骨骨幹部の橈骨神経溝を密着して走行する為に合併頻度は比較的に高く下垂手が出現する。

問題2360歳の男性。字を書いている際にボールペンを落とすことが多くなり最近では手掌尺側に痺れが出現すると訴えて来院した。左手の骨間筋部の萎縮は著しくフローマン徴候が陽性である。小学校4年生の頃に左腕を骨折した既往歴がある。最も考えられる既往した骨折はどれか。

  1. 尺骨肘頭骨折
  2. 上腕骨顆上骨折
  3. 上腕骨外顆骨折
  4. 上腕骨内側上顆骨折

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解答 3

上腕骨外顆骨折は回転転位を呈する事が多く骨片転位の残存は偽関節を形成しやすく外顆部骨端線は早期閉鎖を起こしやすく外反肘変形が出現する事が多い。高度な外反肘変形は遅発性尺骨神経麻痺の原因となり麻痺出現まで約4ヵ月~60年と個人差が大きい。尺骨神経麻痺では手掌尺側の疼痛・痺れ・知覚障害が出現して小指球筋部・骨間筋部が萎縮して鷲手変形が出現する。フローマン徴候は母指内転筋が機能せずに長母指屈筋が代償する徴候であり尺骨神経麻痺で陽性を示す。

尺骨肘頭骨折・上腕骨内側上顆骨折で尺骨神経麻痺が出現する場合があるが遅発性に出現する事は少ない。上腕骨顆上伸展型骨折の尺骨神経麻痺は稀であり遅発的に出現する神経麻痺は内反肘変形による遅発性橈骨神経麻痺がある。

問題2422歳の女性。仕事中に溝に足が挟まり足関節を内返しに捻ってしまった。足関節外側部の疼痛は著しく外果前方から下方にかけての腫脹が出現している。前方引き出し検査及び内反動揺検査では著明な距骨の動揺が確認された。最も考えられる靭帯損傷はどれか。2つ選べ。

  1. 前距腓靭帯断裂
  2. 二分靭帯断裂
  3. 踵腓靭帯断裂
  4. 三角靭帯断裂

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解答 1・3

足関節捻挫は内返しによる足関節外側靭帯損傷が多く前距腓靭帯損傷が最も多い前距腓靱帯損傷では外果前方部に圧痛が認められ体重負荷時や受傷肢位の強制により疼痛が増大する。前距腓靱帯断裂では前方引出しテストで不安定性や疼痛が増大する。内反動揺検査では内反力を強制すると距骨傾斜角が増大して距骨と外果下端部の間に間隙が出現する。距骨傾斜角が著明に増大する場合には前距腓靱帯断裂に加えて踵腓靱帯断裂が合併している事が考えられる。

如何でしたでしょうか。
これまでと重複している部分もありますがしっかりと理解し知識として下さい。
次回は一般臨床を出題します。

プロフィール

西村 雅道

医学博士 柔道整復師 鍼灸師 柔道整復師専科教員免許
一社)日本整体協会インストラクター
北斗総合整骨院院長

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