柔整ホットニュース

特集

(公社)日本柔道整復師会第37回近畿学術大会和歌山大会

2012/11/16

去る平成24年10月28日(日)、ホテルアバローム紀の国において、公益社団法人日本柔道整復師会『第37回近畿学術大会和歌山大会』が開催された。主催は公益社団法人・日本柔道整復師会、主管は社団法人・和歌山県柔道整復師会、和歌山県・和歌山市・(社)和歌山県医師会・日本柔道整復接骨医学会・(公財)柔道整復研修試験財団・(公社)全国柔道整復学校協会・近畿柔道整復師協同組合連合会・日本理学療法器材工業会・毎日新聞和歌山支局・株式会社テレビ和歌山が後援した。

萩原会長午前10時半に始まった開会式では、和歌山大会副会長で兵庫県柔道整復師会会長・萩原隆氏が開会宣言を行い、学術大会会長・萩原正氏は、10月19日に開催された社会保障審議会医療保険部会第1回療養費検討専門委員会について周知の通りであり、引き続き検討されていく旨、挨拶の中で伝えた。

原会長次に主管県である和歌山県柔道整復師会会長・原正和氏が、社会保障が厳しくなっている今日の状況を打破するためにも学術大会に積極的に参加し数多くの症例に触れ、エビデンスを作りあげ明日へ繋がることを確信している等、挨拶した。

仁坂知事来賓を代表して、仁坂吉伸和歌山県知事、世耕弘成参議院議員、県議会議長・山下直也氏らが祝辞を述べた。続いて表彰式が行われ、学術功労賞表彰に林啓史氏(京都府)、発表表彰は3回発表・亀野真吾氏(兵庫県)、6回発表・川戸典知氏(滋賀県)が授与した。

 

酒井教授『癌抑制遺伝子RBを用いた新しい癌の予防法、診断法、及び治療法の開発』と題し、京都府立大学大学院医学研究科・分子標的癌予防医学教授・酒井敏行氏による特別講演が行われた。酒井教授は和歌山県柔道整復師会会長・原正和氏の郷里の先輩であることから、講演に先立って原会長との幼少の頃の思い出やご自身に影響を与えた祖父のお話なども当時の写真を示して語られた。本論に入り酒井教授は、癌の発生を抑える性質を持つRB遺伝子のスクリーニングを活用した最先端の診断・予防・治療と産学連携について解説。
2000年、約3000のプロジェクト中から選ばれ共同研究でスクリーニングが開始、gefitinib様の物質が見いだされた、しかし2度中止になりかかった。JTの合成グループ達の頑張りで最終化合物、2005年に新規MEK阻害剤JTP-74057の特許出願。2006年、GSKに導出、以来全てGSKに任せている。日本のアカデミーがスクリーニングを提案、日本のベンチャースピリットのある会社がスクリーニングし薬剤を見いだす。開発力のあるメガファーマに導出する。このような方法は日本の産学連携が生き残るための一つの戦略かもしれない。最終目標は、①私達の系を用いて得られた新規分子標的薬を5剤以上上市②私達の診断システムを用いて治癒効率を上げ、「分子標的併用療法」により、進行癌を完治させる。癌治療はこの2年で目まぐるしく進歩し、究極の癌予防ジュースをサントリーが開発中と述べ終了した。

その後、第Ⅰ会場では、『足関節捻挫整復法-古典と現代の比較-』京都府・西崎武雄氏、『足関節捻挫に対する早期回復のための閉鎖性運動連鎖の応用』兵庫県・吉本聰氏、『NPO法人を活用した介護予防事業の参入について』和歌山県・岸田昌章氏、『関節形態と軟部組織の状態に伴う脱臼の考察-成人型肘内障(疑)と股関節人工骨頭脱臼から-』滋賀県・大澤弘高氏、『抗うつ薬常習者の頸部捻挫に対する柔整手技と吸玉療法の有用性について』奈良県・平山靖英氏、『肩関節脱臼の整復例-大腿部を使った牽引整復法(2法)-』兵庫県・平野敏幸氏、『少年柔道選手の肘関節内側部痛-指導者から見た背負投の釣り手について-』和歌山県・松本光司氏、『鎖骨骨折(第三骨片)の治験例』奈良県・西尾勝彦氏、『介護老人福祉施設における柔道整復師の役割』京都府・松本浩志氏、『腰の痛みを患部以外からアプローチする-大腰筋・腸骨筋-』兵庫県・本田真一氏、『ホメロスの叙事詩「イリアス」よりアキレスの踵を推論する』奈良県・長谷川正太郎氏、『運動器の損傷、疼痛マーカーとしてのフリーラジカル-フリーラジカルの生成と阻害実験の報告-』和歌山県・南方克之氏ら12題の論文発表が行われた。

日整介護保険部第Ⅱ会場では、日整介護保険部介護対策課の三谷誉氏と川口貴弘氏による『柔道整復師と介護保険について』接(整)骨院と相乗効果が望める介護サービス事業と題した研修セミナーが行われ、多くの参加者で会場は溢れかえった。その後、『扁平足障害に対して行った保存療法の1例』京都医健専門学校・藤本直晃/田中宏典、教員:蓮井郁子ら養成校による研究発表が17題行われた。

また、今や近畿学術大会の目玉ともなっているのが近畿超音波画像観察委員会で、第30回近畿ブロック学会京都会場以来、学会における継続研究テーマを掲げ専用会場を設けて活動報告会を重ねている。
今大会は、三部構成で、第一部「超音波画像の原理」をテーマに、スライド上映が行われ、参加者が超音波観察装置を直接手にとっての体験学習。第二部は、㈱エスエスビー超音波営業部・富田孝次氏が『カラードップラーとX線で判別がむずかしい骨折症例』と題して講演を行った。第三部は、『上肢の超音波観察』滋賀県・近畿超音波画像観察委員会副委員長・川戸典知氏、『(社)兵庫県柔道整復師会の取り組み』兵庫県・同委員会副委員長・藤井憲之氏、『超音波画像観察装置についてのアンケート調査 多年度報告』滋賀県・同委員会委員・真下盛吉氏、『超音波新時代~近畿超音波画像観察委員会の活動指針とアンケート調査~』京都府・同委員会委員・今井雅浩氏ら4名が近畿超音波画像観察委員会の活動報告を発表した。

古久保委員長閉会式が厳かに行われ、多くの論文発表者に表彰状が贈られた。大会委員長・古久保成紀氏が〝今後も養成校との連携を図りつつ、柔道整復術の向上に力を合わせて取り組み、国民健康福祉の増進発展に寄与できるように努力精進して参りたい〟等、熱い挨拶を行った。
総合司会は根來信也氏が務め、参加人数は502名であった。

(文責・編集部)