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(公社)日本柔道整復師会 第41回北海道学術大会札幌大会 開催

2012/07/16

平成24年7月8日(日)札幌コンベンションセンターにて、(公社)日本柔道整復師会第41回北海道学術大会札幌大会が盛大に開催された。

冒頭、同大会会長でもある(公社)北海道柔道整復師会・萩原正和会長より〝本学術大会も今年で41回目となりました。この歴史ある学術大会は公益事業も含め、常に学術研鑽に努め、柔道整復術を以って社会に貢献するという崇高な理念のもとに開催され続けております。この意思を引き継ぎ柔道整復学の為、また業界の発展に寄与することを通じて、それが社会に貢献するものと確信をしております。この学術大会より何かを取得し、明日からの業務に役立つものと祈念致します。本日は1日皆様と共に勉強したいと思います〟と挨拶を行った。

続いて学会会長挨拶として壇上に立った(公社)日本柔道整復師会・萩原正会長は〝今、業界を取り巻く環境は大変厳しいものがあります。山積している問題を1つ1つ解決して行く為には執行部は勿論、会員の先生方の一層のご協力と、またご指導を頂かなければ解決できる問題ではありません。今後とも宜しくご指導の程お願いしたいと思います〟と挨拶があり、来賓の紹介、祝電披露の後、特別講演が開始された。

 

特別講演 「骨粗鬆症における脆弱性骨折について」

順天堂大学整形外科講師福島整形外科病院院長でもある医学博士 福島 稔氏は冒頭〝皆さんご承知の通り骨粗鬆症というのは老人病である。本日は骨粗鬆症における脆弱性骨折についてとアンチエイジングの話も少々させていただきたいと思う〟と述べ、スライドを使いながら講演を行った。

〝骨粗鬆症とは体内のカルシウムが不足して骨に鬆(す)が入り、脆くなり折れるという病気である。骨量が少なくなっていることだけではなく、脆弱性骨折を起こす原因はひとつには骨質も関係している。骨量と骨の質が非常に問題となる。骨には破骨細胞と骨芽細胞があり、破骨細胞の働きで骨が吸収され、骨芽細胞の働きで新しい骨ができるリモデリングという回転を行っている。そのリモデリングを正常に行う為、女性ホルモン(エストロゲン)は破骨細胞に必要以上に骨を吸収しないよう働きかけるが、閉経期になると女性ホルモンが不足し、骨が吸収され骨芽細胞での骨形成が間に合わなくなってしまう。これが閉経後骨粗鬆症と言い、一番日本で多い〟と骨粗鬆症を引き起こす多くの原因は女性ホルモン(エストロゲン)不足によるものであり、それ以外の骨粗鬆症の原因としては、遺伝・体質、病気、薬の副作用、加齢、日光浴不足、生活様式(運動不足・喫煙・飲酒)、栄養不足等があると解説。骨粗鬆症には大きく分けて2種類あり、閉経後骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症(歳をとり破骨細胞も骨芽細胞も均等に少なくなることが原因)、特発性骨粗鬆症(妊娠後に一時的に骨粗鬆症になり1年ぐらいで治る)の原発性骨粗鬆症と、内分泌疾患、ステロイド剤の投与、寝たきり、関節リウマチ、糖尿病、骨形成不全症等によって引き起こされる続発性骨粗鬆症があると説明。

福島氏は〝骨粗鬆症は年々増加し、これらは寝たきりの原因となり心肺機能低下、運動機能低下等の廃用症候群の原因となる。一番重要な事は骨粗鬆症の予防である〟とし、食事では1日1200mgのカルシウム、コラーゲン不足による骨質の低下を防ぐ為の良質なたんぱく質、カルシウムの吸収を行う活性型ビタミンD、骨芽細胞に働きかけ骨質を高めるビタミンK等を取ると共に、取りすぎるとカルシウムを尿中に排泄してしまうリンと塩分はあまりとらない方が良いという事、食事以外では年齢にふさわしい運動と日光浴の重要性、また日常生活の注意点として転倒防止のポイント等について説明を行なった。

次に福島氏は〝骨粗鬆症というのは老人病なので、骨が老化すると骨粗鬆症になる。老化とはどのようなものかを説明させていただきたい〟として、〝人間の体の中に必要以上に活性酸素が発生すると、鉄などが酸化し錆びて劣化してしまうのと同じように、人間の体も酸化していきだんだんと老化してしまう。あらゆる生物は歳を取るという普遍性、種や個々によって生命の老化というのが決められているという内在性、必ず歳を取って進行し老化は逆戻りをしないという進行性、歳を取ると老人病・糖尿病などが起こってくる有害性、これらが老化の特徴であり、予備力・適応力の低下、身体精神機能の低下等が起こってくる。100歳過ぎても元気に若々しく過ごしている人もいる一方で、60代70代で介護が必要な状況になっている人もいる。老化の仕方や老化に向かう速度というのは人によって違う。人間の寿命というのは生活環境と日常生活の影響が60%位を占めていると言われているが、100歳を過ぎても痴呆や癌と無縁で介護を必要とせずに過ごしている人たちを調べると、血管や筋肉、骨や神経等がバランスよく老化していることがわかり体の弱点がほとんどないことがわかってきた。バランス良く老化して行くというのが長寿に結びつくという事である。逆に体の一部の老化が著しく進んでいくとその老化が進行した部分が弱点となり、そこから老化が加速して要介護状態になる傾向が強い。骨は丈夫でも血管に障害があり脳梗塞を起こしたりすると、今度は全体的に骨も脆くなってしまう〟と述べ、続けて〝どうしたら老化を遅らせることができるのかは、体の中で発生する活性酸素をどのくらい少なくするか、これが老化を防ぐということになる。活性酸素を無毒化する遺伝子SOD(スーパーオキサイドティスムターゼ)とカタラーゼや、老化を防ぐホルモンとして筋肉を支え血糖値を下げるインスリン、脂肪細胞から出て動脈硬化を防ぐアディポネクチン、脳の機能を強化するDHEASの3つの維持が非常に重要である〟と付け加えた。

最後に福島氏は〝老化を遅らせるためにはバランスの良い食事、毎日の規則正しい運動、そして何よりも気力、やる気を起こすことが重要になってくる。脆弱性骨折、骨粗鬆症にならないように、自分の身体は自分で守るということが必要である。プラス思考で物事を前向きに考え、自分の身体は自分で守るという気力を持って、日常的に運動をしながら環境の変化やストレスに負けない体を作っていくことがアンチエイジングになり、骨粗鬆症の予防にもなる。柔道整復師の先生と整形外科とが協力し合い、勉強しながら患者さんの治療にあたっていくことが非常に大切なのではないかと思う〟と述べ講演を締めくくった。

約1時間半という短い時間にもかかわらず内容の濃い講演となった。

 

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