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第93回
【あん摩、はり、きゆう、柔道整復等「営業法の解説」について】

2014/04/01

明治国際医療大学   教授   長尾 淳彦

 

柔道整復、はり、きゆう、あん摩・マッサージ・指圧は「厚生労働大臣免許」であるにもかかわらず、現在でも「医業類似行為」と称される。

昭和26年に「按摩師、はり師、きゆう師、柔道整復師法」と名称を変えたのは、それまでは取締規則同様の営業免許であったとの誤解があるが、法律では、按摩師・はり師・きゆう師・柔道整復師は最初から医師同様の身分免許であり、それを明確にするために変更されたのである.と「営業法の解説」監修者の芦野純夫氏は言われている。施術の業が世間で誤解されている医業類似行為ではなく、本来は医師が当然行うべき医業の一部を免許によって行うものであること、その業務は免許範囲内のものに限られ、医業類似行為を含む治療全般が行えるものではないことも、しっかりと認識していただきたいとも言われている。

あん摩、はり、きゆう、柔道整復等「営業法の解説」は、昭和23年に厚生事務官・鈴村信吾氏、厚生技官・芦田定藏氏共著、東京第一書林で発刊されたあん摩、はり、きゆう、柔道整復等「営業法の解説」の現代語版が平成24年、日本医療福祉新聞社から前厚生労働教官・芦野純夫氏監修で刊行された。

その中に当時の厚生省医務局長の東龍太郎氏が推薦のことばを書かれている。現在の我々柔道整復師業界への忠告と真摯に受け止めなければならない。引用転記させていただく。

 

推薦のことば

あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法、この新しい法律の特色とするところは、何であろうか。それは何といっても、今後これらの施術を業としようとする者について、著しくその素質の向上をはかったことである。これは、医師、歯科医師、保健婦、助産婦及び看護婦等については、すべて一貫した方針として、それぞれその素質の向上をはかる措置が講ぜられているのに、同じく人の健康に関する業務に従っているこれらの施術者の学術技能の程度が、依然として従来のままに放置されて比較的低位にあることは、国民の相当多数がこれらの施術を受けている現状において、国民保健上望ましくないことはいうまでもないのみならず、折角医師、歯科医師その他の者の素質を向上させても、極めて中途半端なことになってしまうからである。この法律の公布によって、今後あらたにこれらの施術者となる者の素質が向上し、また他方従来から業を営んでいた者も、適当な再教育を受けるようなことになって、その素質の向上がはかられるならば、わが国民保健上裨益するところは決して少くなかろうと思うものである。

今回、鈴村事務官、芦田技官の手によりこの法律の解説書が公にされたことは洵(まこと)に喜ばしい。両君は共に新進気鋭、前途有為の官吏であり、特にこの法律に関しては最初から苦労を共にし、立案施行一つとしてその参画にならざるものなく、解説者としては最も人を得たものというべきである。この意味において、この書は、施術者及び施術の業務に関係ある人々が、この法律の内容を十分理解するについて良き手助けとなることを確信する。

昭和23年3月20日

厚生省医務局長   東 龍太郎

 

著者注

東龍太郎(あずまりょうたろう)
1893年生、1983年没(享年90).東京帝国大学医学部卒、1934年東京帝国大学教授、厚生省医務局長等を経て茨城大学学長。1947-59年日本体育協会会長・日本オリンピック委員会委員長、1950-68年IOC委員。1959年東京都知事当選(2期8年)。第10代日本赤十字社社長。

鈴村信吾(すずむらしんご)
昭和16年東京帝国大学法学部卒。

芦田定藏(あしださだぞう)
昭和14年東京帝国大学医学部卒。