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これだけは知っておいて!!

第59回   【先人の教え】

2012/11/01

社団法人日本柔道整復師会の第10代会長である鳥居良夫先生が一会員として日整広報第35号(昭和53年)に投稿されている。三十数年前のことであるが現在の業界への警告として非常に重要なことが書かれている。公益社団法人日本柔道整復師会の選挙のみならず、国政や地方の選挙においても銓衡の尺度となるものである。

 

役員銓衡尺度について一私案

昭和53年      鳥居   良夫

 

新年を迎え、役員改選期が迫ってまいりました。本年6月9日には、熱海温泉つるやホテルで日整通常代議員会が開催され、役員の改選が行われます。

これに先立って、大部分の都道府県でも役員改選が行われることになります。

7000名近い会員が全員直接会務に参与することは不可能で、自分達が選んだ役員に運営を任せる以外に方法はありません。故に役員選出という行為は非常に重大なことであり、その適否は業界の盛衰にかかわることになります。

私は今日まで都柔整及び日整の役員として会務を遂行し、また沖縄以外の46都道府県を回って、それぞれの地方組織の長所・短所を観察して参りました。その経験を総括して、役員選出にあたって特にご留意いただきたい点を列記し、ご参考に供す次第です。

 

1.
年功序列でなく、能力と意欲を尺度にして選んでください。
どんな優れた能力を持っていても、利己主義者で犠牲的精神に乏しく、会務に精励する意欲のないものは駄目ですし、役員になることを名誉と心得、意欲は十分だが能力が伴わない者では会の発展に寄与することはできません。

2.
立派な識見を備えた人を選んでください。
法令、定款、協定、慣習に精通し、それを固定的でなく、前進的に把握し、しかも柔道整復の学理、実技についても優れた人であることが必要です。

3.
役員間で協調できる人を選んでください。
会の運営はチームプレーであって個人プレーではありません。八方美人だけでは困りますが、自我が強過ぎても困ります。自分の意見は堂々と主張し、しかも他人の意見を十分に聴き、民主的に決定された方針に従って行動するような人を選んでください。

4.
公私の別のハッキリした人を選んでください。
役員になれば家を留守にすることが多く、患者は減り経済的損失は必至です。
しかし、会からは実費弁償が若干あるだけです。だからといって損失を会の予算から補償することは不可能であり、誤りであります。
日常の行動の中で、この出費は公費か私費かの判断を必要とする場合が度々あります。この場合、全国会員からの浄財であることを考え、冗費を避け公私の別を厳格に区別することが必要です。
少しでも役得意識を持つと、そこから崩れ、職権乱用、財政紊乱にまで発展してしまいます。

5.
近代的教養を身につけた人を選んでください。
柔道という古い伝統を身につけた私達は、ややもすると近代社会の進展する諸現象に立ち遅れがちですが、役員はこれでは済まされません。諸官庁を始め対外折衝の多い昨今、服装、マナー、話題や常識が、激変する社会情勢に適応していなければ、業界の恥を外部に露呈することになります。

6.
若い人も役員に起用してください。
指導者の重要な任務の中には、後継者の計画的な養成があります。大半の府県ではこの点がなおざりにされておりますが、思い切って若い人を登用する必要があります。老年者、壮年者が半数ずつの役員構成がこれからの府県における当面の目標だと思います。

 

以上6項にわたって述べましたが、今から十分考慮され、各府県においても、日整においても、立派な役員が選出されるよう期待して筆を擱きます。

 

【筆者注釈】

銓衡(せんこう)

採用などに際し、人物・才能などをつまびらかにしらべ考えること。
「選考」とも書く。(広辞苑より)

浄財

寺院や慈善のために寄付をするお金。大切なお金という意味。

冗費

無駄な費用、無駄遣い。

紊乱(びんらん)

道徳・秩序を乱すこと。乱れること。「ぶんらん」とも読む。